【116】 千乃幸
 投稿者: 千乃幸 <waffle@d2.dion.ne.jp> ( 謎 ) 2000/4/10(月)01:23
オレは『幸せ』の内にいた
確かに『そこ』にいたんだ
でも…

そんなの偽りだと気づいて
そんなもの要らないと気づいて
本当に必要なものに気づいて
オレ自身を見付けた

だから『ここ』に戻ってきたんだ
オレを必要に感じてくれる
いつもオレのそばにいてくれる
今もオレの横を歩いている『こいつ』のところへ…

だからオレは今、新しい『幸せ』の内にいるんだろう

ここで、ふと考えることがある

「『幸せ』って何だ?」

それはすごく漠然としていて
ある意味馬鹿らしい自問

…多分、誰にも答えられない



オレ達はいくつもの偶然が重なって出会い、絆が生まれた
そして普通では考えられないクライマックスのあと
今の、新しい『幸せ』を手に入れた

だから、ひょっとしたら『幸せ』というものは
クライマックスの後に控える、長く、退屈で、無意味なエピローグなのかもしれない
だとしたら、何もなく繰り返す『日常』が『幸せ』なのだろう

…それもいい
『こいつ』とともに過ごす『日常』はオレとって望むべき空間だ
だからこれでいいんだと自分に言い聞かせる
が…


ホントニソレデイイノ?


オレの内で何かが反論する


ホントニソレダケデイイノ?


(それ…だけ?)


イマニマンゾクシテルノ?


(今? 満足??)


ソレハシアワセデハナク…


(幸せではなく何だ?
よく聞こえない…聞こえないよ)


シ…………ソ………イ……………メ………ニ…ン…………ダヨ


(分からないよ、教えてくれよ!
このままオレは答えが見つからないまま『幸せ』に内にいられないよ!)


でも、それは何も答えてくれない
オレはオレ自身に答えを見失っていたのだから



「なぁ、『幸せ』って何だ?」

唐突に隣にいる『こいつ』に問い掛けてみた
短絡的で突拍子もないオレの質問に、当然ハテナマークが浮かぶ
…と思われた矢先


スッ…


自分の腕とオレの腕を絡め、歩き始めた
「これが答え」と言わんばかりに



−ますますオレは答えが分からなくなった−





−夢
確かに夢だった
とてもリアルな、とても懐かしい、とても暖かい
夢であると認識できる不思議な夢
辺り一面にもやがかかり、全く何も…自分自身も分からない場所
そこでオレは座っていた、ありもしない石をどこかに投げながら

「何を悩んでいるの?」

女の子…いや、女性…というべきか?
オレよりすこし年下であろう女性が隣に座っていた

「一人で悩んでいると辛いよ?」

女性が微笑む
どこか記憶に引っ掛かりを感じる笑顔だ

「ねぇ…」
「分からないんだ…」
「…何が?」
「何が分からないか、分からないんだ…」
「…」
「最初は『幸せ』について考えていた」
「みたいだね」
「うん…でも、その考えること自体に意味があるのか分からなくなった」
「…」
「今は何も分からないんだ…」

オレは膝を抱えてうずくまった

「だから座り込んでいるの?」
「え?」
「だから立ち止まっているの?」
「…」
「そんな君は見たくないな…」
「オレを知っているのか?」

夢の中なのに変な質問をした
でも、今は何かに答えを…、何でもいいから答えを言って欲しかった

「うん、知ってるよ…君のことなら何でも」
「じゃあ…」
「君は答えを知っているはずだよ」

オレの言葉を遮って言う

「君は答えを知っていなくちゃならないんだよ」
「…知らないよ」
「そんなはずないよ」
「何でそんなこと言えるのさ!」

女性の表情が困惑に染まる
そしてオレは次の言葉を待った

「あた…私は、つい最近まで何も知らなかった…、だからずっと止まっていた」
「…?」
「でも、それは間違いだよって、停滞は死と同義だよって教えてくれたのは君…」
「そんな…オレは…」
「だから、私は今、こうして前に向かって進んでいるの」
「…」
「だから私は立ち止まらないの、それが君が教えてくれた道だから…」
「君は…?」
「今、君は何かを見失って道に迷っているだけ、だから止まっちゃいけないの」
「オレは何を探して…」
「何だっていいの、それが自分のものでも、人のものでも」
「何だって…」
「追い求め、前進すること…それが大切なの!」

女性は一息ついた
オレは考えた

「答えなんて結果なの、過程が大切なの」
「そうか…」
「そうだよ、幸せなんてそれ自体を追い求めるときに感じるものなんだよ」

−シアワセハソレジタイヲオイモトメルトキニカンジルモノダヨ
−幸せはそれ自体を追い求めるときに感じるものだよ

「!!」
「だから君はここで休んでいてはいけないの、前に進まなきゃ…ね」

霧が晴れる
視界が広がり、見えなかったものが見え出す

「…うん、そうだ…そうだね」

それは確信…

オレには何もなかった
でもそれは何でもアリって事
可能性は不確定な意思の上に成り立ち
前進したものが確固たる成功を掴む
だからオレは進まなくちゃいけない
何かを追い求めるため、何かを手に入れるため
そしてその過程が大切なんだ

「ふふ…、分かったみたいだね」
「うん」
「もう…迷っちゃ…だめだよ」
「うん」

オレは立ち上がった
一緒に女性も立ち上がる

「じゃあ、私はもう行くからね」
「えっ!?」
「私はあっちに行かなきゃならないの…」

未だ靄がかかった方向を指して言う

「私も前に進みたいからね」
「前って…、まさか…君はみ…」

ソッ…

言いかけたオレの口に人差し指が添えられる

「もう迷っちゃダメだよ…お・に・い・ちゃん♪」
「!!!」

ウインク
でもそれは悲しみに彩られていた

離れていく
多分もう会えない
手を伸ばす
声を張り上げる

女性の後を追えない
声にならない



………







「ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

自分の絶叫で目が覚めた
何と叫んだか分からない
…でも、夢の内容は覚えている

周りを見る
自分の部屋、まだ外は暗闇だ
時刻を確認する

3:30

神様も冗談が好きらしい…

「そうだよな、オレが迷ってちゃダメだよな…」

ひとりごちて自嘲する

「前に進もう…、何だっていいじゃないか…」

そう何でも良かった

「今で満足しないで、今より良い『幸せ』を求めて…」

そうだ

「『あいつ』と一緒に追い求めるんだ」

いつまでも

「見失ったら次を探そう」

何度でも

「いつでも幸せでいられるように」

いくつでも

「『あいつ』と一緒なら百や千…数え切れないほどの『幸せ』を追えるさ」

たとえそれが自分の幸せじゃなくても

「『あいつ』と一緒に前に進んでいる限り」

オレ達は『幸せ』の内にいる







一人一人に想いが募る

十人十色の夢が集う

例え百害が目前に迫ろうと

乗り越え成せば、幸、千に及ぶ

されど過程が大事なり

夢追い人は幸せなり

手助けするも幸のひとかけらなり



僕らは常に幸せの内にいる

永遠に追い求めているから








----------

え〜と、お久しぶりです
千乃幸@万年瀕死の社会の底辺です m(__)m
あぁっ! 石投げないでください!! ( ToT)

………

つ〜か、誰も覚えていないよなぁ… ┐(´д`)┌

で、今回は『脊髄反射』の名に恥じぬよう (ぉぃ
さっき考えた『浩平、もう帰ってきているだろ?』記念の独白SSです
ちなみに
構想時間 … 一瞬(脊髄反射)
執筆時間 … 一時間半 (途中F1を観ていて中断)
編集作業 … 5分
です (^^;;

…でも、私のHNが元ネタなので構想時間は10年…かも
マヅイですかねぇ? HNを題名に使うのって? (@_@)
まぁ、読んでくださった方々の心に、少しでも響いたのであれば幸いです

でわ、次回は忘れられているであろう連載リハビリSSの第3話でお会い…
できたらいいなぁ (超自爆)


最後になりましたが…
私信 WTTSさんへ
HP拝見させていただきました
自分もデビュー日を確認して「あぁ、あの頃は週一ペースだったなぁ…」とか
自嘲しています (^^;;
で、ひとつお聞きしたいのですが、私の葉っぱ図書館未収録SSは掲載されない
のでしょうか?
実は8作あるのですが… (--;;;
#うち6作は掲載後、まさた館長に登録抹消していただきました

どうなんでしょ?

さて、これから仕事の続きをするので失礼します ((((( TT/~~
皆さんの心に幸あらんことを… ミ☆


注)知っている方もおられると思いますが、私は滅多にここに来ません
よって、感想は不要です
もし、「感想を言いたい」とか「お前は間違っている!」とか「せっかくだから
オレはこっちの赤い(検閲)」という珍しい(ぉぃ)方は、某チャットで私を捕まえ
るか、メールにてお願いします