天使のいる風景 〜 Angelic View 〜 投稿者: 千乃幸
偶然は起こった瞬間に必然に変わる
では、この世の中に偶然はないのだろうか…?

違う…

偶然を、それと認識しないから

『奇跡』として認識してしまうから

偶然は重なり合って『奇跡』を生み

偶然の必要性を隠す

しかし、偶然は存在するのだ

確かな奇跡を生むために

だって、私たちが出会ったのも…


『天使のいる風景 〜 Angelic View 〜』 第一章「出会い」


「さてっと、お仕事お仕事…」

そう独り言を言って、一眼レフを構える
今日の標的は煉瓦作りのビル

『もうすぐ壊されることに決まった、このビルの勇姿を永遠に留めておきたい
  せめて、二次元の世界の中だけでも』

そんな読者からの手紙が今回の仕事の始まりだ
『浪花節』のいたるさんは一も二も無く取り上げたらしい

「まずは…、入り口かな?」

…とファインダーを覗きながら左手で照準を合わせる
そして、シャッターを切る…

ふいっ

っとレンズの向きが変わり、私はビルの入り口から屋上をなめた構図の写真を撮る羽目になった
そして

「駄目ね…」
「えっ?」
「ビルの気持ちが分かってる?」

耳元で聞こえる声
その声は初めて聞いた声なのに、何故だか懐かしく、暖かかった
だから私も驚きもせず声の方向を見れたのかもしれない

すぐ右に、大きなポニーテールが特徴の、背が私と同じくらいの女性が立っていた
多分、年齢も同じ位だろう

「ビルって普通の建築物とどう違うか分かる?」
「えっと…、高いし頑丈…かな?」

私は冷静だった
普通なら驚いたり、文句を言っているところだろう

「ま、正解ね」

女性はそう言って腕を組んだ

「で?そのビルが入り口を真っ先に撮られて嬉しいと思う?」

続けざまに質問

「えっと…」

私は返答に困った
ビルの気持ちなんて分からないからだ

「じゃあ、例えばあなたが一番気に入っているところを真っ先に誉めてもらえず、あまり好きでは
  ないところを一番最初に誉められたらどう感じる?」
「えと…」
「辛さと美味しさを誇るカレーが『奇麗な色だね』って言われたらどう感じると思う?」
「嫌…かな?」

『カレーの気持ち』で反応してしまった自分がちょっとだけ情け無いけど、何となくこの女性の
言いたいことは分かった
つまり、ビルにも気持ちがあって、真っ先に誉めてもらいたいところがあるということだ

「じゃあ、もう一度最初の質問…」

ここまで言って、組んでいた腕を解いた女性はビルを指差し

「ビルの気持ちが分かってる?」
「う〜ん、さっきよりは分かるかな?」
「じゃあ、ビルが最初に気が付いて貰いたいのは?」
「えっと…、『高い』ってことと『頑丈だ』ってことかな?」

あごの辺りに手を置いて考える
昔からの癖だ…

「そう、その通りね」
「うん」
「で、真っ先に入り口を撮られたらビルはどう感じると思う?」
「やっぱり、嫌かな?」
「でしょうね」

そう言って、肩を竦めてみせる女性

「だったらどこを撮ればいいと思う?」

女性はビルと私の『仕事道具』を交互に指差して言った

「やっぱりその高さが分かる構図の写真かな…?」
「正解!」

やっと女性が笑顔になる
それは長い熟考の末に正解に辿り着いた出来の悪い生徒に向ける、教師の表情だった

「では、今日の授業はここまで」
「授業じゃないよぅ〜」
「ははは…」

困った顔の私に笑いかける彼女

「でも、ありがとう」
「ん? 何が?」
「だって、今まで被写体の気持ちなんて考えてなかったから…」
「えぇ…、でもあなたならそのうち気付いたと思うわ…」
「え? 今なんて…」
「それでもあなたの写真はいい出来だったと言ったの」
「あ…、え…? ひょっとしてお会いしたことあります?」

今までの写真の評価をされて、私は聞いてしまった

「いいえ、初対面だと思うわ」
「やっぱりそうですよね…」

でも、最初に受けた懐かしい感じ…
それは間違いなく親しい人に対する気持ち
しかも肉親レベルでの付き合いがあったような人に対する…

「…天子」
「え?」

考え事をしていた私は彼女が何を言っているのか分からなかった

「天子よ、樋上 天子(ひのうえ てんこ)! 私の名前」
「樋上さん?」

復唱してしまった

「それであなたは?」
「え…、あ、私は川名 みさき」
「へぇ〜、いい名前ね」
「ありがと〜」

思わず自己紹介
しかし、私の中で何かが引っかかっていた

「で、『み〜ちゃん』って呼んでいい?」
「そ…、それは…」
「駄目?」
「うん」
「じゃあ、『みさきちゃん』ね」
「うん、私も『てんこちゃん』って呼んでいい?」
「えぇ、構わないわ」
「じゃ、てんこちゃん」
「何?」
「次はどこを撮ればいいのかなぁ…?」

その言葉にてんこちゃんは天を仰ぎ

「かぁぁぁ〜、もう二時間目の講義の時間なのっ!?」

こうして私は日が暮れるまで『授業』を受けた
何となく親近感を抱く女性とともに

これから起こる奇妙な体験を知らずに…

−−−−−

あぁ…、徹夜して書き上げてしまった (--;;;
いや…、その…、序章だけだとあまり意味が無いと思ったから… (( --)

さて、やっと本編突入のこのお話ですが、起承転結の承の部分をあまり考えて
ないんですよね… (^^;;
つまり、問題は次の章ってことです… (--;;

あ、そうそう序章の後書きでメールの件を言っていますが、『苦情』のみ受け
付けます。 (^^;;
『リハビリSS』ですので、おかしい点を指摘してもらいたいんですよ
特に、カメラの知識なんて皆無だし… ┐('〜`;)┌

でわ、今日は休日出勤なんで『いつものチャット』に顔だして会社に行きます。(^^;

またお会いしましょ〜 ((((^^/~~