〜きずな〜 投稿者: 智波
  わたしは普通に生きていた。
  それまでと同じように日常を生きることを努めた。
  もちろん…色んなところで無理はでてくるけど…。
  でも前向きでいたいという姿勢は守りたかった。
  ふと悲しくなるのはどうしてだろう。
  どうしてなんだろう。
  季節のうつろいは緩やかで、いつまでも同じ時間にいるような気がする。
  でもちゃんと進んでいる。
  同じ季節にわたしはいない。
  一歩づつ、あの日から遠ざかっている。
  あの日探していたものと、今探しているものは違うし、見ている風景も別だ。
  すべてがうつろいゆく。
  留まっているのは思い出だけだ。
  色あせない思い出…。
  その中に身を投じれば、わたしは辛くなる。
  激しく心が震えてしまう。

「あっ…浩平っ…」
「おぅ、長森」
「はっ…あはっ…」
「どうしたんだ?」
「ううん、すごく悲しい夢を見てたんだよ。すごくイヤな夢だったよ」
「そうか。それは可哀想になぁ…、…よし、じゃあ、今日はおまえのために一
日時間を割いてやるか」
「ほんとっ?」
「ああ。一日遊べばきっとイヤな夢だって忘れられるだろ?」
「うんっ、おつりがくるよっ」
「よぅし、いくかっ」
「うんっ、いこっ」
  たくさんの幸せのかけら。
  ビー玉のように輝く小さな幸せのかけら。
  浩平と集めるんだ。
  一緒に集めた幸せは、ふたりの共有する幸せ。
  どっちの角度から見ても、それは幸せなんだ。
「ね、浩平」

  でも、それのほうがイヤな夢だったことに気づくとなにもかもを失った気さ
えする。


                                                       きずな


  夏…

  暑い夏だった。
  友達は多いほうじゃなかったけど、それでもその大切さを感じた。
  わたしひとりだけが、遠くの南海の果てに浮くブイの方向を見ていたのに、
友達はちゃんとそばに居てくれた。
  それはありがたいことだった。
  
  秋…

  日常というものが、すでに失われたものであったなら、わたしは一体どこに
生きているのだろう。
  ふと思えば、肌寒く、わたしは風邪をこじらせたりした。
  もう一度前を見よう。
  しっかり顎を引いて。

  冬…

  凍てついたのは太陽だけでなく、心もそうだ。
  もし次の季節が来て、明るい陽光が差して、溶けてくれるなら。
  感情のような朝露がわたしのこころの雨どいを伝ってくれるなら。
  滑らかに落ちて、その下の琴線に触れてくれるなら。

  春…

  春という季節は、別れの季節だった。
  いろいろな人と別れて…
  そして今もわたしは、待っているのだ。
  あのひとを。

  ずっと、永遠に繰り返される、季節のうつろい…
  だと思っていた。
  あの人と一緒に…
  それだけで幸せだった…
  それが日常であることすら忘れていた。
  そしてふと感謝する。
  ありがとう、と。
  こんな幸せな日常に。
  浩平と一緒にふざけあって、世話を焼いて、当たり前のように…
  それが永遠に続くのだと思っていた。
  そうやって幸せのかけらを集めていられるのだと思っていた。
  けれど壊れるのは一瞬だった。
  永遠なんて、なかったんだ。
  知らなかった。
  そんな、悲しいことわたしは知らなかった。
  知らなかった…。

  だから…
「お好み焼き食べに行こうな」
  たったそれだけのあの人の最後の台詞をわたしは信じている…。
  そして、待っている。
  永遠のように感じる、永遠でない季節のうつろいの中で…。
  その言葉はゆっくりとわたしの中に降り積もっていく。
  …そこで浩平が待っている気がした。

  わたしはどこに居るのだろう?
  ふと世界が遠くなるような気がした。
  そこには浩平が居る。
  いつでも浩平が居る。
  幸せな永遠の日常が、ふと垣間見えた気がした…。

===+++===

  というわけでまたしてもやってしまいました。
  ハッピーエンドをバッドエンドに書き換えシリーズ。(苦笑)
  第一弾、茜に続いて、今度は瑞佳です。知り合いに頼まれまして。(笑)
  またしても永遠の世界です。(苦笑)

  ではレス〜〜!
  結構間が開いたので、全部じゃないです。(^^;

☆藤井勇気さん
★浩平君の弁当強奪大作戦!
  初めから素直に誰かに金を借りりゃあいいのに。(^^;
  それをしないのが浩平らしいというかなんというか。
  楽しく読ませていただきました。ごちそうさまって感じです。(笑)
  あ〜、今晩の飯はどうしよう。

☆YOUさん
★あいつが・がっこに・やってきたぁ!
  俺にもスーパー繭ロボラヴラヴ2号でいいからくださいっ!(笑)
  あ、2号って響きが妖しい。
  できればビームは外して。(^^;
  しかし電力はどうしてるんでしょうね?  ドラえもんと同じようになってるんで
しょうか?
  うんうん、そういうことにしておこう。
  住井の奴の新たなる才能にびっくりですわ。(笑)
  美味しいですね。テリヤキバーガー。

★海の見える白い部屋
>「でも、洗ったり、汚したりするうちに、生活感のある家になっていくんだよ」
  はぅ〜、まったくでございます。
  だから人は傷つくことを恐れちゃいけないんですね。
  恐る恐る手を伸ばして、そして触れ合って、時には傷つけ合って。
  なんか最後の台詞も良かったです。

☆ここにあるよ?さん
★平和な日々・・・おまけ&完全版
  どわぁぁ、ひでぇ。(笑)
  でもこんな日常が一番幸せだということ、ですよね。
  なんかほのぼのしてて、自分の話の暗さが。(苦笑)
  またほのぼのさせてくださいね。

☆GOMIMUSI(み−3)さん
★昔とは違う自分
  ひねりがないとおっしゃってますが、そのストレートさがいいんじゃないですか。
  じんわりきました。
>乙女って、なりたくてなれるものじゃないんですよね。なってしまうものなんです。
  いい言葉です。人はそうやって変わりながら、生きていくんですよね。
  無理をせずに、肩を降ろして、のんびりと、それでいいじゃないか。
  そんな風に思いました。
  次を楽しみにしていますっ!

☆だよだよ星人さん
★詩子...その愛 
  いや、あの、なんというか。(笑)
  まさか、あの二人、いや、幼なじみもいれると三人って毎年。(はなぢ)
  浩平君に普通の彼女ができることを祈って。(笑)

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