好き好き郁未先生! 2 投稿者: だよだよ星人
  長森に引っ張られて戻ってきた教室.
  昼休みの残りの時間、みんなあちこちで郁未先生攻略作戦を練っていた.

  いきなり資本力にモノをいわせる奴.
中崎「(ピッポッパ)ああ爺かい.僕だけど.うん.車迎えによこして…先生を招待するかもしれないんだ」

  企画力でいく奴.
住井「やっぱり歓迎会ってのがいいよな.何人集めるか…店はあそこで…よし…」

  一人ぶつぶつとセリフを言う奴.
「逃げちゃだめだ.逃げちゃだめだ.逃げちゃだめだ.逃げちゃ…」

 複数で攻める計画を練る連中.
「喫茶店に誘おう」「それから…」「ああして…」「こうして…」「むふふふふ」「えっへっへっ」

  どうしようもない連中.
南森「どうしようか」南「どうしよう」南森「…どうしようか」南「…どうしよう」南森南「うわああああ」

  で…肝心の俺はというと…またも長森の妨害に会っていた.

瑞佳「浩平は私と一緒にまっすぐ帰るんだよ」
浩平「おまえ…クラブがあるんじゃないのか」
瑞佳「しばらく休むもん」
浩平「マジか?」

  いったい今日の長森はどうしたのか.まるで告白イベントが終わった後のようなしつこさだ.

浩平「俺は一人で帰る」
瑞佳「だめだよ浩平.そんなこと言ってあの先生の後つけるに決まってるもん…それから家探り当てて
      …それで…ああなってこうなって…赤ちゃんができて(ポッ)…もう…何考えてるの浩平っ!!」
浩平「はあ…おまえこそ何考えてるんだ…」

  一人でぶつぶつととんでもないことを口走ったかと思うと、顔を赤くして腕を振り回している.困った奴だ.
  ここはいつものように口先ではぐらかすにかぎる.

浩平「おまえは俺を誤解しているぞ長森…俺はおまえのために先生を追いかけてるんだ」
瑞佳「えっえっ…いきなり何言ってるの?浩平」
浩平「おまえもああいう可愛くて綺麗で色っぽい女になってみろ」
瑞佳「そんなの急に言われたって無理だよ〜っ」
浩平「馬鹿.今からそういうことを意識していくのが大事なんだぞ」
瑞佳「そっそうかな…」

  しめしめ…もうこっちのペースだ.

浩平「俺はおまえが大人の魅力を身につけるのを手伝ってやろうとしてるんだ」
瑞佳「そっそうなの?」
浩平「先生に魅力の秘訣を聞き出してだな.それをおまえに伝授してやろうと思ってるわけだ」
瑞佳「そんなの嘘に決まってるよ〜っ騙されないもん」

  俺はここで悲しそうな顔で首を振った.

浩平「おまえ…そんなに俺が信じられないのか?」じっと見つめる.
瑞佳「こっ浩平…顔がマジだよ?」
浩平「俺はおまえに誰よりも綺麗になって欲しいんだ」じ〜っと見つめる.
瑞佳「浩平…そっそんなに見つめないでよ〜」顔が赤くなった.
浩平「おまえには一番いい女になって欲しい…俺はいつもそう思っているんだぞ」じ〜〜っと見つめ続ける.
瑞佳「そんな…やだ…もう…浩平ったら」

  トマトより真っ赤になった長森は、「長森シナリオで手をつなぎそこなった時の顔」で照れまくっている.
  いまなら押し倒しても全然OKかもしれない.だがここは教室.七瀬じゃないのが残念だ.

瑞佳「私のことをそんなに考えてくれてたなんて…」
浩平「それなのにおまえは俺が信じられない…悲しいなあ」はあ〜っと大きくため息をついて見せる.
瑞佳「こっ浩平…ごめんね私…誤解してたよ」
浩平「いやわかればいいんだ.わかれば」

  納得した長森がパタパタと向こうへ歩いていく.
  …なんて単純な奴だ長森…おまえを騙すなんて赤子の手をひねるようなものだな.
  きっとキャッチセールスとか簡単について行ったり、怪しい壷とかいっぱい買っちゃうんだろう.
  だが俺には郁美先生をモノにするという崇高な使命があるのだ…許せ、長森.


  そして放課後まであと一時間となった休み時間…
  そろそろマジに俺も作戦を練らなければ…だが郁未先生は長森みたいに甘くはないだろう.
  やはり一人では心もとない…ここは誰かと結託して…
  いや俺は待っていればいい…黙っていてもあの男がやってくるからだ.
  ほら来た.

住井「ところで折原…放課後のことなんだが」
浩平「ん?…何のことだ」
住井「何とぼけている.決まっているだろう」
浩平「ああ…そのことか」
住井「そのことっておまえにはもう何か案でもあるのか?
浩平「まあないこともないが…」

  と軽く匂わせる.

住井「どんなこと考えてるんだ?話せよ」
浩平「いや…それほどたいした作戦じゃないからな」
住井「そっそうなのか?」
浩平「まあな…ちょっとな…あと少しなんだが」
住井「どうするんだ?」

  俺はここでわざとらしく窓の外を見る.このタイミングが大事だ.
  乙女にしか為し得ない技だな…なんちゃって.

住井「おっ俺の考え聞かないか?そしたら話すだろ?」
浩平「う〜ん.そうだなあ…いややっぱりやめとくわ」
住井「聞いてくれよ」
浩平「う〜ん…そうだな.じゃあ話してみろ」
住井「まず職員室で待ち伏せ…それからみんなで歓迎会をすることを伝える」
浩平「ふむふむ」
住井「それからみんなで…中華料理屋へ繰り出す」
浩平「驚いた.俺とほとんど同じじゃないか」
住井「そっそうなのか」
浩平「だが最初だけ違う…俺ならまず髭を誘うな」
住井「ええっ?マジか」
浩平「まあ聞けよ…髭に郁美先生を誘ってもらうんだ…あいつの押しに勝てるものはいないからな」
住井「ふむ…確かにそうだな」
浩平「髭だって先生だけの歓迎会よりも前に、先に郁美先生と飲めるんだから頑張るだろう」
住井「なるほど」
浩平「それに飯代を負担してくれるかもしれないぞ.あれで結構見栄っ張りだからな」
住井「そうか…さすがだな折原」

  本気で感心している.適当にアレンジしただけなんだけど.

浩平「とにかく髭に話をつけてこいよ」
住井「わっわかった」

  職員室へと走っていく住井.ふっ…いいやつだよ、おまえは.
  だがこれでお膳立ては揃った.後はいかにして先生を…

浩平「うわっ」

  にやにやしていた俺の袖を引っ張るものがいる…それも下の方から…

『うれしいの』カキカキ…『中華料理なの』

浩平「…なんでここにいるんだっ澪?」
澪「…」

  ん〜っと.頭に手を当てて考えている.考えないとわからないのか?

カキカキ…『次は自習なの』
浩平「そっそうか」
澪『中華料理なの』

  にこにこっ…さっきのページをまた見せている.

浩平「…ええっと…さっ今日の復習でもしようかな」
澪「…」ほえ?
浩平「ああっとその前に宿題しないと」
澪「…」う〜っ 睨んでいる.
浩平「それと明日の予習予習…」
澪「…」えぐえぐっ

  やばい.

みさき「あっ泣かせてるね.浩平君」
浩平「ぐあっ何でここに…先輩」
みさき「次は自習なんだよ」
浩平「…」

  だんだんわかってきたぞ、展開が.

みさき「聞こえてたよ.浩平君」
浩平「ええっと…」
みさき「今日は家の人遅いから自分で作りなさいって言われてたんだ」
浩平「しかし…」
みさき「よかった.これで作んなくてすむね」
浩平「いやでも…」
みさき「一緒に行こうね.澪ちゃん」
澪「…」こくこくっ…じゃ伝わらないので、先輩の腕を引っ張る.ぐいぐい…
みさき「嬉しいね.おごりだよ〜.いっぱい食べるからね」
澪『食べるの』にこにこっ ぐいぐいっ
浩平「だから何で先輩まで…」
澪『中華料理なの』また同じページ…食いに行けるまでずっと繰り返す気か?
みさき「浩平くん…嫌だっていったら…」可愛いおでこをみせる.
浩平「わかった…わかりました…」

  先輩のメガトン頭つきはごめんだ.

「やっほ〜っ茜っ遊びに来たよ〜」

  またどこかで聞いた声がしたが、もう誰が来たか見る気もしなかった.


  そして放課後…中華料理屋に向かう髭と郁美先生.それに住井と俺.ここまではほぼ予定通り.
  だがその後に……恐怖の胃袋を空っぽにしたみさき先輩と手をつなぐ澪.澪に誘われた茜.茜についてきた詩子.
  なぜか急にクラブが休みになった長森.長森に誘われて暇だからしょうがないわねと来た七瀬とそのおさげに繭.
  先輩が食いすぎないよう心配でついてきた(本当か?)深山さん.南、南森、中崎、他…名前がもらえない男子たち.
  とんでもない数に膨れ上がっていた.
  作戦もへったくれもない.

住井「折原…いったいあの連中は…」
浩平「…すまん…何も聞かないでくれ…」


  そしてとうとう俺たちは店の前までやってきた.


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うわあああっっこんなについてくるはずでは(T-T)みんな勝手なことをっ
この先何も考えてません