あっちの世界 投稿者: だよだよ星人
とうとう浩平があっちの世界に行ってしまった
なんとかつなぎとめられると思っていたのに...
......

放課後、私たちは教室に集まって相談することにした
「...ったくあの馬鹿っ」
留美が開口一番こう叫んだ
「いったい何が不満だっていうの?」
他の5人もうなずく
私達に囲まれた生活から、どうしてあっちへいかないと行けないのか
「乙女のプライドが傷ついたわっ」
「どうしちゃったんだろうね、浩平君」
「現実逃避が多すぎるのよ」
「みゅ〜っ」
「痛いっやめんかいっ」

『あのね』
にこにこしながら
『澪と一緒に卒業するの』
「何を縁起でもないこと言ってんのよっ」
「1年ぐらい戻ってこなかったらそうなるね」
先輩がうらやましそうに
「私はもう無理だよ...卒業しちゃったからね」
「そういえばなんでここに?」
「まあまあ」
話を軌道修正
「...みんな浩平が縁で仲良くなったんだから協力しようよ」
損な役回りだが、まあ幼なじみだし、ここはまとめ役に徹しよう
なにより逃避癖を与えた張本人が、幼いときの私だとは(笑)口が裂けても言えるわけがなかった
「だいたい瑞佳が毎朝甘やかすからいけないのよ」
「そっそんな〜っあたしはただ...てあれっ?」
「茜が冷たくしたからじゃない?」
「...違います」
「毎日寒い中庭に引っ張り込んだから?」
「...違います」
「詩子さんいつのまに」
気がつくと私たちの真ん中に陣取った彼女は、腰に手をあててこう言ってのけた
「みんな思い当たる節があるでしょう...あいつも耐えられなかったんじゃないの?」
全員沈黙
みんなの頭の中に何が思い浮かんでいるか大体想像はつく...
いつも蹴りやひじ打ちを食らわせたのがいけなかったのかな?
それとも毎日寒い中庭でご飯を食べさせたから?
いやそれをいうなら放課後の屋上のほうが寒いし
それとも極甘クレープを何度も無理矢理食べさせたから?
でも量だけならハンバーガーのほうがひどかったはずだし
やっぱりラーメンを頭からぶっかけたのがいけなかった?
生徒でもないのが2人も潜り込んで神経つかわせたし
袖引っ張って伸ばしたり、人込みで泣き叫んだり
試験中なのに遊びに引っ張りまわしたり
それなら......
あるいは.....
いや......
......

「...みっ みんなっよっぽど思い当たるのね」
詩子さんがあきれるように言った
「あははははは(汗)」
私たちは向かい合って笑うしかない
「まあでも聞くところによると、あいつ本当にまいってたみたいだね」

確かに最近の浩平はおかしなことばかりしていた
もともと変な行動が得意な人ではあったけど、さらに加速していた
雨の中待ち合わせもしてないのに公園で待っていたり
道端で全然面識のない人に話しかけて無視されて落ち込んだり
自分の部屋の家具を運び出して雨ざらしにしたり(あれにはおばさんも困っていた)
私服で学校にきて逃げまわったり...
夕焼けを見て涙ぐんでいた時はどうしようかと思ったものだ

あげくにとうとう野宿を始めてしまったのだ
里村さんが、毎日野原で網を張っていたらなんとか遭遇できたが
餌を使って捕まえようとしたら、逃げられてしまったらしい
「なんで餌を食べ物にしなかったのよ〜っ」
「...食べられませんか?」
「本気で言ってるの??」

「このまま放っておいたら...」
「放っておいたら?」
「ただのホ(ピー)になってしまう」
「え〜っいやだよ〜幼なじみがホ(ピー)なんて〜っ」
「時間の問題だね」
困る、それは困る
「そんなことになったら、家に閉じ込めるもん」
「いまだってトイレの窓から逃げられてるくせに」
「ううっ...」
『一生懸命考えるの』
しばらく考えたがなかなかいい案が出てこない
みんな頭を抱えてしまった
ちょっと変になっているとはいえ、私たちはみんな浩平が好きなのだから
何とかこっちの世界に戻してやらないといけない...と思う

「仕方がないわね」
詩子さんが言った
「私の友達にこういうのに詳しいのがいるの...頼んでみるよ」
「えっ」
「それってまさか...」
「謎の宗教施設にいた人とか」
「なんで知ってるの?」
「...」
「そういう展開なの?」
「いやだよ〜」
「...嫌です」
「まあだめもとでってことで」
「あんた楽しんでるでしょっ」

しかし他に頼るあてのある私たちでもなく、結局は詩子さんにお願いすることにした
「その前に浩平を探さなきゃね...」
「......」うん、うん
「そうだね」
「繭っあなたの鼻をきかせてもらうわよ」
「みゅ〜」
「痛いっ(涙)...ううっがまんがまん」

まずは学校の裏山から探すことにした


つづく

...ってつづけるのか(--;これ