風が気持ちいい。 仰げば澄み切った青空が高く広がっている。遠くの家々の屋根の向こうを望むと、真っ白な雲が横にずうっと伸びている。 秋の公園の散歩道。茜と共に休日をこうして楽しむ。 俺は大きく息を吸い込み秋の匂いを肺に一杯する。見渡せば公園の木々が、もう秋の色にたっぷりと彩づいている。とても清々しい。季節を感じることがどうしてこんな嬉しく思える。 目線を下にすると、俺と同じように世界を楽しんでいる茜がいる。淡い乳白色のセーターがよく似合っている。俺の視線に気づいたのか、ちょっと恥ずかしそうにどうしたんですか?と聞いてきた。 「茜とこうしていることが嬉しくてさ」 真面目な顔をして言ったつもりなのだが笑われた。似合わないです、という茜の言葉がちょっとさみしい。 「秋ですね」 「悔しいことにな」 「悔しいんですか?」 苦笑する茜の表情にも見慣れてきた。高校を卒業し、就職して幾年かが立つ。だけど、俺と茜の関係は変わることがない。この数年を共に過ごしてきて、俺の行動に手を焼くと決まって茜はこう言った。「長森さんの気持ちがわかります」と。そういえば、溜め息の仕方が似てきたような気がする。 社会に出てからは変化があったとすれば、あの永遠に続くような時間を懐かしむようになったことだろう。緋色に斜陽が差し込む放課後の教室、二人で歩いた帰り道、クリスマス前の商店街、あのゆったりと流れていた時間の映像をよく思い出す。 「たい焼きを食べたい気分です」 「おいおい、食欲の秋かよ」 今度は俺が苦笑する番だった。情緒よりも味覚の方が上回るらしい。でも、素直な言葉を俺の前でだけ出してくるのはとても嬉しいことだった。 秋の穏やかな風を背に受けながら、随分と歩いた。丁度ベンチがあったので、少し休もうと促した。茜はコクリとうなずく。 「変わりませんね、季節は。人も風景も変わっていくのに、季節は何度でも巡ってくる。永遠に繰り返し・・・・・」 ベンチの脇に広々と枝を伸ばす木を見て、茜は感慨深げに呟いた。その横顔はとても白くて、綺麗だった。不意に見せる茜の表情に、俺は鼓動が高まるのがわかった。まるで初めて女の子と手をつないだ少年のように。 「永遠に変わることなく、か・・・・」 このまま茜と共にいくつもの季節を過ごしていく。それだけでも幸せなことだろう。絶え間ない日常がかけがえのないものだということは、今の俺はわかる。 だけど、このままでいいとはどうしても思わなかった。もっと一緒にいたい、側に居て欲しい、同じ時間を共有した。だから俺は・・・・。 「茜」 「・・・・・?」 静かに声を抑えて茜の名を呼ぶ。茜はこちらに体を向けたが、俺の雰囲気にちょっと不思議そうな顔を見せた。俺はジャケットのポケットの中のものを確認すると、大きく息を吸い込んだ。 まずい、思いっきり緊張している。 「どうかしましたか?」 「い、いや・・・えっと、その」 優しげな視線で見つめられると、さらに俺の緊張はました。どくどくと全身の血流が巡っている。だんだん頬もほてってきた。 「そ、そうだな・・・たい焼き食べたいか?」 「食べたいです」 「ワッフル何かは?」 「もっと食べたいです」 「そうかぁ、秋だもんなぁ」 「どうしたんですか?変ですよ浩平」 「いつも変だ」 「自分で言うのだからますます変です」 だ、だめだ。自分が何を言っているのかわからない。茜は完璧に俺の挙動を不審に思っていた。これ以上この緊張に耐えることが出来そうにもない。俺はもう一度深呼吸をした。 「茜・・・・・」 「はい」 飛び出しそうな心臓を必死に抑えて真っすぐに茜を見つめる。茜の真摯な瞳が見つめ返してくれる。俺は心を決めた。自分の気持ちを素直に吐き出すんだ。もう一度茜の名を呼ぶ、頭が真っ白になりそうだったが、勇気を振り絞って俺はある言葉を紡いだ。 「っ」 茜の呼吸が止まる。細い両肩が震えて、唇が震えていた。 突如、風が大きく吹き抜け木々を揺らした。赤や黄色の木の葉達が、俺達の間を抜けるように過ぎていく。茜はそんなものには目もくれず、ただ驚きに言葉を失い瞳だけが俺と向かい合っていた。 俺は、もう一度気持ちを言葉に乗せた。 「俺と結婚してくれ」 季節はうつろい、めまぐるしく時は過ぎていく。そんな中で俺は二人の時間を刻みこもうと思う。永遠を軌跡に残す。方法は幾らでもあると思う、だけど不器用だからこんな言葉でしか伝えることが出来ない。そんな、不器用な俺の、不器用な言葉に。 「はい」 茜はほほ笑んでうなずいてくれた。 ================================ どうも、ほとんどのお方がお忘れでしょう。 かつてSFSSを投稿していながらも、途中脱走を計った卑怯者、ゾロGL91です(笑) えーと、ですね、実は今日はお伝えしたいことがありまして、ついでにと速急に作品作って投稿したわけで(汗) そんなわけで、そんなもんだと思ってくれれば幸いです。 で、お伝えしたこととは、前に刑事版でも報告したのですが、実はJuvenaile・Kちゃっかり自分のHPで連載してます(笑)いない可能性でしょうけど、続きが気になってる人はおいでませ。 こんだけだったり(汗)それでは〜。 PS:作者心の辞世の言葉(爆)「またやっちゃたよ・・・」 投稿するだけでは何々で感想でも。ちょっとだけですけど。 変身動物ポン太さん:崩れゆく日常の中で ネット復活おめでとうございます(^^)しかもメアドまで公開して完璧ですね(笑) さて、作品の方は・・・えっ、BADEND?(汗)どうも暗い雰囲気が漂いましたけど、消えていく浩平の苦悩でしょうか?とてもその辛さがにじんでいました。 :感想SS”色々あったけど感想も復活!!記念” 不況ですね・・・、全ては不況のせいだ(笑) から丸&からすさん:紅の羽 うーむ、あの血のついた本とオリキャラがどう係わるのか、全くもって見えず。それだけに、続きが気になります。1話、2話あわせて浩平の無意味な行動具合に笑わせてもらってます。 にしても、浩平新手のナンパみたい・・・(笑) Tromboneさん:もしも願いがかなうのならば… つらいですね(泣)やはり、茜を含めてヒロインはこうして夜を重ねたのでしょうか?切実さを感じました。 はにゃまろさん:太陽は黄金の林檎 ああっ、だまされてしまった!ずっと永遠の世界モードだと思ったのに・・・!それだけにおもしろさが最大限!うーん、前振りはかなり力が入っていただけに・・・・。 ついでに宣伝らしきものとして、これ。伝説の必殺目隠○団です(笑) http://www.i-chubu.ne.jp/~nanase/index.htm これがJKのある我がHPです。ただし・・・ばれてるだろうが、何も言わないこと(爆) http://www2.odn.ne.jp/~cap13010/