Juvenile K-7- 投稿者: ゾロGL91【感想メールのみ】
西の空に残ったかすかな赤。細長く伸びる雲がその残光を背に輝いている。そして、そんな夜の境目を背景にする遠い街並み。少年はそれを隔てる海の向こうからそれを眺めていた。

(もうすぐ夜が来るね)

―星が見れるよ

(でも、太陽が見えない)

―仕方ないことだよ、それが定め何だから

遠い街並みから聞こえてくる喧騒。人々のざわめき、車とバイクの排気音が波のうねりに乗って少年の耳を打つ。

(定め・・・その定めが真実なのかもしれない)

―君がそう思うならそうなんだよ

(自信がない。だから、もう少しここにいるよ)

―じゃあ、わたしもいるよ

(ありがとう)

少年は知っていた。明けない夜はなく、沈まない夕日はないことを・・・・・・。

(だから、こんなに悲しいんだ)


EPISODE7「Chase Battle」


リビングは静まり返っていた。瑞佳と住井は先ほどから何かを待っている。浩平と澪はこの重苦しい空気に押しとどまるしかなかった。
なぜに彼らが沈黙しているかというと、先ほどの電話に問題があった。電話の男が告げた内容、それは繭の身柄と代わりに澪も引き渡すというものだった。もちろん、電話越しに繭の声も確認している。男は1時間後にもう一度電話するとだけ告げた。かんがえる時間をやる、というつもりらしい。
時刻が8時を過ぎた時、待っていた電話が再び鳴り出した。寄せといた子機を素早く耳にあてる住井。深呼吸一つ、電源を押した。
「もしもし・・・」
『警察には連絡してないだろうな』
押し殺した男の声。
「ああ、もちろんだ」
まさか、犯人側も出ているのが刑事だとは予想もしていないだろう。住井は確かに連絡はしていない、と無理やり自分を正当化していた。もちろんそんな心中を犯人側が知るはずもない。
『決まったか?引き渡すか、引き渡さないかを』
繭と引き換えに澪を渡す、これが条件が条件である。そして、住井の回答は決まっていた。
「取り引きに応じよう。どうすればいい?」
『素直だな・・・まあ、いい。場所は1区と2区の境になる倉庫埠頭だ。時間はこれから1時間半後。いいか、絶対に娘を連れて一人で来るんだぞ。警察に知らせた場合は・・・』
「わかってる。絶対に約束する」
『よし・・・では、時間通りにな』
受話器の向こうで男ががちゃりと受話器を置いたのがわかる。住井も一息をつくと受話器を置いた。振返ると、瑞佳だけでなく浩平と澪もまた不安げにこちらを見ていた。
「澪ちゃんには悪いが、これから一緒に出かけなくちゃいけないんだけど・・・来てくれるかい?」
「住井君、本当に大丈夫なの?もし、命の危険があったら」
「大丈夫だって、俺これでも刑事なんだぜ?」
どんと胸を張り威厳を保つ住井。しかし、それとは裏腹に瑞佳は不安が残っていた。さすがに口に出すことはしなかったが。
それに対して、浩平は刑事という言葉を聞いて、不安も吹き飛ぶほど好奇心をかきたてられていた。
「すっげー、お兄さん刑事なんだぁ。じゃあ、鉄砲とか手錠持ってるの?」
「ふふん、当たり前だろ。ほれ、これが証拠だ。さすがに銃を出すわけにはいかないからな」
「おぉーっ」
住井が懐からよれよれの警察手帳を取り出し見せびらかす。浩平だけでなく、取り引きの張本人たる澪までもが嬉々としてそれを見上げていた。
(はぁ・・・すっごく不安)
日常をかけ離れた事態のはずなのに、それの麻痺した光景を見せられ、瑞佳は頭の痛くなる思いがしていた。


「よーし、準備はOKだ。さ、澪ちゃん乗って」
浩平の家の前で、住井が乗ってきた車の助手席を開けて澪を促した。こくりと肯くと、澪は迷う素振りもなく車内に乗り込んだ。
「本当に大丈夫?」
瑞佳が何度目かに渡り住井に問う。
「なるべく手早に済ませてくるよ。澪ちゃんも繭ちゃんも連れて帰ってくる。そしたらパーティの続きをしようよ」
「うん、そうだね」
「僕も連れてってよ!」
瑞佳の脇をすり抜け、浩平が叫んだ。
「だめだ。お前はここにいろ」
簡潔にきっぱりと住井は拒否した。しかし、浩平は簡単には引き下がらない。
「全部がわかったわけじゃないけど、つまりは澪を狙う悪い人達がいるわけでしょ?」
「まあ、そうだな」
「そんな奴等は僕が倒してやるんだっ!だから・・・!」
「折原」
厳しい視線が浩平を見据える。思わず浩平はびくりとして言葉を止めた。
「じゃ、長森さん後はよろしく」
ひらひらと手の平をなびかせて住井は車に乗り込んだ。シートベルトをしめ、キーを回す。エンジンに灯が入り黒煙を吐き出しながら車は動き出した。
「待ってよっ!」
走り去る車を、家の前に飛び出して見送る浩平。もちろん車に人間の足が追いつくはずがない。それでも浩平はあきらめていなかった。
「ほら、浩平中で待ってよ?」
「待つ?それじゃあ、だめなんだ。待ってるだけじゃ何も変わりはしない。そうだ、僕はそれを知ってるじゃないか・・・・知りすぎるぐらいに」
「浩平?」
何かを聞き取れないほどの声で呟く浩平に、瑞佳がわけのわからないという表情を浮かべた。そんな瑞佳が目に入らないのか、浩平は決意に秘めた表情で辺りを見回す。そして、求めるものはすぐに見つかった。玄関脇に置かれた家庭用自転車。
「これだっ!」
「何が?」
瑞佳の横を走り抜けると浩平は自転車を引っ張り出し、慌てるようにサドルにまたがった。
「行くぞっ!」
「どこに?」
「澪を助けるんだっ!」
ペダルを力一杯に踏み込み、瑞佳が止める間もなく浩平は浩平の乗った自転車は矢のように進みだした。呆然とそれを見送るしかなかった瑞佳だが、50mほど離れた所でブレーキ音が鳴り響いた。そして、切り替えした自転車がこちらに向かって突っ込んでくる。
「地図っ!!」
「え?あ、ちょっと待っててっ!」
すでに額に汗の浮かべた浩平の叫びに、その意図が掴めないまま瑞佳は家の中へと走った。数分後、その長い付き合いと、寝起きの悪い浩平を起こしていたおかげか、一冊の地図をもって瑞佳が戻ってきた。その地図はネオ中崎のタウン情報誌。
「ありがとう」
「わっ、行ったらだめだよ浩平!」
「もう遅いーっ!」
地図をカゴの中に突っ込み、再び浩平は走り出した。瑞佳の声も今の彼には届いていなかった。


1区にある倉庫埠頭。海に面した埋め立て地、海に半ば沈んだテトラポッド達が藻や油膜をべったりと張り付かせている。海の向こうには灯もなく、漆黒の波間が大理石のように広がっていた。
「早すぎたな」
無数の倉庫が立ち並ぶ海沿いの埠頭に、住井の車がゆっくりとしたスピードでやってきた。そして、指定されたナンバーが白いペンキで書かれた倉庫の前に止まる。
腕時計を見るとまだ30分ほど時間があった。意気込みすぎたらしい。
住井はダッシュボードの上に置かれた缶コーヒーを掴んだ。後ろの座席では澪が黙って缶ジュースを傾けていた。それをバックミラーで確認し、住井も缶コーヒーに口をつける。
(一体何があるんだ、こいつに?)
出会った時の疑問は膨れ上がり、今やそれは住井の好奇心をかきたてるものになっていた。


「はぁ、ひぃ、へぇ・・・!」
ハイウェイを異様なものが走っていた。そこには不似合いすぎる自転車の疾走。車が排気音を撒き散らせながら飛ばす脇を、浩平は汗だくになって走っていた。
「よーし、あそこだぁぁぁーーーっ!!!」
”倉庫埠頭”の標識を見て、浩平はさらにペダルをこぐ力を込めた。高い塀のガードレールに塞がれて見えないが、この向こうには静けさを保つ海原が広がっているはずだ。
時折非難のクラクションを浴びながらも、浩平は自転車と共に白い弾丸と化しハイウェイを駆け抜いた。


午後9時10分。約束の時間がやってきた。
住井は澪を車内に残したまま、外へと出る。倉庫の方を見ても人がいる気配がない。その住井の背後で遠くからモーター音と波をかき分ける音が響いた。
目を転じると、暗い海面に白波を立てて一台のモーターボートがこちらに向かってきていた。住井は緊張に体を強ばらせつつも、それを抑えようと胸ポケットへと手を忍ばせた。胸ポケットの中でその牙を潜ませる冷たいグリップ。これが住井の最大の味方である。
「来たな」
運転席に乗っている人物の顔は暗くてよく見えない。しかし、後部には薄茶色のホロがかかっている。ほどなくしてボートは防波堤に接岸した。
無言で運転席の男が上陸する。助手席へと手を伸ばしそこに乗っていた小柄な人影を陸に引き上げた。それから連れ立って、車の前にいる住井の元に近づいてきた。
「例の女の子はいるか?」
「もちろんだ」
街灯も何もないせいで、数メートル先の距離でも顔がわからない。住井からは確認できないが、男は南である。しかし、彼が手を引いている少女の姿には見覚えがあった。はじめて出会った時と同じ格好のフードつきのコート、椎名繭に違いない。
「繭ちゃんを渡してもらう。それが条件だろ?」
「いいだろう。サツの姿もないようだしな」
(目の前にいるんだけどな)
表情を変えずに住井が心中で口を歪めた。それから後部座席へと回り、澪を中から連れ出した。
澪は全てを理解していないが、どこか危険なものを感じているのか顔色が悪い。それをなだめつつも南の前へと引き合わせる。
「よし、ゆっくりとこちらに歩かせるんだ。こっちもそちらに歩かせる」
南の提案にうなずき、澪を押し出してやる。向こうも繭を歩かせていた。だんだんと短くなっていく二人の少女の距離。夜の闇には足音だけが吸収されている。
住井は緊張に喉をかわかしつつも、それをじっと見守っていた。動く機をうかがいながら。そして、澪と繭が交錯した時、ついに住井は走り出した。
「ぬっ!?貴様っ!」
異変に気づき腰に差していた拳銃を取り出す南。しかし、ちょうど澪と繭が障害となり照準を合わすことが出来ない。その間に住井は二人の体を腕の中に引き込むと、懐から自らの拳銃を引き抜いた。オートマチックの黒光りする銃口が南へと向けられる。
「動くな!」
「くっ・・・!何者だ貴様!?」
「中央中崎署刑事科、住井護と言えばわかるかな?」
「わからん」
「ぐあ・・・と、とにかく少女誘拐、脅迫、銃刀法違反で現行犯逮捕する!」
住井が銃を持った右腕をかかげたまま、南の方に近寄ろうとしたその時、闇を引き裂いて銃声音と黄色い火花が散った。
「うあっ!?」
「箕浦!」
住井の手にあった拳銃は突如、横合いから放たれた銃弾に弾き飛ばされていた。窮地を逃れた南が目をやると、ボートのホロを脱ぎ去り、南の仲間、箕浦が拳銃を構えて立っていた。柴崎の銃口から白煙が立ち上っている。
「まさか電話の相手は刑事だったとはな・・・偶然にしては出来すぎだぜ」
今度は南が銃を向ける番だった。立場が逆転し唇をかみ締める住井に南は近づく。そして、澪の手を掴んでこちらに引き寄せた。
「ま、どちらにしても取り引きは終了だ。そいつは連れて帰りな。これで・・・・任務終了だ!」
「ぐっ!」
不敵に笑った南の銃の持ってない左腕を右肩の方に回すと、唸りを上げて肘鉄を住井の頬を打った。たまらず吹き飛んだ住井はアスファルトの湿った地面へと倒れこんだ。
南はその隙をついて澪を連れてボートへと走り出す。痛む頬を押して立ち上がろうとする住井は、視線を離れた所にある銃へと向けた。しかし、それを取りに行く間に逃げられるだろう。
「あんの野郎っ!」
それでも住井は走った。口の中が切れ、鉄の味のする血で一杯になっても。住井が銃を拾い上げ、照準を定めようとしていた頃には、南は防波堤の縁を目前にしていた。
だがその時、突然闇を照らしあげる強烈な白い閃光が降り注いだ。何事かと振り向く南だが、逆光の残光で光の正体を確かめることができない。しかし、この光は住井の後方、倉庫の方から向けられたものなのがわかる。
「なっ、何だ!?」
光源の正体は住井にも分からなかった。両者が注目する中で、軋んだ音を立てて倉庫のシャッターが開き始める。白光の中に無数の黒い影が浮かび上がったかと思うと、駆け足と共に無数の影が躍り出てきた。
「南っ!早くしろ!」
箕浦がうながし、南がボートの方へと動き出した。しかし、その足元を一条の火線が襲った。南は咄嗟に澪をかばい動きを止める。
「武器を捨てて両手を上げろっ!」
倉庫から飛び出して来たのは、濃紺色の袖にオレンジの胴部分が鮮やかなブルゾンに身を包んだ兵隊達だった。腕にはアーミーの階級が光っている。アーミー達は住井を取り囲み、南に向けてその手にあるライフルを構えた。
「鼠と侮っていたのが失敗だったな」
こつこつと靴音を立てて、一人のガタイのいい男がこちらに向かって歩いてきた。他の兵隊とは違うライトブルーの司令官服、胸には大佐の階級。
「その娘を返してもらおう。それとも我々と一戦交える気か?」
司令官らしき男は口元の髭をもごもごさせて口を開いた。
「くそ・・・アーミーが動いていたなんてっ」
周りを取り囲む制服達を睨み付けながら南はうめいた。兵隊の数は数十人。抜けきれる数ではない。
住井は状況がわからずに戸惑っていた。ただ、反抗する気のない意志を見せるため両手をあげている。このアーミー達を呼んだのは決して住井ではない。
「お前達が手の出せる代物ではないのだ、その娘は。さあ、早く離れるんだ。逆らえば命はないぞ」
兵隊達が銃口を定めながらじりじりと歩み寄る。南が焦りの汗を額に浮かべた時、ボートの方からシュポッ!と花火のような音が発せられた。
皆の視線が音の方向に寄せられた。夜の濃い闇に一つの白煙が弧を描きながら宙を舞っている。その白煙を吐き出す円筒形の金属が地に落ちた時、爆発するかのように白煙が吹き出した。煙幕弾である。
「早くこっちに来いーっ!」
白煙が辺りを覆い隠す中、船上では大砲を構えた箕浦が南に叫んだ。それに弾かれたようにして、南は走り出そうとした。
「動くなと言ったろっ!」
「止めろ撃ってはいかん!」
髭の制止を聞かずに、一人の兵がライフルの引き金を引いた。唸りを上げて銃声が吠える。
「うわっ!」
飛び出した把の銃弾が南の左肩を撃ち抜き、南はふらりとよろめいた。その際に澪の体がその手から離れる。
「何やってるんだぁ!」
箕浦の声が響いたかと思うと、南のすぐ横を白煙を切り裂いて弾丸が駆け抜けた。箕浦の小銃から放たれた数発の弾丸は南を取り囲んでいた兵隊のうち、3人の男の腹や腕に命中し彼らの体を弾かせた。
だが、その報復ばかりにと銃撃の嵐がボートを襲った。外れた弾が海面に壮大な水柱を立たせる。そして、船上の箕浦は全身に銃撃を受け、奇妙に体をひしゃげさせながら崩れ落ちた。
「止めろ!撃つではないっ!」
白煙が視界を防ぎ、澪に弾が当たることを恐れた髭の制止にやっと銃声音が鳴り止んだ。
(箕浦・・・!俺のためにどうしてお前がっ)
白煙のおかげで南の体はもはや完全に隠れていた。しかし、澪の姿もまた見つけることができない。任務に失敗し、仲間を死なせたことに苦しい重荷を感じながらも、南は撃たれた肩を抑えつつ海のへと飛び込んだ。
「しまった!」
水飛沫の音を聞いて兵隊達が慌てて白煙をかき分け防波堤の際にまでやって来る。しかし、真っ黒な海面は波のざわめきを湛えるだけで、獲物の姿を隠していた。
「ライトだ!ライトォーーーっ!」
隊員達が逃亡者の捜索に乗り出す中、髭は咳き込みながら白煙から身を現した澪を発見し、その小さな体の元に歩み寄っていた。彼は南を逃がしたことを全く気に留めていない。全ては澪が自分の元に戻れば良かったのだ。
「帰るぞ」
髭の冷たい調子にびくりとして澪は目線を上げた。自分に影を落とすその存在に抗するには、その小さい体はあまりにも無力だった。無表情に視線を反らすことのない髭に、澪はうつむいて従うしかなかった。
「大佐!あの者達はいかがいたしましょう?」
「んあ・・・抵抗するとは思えないが、一応取り調べをしておけ。折原との繋がりも気になるしな」
「了解しました!」
びしっ、と敬礼を返す隊員の脇を通り抜け、髭はいつの間にか接舷していた白塗りのトラックへと歩いていく。その後ろを澪は黙ってついていった。
「ちくしょーっ、何だってんだよ、一体!?」
「・・・・ふえ?」
住井と澪は両手を上げさせられたまま、隊員達に銃を突きつけられたままだった。髭の命令が下ると、髭の乗り込もうとしているトラックとは別のトラックに連行されようとしていた。
(おいおい、このまま牢屋入りか?)
重たくのしかかる想像に住井が顔を青ざめた時、騒ぎに駆けつけ遅れたようなタイミングで聞き覚えのある声が遠く聞こえてきた。
「この声は・・・?」
だんだんと近づいて来る叫ぶような声に、住井は倉庫埠頭の入り口の方を見た。立ち並ぶ倉庫が陰になっているが、一筋の小さな光点が地面を照らした。
「澪ぉぉぉーーーっ!!」
腹の底から振り絞るような絶叫と共に、浩平の乗った自転車が凄まじいドリフトを見せながら躍り出てきた。住井も繭も、アーミーの隊員達、髭、そして澪が浩平に注目した。
「でやあぁぁぁーーーっ!」
皆がその場違いな登場に呆気に取られる中、浩平は猛スピードで住井のいる方へと突っ込んで来る。
「わっ!来るんじゃねえっ!」
「伏せてーーーっ!」
絶叫の次には、浩平はハンドルを握る手に力を込め、一気に前輪を持ち上げた。勢いがついていたために、自転車は見事なまでに宙に浮き上がった。隊員達は不意を突かれ、回避に移ることができなかった。
「ぎゃっ!」
「ぐわっ!」
住井を囲んでいた隊員の内、ある者は前輪に顔面と押しつぶされ、ある者は着地した自転車に踏み潰された。住井と繭はいち早くしゃがんでいたために巻き添えを食うことを逃れていた。
「何々だこいつ!」
突如、現れた浩平が武器も何も持ってないのを知り、周りにいた兵隊達は一斉に銃口を向けた。しかし、髭は浩平の姿を見ると、凍り付いたように表情を歪めた。
「やめい!奴を撃ってはいかん!」
はっ、として我に返ると自らが身を駆け出してまで髭は部下達を止めた。戸惑う隊員達の隙をうかがい浩平は倒れた自転車を持ち上げた。
「今のうちに逃げて!」
「お、おい・・・!遊びじゃないんだぞ!」
「いいから早く!」
浩平に近づこうとした住井だったが、隊員達のライフルを見た時に足を止めてしまった。
急かす浩平に住井の頭脳は超高速でこれからの行動を案じる。友情のために浩平を助けるか、友情を快く受け取りこのまま逃げ出すか。ちなみに相手は十数人の兵隊達。
「次に会ったらビールおごってやるぜ!」
自転車を前方にいた隊員の一人に投げつけると、浩平は雄たけびを上げながら突撃した。その間に住井は繭を連れて車の方へと走る。
身をていして囮になる浩平に感謝をしつつ、鮮やかな手際で住井は車に乗り込んだ。彼の心中ではさすがは親友、と勝手な方程式が成り立ち、友情を受け取ることに決定していた。
(でも・・・俺だって友達を見捨てるわけじゃないぜ)
住井がエンジンを始動させる頃には、浩平は隊員達に羽交い締めにされ自由を失っていた。それをウィンドウで視界に入れつつ、車を発車させる。しかし、住井には浩平を救う算段を秘めていた。
「まさかこんな形で手に入れることができたとはな」
髭が羽交い締めにあいながらもばたつく浩平の前に立った。その威圧的な視線を跳ね除けようと浩平はきっ、と睨み返す。
「大佐、あの車は追いますか?」
「放っておけ。それよりも早くこいつを運び込め。娘とは一緒にするなよ」
「くそーっ!僕や澪をどうするつもりだ!?」
「どうもしない。ただ、戻るべき処に戻すだけだ」
それから髭はたっぷりと間を置いて口を開いた。
「さあ、来るんだ。サードイレイザー」





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J・Kの間
御久々(?)になる7回目の投稿の、今日はろくろ首もびっくりの琵琶湖のほとりで後記をするゾロGL91です。
覆面の幼子「・・・で、なにのいみがあるの?」
いや・・・まあ、色々と(汗)さて、今回はジタバタしてみました(笑)かなり”AK〇RA”を踏襲してしまいまったわけで(汗汗)本当はもっとオリジナルな雰囲気を出したかったのですが・・・やっぱ、影響されてます。以上、後記終了(笑)
覆面の幼子「おい」
・・・次回もアクションかと(汗)ではでは。
覆面の幼子「えいえんはあるよ♪」

懺悔:・・・感想かけませんでした(泣)

新たな懺悔:実は銃とか全然わかりません(汗)

J・K保管庫について:新たに舞台・人物設定、用語集を置いてみることにしました。

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/9561/