Juvenile K 投稿者: ゾロGL91【感想メールのみ】
「澪ちゃん、靴下とって」
『はい、なの』
「ありがとう」
浩平が消えてから4日目、そして瑞佳と澪が一緒に暮らしはじめてから4日が経った。親と同居している瑞佳だったが、瑞佳の両親も大したもので何の反論もない。このままだと養子にまでしそうな勢いすらある。
言葉を話せず、スケッチブックをかいしてやりとりをする二人だったが、まるで本当の姉妹のように仲良くやっていた。ただ、時折瑞佳の表情には憂いが帯びる時がある。
(浩平・・・、今どこにいるの?)
しわを伸ばすための家庭用のプレス機(外に干すと、酸性雨にやらてしまう)から出した洗濯物をたたんでいる時、ベランダへと通じる窓ガラス際にいたため、瑞佳の視界に厚い黒雲が映った。
ふと、突然消えた幼なじみのことを思う瑞佳は、惚けたように雲の向こうを見つめていた。
『どうしたの?』
真新しいスケッチブックに、澪のマジックが走る。澪が持っていたスケッチブックは、すでに残りが少なかったので瑞佳が買い与えてやったのだ。それでも、ぼろぼろのスケッチブックは片時も話すことはない。
「ううん、何でもないよ」
心配をかけまいと笑顔を見せ、瑞佳は作業に戻った。
(会いたいよ、浩平・・・・・)


EPISODE4「Always Everyday」


突如、鳴り響く電子音が無情に眠りを打ち破る。七瀬は気怠い頭を起こして、右手を枕元に伸ばした。手探りで目覚まし時計を探り当てると、そのスイッチを押し込む。
「ふぁーあ・・・」
 どちらかと言えば朝に弱い七瀬は、欠伸を一つまだ眠気の残る体を振り起こしてベッドから体を降ろした。
 寝室を出ると、リビングでは目覚ましすらかなわない鼾が支配していた。カーペットの上に敷かれた布団で寝そべる浩平が、毛布から手足を覗かせている。七瀬はそれを見ているうちに、だんだんと腹が立ってきた。
(わたしはこれからバイトに行かなきゃいけないのに・・・!この男はぁーっ!)
「お・き・ろーっ!」
 叫ぶ間もなく、右肘を掲げた七瀬が浩平の鳩尾めがけて落下する。
「ぐあっ!・・・・げほっ!ごほっ、ごほっ!」
 腹を押さえて飛び上がる浩平。その目には涙が浮いている。
「おはよう、さわやかな朝の目覚めね」
「げふげふ・・・何か重たいものがお腹に・・・・・」
「ほら、早く起きて顔洗いなさい、朝食にするわよ」
「う、うん・・・・」
 自分の身に何が起きたのかわからずに、まだ寝ぼけ眼の浩平は毛布から体をずらした。背を向けた七瀬が笑いを堪えていたのを知るよしもない。
「カーテン開けて」
「うーん」
 キッチンに消えた七瀬の指示通り浩平はカーテンの前に立った。カシャアと小気味よい音を立てて、勢いよくカーテンを開け開いた。しかし、浩平の期待していた日差しの洗礼はなく、窓の向こうは永劫とも思われる黒雲の空しかない。
(夜・・・、まるで明けることのない夜)
 今見ている空に違和感を覚えつつも、しばらく浩平はその空を眺めていた。
「できたわよー」
「あ、うん・・・」
 そこに2枚の皿を乗せた七瀬がやってきて、浩平は窓から離れた。
「ねえ、TVは?」
 トーストと目玉焼き、コーヒーと朝食らしいメニューが並ぶテーブル。パンの匂いとちょっと焦げた匂いが混ざり合い、香ばしい匂いがテーブルの上を漂っている。
 席についた浩平が室内をきょろきょろと見渡してそう言った。浩平の探し求める正方形の箱はどこにもない。代わりに浩平の背後に映画とは規模が違うが、スクリーンがあった。
 七瀬は無言でテーブルの上にあったリモコンを取った。そして、スクリーンに向けて電源のボタンを押した。
「おおっ!?」
 すると、浩平の背後で大音量と共に鮮明な映像が流れ出す。
「驚くほど珍しい?」
「お姉さん、実はお金持ちだったんだねー」
「?」
 旧世紀のTVとは違い、この時代はスクリーン型が一般的であった。一部のレトロマニアぐらいが箱型と向かい合っているようなものである。浩平がありふれたスクリーンに顔を輝かせる方が珍しかった。
「ねえ、ポンキュッキュやってないの」
「ポンキュッキュ?ポンキュッキューズならあるわよ」
 子供の心を持つ浩平のためにチャンネルを変えてやる。すると、画面には緑色の不可思議な着ぐるみと、毛むじゃらのこれまた形容しがたい着ぐるみが映し出された。
「わーい、ガチョピンとモックだー!」
 浩平が歓声を上げる横で七瀬は懐かしい気分になった。小学生くらいまでは見ていた覚えがある。そして、この二体の着ぐるみは当時と変わることがなく画面上を動き回っていた。
 ちなみにこの子供向け番組は、旧世紀より100年以上に渡って続いている超長寿番組の筆頭である。
「うおーっ、すげーっ!ガチョピンが宇宙に出てるーっ!」
(・・・着ぐるみ用の宇宙服なんてあるのかしら?)
 宇宙遊泳をする謎の緑色の着ぐるみに、興奮気味の浩平の横で、七瀬はチャレンジャーな着ぐるみに疑問をぶつけていた。
 朝食も取り終え、慌ただしく出勤の準備が整えられる。それほど広くない部屋を走り回る七瀬を、ぼーっと浩平は眺めていた。
「いい?わたしが帰ってくるまで、絶対外に出たらだめよ?」
「あ、うん。わかった」
 玄関で急ぎ靴を履く七瀬の言葉にうなずく。年頃の娘の部屋に、男が同居する。不本意なことにしろ、世間に知られれば何を言われるかわかったものではない。それを懸念して七瀬は釘を差したのだ。
「それじゃ、行って来まーすっ!」
「いってらっしゃーいっ」
 浩平に見送られ、七瀬は扉の向こうへと飛び出していった。どうやら今日も時間はぎりぎりらしい。
 一人残された浩平は何もすることがなく、スクリーンの映像ろ向かい合ったりもするが、ワイドショーばかりで心を惹かれるものはなかった。そして、やはりどこか自分のいる世界に違和感を感じてしまうのだ。
「そういえば今日は何日なんだろう?」
 カレンダーを探して浩平はきょろきょろと見回し始めた。探すものはすぐに見つかった。電話とシルバーのイルカのオブジェが飾るボードに置かれた卓上デジタルカレンダー。浩平はそれを手に取り数字を見た。
「そ、そんな・・・こんなことって・・・・!」
 ”2099:7/8:AM8:20”この数字を見た時、浩平を驚きが支配し、思考は混乱した。そして、今まであった違和感の正体にも気づいた。
「僕は・・・どうして・・?」
 誰に聞くでもなく浩平はそう呟くことしかできなかった。


「ねえ、七瀬」
「うん?」
 バイト先の更衣室で、七瀬は同じバイト仲間の広瀬真希に話しかけられた。
「今日、そっちに行ってもいいかな?久しぶりに飲まない?」
 仰ぐ手振りで笑いかける広瀬だったが、七瀬の表情は凍り付いた。そして、大げさなまでにまくし立てる。
「きょ、今日はだめなの!悪いけど、今度!ね?」
「ふーん、何かあるみたいだけどまあいいわ。じゃ、また今度」
「そうしてくれるとうれしいわ。それじゃ、わたし急ぐから・・・!」
 着替え終わった七瀬は慌てたようにハンドバッグを掴んで、更衣室を飛び出した。
「・・・何かあるわね」
 七瀬の勢いに呆然としながらも、広瀬はにやりとしてそれを見送っていた。
「わっ、雨だ」
 帰宅する途中の商店街、ぽつりぽつりと空にかかる黒雲から滴が降り始めてきた。慌ててバッグに畳んであったコートを被る。フードもつけて、七瀬は急ぎ道を走り出した。
 足下を水を散らせながら七瀬は駆ける。なるべく車の通らない道を選び、浩平と出会ったあの広場も通る。
 広場は依然としてライトアップされながら水を吹き出していた。あの時は早朝のせいか誰もいなかったが、この時間は散歩中だった老人などが突然の雨に慌てたように帰宅を始めている。七瀬は横目でそれを視界に収めながら、通り過ぎていった。
 マンションへと帰宅した七瀬はほっと一息をついた。エレベーターで7階まで上がり、自分の部屋に着く。朝と変化はないようだ。浩平が何事を起こしていないことを願って、七瀬は鍵を開けて扉を開いた。
「ただいまーっ」
 浩平のスニーカーがあるのを確認して部屋の中に入るが、七瀬は違和感を覚えた。リビングは真っ暗で明かりがついていない。まだ夕方を迎えたばかりだが、太陽を遮っている雲のおかげでこの時間でも暗闇が支配しているのだ。
「いないのー?」
 声を上げつつリビングへと入り、視界がだんだんとなれてくるうちに、七瀬は部屋の隅でうずくまるようにしている浩平を発見した。
「どうしたの・・・?」
「・・・・・」
 浩平は答えない。ただ、膝を抱えておびえるように顔をうつむけている。
「ねえ、何かあったの?」
「・・・なんだ」
「え?」
「・・・僕はこの世界の人間じゃないんだ」
「何言っているの?」
 ただでさえ、素性が知れないのに、この発言はますます七瀬を混乱させた。震える浩平の声は他にも何か呟いているようだったが、ほとんど聞き取れない。
「今は何年・・・?」
 顔をうつむけているが、比較的しっかりした声が発せられた。戸惑いつつも七瀬は答える。それを聞いた時の浩平の反応はあまりにも大袈裟で、動揺を隠しきれないものだった。
「ほら、やっぱりっ・・・!」
「ねえ、何のこと言っているの?」
「僕は時間を越えてきたんだ・・・、だって、僕が生まれたのは」
 浩平が語った年代を聞いて七瀬は絶句した。100年以上も前の旧世紀に浩平は生まれたのだという。そして、今ここに存在している。
 ”タイムスリップ”という単語が七瀬の脳裏を支配するが、にわかに信じられるはずがない。しかし、納得できる部分もあった。浩平のあまりにも世間知らずな行動、突然空中に現れた存在。どこをとっても普通じゃないだけに、逆にうなずけるものがある。
「・・・ねえ、僕どうなるの?家もないし、知り合いもいない。このままじゃ僕は・・・・・・」
 今、七瀬の目の前にいるのは自分と同い年の青年ではなかった。突然、自分の知らない世界に放り出された哀れな子供、七瀬には確かにそう見えた。
「大丈夫」
「あ・・・・・」
 七瀬は差し出した手で優しく浩平の頭を撫でてやった。一瞬びくりとした浩平だが、気持ちいいのか表情を和らげその行為に甘んじる。
「誰もあなたを置き去りになんかしない。だから、落ち着いて。ね?」
「うん・・・」
 ゆっくりとだがしっかりとうなずく。
「ほら、ご飯にするわよ」
「うん!」
 七瀬が右手を差し出し、浩平もそれを掴んで立ち上がった。だが、それと同時にスイッチを押す音と共に室内の明かりがついた。二人は驚いてドアの方を向く。
「何か怪しいと思ったら、こういうことだったの・・・」
「ひ、広瀬・・・!」
「誰?あのお姉さん?」
 リビングの入り口にはビニール袋を下げた広瀬が立っていた。七瀬の行動を怪しんで、つけてきたらしい。最も見られたくない人物に見られ、七瀬は固まっていた。


「突然現れて、突然大人になってて、突然タイムスリップ?あんたねー、もう少しましな言い訳つけないの?」
「だから、こいつがそう言ってるんだって」
 テーブルの上をビール缶が占領する中、七瀬と広瀬は言い合っていた。浩平がここにいることについて、説明をするも信じてくれるはずがない。
「大体、勝手に人の部屋に入るなんて不法侵入よっ」
「ちゃんと玄関先で言ったわよ。・・・小声で」
「意味ないわっ!」
 向かい合う二人を挟むように、浩平はテーブルの隅で椅子に座っていた。盛り上がる女二人に困惑気味でいる。そんな浩平に構うことなく二人の缶を開けた数は増えるばかり。
「どうせなら一緒に住んじゃいなさいよ」
「嫌よ」
「行き場のない哀れな子羊を助けることもできないの?冷たいわねー」
「なら、あんたが預かりなさいよ」
「嫌よ」
 二人の酔いはますます深くなり、不意のその矛先は呆然としていた浩平に向けられた。
「大体あんたが現れたのが悪いのよっ!タイムスリップだか何だか知らないけど人様に迷惑をかけるなんて、もってのほかっ!」
「ええっ!?」
「でも、物語みたいでちょっとかっこいいじゃない。時間を越えて、出会った二人・・・、ああ、憧れるわ」
 鬱憤を晴らし始めた七瀬に、どこか遠い目を始めた広瀬。酔っぱらい二人にとって浩平は哀れな子鹿にしか過ぎなかった。
「よく見たら、かわいい顔してるじゃない。ふふ、お姉さんがかわいがってあ・げ・る・・・」
「け、けっこうですっ!」
 妖しい目つきの広瀬。身を乗り出して伸ばしてくるその手を、浩平は必死にかわそうとする。
「ほら、ほらあんたも飲みなさいよーっ!」
広瀬の猛襲を必死にかいくぐる浩平だが、今度は横合いから七瀬の攻撃に見回れる。
「ぼ、僕は未成年だよっ」
「わたしの酒が飲めないって言うのっ!?大体、体は大人でしょ」
(た、助けて・・・・・・)
 浩平はここに来てしまったことを心から呪っていた。






==================================
J・Kの部屋
どうも、4回目の投稿になりますゾロGL91です。今日はカウボーイな帽子で決めてみました(笑)そして、アシスタントの覆面の幼子です(爆)
覆面の幼子「おはようございます、こんにちわ、こんばんわー」
えー、また後記することありません(汗)中途半端に切ってしまったもんですから(汗汗)そういえばこのコーナーって、何KまでならOKなんだろう?さすがに50とかはまずいか(笑)それじゃ、そろそろ・・・
覆面の幼子「えっ!?でばんこれだけ!?」
そういうこと(笑)ではでは
覆面の幼子「えいえんはあるよ♪」

HN横の暴言について:感想を書く辛さを知ったもんですから、感想書いて頂くのがあまりにも申し訳なくて(汗)我が作品が”つまらん”、”どうでもいい”、”SFは苦手”な人はたくさんいるでしょうから(汗汗汗)
”感想不要”にしても無理してくださるお優しい方々がいらっしゃるでしょうので、このような形をとりました。
まあ、感想をくれるのはよほど、奇特な方でしょうから、感想ゼロでも作者は気にしない・・・かな?(笑)
そんなわけで、どんどん読み飛ばしてもOKなので、感想を書いてる偉い方々は”JK”を無視しちゃってください。それでは。

メールについて:本人の諸事情により、レスは”特定の条件”を満たさないとレスはできません(爆)

いや、めっちゃきついっす(汗)なわけで抜けまくってるの感想です。でも、一つだけでやんの(笑)

WTTSさん:蘇れ! リレーSS「第15話」
懐かしいものですね(笑)そういえば澪は一体どこにいったんでしょう?ボイスチェンジに狂う二人も(笑)
・・・・・うーん、自分は余裕ないんで遠慮しときます(汗)