Juvenile K -3- 投稿者: ゾロGL91
オレンジ色が目に染みるほど広がり、鮮やかに空を染め上げている。少年は澄んだ瞳でその光景を見つめていた。

(ゆうやけ、夕焼けだ)

―うん、夕焼けだよ

少年の隣に立つ少女。いつか見た黄色いリボンが優しい風になびく。

(涙が込み上げそうになる夕焼け、ぽっかりと心が空きそうだ)

―それはきみの心を表してるからだよ

斜陽を浴び、二人の頬は真っ赤に照っていた。少年は心に思うことだけを呟き、少女もまた心に思うことだけ呟く。

(悲しみに押しつぶされ、僕はここにいる。でも・・・・・)

―でも?

(僕はここにいるべきじゃない気がする・・・・・)

―なら確かめようよ。記憶に還って、その純粋な瞳で真実を見るんだよ

(真実・・・、そうだ、僕は真実を見るんだ)

少年がゆっくりとまぶたを閉じる。そして、次に開いた時には・・・・・。


EPISODE3「Childlike Boy」


「やっばー、このままじゃ遅刻しちゃう!」
七瀬留美は広場の階段を慌てふためき駆け下りていた。バイトがあるというのに、完全に寝坊をしてしまったのだ。そのため、何とか間に合おうとショートカットに使っているこの広場を抜けようとしている。
くぼちを利用してコンクリートの階段を囲むように敷き詰め、中心には噴水が水滴を散らせている。周囲から照らすライトが太陽が見えなくとも、虹を幻想的に発生させていた。
「よーし、これなら間に合いそう・・・」
階段を数段飛び降りようとした時、信じられないことが起こった。
(ん・・・?)
 突然視界に影が入る。丁度、真上に気配を感じ七瀬は首を上げてみた。何とそこには一人の人間の背中が落下してきていた。
「ええっ!?」
すでに地を蹴り、足の離れていた七瀬に回避できるはずもない。思いも寄らない事態に驚愕したまま、七瀬はその人物に押しつぶされた。
「きゃっ!」
衝突する二人。空中で組み合った二人はそのままもつれるように地面に落ちた。同時に鈍い音が響く。
「いったぁーい。ぐすん・・・、一体何なのよぉっ!」
ぶつけたおでこを抑えて七瀬は体を起こした。階段を転げ落ちた二人は七瀬が上になる形で倒れ込んでいる。見下ろすと、そこには自分と年差のない男が意識を失っていた。
「・・・あのー、生きてますかー?」
返事がない。
「・・・まじ?」
七瀬に破滅を知らせる重たい衝撃が走った。

 
(痛い・・・、ものすごく頭が痛い。強烈すぎるぐらい痛い。きっと、これはあいつの策略に違いない。金槌か何かで殴ったのか・・・・・・?)
 微睡みは心地よいもののはずなのに、今は苦痛に近いものがあった。その原因である後頭部に響く痛みのおかげで、眠りは覚醒に向かっている。
(全く・・・俺を起こすためにここまでするなんて・・・・って、あれ?あいつ、って誰?それに僕は・・・・・)
 痛みが次第にはっきりしていくにつれて、記憶がぼんやりしていく。必死に記憶の紐を解きほどこうとすると、逆に混乱していった。そのことに焦っていると何かが顔をくすぐってきた。
(何か顔がくすぐったいぞ・・・・・)
 それを確認しようと、右手を伸ばしてみる。すると、ふにゅっ、と弾力をともなった手ごたえが返ってきた。同時に響き渡る悲鳴。
「きゃぁぁぁーーーっ!!!何すんのよっ!」
「ぐあっ!」
 悲鳴が耳を打った次には、浩平の顔面を固いものが捉えた。おかげで眠気は一気に覚める。
「い、痛い・・・」
「何が、痛い、よ!この痴漢っ」
「ひどいよー、そんなつもりじゃなかったのにぃ」
「次、やったら命はないわよ!」
(こ、怖い人だな・・・・・)
 意識を取り戻した浩平の目の前には、広場で衝突した相手、七瀬留美がいた。二つに分けたおさげ髪が心なしか震えているような気がする。
 七瀬の剣幕に掛け布団を目の辺りまで持ってきておびえる浩平。七瀬は手に持っていた濡れタオルを握りしめ、まだ怒りに震えている。どうやら浩平の腫れた額にタオルを乗せようとしていたらしい。その際に二つに分けたおさげが浩平の顔に触れたのだ。
「・・・・・・」
「どうしたの?」
 周りをきょろきょろと見回し始めた浩平に、まだ憮然としたままの七瀬が聞いた。
「ここ、どこ?」
「わたしの部屋。感謝しなさいよ、介抱してあげたんだから。突然、あんたが空から降ってきて・・・、自殺でもする気だったの?それともスカイダイビングのパラシュート忘れた?あんた一体何者なの?」
「何者って・・・?僕は普通だよ」
「普通じゃないわよ!何もない所に、いきなり人が降ってくるのよ!」
先ほど広場で起こった出来事が、信じられないのか七瀬は興奮ぎみにまくしたてる。それに対して浩平は実に冷静というか、状況を理解していないように平然としている。
「ところで、お姉さん誰?」
「わたしは七瀬留美、あんたとぶつかったせいでバイトが遅刻になった哀れな女の子よ。ふぅ、まあいいわ。何にせよ、前をよく見ていなかったわたしも悪いのよ。そう、きっとあれは何かの見間違いよ、うん。人が突然降ってくる
自分を言い聞かせるようにうなずく七瀬だが、思い返すたびに尋常でないことを悟り、その顔色は青くなっていく。そして、たまらずに聞いてしまった。
「・・・・・あんた、人間よね?」
「当たり前だよー」
「じゃあ、名前と住所は?持ち物は何もないみたいだけど・・・、財布すらもね」
「折原浩平、小学3年生。住所は中崎町の1−38。好きな食べ物は納豆チーズカレーで、嫌いな食べ物は納豆です!」
「ふーん、納豆が嫌いなのにカレーは大丈夫なのね・・・って、おい!」
「何?」
「何であんたが小学生なのよ!どこにこんなでっかい小学生がいるの!?」
「・・・・・?」
浩平はわけがわからないという風な顔をした。彼にしてみれば正直な自分のことを言ったつもりだったのだ。そこで自分の体を見てみた。
青のTシャツに紺のジーンズ。それを纏う自身の四肢。しかし、浩平は違和感を覚えた。自分の視界に入っている位置を考えれば、それは自分の体であることは間違いない。だが、そのサイズはあまりにも記憶とは違っていた。
「・・・・・鏡見せてくれる?」
七瀬は無言で横にあった棚から手鏡を手渡した。恐る恐る浩平は覗き込む。
「うわっ!知らない人がいる!?」
「はぁ・・・そんな芝居しなくていいから」
「何言ってるんだよ!僕が僕じゃなくなってるよ!」
「安心して、変形しても元が悪いから大丈夫よ」
「違うよ!大人になってるんだよ、僕が!」
その時、七瀬は頭痛を感じていた。何で自分はこんな男を拾ってしまったのだろう、と。だが、もう一つの可能性に気づく。
(まさか・・・わたしとぶつかったせいで、頭がいかれたの?)
例え故意じゃないにしろ、加害者であることには変わりない。何より、突然人が空中に現れた等と誰が信じるだろうか。これで事は七瀬に不利に運んでしまう。
(治療費に、慰謝料・・・そんな!せっかくバイトで貯めた貯金も吹っ飛んじゃうの!?)
突然降って沸いた不幸に七瀬は目眩を感じた。そんな七瀬に浩平は無邪気に話し掛ける。
「ねえねえ」
「何・・・?」
「お腹空いた」
よく見てみれば、浩平の瞳はまさに少年の輝きそのものだった。純粋が詰った汚れの知らない瞳、七瀬はますます浩平の子供帰りを確信した。
「はぁ・・・・」
もはや考えることもできず、七瀬はため息をつくことしかできなかった。
「あんた、よく平気でいられるわね・・・」
「え?だって、突然大人になれるなんてすごいじゃないか。それに、僕は早く大人になりたかったんだ」
「そう・・・」
 七瀬は浩平のために何かを作ろうとキッチンに向かった。


「がつがつ・・・!むしゃむしゃむしゃ!」
「はぁ・・・」
これで一体何回目になるだろうか?七瀬は浩平の旺盛な食欲に心底溜め息をついた。それほど大きくないテーブルの上は空になった皿が積み重ねられている。今のところインスタントのカレーを3杯平らげた。
「ふぃー、さすがにこれだけ食べると苦しいな」
「あんたねぇ、ちょっとは遠慮しなさいよ」
「僕育ち盛りだから」
「記憶だけはね・・・」
七瀬はこれからすべきことを何度も反芻していた。まずは身元をはっきりさせ、家族でも知人にひきとってもらわねばならない。記憶に関しては病院にでも行くしかないだろう。七瀬はこれが芝居であることを心から願った。
「わたしとぶつかる前のことは覚えてる?」
「もぐもぐ・・・、うーん・・・そういえば僕はどこにいたんだろう?起きたらここにいて、その前は・・・あれ?あれれ?」
 混濁する記憶に浩平は頭を抱える。
「どこか・・・とても暗い所にいたような気が・・・・・」
(どうやら記憶も飛んだようね・・・・・)
 記憶喪失、この単語を思い浮かべた時、七瀬の気分はますます重くなった。
「ほら、食べたんなら早く行くわよ」
「どこに?」
「あんたの家。住所はわかるんでしょ?」
「うん。でも、まだ食べたばかりで・・・って、うわ!」
「つべこべ言ってないでさっさとする!」
七瀬に強引に引かれるまま、浩平は玄関まで引きずられる。見覚えがないが、自分のものだというスニーカーを履き、外へと飛び出す。七瀬の部屋はアパートの7階にあった。
人工過密もますます発展し、高層ビル並みのマンションもざらではない。
外は相変わらず暗黒のベールに包まれていた。決して晴れることのない黒雲。いつからだろう?人々が太陽を見なくなったのは。
「・・・・これは僕の知ってる空じゃない」
浩平は気の重くなるこの空を見て呟いた。七瀬はその呟きが聞こえなかったようだ。自分の腕時計を確認している。
「4時か・・・、いつもならバイトの真っ盛りね」
昼間浩平とぶつかり、自分の部屋に運び来んだため、七瀬はバイトを早退していた。
エレベーターを使い地上まで降りる。その間、浩平が落着かないことに気づいた。
「どうしたの?」
「え・・・、ねえ、お姉さん。ここは日本のどこなの?」
「・・・?ネオ・中崎7区9番地よ」
「ねお・・・?中崎町じゃないの?」中崎町。それは50年以上も前のこの地の呼び名。今は名前所か、町並みも全て変わってしまっている。そのことを七瀬は知っていたわけではないが、あることに気づいた。
「もう一度聞くけど、あなたの住所は?」
「中崎町1−38」
(きっと、1区のことよね・・・・・・)
通常、街は”区”によって分別されている。浩平の場合”番地”を行ったことになるのだろうが、もはやそれは存在しない。浩平が”区”と言わなかったことに七瀬はちょっと不思議に思った。
「まあ、わたしには関係ないか」
「?」
一階まで降りエレベーターが開く。出てちょっと歩いただけで車道があった。通りは自動車がスピードを出して走り回っている。七瀬は手前から向かって来るその一台に目をつけて手を上げた。それを確認したのか車は減速して、二人の目の前に止まった。
黄色い車色、いわゆるタクシーである。
「どちらまで?」
「ええと、1区の38番地」
「はいよ」
運転手が言葉を確認する間もなくタクシーは走り出した。おぼつかない不安だったが、七瀬は少年の心を持った折原浩平という存在が、自分の思っている以上に厄介な人物のような気がしてきた。
マンションや家々の並ぶ住宅街の網の目のような通りを抜け、各区を繋げる大通りへと出る。中央分離帯に植えられた茂み。行き交う車を見下ろすように立ち並ぶビルが風景となって流れていく。
 その間、浩平は目に入るもの全てに歓声を上げ、七瀬の頭を悩ませた。
そして、小一時間ほどして目的地に着いた時、七瀬は愕然とした。
「何・・・ここ?」
目の前に広がるのは油が浮いた黒い河川。1区は住宅街ではなく工場から流れ出る排水が集中する地区であった。もちろん住宅街なぞあるはずがない。
「1240円ね」
鉄パイプの町並みに呆然としていた七瀬の心情とは無関係に、運転手は代金を請求した。財布から札と数枚の貨幣を取り出し支払いを済ませる。
「で・・・?ここにあんたの家があるっていうの?」
「どこ、ここ?」
住所を指定した浩平でさえも、わけがわからないという表情を見せる。
「どこって、あんたの言った住所よ、ここは」
「そんなはずあるわけないじゃないか。大体、僕が言ったのは1−38、1区なんかじゃないよ」
「じゃあ、一体何しに来たのよ私達は!?」
七瀬をとてつもない虚脱感が襲っていた。子共帰りをしている浩平の記憶がまともであるはずがない、どこかで混濁しているのだろうと考えると、七瀬の気分はますます滅入る。どうして、こんな奴を拾ってしまったのだろう、と。
「こうなったら警察でも病院にでも連れてくわ・・・あんたをこのまま置いておくわけにも・・・・・・」
「病院・・・?」
その単語を聞いた時、ぴくりと浩平の表情が変化した。まるで何かにおびえるように後ずさりをする浩平。苛立ち始めていた七瀬は鋭い目線でそれを睨み付けた。
「力づくでも連れてってやるわ・・・!」
「わっ!病院だけは勘弁して!」
「それを聞いてますます連れてってやりたくなったわ!」
一歩下がった浩平を捕らえようと、七瀬が腕を伸ばす。しかし、さらに一歩退いてその手を躱した浩平は一目散に走り出した。土手を滑り降り、排水河川の流れる脇を走る。
「待ちなさいっ!」
「やだ!やだ!やだっ!」
「意地でも捕まえてやるわっ!」
汚れた排水をレーンに二人の追いかけっこが始まった。心は子供でもその運動能力は大人の浩平が全力で走るが、七瀬は振り切られることなく後を追いかけていた。
しばらく、悲鳴と怒声が交錯する。しかし、それも浩平の驚きの声で打ち切られた。
「わっ!行き止まり!?」
排水河川に沿って走っていた浩平だが、行く手は合流した排水に分断されていた。後ろから迫る七瀬に下がるわけにもいかず、浩平はまたたくまに袋の鼠と化す。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・覚悟しなさい!」
「うわっ!」
飛び掛かる七瀬、しかし浩平は寸前でしゃがみこんだ。空を切る七瀬の両腕、驚きに顔を硬直させたまま七瀬の体は宙を舞った。もちろんその先にあるのは、汚物の浮かぶ排水。
「きゃぁぁぁーーーっ!」
ザブーンと、豪快な音を立てて七瀬は排水へと落ちた。深さはそれほどでもないが、全身が浸かるには十分な水の量である。
「・・・・やばっ」
これから姿を現すであろう七瀬の悪鬼のごとき形相を思い浮かべ、浩平は背筋を恐怖に震わせた。


「ぐすん・・・髪べたべたぁ」
 マンションの七瀬の部屋。時刻もすでに宵を迎え、人々がその一日の忍耐を胡散させる頃、七瀬はバスルームでシャワーを浴びていた。
 排水へとダイブした後の七瀬は悲惨だった。油とヘドロに全身がまみれ、歩く度にたっぷりと汚水を吸った靴がじゅぼっ、じゅぽっと効果音を鳴らしてくれたからである。おかげでタクシーも止まってくれず、七瀬は浩平と二人自宅まで歩かされる羽目になったのだ。その間の行き交う人々の視線は言うまでもない。
(知り合いがいなかったのは幸いだけど・・・。あーっ、にしても腹立つっ!」
 七瀬を打ち付ける水流は汚れは流しても、浩平に対する怒りは流すことはないようだ。だんだんと、苛立ちは恨みとなって積もってゆく。
(ふぅ・・・それにしても、あんなに病院を怖がるなんて。何かあるのかしら・・・?)
 案外、精神病院か何かから抜け出してきた可能性もある。七瀬は上手くまとまらない考えを押さえつけ、シャワーを止めた。
 脱衣所で若々しい肌に跳ねる水滴をバスタオルで拭く。それから水分を十分に吸った長く美しい髪の水を切った。今は結んでいないストレートの髪型が、水と光に栄えよく似合っている。
 黄色のパジャマを纏いバスタオルを頭に巻き付けると、七瀬は扉を開いた。だが、そこであることの気づく。浩平の存在に。
「お姉さーん、お腹空いたーっ」
「全く・・・」
 まさに子供の言動にいい加減呆れてしまう。それでも七瀬はソファで寝そべる浩平の相手を止めなかった。
「ご飯ぐらい作れないの?人が善意で泊めてあげてるんだから、少しは奉仕しなさいよ」
「うーん、じゃあ何か作るよ」
「何が作れるの?」
「焼き肉」
「・・・わたしが作るわ」
 聞かなければ良かったと思いつつ、七瀬は狭いキッチンに立った。
 それから程なくして、リビングのテーブルの上には大皿に盛られたチャーハンが並んだ。
「わーい♪チャーハンだ、チャーハンだぁ♪」
「さっさと座りなさい!」
 お互い向かい合いながらカーペットの上に座り込む。スプーンを掴んで早速口をつけようとする浩平を制しながらも、いただきますを言い合って食事が始まった。
「もぐもぐ・・・むしゃむしゃ・・・・うん、おいしいよ、これ。キムチが何とも言えないほど、合ってる」
「そうでしょう?」
(これしか作れないんだけどね・・・・・・)
 そんなことを考えつつ、七瀬もまた浩平の食べっぷりに触発されるようにチャーハンに手をつけた。しばらく食器の擦る音と、租借する音が室内を支配した。
 チャーハンを半分程食べ、七瀬がふと顔をあげるとすでに食べ終えた浩平と目が合った。
「ねえ、何で病院が嫌いなの?」
 思いついたことを口にしてみる。浩平は一瞬、病院と聞いて戸惑う素振りを見せたがすぐに首を傾げた。
「・・・何でだろう?よくわからないや」
「注射が怖いんじゃないの?」
「ひどいよー」
 自然と七瀬の口調は子供を相手にしたものになる。外見は大人だが、中身がそのままなのでいつの間にか浩平のペースにはまっていたのだ。不満げに頬を膨らます浩平を見て、ますます子供のように思えて来る。
「でも・・・とても辛いことがあったような気がするんだ」
 突然浩平の表情は大人びたものに変わり、その瞳を翳りが走った。重たいものを背負った本当の浩平を見たような気がして、七瀬は食事の手を止め呆然と見入ってしまった。


 夜が更ける。人々が自らの心の世界、夢へと旅立つ時。それでも窓から見下ろす風景は、イルミネーションが消えることがなく、夜明けを知らない不夜城が存在していた。
(まるで水槽の魚みたいだ・・・・・)
 カーテンの隙間から街並を見ていた浩平はぼんやりとそう思った。意志があるのかないのか、人工物が埋め尽くす世界を歩き回る魚達。その姿は滑稽にも、哀れにも映る。
「ほらぁっ!少しは手伝いなさいっ!」
 振り向くと七瀬が布団と毛布を抱えて寝室から出てきた。そして、リビングの真ん中にどん、と降ろす。
「さ、これが今日のあんたの寝床。後は自分でやって」
「お姉さんは?」
「向こうの部屋。・・・言っておくけど、一歩でも入ったらぶっ飛ばすわよ」
「・・・・・・」
 どすを利かして拳を握りしめる七瀬に、浩平はただ閉口するしかなかった。
 そして、二人はそれぞれ明かりを消した薄闇へと身を委ねた。
(ふぅ、何か本当に疲れたな・・・・、どうしてこんな面倒なことになったんだろう?)
 疲れを癒やそうとする七瀬だが、脳裏は自らの不幸で一杯である。夢の中でも溜息をつきそうで、七瀬は少し身震いをした。扉を一枚挟んだ向こうで、七瀬の気とは無関係に浩平は熟睡していた。寝息がここまでかすかに届く。
(ま・・・病院は無理そうだけど、明日には警察にでも突きだしてやるわ。きっと、捜索願いも出てるだろうし・・・・・・)
 これからのことを考えているうちに、いつの間にか七瀬は眠りの中へと誘われていった。








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3回目の投稿になります。・・・実はこれもワードで50K超えちゃったんで、わけました(汗)ハイペースになってすいません。なるべく3・4・5話をまとめて読むことをお勧めします。
覆面の幼子「おおすぎたら、だめだし、はやすぎたらだめだもんね」
ごもっともで(汗)・・・・・さらに本当のことをいうと、またも後記することが(汗汗)けっこう苦手なんです。
覆面の幼子「でばん・・・」
あきらめて(笑)ではでは、次回もお暇な方はご付き合いください。
覆面の幼子「えいえんはあるよ♪」


ちょっと裏話:今回のタイトルは”子どものような少年”であって、決して”子ども好き”な少年ではありません(核爆)

はっきりいってついていけてない感想です(汗)読んでも、読んでも溜まっていく(泣)

から丸さん:幻想猫の魔法
えー・・・最初の方は読んでたんですが、実はつい最近再セットアップしたんで、ちょっと前のログ全部吹き飛ばしたんです(^^;;;で・・・いつか来るとは思ってたけど、いつのまにか・・・なってるー!?(爆)から丸さんの作品はけっこう好きなんですよね、描写もしっかりしてるし、ストーリーもなかなか。とりあえず数話前のログ取ってきます(汗汗)

狂税炉さん:小曲集〜永遠のプレリュード〜
・・・・・・ティタ〇ンズの制服は“紺”ではなく”濃紺”色です(笑)いや、これだけがもう、気になってしょうがなかったもので(汗汗汗)