口の聞けないカナリヤは… 投稿者: シン
《 》このかっこは口の動きをトレース
〈 〉このかっこは体全体(↑以外)トレースしたものです
『えっと、これは私の小さい頃、浩平先輩と初めて会った時のお話なの。
 小学校入学の1年前なのに妙に大人びているのは人一倍苦労したからなの』
『もちろんスケッチブックに書く時も、私の名前以外は平仮名なのは
 漢字を教わってなかったからなの。まだ幼稚園最高学年だったの』
ついでに、七日目はほとんどゲームそのままだから読み飛ばしちゃった方がいいかも(汗汗)
さて、前口上が長くなりましたが、始めるとしましょう
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「結局…だめだったな」
どうしたんだろう、お父さんがそんな諦めたようなことを言うなんて
「本当に、もう手は無いの?」
お母さんはいつも通り悲しそうだけど
……
「そう」
……
なにか気まずい沈黙。たぶん、また私が原因の…。
夜に目が覚めるといつも聞こえる、暗いお話
…でも、どんなに暗いお話をしてても、朝がくればまた明るくなってくれる
……暗い道を太陽が明るく照らしてくれるように
………例えそれが、一時的なものであっても。偽りの姿であっても

「おはよう、澪。」
「あら、おはよう、澪、今日はお寝坊さんね。」
〈ぺこっ〉 おはようございます、お父さん、お母さん。
…やっぱり元気になってる。良かった。
「澪、公園に行こうか。」
《えっ》 お父さん突然どうしたの?
「昨日二人で話し合ったのよ、澪もいつまでも家の中にいないで外で遊んだ方が
 いいんじゃないかって。」
そうだったんだ、うん、じゃあ、外に行こう
〈こくっ〉

あ!人がいる、私より下か、同じ位の…
……
「どうした、澪。行かないのか?」
〈うん〉 でも、どうしたら仲間に入れてくれるんだろう?
「じゃあ、行って来い、見ててやるから。」
〈ふるふる〉 
「そう、か。もう今日は帰るか。」
〈うん〉 そうする


キィ…コォ…キィ…コオ…

一日目
 「ねえ君、昨日もここに来たよね。」
 〈うん〉
 「名前、なんて言うの?」
 《みお》 …でも、読唇術を習得してない人には何を言ったか分からないの
 「え?」
 ……
 「あ、あの」
 ……
 「じゃ、じゃあね」 タッタッタッタッタ

二日目、私はブランコに、あの子は友達と走り回っていた

三日目
 《はぁ》 何人か、私に話しかけて来たけど、私が話せなきゃ意味が無いの
 身振り手振り(ジェスチャー)も見事に全て空振り、我ながら見事な記録なの
 …なんてことを考えられるなら、まだ大丈夫、なの。

四日目、…見事にいなくなった、私に話しかけてきてくれる人が…

五日目
 …いつもここに来る子は決まっておんなじ子みたい、おかげで全員と話したの
 でも、やっぱり通じなかったの。
 全員と話してダメだったって言う事は、もうここには私に話してくれる人はいないの
 …でも、じゃあなんで私はいつまでもここにいるんだろう?

六日目、はぁ、やっぱり話しかけてくれる人はもういないの。

七日目
 「かわいそう…」
 ……
 「かわいそうな子…」
 ……
 「あの子はお話できないのよ…」
 やっぱり、私のことか…
 「…よっ。お前なにやってるんだ?」
 《ほえっ?》 あれ?はじめて見る人だ
 「ひとりで遊んでいるのか?」
 ここにははじめて来たのかなぁ
 「友達は?」
 いないの…口は、動かなかった
 「……」
 いきなりほっぺたをひっぱられた、
 なにをするんだろ?
 ……
 「からかいがいのない奴だなぁ…、こんなことされて、悔しくないか?」
 いきなりほっぺた引っ張られて悔しくないかって言われても…
 ほえっ?…男の子がいきなり私が乗ってるブランコを右回りに回し始めた、
 「こ、これくらい回せばいいだろう。いいか、今、オレが手を離せばブランコが
  さっきと反対の方向に勢いよく回転するんだ」
 …、その遊びはもうやったんだけど…なの。
 「びっくりするぞ」
 …多分大丈夫なの
 「本当に離すぞ」
 ……
 「…えいっ」
 ……いつも通りなの
 「…ど、どうだびっくりしただろ」
 ……
 「…こわかっただろ。」
 ……
 「……」
 ……
 「ううっ、お前、ぼくのこと嫌いだろっ!」
 ……そんなことないけど、…どうせ話せないの。
 「でもおまえ本当にしゃべれないのか?」
 ……
 「だから、そんなに愛想わるくなるんだな」
 ……
 「…これ、お前に貸してやる」
 ……え?
 「図工の時間に絵を描くのに使うからって、さっきお母さんに買ってもらったんだ」
 ……図工の時間?お絵描きの事かな?
 「だから、本当はダメなんだ。これがないと、たぶん、お母さんに怒られるけど…」
 ……
 「でもお前に貸す」
 ……〈ぶんぶん〉お母さんに怒られるような事しちゃだめだよ
 「いいから、うけとれ」
 ……あう〜、仕方ない、うけとるの
 「これで自己紹介できるよな。僕は、浩平だ」
 ……こーへー、不思議、なんでそこまでして私と話そうと思うんだろ?
 〈パラッ〉
 ……かくものが…ない
 「…なにやってんだ?もしかして書く物持ってないのか?」
 ……〈うん〉
 「…まったく、世話が焼ける奴だな。ほら、このクレヨンやるから。
  でも、一本だけだぞ」
 ……
 「なにじっと眺めてるんだよ。ほら、好きなの選べ」
 ……〈うん〉
 私は青が好きだったから…何処までも続く空の色だから……
 「青が好きなのか?」
 〈うん〉
 「よし、本当は俺もお気に入りだけど特別にやる。
  ついでに、この使い道がわからない白もやる」
 ……〈ふるふる〉それ、字を書くときには使わないよ…
 「白はいらないのか?贅沢な奴だな。まあいいや、じゃあ自己紹介だ」
 〈うん〉 そして、何度か書いた事のある「澪」と言う字を書き上げた
 「…な、なんてよむんだ?」
 《みお》
 6日位前にもこうやって声にならない声を出したっけ
 じゃあ、またあの時みたいに行っちゃうのかな
 「…まあいいや。とにかくこれで自己紹介も終わったわけだ」
 ……
 「お!もしかして今笑ってるのか?」
 ……うん、こーへー君も行っちゃうかと思ったから
 「浩平〜、帰るわよー」
 「あっ、わるいな、お母さんが呼んでるから」
 ……〈うん〉こーへー君のお母さん…優しそうだね
 「じゃあなっ」
 ……〈うん〉
 「…あ、そうだ。そのスケッチブックは貸すだけだからなっ、今度絶対に返せよ」
 ……〈うん〉〈さらさら〉『いっしゅうかん』
 「…一週間で返してくれるのか?」
 ……〈うん〉
 「いいか、約束だぞっ。それまでそのスケッチブック大切にしろよっ」
 …
 …
 そうして、こーへー君は帰っていった


そして…
今度は私の方から話しかけた…
もちろん声が出る訳が無いから、スケッチブックでなの。
『はじめましてなの』
初めましてじゃないけど、話せるのは初めましてだから。
「うんっ、初めまして。声…出ないの?」
『そうなの』
「そうなんだ、じゃあ、無視したんじゃなかったんだ」
『このまえははなせなくてごめんなさいなの』
「ううん、気にしないで」
…………日が暮れて、家に帰り
「お帰りなさい、澪」
『ただいまなの』
「どうしたの?そのスケッチブック?」
『あのね』
「うん」
『かりたの』
「そう、お友達が出来たの?」
〈こくこく〉
「仲良くするのよ、じゃあ、ご飯にしましょうね」
〈こくこく〉

そんな日々が繰り返し、一週間後の今日…


私は、一週間前まで定位置だったブランコをこいでこーへー君を待っていた
「ねえ、遊ぼう」
『ごめんね、きょうはむりなの』
「え〜?なんでぇ?」
『だいじな、やくそくがあるの』
「う〜ん、……そっか、じゃあまた、明日は遊べるよね?」
〈こくこく〉
「うん、じゃあ、、また明日遊ぼう。」
〈うん〉
……
…………
パラパラ…
?雨なの、どうしよう、傘持ってないの、家に戻ってる間に来たら困るし…
サーーーーーー
…みんな帰っちゃったの
ザーーーーーーーーーー
…スケッチブックが…濡れちゃう…
……そうだ
〈がばっ〉こうすれば濡れないの…でも少し寒いの……早く来ないかなぁ
……
…………
………………
来ないの……

えぐ…
……………
えぐえぐ………
………………………
どうして…来ないんだろう……

(「…あ、そうだ。そのスケッチブックは貸すだけだからなっ、今度絶対に返せよ」)
(『いっしゅうかん』)

……一週間、過ぎたよ……
…もう、大切じゃなくなったの?

(「いいか、約束だぞっ。それまでそのスケッチブック大切にしろよっ」)

大切にしてたよ……
なんで……来てくれないの……?
ねぇ…どうして……



「澪っ」
……
…………
その声は…こーへー君じゃなく、お母さんの声だった
……………………
そして、私は家に連れ戻された………

次の日も…その次の日も…そのまた次の日も……
私はあの公園で泣いていた…


☆  ★  ☆  ★  ☆  

『というお話なの』
「極悪人だね、浩平君って」
「なんで俺が極悪人なんですかっ、それに深山先輩、みさき先輩の口調が移ってますよ」
私がそう言った直後に浩平君の声が聞こえて驚いてる間に…
「じゃあ、もう帰りますんで、さ、帰るか、澪」
こくこく
『商店街に行くの』
「またか?まあいいけどな」
『チョコパ食べたいの』
「ぐあ!またか、もう勘弁してくれよ、金が無いんだ」
『じゃあ一緒に遊ぶの』
「ああ、いいけど、何して遊ぶんだ」
……
…………
かくして二人は帰っていった…か
「色々あったみたいだけど…幸せそうね、澪ちゃん」

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後書きに代えて

澪『時間かかりすぎ』
ぐはっ!!
でも、あの話で幸せにもっていったのはナイスだと思わないか?
澪『強引過ぎ』
……えぐえぐ


私信(?)です

SS、まだ読めてないです。感想はもう少し(かなりだと思う)お待ち下さい
澪『シンの手抜き感想を待つ人いるの?』
い…ないと思う…