もっとも危険な遊戯  投稿者:雀バル雀


遂に完結編!
ではどうぞ
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12/21

「…それにしてもいきなりだよなぁ」
「急にお別れするわたし達の身にもなってほしいよね…」
「クソッ、今日1日イジメてやる」
「うん、いっぱい遊んであげようね」


   『もっとも危険な遊戯』


「うー、たいくつ」
「よし、椎名遊ぶか」
「うんっ」
「あ、わたしも行くよ」

どたどたどた…

〈中庭にて…>

「――椎名、何して遊ぶ?」
「マ−マ!」
「…おまえ…えらくマニアックな遊び知ってるんだな…」
「浩平、何?『マーマ』って?」

*<マーマ!>…元ネタは『聖闘士☆矢』。まず氷を一個、蟻を一匹用意します。あとは簡単。氷の上に蟻をおいてしばらく待つだけ。
するとどういうわけか蟻がどんどん氷の中に沈んでいきます。蟻が完全に氷に埋没したら日に透かして一言・・・ 『マーマ!!』
ま、地味ですが鬼畜度は高め。
                 
大民命館書房『禁じられた遊び』より。

「わあ!そんなの情操教育上よくないよ」
「だよなぁ…椎名、他には?」
「かいじん21めんそう…」
「…椎名…お前本当は幾つなんだ?」
「ほえ?」
「浩平、何?『かいじん21めんそう』って?」

*<かいじん21めんそう>…『○リコ・森●青酸カリ混入事件』の影響で生まれた遊戯。
弁当や給食にこっそり「青酸カリ」(乾燥剤または石灰)を混入するイタズラ。キツネ目のヤツに巨人帽を被らせれてやればば文句なし。
ちなみに、私の友人Mは学級新聞に『ワイがかい人21面そうや』というアホな記事を載せてしまったが故に、無理やり犯人に仕立て上げられてしまった…哀れ。

大民命館書房『禁じられた遊び』より。

「あれは結構楽しいんだよなぁ」
「そういう問題じゃないよ〜…繭、他には?」
「…はまこー」
「おっ!それならこの学校でも出来るな」
「浩平、何それ?…また危険な遊びじゃないでしょうね?」
「大丈夫、その心配はない。…いくぞ!、繭、長森」
「みゅーー!!」
「ちょ、…待ってよ二人とも」


〈空き教室にて…〉

「ふざけるんじゃないもぅん!」
「だから日本はアメリカにナメられるんだぁ」

どしゃーん!
がらがらがら…

「ふ、二人ともなにやってるのよ」
「政界の暴れん坊だもぅん!」
「なにって、『ハマコー』に決まってるじゃないか」

*<ハマコー>…小学校の頃は必ず一人はいたであろう、弱虫泣き虫のイジメられっ子だが、キレたら止まらないアイツ…。
そんな彼を我々は『ハマコー』と呼び、よく一緒になって机や椅子を投げて遊んだ(?)ものだ。
『日本をダメにした政治家』・元衆議院議員の浜田幸一氏との関連は不明(笑)

大民命館書房『禁じられた遊び』より

「どうした長森?やらないのか?」
「みゅ?」
「……こんなバカなコト出来る訳ないよ〜」
「そうか?ストレス解消にはもってこいだぞ、な?」
「みゅーっ♪」

「こらーっ!お前たちなにやっとるかーっ!」

「やば、先公だ!椎名、戦略的撤退!」
「みゅっ」
「長森、あとのことは任せたぞ」

どたどたどた…

「わあっ、二人とも待ってよ〜」

      *

はあ はあ はあ

「やれやれ、無事逃げられた」
「あぶなかったもぅん」

とたとたとた…

「ひどいよ浩平!わたしを見捨てるなんてっ」
「なんだ長森、お前まで逃げてきたのか?」
「不良だもぅん」
「わ、わたしなにも悪いことしてないもんっ」
「まったく、これでお前も同罪だな」
「みゅ」
「う〜、違うもん違うもん。…もう、他にまともな遊びは無いの?」
「けんぱっ!」
「ゲッ!…ま、繭〜…けんぱは、や、やめようよ」
「みゅー…」
「あはは、この前がこの前だったからなぁ。…繭、勘弁してやれ」
「うん…」
「じ、じゃあ繭。他になにして遊びたい?」
「………」
「なんでもいいんだよ。ね?」
「うえむらなおみごっこ!」
「うわっ、それはマズイだろ」
「みゅ?」

*<植村直己ごっこ>…校舎の壁をよじ登っていく遊び。ロープなどを用いて創意工夫を凝らしてどんな壁にも挑む漢の遊戯。
なお、友人のTは『マッキンレー』と称される難攻不落の体育館に挑み、落下して骨折…それがきっかけで中止命令が下った。

大民命館書房『禁じられた遊び』より

「わっ、そんなの危険すぎるよ」
「だよなぁ…繭にはまだ早いか」
「できるもぅん」
「そういう問題じゃないよっ!死ぬよ」
「椎名、他には?」
「…くりふはんがー…」
「余計危険じゃないかっ!」
「みゅ?」

*<クリフハンガー>…屋上やベランダの縁に掴まって何秒持ちこたえられるか競う遊戯。
当たり前だが、落ちたら死ぬ(かもしれない)

大民命館書房『禁じられた遊び』より

「あれは『成人の儀式』だからなぁ。十秒耐えれば立派な大人だ」
「わっ、そんなの遊びでもなんでもないよ〜」
「確かに…それに何かあったら椎名のお母さんに申し開きが立たないしな」
「みゅ〜、つまんない」
「ねえ、もっと安全な遊びないの?」
「そうだなぁ…『仮面ライダーごっこ』なんてどうだ?ありがちだけど」
「嫌だよっ!昔っからわたしが怪人役ばかりじゃない」
「みゅーっ!嫌だもぅん。…ちびのりだー役ばかりだもぅん…」
「う〜ん、二人ともワガママだなぁ」
「それは浩平だよっ。…ねえ、繭?」
「みゅ?」
「もっと女の子らしい遊びしようよ。お姫様ごっことか?」
「みゅ〜っ!しんでれらごっこ♪」
「いいねぇ、楽しそう」
「ぐわっ…俺そんなこッ恥ずかしいの嫌だぞ」
「だめだよ〜。今日は繭の好きにやらせるって言ったの浩平でしょ」
「みゅ☆」
「ううっ…しょうがねぇなぁ」
「じゃあ、繭がシンデレラね。で、浩平が王子様でわたしが…」

ふるふる

「…他のやくがいい…」
「え?シンデレラじゃなくていいの?それじゃゃあ、わたしがシンデレラでいい?」
「うん」
「椎名は継母か?手加減してやれよ」
「みゅ…違うもぅん…いしだててつお…」
「なにそれ?……え!」

がしっ
びちびちびち

「ぎゃあああああああああああああ!痛い痛い」
「うるさいもぅん!この薄汚ぇシンデレラみゅ〜!」

ずりずり

「きゃああああ!髪ぃ〜〜!引張らないでぇ」
「12時を過ぎたもぅん。さっさと田舎に帰れみゅ〜」

「椎名!…(まさか!?)…そっちの『シンデレラ』かぁ!?」

*『石立鉄夫』…宇津井健・松村雄樹と並ぶ大映ドラマのスーパースター(笑)が由来。
チリチリ頭の女子に向かって「チィー坊」と叫ぶのをはじめ、バリエーションは豊富。
なかでも『この薄汚ぇシンデレラが!』と叫びながら気の弱い子を引き摺りまわす遊びは有名

「やめろっ!椎名!これは違うぞっ」
「みゅ?」
「うっううう…髪がぁ…グスン…」
「大丈夫か長森?」
「グスン…うん」
「…ごめんなさい…間違えたもぅん…」
「い、いいんだよ繭。…もう慣れてるから」
「みゅ…」
「今度はちゃんとやろうね。どんな遊びがいいの?」
「…きゃんでぃ…きゃんでぃ…」
「え?キャンディ・キャンディごっこ?わたしも大好きだったんだ♪」
「そういやお前、あのマンガにハマってたもんなぁ」
「うん。こういう遊びなら大歓迎だよ」
「じゃ、準備するもぅん」
「準備?」
「うんっ」

とたとたとた…

「ちょ、繭どこ行くの?」
「おーい、椎名ー!…行っちまった」


(数分後…)

とたとたとた…

「ただいまみゅ〜」
「おかえり繭、準備できた?」
「うんっ」
「?…準備って万年筆?椎名、なんに使うんだ?」
「きゃんでぃ…」
「それは分るけど、だからなんで万年筆が要るんだよ?」
「みゅ♪こうするもぅん」
「へ?」

どさり

「ま、繭!なにする気?や、やめて〜っ!」
「みゅ〜♪」
「お、おい、椎名っ!」

「そばかすなんて〜♪気にしないみゅ〜♪」

ばっ ばっ

「ぎゃああああああああ!インクがあぁぁ!」
「な、長森ぃ!」

「はなぺちゃ だって だって 気にしないみゅ〜♪」

ぐりぐり

「うぐやあああ!は、鼻が潰れる〜!」
「みゅ〜☆」

*<キャンディ・キャンディ>…万年筆のインクで「そばかす」を描いたり「鼻ぺちゃ」にしたりする遊び。
●がらしゆみこが知ったら泣きそうだ。


「うぇぇぇん」
「笑って〜♪ 笑って〜♪ 笑ってきゃんでぃ〜♪」
「無茶言うな椎名っ!長森も泣くな」
「ぐすん…どうしてわたしばかりこんな目に…」
「ったく、これじゃどっちが子供か分りゃしねぇ」
「みゅー、泣き虫だもぅん」
「椎名っ、お前もお前だ!」
「…ごめんなさい…」
「いいよ浩平…これも今日までの辛抱なんだから…」
「長森…」
「?」


〈数十分後…〉


(結局、またしてもけんぱをすることになった。浩平が瑞佳を保健室に連れて行っている間、繭はまた一人で『けんぱ』の準備をしていた)

とたとたとた

「椎名…また龍神池か?」
「…うん…」

*『龍神池』…由来はもちろん『風雲たけし城!』から。前回の『地雷入りけんぱ』との違いは“競技用”であるという点。
大抵は「攻略できたら千円やる」という口約束で開催される。
前回の“けんぱ”の『地雷』はあくまで“罰ゲーム”の域を出てないが、この『龍神池』は「クリアさせない」ことを目的に作られているため、難易度もペナルティも恐ろく深化している。

なお、難易度としては…

・天皇陛下(99%攻略不可能…賞金も3千円ほどまで跳ねあがる)
   ↓
・総理大臣(ま、上手い人ならどうにか)
   ↓
・先生(このレベルが一般的…賞金は千円が普通)
   ↓
・子供(練習用)
   ↓
・ギョウチュウ(これが出来ないと「ギョウチュウ」呼ばわりされ、苛められる)

…という具合(笑)

大民命館書房『禁じられた遊び』より


「…難易度は?」
「…いちばんかんたんなの…」
「ならいいか、それなら誰でもクリアできるからな。この前のはシャレになってなかったもんなぁ」
「みゅ」

とたとたとた

「……け、けんぱ!?……」
「長森…お前は休んでてもいいんだぞ。この前のこともあるし…」
「やるっ!」
「お、おい?…大丈夫か?」
「みゅ〜♪」
「大丈夫、3度目の正直だよっ!ハッ」

とん、た、とん、た、とん、たっ、た…
 
「おお、さすが長森。尋常じゃないスピードだっ!」
「…びっくり…」

とん、た、とん、た、とん、たっ、た…

「……(!)そこっ!」

だっ!

「すげぇ!『地雷』を見抜いた!」
「みゅーっ!」

とん、た、とん、た、とん、たっ、た…

「ふっ…この程度なら朝飯前だもん!『けんぱの女王』を甘く見ないで欲しい……ふぇ…ふぁくしょん!」

とん、た、とん、た、とん、たっ、た…べちゃ

「きゃ、失敗だよ。油断したみたい。あはは!」

「………」
「…しっぱい…」

「あ〜あ、またクツ汚しちゃったよ。こんな簡単なので失敗なんて恥ずかしいな。あはは!」

「………」
「………」

「?…二人ともどうしたの?ヘンな顔して…」

「………」
「…ギョウチュウ…だもぅん」

「え?ど、どうしたの、ねえ?」

さっ

「ばっちいもん」
「………」

「ちょ、どうして逃げるんだよ!ねえ!」

さっ

「…わっ…」
「逃げるもぅん」

「わぁ!どうして逃げるんだよっ!二人とも待ってよぉ」

さっ

「スマン!だが反射的に逃げちまうんだよ。許せ」
「みゅ」

「逃げないでよっ!ねえ」

さっ

「わっ、来るなぁ」
「ぎょうちゅうバリアだもぅん」

どたどたどた…

「うぇ〜ん、二人とも酷いもん!逃げないでよ〜!」

とたとたとた…

「触られたらうつるもぅん」
「スマン、長森!」

「酷いもん!酷いもん!わたしギョウチュウじゃない……え?」

ずる

「わあっ!足元にぃ、なんでぇぇぇぇ!」



べちゃ!


「………」


「…お、おい…長森?」
「みゅ?」


「………」


「2度あることは3度あるとは言うけど…まさか…」
「…そこ地雷だもぅん…」


「………」


〈これ以降のシーンは、かなり過激な描写を含むためカットいたします…ご容赦ください〉 

    *

(放課後…校門にて)

「じゃあな、椎名」
「じゃあね、繭」
「ばいばい」

「……うん!」

とたとたとた…

「………」
「………」
「…はぁ…」
「どうした?寂しいのか?」
「うん」
「…あれだけの目にあってもか?」
「………う、うん」
「今の間はなんだよ?」


『けんぱ』『ニルスごっこ』『ビルマの竪琴』『龍神池』…
こんな遊びだって、椎名が言い出さなければ、することもなかったろう。
例えば長森と二人でいて、暇だとして、それでこの遊びをするに至るだろうか。
世の中の、この世代の男女がふたりでいて、いったいどんな確率でこの遊びをするんだろう。
大抵は、互いの興味を深めるために、話し込んで終わりだろう。
それに飽きたら、テレビゲームか、金があれば、カラオケ、ボーリング、ビリヤード…。
遊びというものは、誰かがそれを楽しいと感じて成立するものなんだ。
それを痛感する。
椎名が一生懸命跳ねるから楽しい
俺たちも見ていて楽しい。
いっしょに遊んで、楽しい。

でも、それを一番楽しいと思う奴がいなくなったら、もうそれは行われない。
長森とオレのふたりだけじゃ、しない。

だから…


(数日後…)

ドシン!ガラガラッ

「きゃあああああああ!繭、やめてぇ〜〜〜〜〜!」
「みゅ♪」
「椎名!…(まさか!?)…『ポルターガイスト』かぁ!?」

*<ポルターガイスト>…教室の備品を投げつける遊び。被害も損害も甚大である。
似た遊戯で、トイレの個室に閉じ込めて、放水したり物を投げ入れて苛める『浅間山荘』という凶悪な遊びもある。

大民命館書房『禁じられた遊び』より


「うっううう…髪がぁ…グスン…」
「大丈夫か長森?」
「グスン…うん」
「みゅ〜☆」
「『みゅー』じゃないだろっ!椎名」
「みゅ?」



12がつ23にち

『今日からまたがっこう。みんなといっしょにあそべる、うれしい。
 3人でいっぱいあそんだ。とてもたのしい。みゅ〜♪
 おねえちゃんも泣いてよろこんでいた』


 (お・わ・り)



*あとがきは今回はなし
またねー
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/8321/index.htm