ヒロイン 5話 投稿者: 雀バル雀
日曜の夜は寂しい。

小さい頃は…○芝日曜劇場のOPの夕日、それが楽しかった休日の終わり。

もったいないから寝床で頑張ってみる。

睡魔には勝てないんだけど…少しでも日曜日を長く味わいたくて。

そして思うんだ

「目が覚めたら…明日もその次の日もずっと日曜日だったらいいのに」

今になって思い返すと、アホくさい考え。

月曜が日曜より楽しくないなんて限らないじゃない

だから

月曜は早起きするんだ。

  「ヒロイン」 第5話


………

あの日から一週間が過ぎた。


『折原って…なんのこと?』


…まだ信じられない。
けど、もう否定する材料は残ってない。

最初はケムマキが…
ま、こいつはすぐ思い出したんだけど。でも、思えばこれが始まり…

広瀬が

七瀬さんが

みんな折原くんのことを話題にしなくなった。

七瀬さんがミスっても、折原くんだけ免除。彼を目の仇にしていたあの陰険なGTOが絶好の機会を…

最近では住井くん達まで彼と距離を置くようになった。
避けているのではない…それが自然なんだ。

変わらないのは長森さんだけだ。
彼女だけは変わらない。

いや…あたしも変わらない。

あたしだけだ。
気付いてるのはあたしだけ
長森さんでさえ気付いてないのに…

違う…か。
折原くんはとっくに気付いてたんだ。

今だから分かる。彼の『あの表情』の意味が…
彼はずっと前からそのことに気付いてたんだ。

「………」

目を開くと…真っ白な天井が見えた。

実際、何が起きてるのか
これから先…どうなるのか

それはあたしには分からない。

けど…

ぞろり
心の底の黒い塊が動いたのを感じた。

………

これだけは分かってる。

これはチャンスだ…

あたしは…もう“なんでもない存在”なんかじゃない。

「あたし…イヤな女だな」

      *

近づけない。

ホントは気付いてるんじゃないのか?

そう思えるくらい、長森さんは折原くんから片時も離れてくれない。

気ばかり焦る。

事態はどんどん進行していく。

皆の様子…なによりも折原くんを見ていれば分かる。

そして、それがどんどん“普通”になっていく。

…………

歓迎すべき事態なのかもしれない。

このまま…このまま長森さんまで彼の事を忘れてしまえばいいと…

最近になって気づいたことがある。
どうやら折原くんのことを思ってる度合いによって、彼を認知に差があるのだ。
『折原くんが』ではない。…それなら、あたしが覚えていて親しかった七瀬さんや住井君が忘れているはずがない。

だとすれば、このまま事態が進行して行けば、もっとも強く彼のことを思っている人間が残るはず。
彼は不幸にも家族を失い、今は叔母と二人暮らしと聞いている。
おそらくは、その叔母さん、長森さん…そしてあたしが残るだろう。


『死のう…もう…いいや…』

本気だった…。もうあたしの居場所なんて無いんだから。
別にあたしが死んでも誰も悲しまないだろうし。

…でも、そんなあたしを折原くんは救ってくれた。

ちらりと後ろを振り返る。
教室の一番遠い場所…左最後部。

誰も…いない。

今度はあたしの番だ。
あたしが…あたしが折原くんを救ってみせる。

そしたら…あたしはもう一度輝けるはずだ。

    *

「ふぅ…」

ため息1つ。

「いい若いもんがため息かよ…おばさんくせえぞ、ポニ子」
「……誰がおばさんよ…」

人の席によっこらしょと、おっさんくさい掛け声と同時に人の机に腰掛ける色黒の少年。

あたしの幼なじみ…ケムマキだ。

「なんの用よ?…あんたのクラスはここじゃないでしょ?」
「………」

じっとあたしを見てる。
こいつの視線…相変わらず痛い。

「目の保養?…このクラスってなぜか今学年の美少女が集まってるもんね。でも長森さんなら…」
「ポニ子…用があるのはお前だ」

真っ直ぐな瞳。
とても目なんか合わせられない。

「なんで部に出てこないんだよ?」
「………」

…コイツはちっとも変わらない。
男の子が羨ましいよ。いつまでも綺麗な瞳でいられる。
女の子は…変わっちゃうのに。

「用があるんならそれでいい。辞めたいんならそれも構わない。…それなら連絡くらいしろ」
「………」

…胸がちくちく痛む…

「今日の放課後…部室に来い。待ってるからな」
「………」

そう呟いて立ち去るケムマキの後姿…
気のせいか大きく見えた。

「…なにやってんだろ…あたし…」
    
自分がつくづくイヤになる。
どこまで苦しめばいいんだろう?

ぺたん

机に突っ伏す。
眼前には真っ白なノート。
英語の予習なんてとてもやれる気分じゃない。

「あんたいいかげんにしなさいよぉ!」

後ろを振り返る。
教室の一番遠い場所…左最後部。

「四六時中あんたのおのろけ話を聞かされる、こっちの身にもなってみなさいよ」
「留美、あんた嫉いてるのぉ?」
「だ、だれが!」

空席を挟んで広瀬と七瀬さんのレベルの低い言い争い。
話題が違うだけで展開は毎度一緒だ。

「…あいかわらずですね」
「え?」

いつのまにか机の前には里村さんの姿があった。
二人の口喧嘩を眺めるその視線はどことなく優しい。

…ちょっと、かわいいな。

「…で、今日は…」

返答代りにノートを見せる。
潔いほど真っ白け。

「………」

黙って英語のノートを差し出す里村さん。

「あ、ありがとう」
「…いいえ…」

回答を慌てて写し始める。
昼休み終了まであと5分し…!?……

………

「…どうかしました?」
「う、ううん!…すぐ終わるからね」
「…はい」

………

………

…空席…

…今…あそこが折原くんの席だったってこと…忘れてた。

    *

がちゃ

真っ暗…ムリもない、もう8時だ。

「………」

正直誰とも会いたくなかった。
だから…屋上でぼけーとしてて…気付いたらこんな時間。
それくらい虚ろだったんだ…

「…一応来たからね…約束は守ったわよ」

真っ暗な部室…暗闇に語りかける。
自分に対しての言い訳。

だけど…

「バカ、もっと早く来い」

パチ

明るくなった部室には、ケムマキが寝っ転がっていた。

「…一晩ここで明かすつもりだったんだぞ。待ってるって約束だったからな」

「この季節に?凍死するわよ」

…ホント、こいつはバカだ。

「イエスかノーで答えろよ。マネージャー、辞めるんだな?」

床にあぐらをかいてあたしを見上げるケムマキ。
思わず目を逸らしてしまう。

「…ノー」

「ポニ子…部長命令だ、辞めろ」

…訊いといてそれはないでしょう

「…ハッキリ言う、いくらマネージャでもお前みたいないいかげんな態度で来られたら迷惑だ」

痛い

視線も

言葉も

心も

「みんな一生懸命だ。俺も、下級生連中もレギュラーも補欠も皆一生懸命だ。必死だよ」

そう
みんな一生懸命だ。
だから、イヤなのに…

「俺はお前に感じて欲しかった、みんなの熱意をな。だからムリにでも誘ったんだよ」

迷惑だ。
そんなことされたらミジメなだけ。
余計に自分が嫌いになるだけ。

「あの頃のお前にもう一度会いたかったんだよ。…俺の憧れだった…大好きだったポニ子にさ」

………

「今でも俺はお前のこと…ずっと…」

………

臆面も無くよくもそんな恥ずかしいことが言えるもんだ。

ケムマキに向き直る。

「知ってたよ…あんたがあたしのことをどう思ってるのかなんて」

そう、それくらいは知ってる。
幼なじみなんだから…

「あんたの気持ちも…あたしが折原くんのことが好きで、それを知っててなおあたしを思ってくてれる。嬉しいよ…けど…」

なんかまた涙が出てきた。
あたしには似合わないのに。


「それって痛いよ…あたしはあんたの気持ちに応えられないし…それに…」

言葉が詰まる。
舌が上手く回らない

知らずに俯き加減になってた顔を、ケムマキのほうに向ける。
ちゃんと相手の目を見て

「…早熟だったんだよ…みんなより成長が早かったから…だからみんなも…あたしも勘違いしてただけなんだよ」

そう…
それが魔法の正体

「自信とかそんなんじゃない…どうやったってもう戻れない…今のあたしが本当のあたしなんだ」

12時を過ぎたシンデレラ
ガラスの靴も魔法と一緒に消えちゃった…

「…結局残ったのは今のあたし…なんいもできやしないくせに…だた…望みばかり大きくて…夢ばかり見てて…」

ホント…キライ…
なんで…なんでこんなあたしになっちゃったんだろう

「最低の女なのよ!…陰湿で…欲深くて…」

ホント…どうして変わっちゃたんだろう。
あたしだって長森さんみたいになりたいのに、純粋で、真っ直ぐで…

結局あたしも忘れてゆく
長森さんには…どうやっても勝てない

「頑張ってもだめなのよ!…がんばったって…昔のあたしみたいにはなれないよ!折原くんだって振り向いてもくれない!…それが現実よ…」

バカみたい…
バカみたいに涙が零れる。

もう休みたいよ…
リタイヤさせてよ…
いいよ…“なんでもない”人間で十分だ。

いい機会だ…このままなら折原くんのこと忘れてしまう
そしたら…もう苦しまないで済む。

「…ポニ子…」

ゆっくりと立ちあがるケムマキ
頭をポリポリ掻きながら、天井をしばらく眺めて…
そして

「俺がなんで空手やってるか知ってるか?」

………
まだ…分からないの?
『お前に憧れて…』なんてほざいたらケリいれてやるつもりだった。

けど

「俺ってチビだろ?…いくら運動できても他のスポーツじゃレギュラー取れないからな。…でも、空手は違ってた。そりゃハンデはあるさ、リーチがねぇからな。…結局上を目指しても弾かれちまう。それでも、くやしいからまた挑戦して…その繰り返しさ」

…あんたは偉いよ

負けても挑戦する勇気があるんだ。
あたしとは違う…

「けどな!…実はそれは2番目の理由。ホントの理由はな…」

イタズラ坊主がそのまんま大きくなったような笑みを浮かべて
そして自信たっぷりにこう言った。

「空手が好きだからさ」

自分の中の何かが動いたような気がした。
忘れてた…何か?

「お前はどうなんだ?…ソフトはキライか?折原のことキライか?」

………

考える必要なんてない。
答えは1つだ。

「…好きよ…」

体が震え出す。
止まらない…

「…それでいいじゃねぇか。何も特別なことじゃない、自分のために頑張ってやれよ」

…コイツ、どうしようもないバカだ

「………」

…ホント、どうしようもないバカだ

あたし

ばっ

「おっ!おい!」

躊躇なんかできなかった。

ただ…

「うっ…うわああああああんん!!」

ただ…

「分かった分かった。分かったからもう泣くな、な?」

泣きたかった…

「ごめん!ごめんね!…あたし!…あたし…」

謝りたかった

「あたし…あんたのこと好きになれたら良かった!あんたのこと好きになりたかった…うっ…うう…」

泣きたかった

こんなにまで想われて…それでも気持ちに応えられずに。
まだ、折原くんが好きな自分が口惜しかった。

「謝んなよ…ポニ子」

ポンと頭に乗せられた手…少しだけ痛かった。
加減しろよ、空手バカ。

「俺達…幼なじみじゃねぇか」

     *

時間は容赦なく過ぎて行く。

同じ時にあたしはいない…惰性でも歩んで行く。


空気

…今の折原くんの存在はまさにそれ。

その存在を体は知っている。頭でも…けれど忘れてる。

必死だった…

何度忘れかけたことだろう。

我ながらたいしたものだと思う。

長森さんのように折原くんと親しいわけでもないのに…
今でも話しかける勇気だって持ってないのに…

それでも限界を感じる

長森さんですら時々忘れかけてる。

折原くんが授業中に席を立っても、気付きもしなかった…

もっともそれはあたしも同じで…後で偶然気が付いただけなのだから

声をかけてみればよかったのだろうか?

そんな権利も義務もない

けど、話したかった

怖かった

微妙なバランスで成り立っている積み木のように

触れてしまえば…それで崩れてしまいそうで

………

…それがいけなかったのかもしれない

………

…あたしは

…忘れたことさえ忘れていた


     *

時間は容赦なく過ぎて行く。

同じ時にあたしはいない…惰性でも歩んで行く。

2年ももう、終わるんだから。


「七瀬さん、おはよー!」
「おはよ、ポニ子」


過去の感傷に浸ってるヒマなんかない。


「里村さん、おはよう!」
「おはようございます」


そこまであたしはヒマじゃない。
二度と来ない高校生活だから。

「広瀬ー!とりゃああ!」

どか!

「ぐぉおお!!あ、朝からもろ手突きをかましてくるなんてぇ…ポニ子ね?」
「ヘヘヘ、挨拶代り」
「じゃあお返し!」

ごきぃ!

「あぐぅ!“カチアゲ”とは…腕を上げたもんね」
「恋する女を舐めんなよ」


あたしの日常。
あたしの普通。
それだって物語の一部なんだ。

だから


「長森さんおはよう!」

「あっ!ポニ子。おはよう」

「…なんか久しぶりだね」

「うん!そういえばそんな気がする。どうしてだろうね?」

「長森さんいつも登校ぎりぎりだしね」

「う〜ん…これでも早起きなつもりなんだけど。何故かいつもギリギリなんだよね」

「不思議だね、それ」

「道に迷ってるわけでもないのに」

「ま、今日はギリギリじゃないからいいんじゃない、長森さん」

「そだね、ポニ子。…でもね、わたしのことは『瑞佳』って呼んで欲しいな。わたしだってニックネームで呼んでるわけだし」

「え?」

「だって友達でしょ?わたし達」


友達…か。
ま、この子にとっちゃ『喋ったことある人はみんな友達』なのかもね。

いい娘だよね…同性のあたしから見ても分かる。
まともな神経の男ならほおっては置かないだろう。

『お姫様』だし…当然か。


「そうね。…じゃあ改めて、おはよう!瑞佳」
「おはよう、ポニ子」


冬の日差しに照らされた長森さんの笑顔…

輝いて見えた。

    *

偶然だ。

「広瀬〜!あたしの席にまた画鋲置いたでしょ!?今日と言う今日は許さないんだからぁ!」

箒を振り回す七瀬さん。
タイガージェットシンも真っ青の迫力だ。

「証拠はぁ?何時何分何曜日〜?地球が何回……って!うわあああ!!」

広瀬の逃げっぷりも、晩年の東尾を彷彿させる熟練された走りだ。

「二人ともいいかげんにしなさいよ!あんたら幾つだ?」

で、それを捌く立行司が私なわけだが…
はぁ〜

「ポニ子!止めないでよ!今日こそこの女狐の化けの皮を剥がしてやるんだからぁ!」
「あたしが狐ならあんたはゴリラだぁ!」

ぴきぃ

ありゃ、キレたみたい。
もうこれは…ゴジラVSモスラみたいなものね。人類に打つ手はないわ…

「死ねぇ!『烈風正剣突き』!!」

どご!

ありゃりゃ、ロッカーに穴が。
あんなん食らったらマジで死ぬわよ。

ぎちぎち

「ぬ、抜けなぃ〜!!……って!きゃあああ!!」

どしーん!

がらがらがら

ロッカーのフタが開いた途端、力の行場がなくなってゴロゴロゴロっと。
…もはやギャグキャラ以外の何物でもないわ。

ああ〜…ロッカーの中身が床に散らかっちゃってまぁ

被害にあったロッカーの名札を見る。

『長森瑞佳』

…長森さんなら許してくれるだろう。
二人とも、感謝することね。

3人で散らかった中身を片付けるうちに、あるものに目がいった。

…あまり趣味の良いとはいえないピンクのうさぎのぬいぐるみ。
まあ、長森さんだから許そう。


偶然だった。

拾おうと思って掴んだ途端、カチッ、という音。
…そしてテープから流れてくる音質の悪い男の子の声。

「…………」

「なになに、これ〜」
「わ、喋るぬいぐるみ。誰のなの?」

声に興味を引かれて数人の女生徒が寄ってきた。
その中の一人が手をのばそうとする。

ばしぃ!

「きゃ!」

強引にその手を払いのけると、あたしはその人形を掴んで走り出した。

たったったっ…

どこ?

どこにいるの?

急がないと!

長森さん!

     *

はあ はあ はあ

「っ…な…ながも…り…さん」

散々走り周った末だ。息が切れて上手く喋れない。

でも、伝えなきゃ!

「ど、どうしたのポニ子……って!え?」

尋常でないあたしの様子を訝しがるヒマも与えず、間髪いれずにぬいぐるみを突き付ける。

…腹は決めたわ。
このメッセージを聴いてしまった以上…あたしは…

「…い、いいからこのぬいぐるみのスイッチ押して!」

もし

もしもだ

これを聴いて長森さんが…内容を理解できないのなら

その時は…

訝しがりながらも言葉に従う長森さん。

心臓の鼓動が激しいのは、なにも息が切れただけじゃない。
あたしの不安と期待のごちゃ混ぜになった眼差しを前に…

カチッ

長森さんは…スイッチを押した。

    *

雨…

雨が降る…

冷たい雨…

昼間はあんなに晴れてたのに

おかげで…

傘持ってないよ…

雨…

びしょしょ

髪までべっとり

下着までぐしょぐしょ

………

見様によっちゃセクシーよね

「ハクシュン!」

うひぃ〜

か、風邪かぁ…ま、当然か。

………

空き地…

そうだ…この前授業中に考えたあの遊び

いい機会だ

やろうっと

うわぁ…

泥でグチョグチョ

里村さんも大変よねぇ

ふう

………

………

………

………

…全然面白くない…『里村茜ごっこ』


ぱちゃぱちゃ


「…………」


…やっぱあの人も普通じゃないみたい


「…………」


…浮世離れしてるもんねぇ


「…………」


…やっぱ彼女もヒロインだ…絵になるし、あたしがやってもミジメなだけ…



「…………」


…良い子はマネしちゃダメだよ


「…………」


「…でもこれってさ…なにが面白いの?」


「…………」


「ねぇ?…里村さん」


「…なにをなさっているのですか?」


「『里村茜ごっこ』」


「…………」


「…怒った?」


「…別に…それに、それじゃあ不完全です」


ピンクの雨傘
…そういやそうだった、これがなきゃ


「風邪引きたいのですか?」


「・・・いいや」


「じゃ…」


傘にいれてくれるの?
ありがとう。


「…………」


「…………」

「…………」


「…………」

「…ねぇ…里村さん」

「…はい」

「あたしさぁ…今日ふられちゃった」

「…そうですか…」

「カッコワルいよね」

「…はい…」

「…そんなはっきり言わなくてもいいのに」

「…ごめんなさい…」

「…………」

「…………」

「…………」

「…グスッ…」

「…無理…しないでください」

「…ううっ…えぐっ…グスッ…」

涙が止まらない。
鼻血と涙だけは人前で見せたことなかったのに…

だって…かっこわるいから…

「…泣いても…いいじゃないですか…こんな時くらい…」

涙が…

涙が止まんない…

躊躇なんかできなかった。

ただ…

「うっ…うわああああああんん!!」

ただ…

泣きたかった…

   <FIN>
---------------------------------------------------------------
次回エピローグです

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/8321