『翔べ!必殺うらごろし?』〜夏の2時間スペシャル〜<完結編 投稿者: 雀バル雀
…好きで…好きで産まれてきたわけじゃない


「あれが姫じゃと…なんとみすぼらしい…まるで山猿の娘よ」
「殿が垢すり女に産ませた子じゃそうだからのぅ」


「…………」


「殿の娘というのも本当かしら?淫売と変わらぬあのふしだらな女の娘よ!」
「この名門巳間家の姫が…おお、情けない…」

「…………」


好きで…好きで女に産まれたワケじゃない


バシィ!

「きゃ!…ご、ごめん…かんにんして…」
「全く!不器用な子だね!女のクセにろくに裁縫もできないなんて…はぁ〜…せめてあんたが男だったら、どこぞの大店にでも奉公させられたのに…もういいから酒買っておいで!」
「…はい」


「面あり!…それまで」

「はあ はあ …晴香は強いなぁ」
「うふふ、良祐が弱すぎるんだよ」
「ちぇっ」
「あはは」


バシィ!

「…ち…父上…?」

「晴香、女子の身でありながら男を剣で負かすとは!なんという真似をしてくれた!」

「だ、だって真剣勝負だって!手を抜くのは失礼だって父上が!」

「それは男同士の話よ。…女子は男の惹き立て役に回っていればよいものを」

「だ、だって!」

「良祐は次代の藩主になる身。…それが女に剣で敗れたとあらば風聞に傷がつくであろうが」

「…そんな」

「まったく…お前もあの女と同じよ。自分というものを弁えん頭の足らん女じゃ」


好きで…好きで姫なんかに…

どうして…


「うっ…えぐっ…うぐぅ…」

ざっ

「晴香…なに泣いてるんだ?」

「…良祐…」

「ホラホラ、顔を拭いて。これじゃ折角の可愛い顔が台無しだぞ」

「…………」

「…?どうした、僕の顔をそんなにジロジロ見て?」

「…良祐…あたし…もういや…」

「…晴香?」

「…あたしもうお城なんかに住みたくない!綺麗な着物もいらない!…お姫様なんか…お姫様なんかになりたくないよぉ!…良祐…うっ…うわああああん」

「…晴香…」

「う、うううううう…グス…」

「…そうか…晴香は姫になるのが嫌なんだね。…じゃあ、ならなければいいんだよ!」

「ううう……え?」

「うん。…晴香は僕の妹なんだから、ずっと僕の側にいて一緒に遊んでくれればいいよ」

「…ほんと?」

「うん!大きくなって僕が藩主になっても、側にいて僕を助けて欲しいんだ」

「…約束…」

「ん?」

「…約束してくれる?」

「ああ!約束だ。…じゃあ、なにして遊ぼうか?」

「うん!晴香ね……」


…………

……







「…夢…か」

「…………」

「…どうして、今さらどうしてあの頃のことを…」


(「えええぇ!」)


「…ん?廊下から?」


(「…ホント!?じゃあ殿様のお命はもう…」)

(「間違い無いよ。城代様と御典医が話してるのをこの耳でちゃんと聞いたんだから!」)

「……!」

がらっ

「きゃああ!」
「ひ、姫様ぁ!?…いつからお起きに…」

「…あんた達、今の話を詳しく聞かせなさい。言わねば…」

「ひ、ひぃいいい!」

「殺す!」


<尾根城…城代の部屋>


「…すると、南森達はその風阿児の行者一行5人にやられたといんだな?」

「じ、城代…い、いかがなされます?やつらの次の狙いはおそらくワシら」

「慌てるな、典医!…いくら相手が風阿児の行者といえども、ほんの数人。こちらには数百の手勢と、それに…ククク」

「は、はぁ…安心してよろしいのですな?」

「ああ。…それに、代わりなどいくらでもいる。人買いも女も…城主の代わりさえもな」

バン!

「城代!それはどういう意味よ!?」


「ひ、姫!?」
「…聞いてしまわれたのですか…それに、ククク…どうなされました?そのお姿」

「答えよ!城代!典医!…さもなくば…」

カチャ

「斬る!」

「……クククク…キャハハハハハハ!!!…ひ、姫、それは怖い怖い」

「笑うなぁ!私は本気だぞ!」

「その言葉使い、男の装束…丁寧に髷まで結われて。いやいやお勇ましいことですなぁ、姫」

「姫ではない!…私は女を捨てたのだ!…さぁ、貴様らのような腰抜けくらいなら私でも斬れるぞ!大人しく白状せい!」

「フフフ…いたしかたありませんかなぁ」
「じ、城代」
「しょうがないだろ?私も命は惜しいですからなぁ。…姫も知っての通り殿のお命はもう長くはない。後継ぎすら決まらぬこの状態で召されては我が尾根藩もお取り潰し。そこで殿には隠居していただき養子を迎えて藩主に座っていただこうというワケでして、先日から幕府の重鎮に働きかけていたのです」

「くっ…貴様のその資金はどこから捻出している?たかが一家臣にそのような蓄えはあるまい!この財政難の尾根藩にそのような余裕は…まさか?」

「はい、風阿児からの援助金ですよ」

「では…あの噂は…」

「ふふ…まあ風阿児というのは看板で、実態はただの人買いでしたがなぁ…カカカ」

「き、貴様ぁ!…やはり貴様こそ我が藩の癌であったか…外道がぁ!覚悟!」

キンッ!

「…………!」

「お戯れを、晴香姫」
「1歩でも動けば命の保証はいたしかねまする」
「…………」
「刀は…預からせていただきます」


「な、なんじゃそなたらは!?い、いつのまに」


「炎の将、焔斧」
「風の将、鬼烈」
「雷の将、迅雷」
「氷の将、雹」

「『四葉衆!』見参!!」

「ククク…根来の喇叭どもよ。本来は尾根藩の警護にあたっている者たちだ」

「な、どうして!?下郎が!私を誰だと…」

「淫売の子が…吠えるな」
「我らはお前を姫などと認めた憶えはないぞ」

「…クッ!」

「ククク…だとよ、姫様。とっくに見捨てられてたんだよ、お前ら兄弟はな」

ビリッ

「きゃあああああ!!!」

「フンッ!…悲鳴は立派に女じゃねぇかよ。それに…」


ビリッ!ビリリリリリ……!

「きゃあああ!!いやあああああ!!!」

「これが女の体じゃなくてなんなんだよ?…生娘みたいな声あげやがってよ、淫乱が」

「ぶ、無礼な…きゃ!」

ばきぃ!

「てめぇはいつも俺に言ってたよなぁ…毒蛇だとか外道とかなぁ」

ばきぃ!

「うっ」

「てめぇが言うなよ、牝犬!…何人の男を咥えこんでも満足できねぇような女がよ」

「…な…なんですって…」

「千姫御前も真っ青だろうよ…あの痴態を見せられちゃあな」

「…なに…それ…」

「てめぇが飲んでたあの薬湯…あれは『蘭麝湯』という当代きっての媚薬さ」

「…うそ…」

「答えてやりな、典医」

「ハイ…微量ですから即効性ではありませんがな。もっともこれだけ長期間服用すれば立派な中毒といっても過言ではありますまいて」

「…う…そ…」

「なぁに、体に訊けば分かることよ」

「…え?…いや…いやああ!!!!!!」


<その頃…先生達は…>

「ホントに一人で乗りこむ気かよ?」

「…私一人のほうがいいのです」

「じゃあ!あたし達が足手まといとでも言うワケ?」
「乙女さん、それは…」
「だってそうじゃない!昨夜の牢での一件といい…まるであたし達が邪魔者みたいに…」

「…そう受けとってくれても構いません」

「なっ?」
「先生まで…」
「ケンカはだめだよ〜」

「乙女…いくらあなたが強くても、相手が風阿児となると勝手が違います。…力だけでは勝てません」

「でっ、でも…」

「…万が一相手が『不可視の力』を使用した場合、対抗できるのは私のみ…」

「…………」
「…乙女…」
「乙女さん…先生の仰るとおりです。ここは先生を信じましょう」

「…ごめんなさい…乙女」

「謝まんないでよ!…先生が無事に帰ってきてくれればそれで十分なんだから」

「…乙女…」

「俺も乙女と一緒だぜ…死なないでくれよ」
「早く帰ってきてね」

「護…おみさ…おりがとう」

「先生…これを」

「…?…この包みはなんですか?」

「…お守りですわ…後で開けてみてください」

「…はい…」


<城代の部屋>

はあ はあ はあ

「最初のうちはキツかったが、今じゃあちょうどいい具合だぜ」

「い…や…ああ」

はあ はあ はあ

「あせんなって、俺が果てても次がいるんだからよ」

「…や…あっ…やだぁ…」

「ふん…これで分かったろ?てめぇは誰に抱かれても感じるような体になっちまったんだよ。殺したいほど憎い相手でもな!」

「…あっ…あふぅ…くっ」

「分かったろ?…男の真似をしようが、しょせんてめぇは女なんだよ」

「く…くう…やっ!…ああああ」

「そろそろイかせてやろうか?…なぁに、どうせあとで記憶は消しといてやるからよ。安心して果てな」

はあ はあ はあ

「あっ…やだ…いいい…いやっ!良祐ぇ!!」

「クククッ…そういや言い忘れてたけどな」

はあ はあ はあ

「ああっ…あああ!!」

「てめぇを政略結婚に利用しようと言いだしたのは、他ならぬ良祐なんだぜ」

「…え?…嘘…ああああっ…」

「嘘じゃねぇよ」

「嘘…嘘…うそよ」

「ククク…じゃ、そろそろ終わりにしようか」

「嘘…イヤ…い、いやああああああ!!!」

 ・
 ・

「どうだ?」

「…ダメです、城代。…完全に壊れております」

「果てたと同時にうんともすんとも言わなくなったからなぁ。…今までは大丈夫だったじゃねぇか?」

「兆候はあったのですが…おそらく姫の根幹になっている『何か』が壊れたのでしょう」

「ちっ!…まあこいつも風阿児に殺られたということで処分……いや、まだ使い道はあるか。それよりも、四葉衆!」

「ハッ!」

「歓迎の用意をしておけ!…もしその行者が『あのお方』の仰られた“手の甲に文字がある者”だとすればな。…もうすぐ、月が昇るのだから」


<山の山腹にて…>


「…晴れてくれましたね」


月が昇る…

全身に満月の光を浴びる先生。
虐げられた弱者の声なき呪詛が、怨みが、怒りが…月光をあびて昇華する。『不可視の力』へと!!
先生の体から金色のオーラが立ち上る。


いまや彼女は無敵の超人!
カレリンをも上回るパワーと、ビタリー・シェルボをも超える跳脚力を備えた究極の暗殺者だ!


「…行きます!」


<夜半…尾根城>

「ふあああああ!!…ねむぃなぁ」
「ったくよ!なんで夜通し厳重警戒なんだ?賊でも忍び込むって言うのかよ」
「しゃーねぇよ、城代様のご命令なんだから」

「こら!無駄口を叩くな!…殿の様態がすぐれぬ今、風阿児の連中が暴徒と化して攻めてこんとも限らんじゃろうが」

「まさかぁ…なぁ?」

「…………」

ゆさゆさ

「どした?」

「……ハッ!い、いや…さっき、本丸の壁に誰かがへばりついていたような…」

「バカ!この城は戦国に作られた城だぞ。そんな真似、忍はおろか猿でさえムリじゃ」

「そ、そうですよね…やっぱ寝ぼけてたのかな…」

「気合いれろ!…まったく…」


<城代の部屋>


「じ、城代…ほんとに大丈夫じゃな?もっと兵を集めたほうが…」

「心配すんなよ。…さきほどの『四葉衆』の動きを見たであろう。それにこの尾根城は、かの伊達正宗候をもってしても苦戦せしめたほどの奥州一の名城だ。城兵には鉄砲組も混ぜてある。いくら風阿児の行者でもまずここまでは攻め込めまい」

「しかしですぞ!南森達を壊滅させたという『不可視の力』をもってすればもしかしたら…」

「はははは!歳をとれば心配性になるもんだ。…先代の殿のお手つき女と密通したというあの武勇伝はどこにいった?」

「昔の話はよしてくだされ。…もうこれ以上危ない橋を渡るのはごめんですじゃ。ワシが城代に手を貸したのは純粋に『蘭麝湯』の効力を試してみたかったからじゃよ…この件が済み次第隠居して、これまでの実験の結果を分析してみたいのですじゃ。…この『蘭麝湯』…ただの媚薬とはどうしても考えられませぬからのう…」

「確かにな。…風阿児の連中が実際にこれをどう使用しているのか…俺にもさっぱりわからん。『あのお方』はなにも話してはくださらなかったからな」

「…人の脳髄に直接影響を与える効能が見られる…阿片などと違うのは神経の活性化というよりも幻覚作用が優先されるということ…」

「ほう?」

「つまりじゃ、この薬を飲んで女子がよがるのは、幻覚によって相手が好いておる男に見えるようになるためなのじゃよ。…やがて性感が開発されて先程の晴香姫のようになるのじゃが…どうもそれは二次的な作用であって本来は何か別の用途があるような気がするのじゃ」

「学者がどこに興味を持とうと知ったことじゃねぇ。こいつが最高の媚薬であるという事実には違いないんだ!こいつのおかげで俺はここまでこれたのだからな。がはははははは!」



「…『蘭麝湯』は媚薬などではありません…」


「なにぃ?」
「な、何物だ貴様ぁ!?」


「風阿児の行者に名などありません…」


「ふ、風阿児じゃと!…ひっひいいいいいいいい!!」
「貴様ぁ…どうやってここまで?侵入する隙などなかったはず!?…ま、まさか…」


「『不可視の力』を使えば造作もないこと…」


「城壁をよじ登って…」


「違います!!こ、これは『千里歩の術』といって…」


「でも…腕に漆喰の跡がべったりとついてるぞ」


「へ?…こ、これは!その…」


「(今だ!)四葉衆!!!」


「はっ!」
「御意!」
「ゆくぞ!」
「応!」

「四葉衆奥義!『絶の陣』!!!」


「しまった!上!?」


ジャキィーーーン!!!!!


「…………どうだ?」
「殺ったか?」


「不意討ちとは卑怯です!」


「なっ!?」
「わ、我らの動きを上回ったというのか?」


「おしおき!です」

ひんっ

どぐしゃあ!!

「焔斧ー!雹ー!!」
「あ…頭が吹き飛んだ…」

「な、なにをしてやがるっ!怯むんじゃねぇ!」

「は、話が違いすぎます!…こ、こいつ…」
「ば、バケモノだぁ!!」

「失礼な!」

ひんっ!


ぐしゃああ!!

「うぎゃああああああ!!!」

「ひっ…ひいいいいいいいいい!!だ…誰か助けてくれ〜」
「…ちっ!」

どん

「え?…あっわわわわ…じ、城代?な、なにをする…」


「邪魔です!」


ひんっ!


ぐしゃあああ!!

「ぎゃあああああああああああ!!!」


「…おしおきです…さあ!あとはあなた一人…」


「フフフ…じじい…最後まで俺の役にたってくれてありがとよ。おかげで時間が稼げたぜ」


「!?…晴香姫!?…まさかそれは…」


「ククク…南森のヤツも使ったかい?『傀儡の術』よ」


「やめなさい!…彼女は!!」


「近づくなぁ!!」


バンッ!


「(…短筒!?)くっ!」


「…これでてめえもお終いだよ…ククク…どうれ」

サッ

「…………」

「晴香よぉ…お前の出番だぜぇ。ククク」

「…やめなさい!彼女はもう!!!」

バンッ!

「クッ」

「晴香、命令だ!あいつを殺せ…ククク…もう遅えよ…」

コク

「…ククク…動けねぇよなぁ?コイツを狙えば短筒が、俺を殺せばその隙にコイツがてめぇを襲うぜぇ。…そして俺がコイツが同時に撃てば…ククク」


「…なんてことを…」


「まったくすげぇよなぁ、風阿児ってヤツはよ。こんな悪魔の技をよくもまあ生みだしたものだ。…まあ、そのおかげで復讐を果たせるんだから文句も言えねぇよなぁ」


「…復讐?」


「そうよ。…俺も実はこの国の生まれでな、冷害の年に年貢を払えなくて売っぱらわれちまったんだよ。牛馬のごとくこき使われた果てによぉ…南蛮人に奴婢として売られてルソン行きよ。そりゃ歪むわなぁ…ククク…」


「…………」


「不公平だよなぁ…俺ばかりこんな目に遭ってよ。だからこの国の人間には不幸になって貰わなきゃ困るんだよ…だって俺がカワイソウだろ?」


「……自分のような不幸な人間を…これ以上増やすつもりなのですか…」


「さすがに俺だって良心が痛む時もあるさ…だがな!この城の連中を見ろ!…てめぇの事しか考えられない無能な藩主様を見ろ!…コイツらのせいで俺は…俺はなぁ!!」


「…………」

「…ククク…痛ぇんだよ…こいつが疼いて疼いて痛ぇんだよ…忘れさせてくれねぇんだよ!売られる時に付けられたこの右手の焼印がなぁ!」


ざっ

「…焼印?…じゃあ、あなたは…」


「ルソンで会った『あの方』も、コイツを見て俺を何かと勘違いしてたみたいだったぜ。…『それは生まれた時からあったのか?』って訊くから、『そうだ』って答えたら俺を買い上げて自由にしてくれたんだよ。…そして、この『傀儡の術』と『蘭麝湯』の製法を教えてくれた」


「まさか…そ、その男は金色の瞳をした……」


「男?…いいや、すげぇ別嬪だったぜ。俺を男にしてくれたのもそいつだったしな。たしか名前は…」


「…天沢…郁未…?」


「そうそう、知り合いだったのかよ?…これもなんかの縁だ!恨むんならこんな外道な術を教えてくれた風阿児の連中を恨みなぁ!」


「郁未…あなたは…どこまで!」


「晴香!殺れ!」

コク


ひんっ!


ぐしゃあああああ!!


<その頃…城の見える丘で>

「先生…大丈夫かな?…」
「悔しいけど、今のあたし達には無事を祈るくらいしか出来ない」
「神様にお祈りするの?」
「…そうね、おみさ。…先生の無事を祈るんだから風阿児の神様にお祈りしようね」


「…………」
「おばさん…どうしたんですか?さっきからずっと黙りこんで」
「住井君…風阿児ってなんなのでしょうね?」
「自然崇拝だの密教の流れを汲むとか…いろいろ混ざったよく分かんない宗教みたいスね。先生が属してるくらいだからまともな宗教じゃないだろうけど…それに、あの…」
「『不可視の力』…恐ろしい力ですよね」
「ああ…そうっスね」
「…乙女さんには黙ってたのですが…先生…『今度の戦いは私でも勝てるかどうかは分からない』って…」
「な、なんだってぇ?…そんなにその城代ってヤバイんですか?」
「いえ…本当に恐ろしいのは…」


<城…>


ぎゃあああああああああああああああ!!!!

「う、腕がぁ〜!!お、俺の腕がぁあ!!!!!!!!!」

「…………」


「…まさか…そんな…」


「腕ぇ〜!!!!腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕うでぇ〜〜〜〜〜!!!!!!!」

「…………」


「…『不可視の力』……」


「いいでぇええええええええ!!!…は、晴香ぁ〜〜!!!!!!!てめぇ!!!」

「…………」


ひんっ


ぐしゃ!


「うごぉあ!!……………」

「…………」


「…まさか…『羽化』してしまうなんて…」


「…………」


「…意識は…もう死んでるのに…」


「…………」


「…瞳が…金色に染まりましたか…こんなに早く…」


「…………」


「…よほど辛い目に遭ったのでしょうね…」


「…………」


「…やはりあの時…牢で出会ったあの時に」


「…………」


「…殺してあげるべきでしたね…晴香姫…」


「…………」

ひんっ!

どがあああああああああん!!!!


<城の見える丘で>


「晴香姫が!?」
「…伏せておいてくれと頼まれたのですが…乙女とおみさには内緒ですよ」
「ああ…でも、どうして…」
「…詳しくは知りません…が、『不可視の力』を使うためには修練が必要なのだそうです。…あの『蘭麝湯』という薬湯を使って」
「『蘭麝湯』!?…あのニセ風阿児の連中が使ってたっていうヤバイ薬だろ!?…じゃあ先生は…」
「…あの薬は生成の過程によって様々な効用があるらしいのです。共通しているのは『幻覚作用』を引き起こすということ…過去の出来事や自分の欲望…封じ込められていた意識などが幻影となって現れるのです」
「…なんでおばさんがそこまで…」
「あなた達と出会った時…私は記憶喪失で自分の名前すら知りませんでしたよね?その封じられていた記憶を引き出すために…」
「あ、あれは先生の霊視じゃあ?」
「…先生がそう言ったのですね。…『蘭麝湯』の効用で断片的ではありますが、過去の光景と思われる情景が浮かびました……私が人を殺してる…何人も…男も女も老人まで…そして泣き叫ぶ女の子の姿を…ね」
「…………」
「数多くの種類の『蘭麝湯』を飲んで…様々な幻覚に精神を耐えることが出来た人間のみ『不可視の力』を得ることが出来るのだそうです」
「…………」
「薬を長期的に服用していると瞳の色がどんどん変化していって…最終的には金色の瞳に変化するらしいのですが」
「で、でも先生は…」
「ええ…どういう方法かは知りませんけど…薬も必要としないし瞳の色も…」
「…………」
「先生は知ってたのですね…だから…私達を」
「じゃあ…じゃあ先生は晴香姫を!?」
「はい…最悪の場合は…」


「おみさ…眠たかったら寝ててもいいのよ」
「大丈夫!先生も頑張ってるんだから私も起きてるよ」
「そう…」
「ねぇ…乙女」
「ん?」


「お月様…真っ赤だよ」


<城…廊下>


きゃあああああああああ!!!!


「や、やめなさい!…あなたの相手は私です!」


ひんっ


ぐしゃああああああ!!!


「…………」


「…ひっひいいいいいいいい!!!!」
「いやああああああああ!!!助けて〜!!!」

「待ちなさい!」

ひんっ!


どがあああああああん!!

「…………」

はあ はあ はあ

「やはり…『不可視の力』を使う者同士では…くっ!」

どたどたどたどた…

「いたぞー!」
「姫がご乱心召されたぞー!」
「ひっ!な、なんだこの死体の山は!?」
「撃て!もはや姫とて構うなぁ!!」

バーン! バーン!

「やめなさい!!ここから立ち去ってください!!」


バーン! バーン!

「…………」


「て、鉄砲が効かんぞ!」
「斬れ!槍と刀で切り裂け!!もはや姫と思うな!ここを通すワケにはいかんのだ!」
「死守しろー!!この先にはー!」

「…………」


ひんっ!

ぐしゃあああああ!!!

「ひっ…ひいいいいいいい!!」
「ば、バケモノだぁ!」
「ひひひ…こ、これは夢…そうだろ…だって人が爆発…」

ひんっ!

どがあああああん!!


「ぐふぉ!」
「お、俺の足がぁああああ!!!」
「に、逃げろー!!」


「…………」


「晴香姫…」

(これ以上犠牲を出す訳には…『不可視の力』が通じないなら肉弾戦しか…)


「…………」



「…この事態を招いたのは私の甘さです…」

(勝負は一撃で決まる…)


「…………」



「…あなたを殺せなかった私の弱さです…」

(…おばさん…みんな…力を貸してくださいね)


「…………」


「…決着を…つけましょう!」


だっ!


「…………」


だっ!



--りょう…すけ



ばしぃ!


「……!」


(今…確かに…)


ぐさぁ!!!


「…………」


どさっ


「…………」


「…………」



「…おばさんの包丁のぶん、届きましたね…でなければ胸を貫かれていたのは私のほうでした」

(…晴香姫…あなたは…)


「……………」



「…あそこに寝てるのが…お兄様ですか…」

(…ただ…お兄様に会いたかっただけなのですね…それだけの為に…)


「…………」


「…深手です…もうすぐ楽になりますよ」

(…ごめんなさい…)


「…………」


「さっきあの男が言ってましたよね…『悪魔の技』と」

(…償いになるとは思いませんが…)


「…………」


「…ですが…違うのですよ…これが本来の…」

(…せめて…)


「…………」



「…傀儡の術です…」

(…心安らかに…)




……………………

…………





どうして…



「うっ…えぐっ…うぐぅ…」

ざっ

「晴香…なに泣いてるんだ?」

「…良祐…」



どうして…今更どうしてこんな夢を…



「ホラホラ、顔を拭いて。これじゃ折角の可愛い顔が台無しだぞ」

「…………」



でも…いいや…
考えるの…疲れたから



「…?どうした、僕の顔をそんなにジロジロ見て?」

「…良祐…あたし…もういや…」

「…晴香?」

「…あたしもうお城なんかに住みたくない!綺麗な着物もいらない!…お姫様なんか…お姫様なんかになりたくないよぉ!…良祐…うっ…うわああああん」

「…晴香…」

「う、うううううう…グス…」



それに…眠くなってきたな…

じゃあ…ちょっと眠ろう



「…そうか…晴香は姫になるのが嫌なんだね。…じゃあ、ならなければいいんだよ!」

「ううう……え?」

「うん。…晴香は僕の妹なんだから、ずっと僕の側にいて一緒に遊んでくれればいいよ」

「…ほんと?」

「うん!大きくなって僕が藩主になっても、側にいて僕を助けて欲しいんだ」

「…約束…」

「ん?」

「…約束してくれる?」



なんか…ぼやけて…きたな…


もう…寝よ…う…



「ああ!約束だ。…じゃあ、なにして遊ぼうか?」



…お…や…すみ…



「うん!晴香ね!」



…りょ…うす……け…



「竹馬がいい!」


…………

……





<数日後…城主の部屋>


「……ここは…」

「殿ー!」
「お目覚めになられましたか?」

「…ああ…そういえば…晴香はどうした?」

「…姫…ですか?…それは…」
「実は…」

「…死んだのだな?」

「え?」
「殿…なぜそれを…?」
「風阿児の連中により…姫および城代など多数の者が犠牲に…」

「…そうか…」

「申し訳ござりませぬ!この不祥事が知れたら国替えはもはや絶望…」
「我ら一同、責任を取って腹を切りまする!」

「よい…もうよい…私は出家するつもりだ」

「殿!」
「なんと申されました!」

「…ふふ…夢を見たぞ…とても不思議な夢だった…」

「殿…」
「…………」

「…晴香とな…竹馬をする約束をしててな…だが私はその約束を忘れてしまっていた。…それなのにあいつはずっと約束の場所で待ってた」

「…………」
「…………」

「…昔からそういう子だったよ…。それからもう何年も経ったというのに、あいつは童のままの姿であそこで待ち続けていた。…偶然そこへ通りかかった私は、その童が晴香と気付かずに、なにをしている?と尋ねたのだ。…するとこう言うではないか『約束だから』とな」

「…………」
「…………」

「私はなぜかその童がいたたまれなくなってな、身分も忘れて一緒に竹馬で遊んでやった…楽しかったぞ。…やがて日も暮れて、その童に家に帰るように言った…その子は『うん、今日は遊んでくれてありがとう』と元気よく頷いて遠くに駆けて行ったよ…そして夕闇に消えた」

「…………」
「…………」

「…その途端、私は全てを思い出した。慌てて童…いや晴香を捜したがもうどこにもいなかった。…夕闇の中一人になった私は泣いた。後悔したよ…そしてもう二度と晴香に会えないということを知った…」

「…………」
「…殿……」

「…すまぬ…皆の者、しばらく私を一人にしてくれ」

「…はっ」
「御意」

 ・
 ・

「…晴香……………うっうううううううううう」


<数日後…>

「う〜、おなかすいたよ〜」
「おみさ、あんたはそれしか言えないの!」
「だっておなかすいたよ〜」
「修行が足りません」
「先生はどうせメシ食えないだろ」
「まあまあ、あそこにうどん屋があるからそこお昼食べていきましょう」
「さすがおばさん。わ〜い、ごはんだ〜」

とたとたとた…

「こらっ!おみさ!…走ってまた転んでも知らないわよ!…ったくもう」

とたとたとた…


「乙女もおみさも元気だなぁー…ちったぁ2人とも女らしくしろよ」
「住井君…いいじゃないの。女の子も元気が一番よ」
「そりゃまぁ…そうですけど」

「…………」

「…どうかしました、先生?」

「…………」

「…まだ気に病んでいるのですか?」

「…おばさん…もし…私の瞳の色が変わった時は…」

「はい…」

「…遠慮なくお願いしますね…」

「お断りします」

「え?」

「もし…そんなことになっても…その時は必ず先生を救ってみせますわ。私と住井君よ乙女とおみさ…みんなで、ね」

「…………」


「先生ー!おばさーん!大変だよー!」
「乙女がー!乙女がまた男呼ばわりされてキれちまったー!早く止めないとあの店跡形もなくなっちまう!」

「あらあら…うふふ」
「…修行が足りません…」
「行きましょう、先生」

「…はい…」


超自然現象。それを証明する多くの伝承が古来より東西にわたって受け継がれている。この一行もこのような未知の世界へと旅を続けるのであろう。

たとえあなたが信じようと信じまいと。  (ナレーション.野上一郎)

  百三十六話.完!


<次回予告>

住井が幼児に猥褻行為を働いたとう容疑をかけられ投獄されてしまう。
その真相を探るうちに、乙女は訴えを起こした本人由依と出会う。
彼女の言動に不審を感じた乙女は由依を先生に引き合わせるが、事態は思わぬ展開に!
次回「翔べ!必殺うらごろし?」

 『由依が近づくと変質者が分かる!』 ご期待ください(次回放送は未定です)
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苺しぇぃく! その9

「『はぐれ3匹!』ただいま参上!!」

シーーーーーン

「…………」
「…兄貴…みんな固まってますけど…」
「…だから俺は『闘魂三銃士』のほうがいいって言ったんだよ…」

「…と、とにかく観念するんだなポニ子!」
「…イヒヒ、可愛がってやるぜぇ」

「…ポ、ポニ子じゃないもん!」

「お前らぁ!?さりげなく俺らを無視すんなぁ!」

「……YOSHIさん、どうしてここに…」

「お、おぅ!…ポニ子さんの様子がおかしかったんで後をつけてみたら、ここに辿りついたんです。危ないところでしたね」

「…は、はぁ…」

「…とにかく、ここから先はこの“三刀流のYOSHI”がお引き受けいたしましょう!てめぇら…覚悟しな!」

「兄貴、待って!」
「ここは僕と神凪さんに任せて!…兄貴はポニ子さんと一緒に雀バルを」

「…分かった。頼んだぞ!…さ、ポニ子さん!」
「ポニ子じゃないもん!…二人とも、死なないでね」

「へへへ…(俺らって…)」
「そちらも気を付けて(ええ、すごくかっこいいっスよ、神凪さん)」

「逃がすなぁ!」
「待ちやがれ!」

「おっと!…お前らの相手はこのYOSHI兄貴の一番弟子“D・神凪”と!」
「同じく“うとんた”だ!ここから先は通さないぞ」

はああああああああああ!!!

「な、なんだぁ!?」
「すごい…闘気だ!」

「この回のために編み出した新技だ…食らいな!『SS冥界波』!!」

*SS冥界波…クズSS作家の末路、『SS地獄』に相手を叩きこむ技。この技の対策としてスライムさんのHPで澪りんに懺悔しておくことを薦める(笑)

「同じく新技!…『SSダイヤモンドダスト』!!」

*SSダイヤモンドダスト…寒〜いギャグで相手を凍らせる。使い手多数(笑)

「シン!」
「大丈夫、いくよ北一色さん」

『SSフィールド全開!!!』

ピキーーーーン

「あ、あれ?」
「…全然…効いてないみたいですけど…って、わああああ!!!」

『ジェットストリームアタック!!(集団暴行殺法)』

どがあああああん!!

「うぎゃああああ!!!」
「いやああああ!!!!」

 ・
 ・

とどたどたどたどた…

「急がないと雀バルは…」
「もうヤツに犯されてしまったのかも」
「ひぃいいいいい!!…不吉なこと言わないでー!」
「そうならないためにも、とにかく……ちぃっ!」

とどたどたどたどた…

「待ちやがれてめぇら!」
「もう逃げられないぞ!」

「連中が追ってきてる…あの二人には荷が重かったか…」
「…はぁ…期待してなかったけど、時間稼ぎにもならなかったのね…どうする?」
「しかたない…やはり俺がやる!」
「あの人数をいっぺんに!?…い、いくらYOSHIさんでもムリよ!」
「…なぁに、俺の最終奥義をもってすればやつらなど」

かちゃり

「三刀流最終奥義!…『SS三千世界・“連”』!!!」

*SS三千世界・“連”…3刀流(連載を3本持つ)の最終奥義。6日連続投稿を敢行することで生み出されるその威力は絶大!だが…

ズリッ…ドシン!

「…うう…2日で失敗」(←実話です)

「…………」(呆然)


「な、なんだかよく分からないけど、とにかくやっちまぇ!」
「おお!」

『ジェットストリームアタック!!(集団暴行殺法)』

「わ!…わわわわわわわわ!!!!」

どがああああああん!!

ばたり

「よ、YOSHIさーーん!!」

「うう…じ、時代が変わったというのか…」

「おっさん達のSSなんか、もう古くて読んでられねぇんだよ!」(←嘘ですよ)
「さっさと引退しちまいな!」(←みんな、がんばろうね)

ほほほほほほ

「ん?」
「な、なんだこの笑い声は!?」

「若造ども!寝言は寝てから言うものでおじゃる」
「その暴言!たとえ天が見逃しても僕と雪ちゃんが許しません」
「俺のSSを読んで、まだそんな口が利けるんなら誉めてもやるけどな」

「はなやまろさん?ポン太さん?ぺ、PELSONAさんまで?…ど、どうして?」

「レディの危機とあらば、どこでだって参上しますよ」
「PELSONAちゃん、キャラがころころ変わるねぇ」
「説明は後でおじゃる。まずはこやつらを血祭りにあげてからじゃ」

「んだとぉ!」
「ぬかせ!じじぃどもが!!SSライトニングボルト!!」

「甘い!『おまけSS特大版流星拳』!!」

*おまけSS特大版流星拳…スペシャルバージョン。(笑)変身動物ポン太さんがいけだものさんに献上した限定品である。 なんと一度に41連発(マジ)のおまけSSを繰り出す超大技。

「ぐあああああ!!!…ぼ、僕の手数を上回るなんて」
「シ、シンーー!…お、おのれよくも」

「ホホホ…今度はまろの番じゃ、ホレ、『SS跳尾獅子』!!」

バシィ!

「ぎゃああああ!!」
「狂税炉さん!?」
「な、なんて技だ!…これほどとは…クッ」

*SS跳尾獅子…流麗な文体で知られるはにゃまろさんの必殺技。その華麗さに目を奪われている隙に強烈な衝撃を叩きこむ、美しくも危険な技。

「あわわわ!…シン!」
「大丈夫!、いくよ北一色さん」

『SSフィールド全開!!!』

ピキーーン

「SSフィールド?小細工を。一対一ならお前達に勝ち目は…ない!」

バキバキバキ

「フ、フィールドがぁ!?」
「侵食されるぅ〜〜!!」

「シン!北一色!戻れー!…ジェットストリ−ムアタックだぁ!」

「させるかぁ!…『ハートブレイクショット』!!」

ドクンッ

「ぐはぁ!……」
「む、ムネがぁ〜!!……」
「ヒッ・…………」

*ハートブレイクショット…別名「心臓撃ち」。「心臓が停まるような衝撃」を与える技。衝撃のあまり時間がとまったように思える。

「…………」
「…………」

「“魔法の時間”…数秒程だが十分だ。…死ね!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

バキ!ドガ!ボキ!バシ!ドギィ!グキ!

「うぎゃああああ!!」
「…い…いつのまに・…」
「ジ、ジーザース!(ちくしょう)」

ドタ ドタ ドタ

*オラオラッ…30本以上SS書いてる人ならOK。手数勝負。PELSONAさんのは一発一発も強烈。

「ひ、ひぃいいいいいい!!」

「あとはお前だけか…さあ、どうやって死にたい?」

「ひっ…こ、こうなったら…『SA・YO・NA・RA』(ぼそり)」(←続きは?)

「うがああああああ!!!!」

「うひひ…このサクラ様には『ネックローリング』という切り札が…って、うわああああ!!!」

「あたしを忘れるんじゃないわよ!サッカーボールキーック!」

ばきぃ!

「うぎゃあああああああ!!」

ドサッ

「…これで全員ね。…で?どうしてお三方がここに?」

「SS作家連盟本部からの指令でね、『選考委員長の身柄を拘束しろ』と通達が出たんだ」

「え?…じゃあ…」

「我々は実はSS作家連盟の『査察官』なのです。伝統ある卓手楠賞の権威を私物化しようとする悪党を取り締まるために参加していたのですよ」
「このことは内緒でおじゃるよ」

「そうなんだ…は!?そうだ、雀バルが!?」

「あいつがどうかしたのか?」

「じ、実は…」

 ・
 ・

<その頃…雀バルは…>

ウィィィィィィィン

「ひっ!ひぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ククク…“ドラゴン殺し”とはまた凄いものを持ってるなぁ。どぅれ…」

ウィィィィィィィン

「やっ…やだああああああ!!!」

「大丈夫、“ストロベリーシェィク”を飲んだんだから痛みもすぐに快感に変わるぞ。グフフ」


「全然大丈夫じゃねぇーー!!ポニ子ーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

バーン!

「雀バルー!!無事ーーー!?」

「な、なんじゃああ!?」

「……ポニ子……ホントに…ホントにポニ子か?」

「…ポ、ポニ子じゃないもん!…まだ無事みたいね?…よかった…。さぁ、覚悟なさい!変態ジジイ」

「選考委員長!!SS作家連盟の通達により、貴様を逮捕する!ムダな抵抗はやめておとなしく縛につけ!」
「手下は全て倒したでおじゃるよ」

「な、なんじゃと!?」

「さあ、観念するんだな」
「よくも雀バルを酷い目に合わせてくれたわねぇ!許さないんだから!」

「…そうか…あいつらを倒したか…ククク」

「ん?」
「気でもふれたのか?」

「お前ら強いのぉ…ククク…それが貴様らの最大の弱点よ!食らえ!『SS幻狼魔…』」

どがぁ

「…!」

「選考委員長!その技を使わせるワケにはいかん!」

「…し、静村幸!…き、貴様、ワシを裏切る気か!?」

「裏切る?…バカを言え、“表返った”んだよ」

「な、なにぃ?」

「ごくろうさん、静村査察官…いや、まだ“コードネーム『オレンジ』”だったっけ」
「お久しぶり、『未完の帝王』」

「元気そうだな?みんな」

「そ、そんなバカなぁ!…クッ!!」

「両手を封じられたらお得意の『SS幻狼魔皇拳』も使えまい。あきらめろ」

「…!!クッ・・……」

*SS幻狼魔皇拳…超ハイクオリティなSSを書く作家のみ使える技。その素晴らしい文章で相手の心を奪い、味方に引き入れてしまう。


「雀バルーっ!」

だきぃ!

「ポニ子…遅かったじゃねぇかよ…危うく薔薇色の世界に引きずりこまれるとこだったんだぜ…」

ばきぃ!

「うがぁ!…な、なにすんだぁ?」

ばきぃ!どがぁ!どごぉ!

「わっわっ!…ポニ子やめろって!!」

「“ポニ子”じゃないわよ!あたしが!……あたしが…どれだけ心…配…し・……」

ドタッ

「…………」

「ポニ子?…オイ?…ポニ子ーッ!」

「…………」

「ポニ子ーッ!ポニ子ーッ!」

「ホホホ、安心するでおじゃる。疲れているのでおじゃるよ」

「え?」

「ポニ子さん必死だったんですよ。…『雀バルを助けるんだ』って…」

「…そうか…」

ドタドタドタドタ…

「ん?」
「なんだ、YOSHIじゃねぇか?」

「選考委員長はどこだー!?」

「お、お前は…よ、YOSHI?…ひぃ…ひぃぃ〜」

「あいにくもう逮捕……って、オイ?」

「死ねぇ!!『SS三千世界』!!」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!」

ガキィン!

「……!…コウ…てめぇ…じゃますんなぁ!!」

「やめろYOSHI!落ちつけ!」

「離せーっ!俺は…俺はコイツを絶対に許さねぇ!!」

「…………」

「離せっ!てめえらも死にてぇのか!?」


パシッ!


「…はにゃ…まろ…?」

「YOSHI…そちの気持ちも分からないではない。…じゃがな、SSは人を傷つける道具ではないのじゃよ」

「…………」

「分かるな?」

「…チィッ!」

ガチャ

「YOSHI…」
「…YOSHIさん…」

「確かにお前の言うとおりだな、はにゃまろ。…ここで俺がそいつを殺っちまったら、俺はこいつと同類になっちまう…」

 ・
 ・

「あれ?…どうして俺は……ん?…狂税炉さんにサクラさん?…北一色さんまで」
「から丸君?…どうして僕らはここに…?」
「はへ?(あれ?)…ウガガガガ!!!!うひがひはい!!はえ〜?(口がイタイ!!なぜ〜?)」
「頭がいてぇ〜」
「クゥ〜ン」

「みんな目が覚めたみたいですね」
「選考委員長さえ倒せば術は解けるからな」
「これで万事解決ですね。めでたしめでたし」
「ほほほほ」


「ひがぁ!ひがぁ!(血がぁ!血がぁ!)」

 ・
 ・

「兄貴…」
「YOSHI兄貴…」

「世話になったな、お前ら…俺は修行の旅に出る!」

「付いて行きやす!」
「僕らはどこまでも兄貴と一緒ですよ!」

「いや…ホントについて来ないで欲しいんだけど」

「遠慮なんかしないでくれ!」
「澪ちゃんにふられた今の僕らには、もう失うものなんてありません!」

「…ま、待て、ホントに一人で修行したいんだよ」

 ・
 ・

「う〜…重い〜!なんで私がポニ子をおぶっていかなきゃなんないんだよ〜」
「ふふふ…ポニ子さんの寝顔、幸せそうですね」
「う〜…重いぞ〜!ダイエットしろポニ子!」

「むにゃむにゃ…ポニ子じゃ…ないもん…」

「…ところで、YOSHIさんっていったいなにがあったの?」
「ん?…ああ、実はのぅ…」
「新人の頃、お前と同じ目に遭ったんだよ。…そりゃ殺したくもなるよなぁ」
「それがトラウマで、彼は『はぐれSS作家』に…」

「…クッ…ククク…ハハハハハハハハハ!」

 ・
 ・

「来るなー!!俺の復讐の旅は終わったんだよー!」

「兄貴ーー!!」
「“はぐれ3匹”は永遠ですーっ!」

「そんな永遠はいらんー!」

 ・
 ・

「よし!今宵はまろの奢りじゃ。みなのもの、飲みに行くぞえ!」
「奢り、いいねぇ」
「僕は雪ちゃんが待ってるから…」
「たまには付き合えよ、ポン太」
「そちらも来るがよいぞ!今日はオフ会じゃ!ホホホ…」

「お供します!先輩!」
「PELSONAさん、お、俺あなたのファンなんです!握手してください!」

「男と握手する趣味なんかねぇよ」

「そ、そんなぁ」
「Maturugiさんも神楽さんも呼んで来ますね」

「ホホホ、堅苦しいのは抜きじゃ!SS作家に先輩も後輩もないぞよ…おや?」


ポロリ〜ン♪(←ギター)

今はこんなに楽しくて〜♪
嫌なことも忘れ果てて〜♪
でもいつかこれ以上の名作生まれても〜♪ 

「おや?この替え歌…WTTSさん?」

「こんばんは、みなさんお揃いで…オフ会ですか?」

「WTTSさんは流しで替え歌?精が出るねぇ」

「ええ…まだまだ未熟なんでこれも修行のウチですよ。…いつか最高の替え歌…『王者の替え歌』を目指してね」

「そうだ!いい機会だから『あの曲』弾いてくれよ」

「…『あの曲』?…ああ、アレですか。OK、では…」

ボロリ〜ン♪


さぁ書き込めよ 掲示板に
物語を 作りはやく
Tacticsを ネタにすれば
限りない創作が可能よ  (ONE!)
Tactics SS
また増える
新しい作家も加わり盛況
Tactics SS
また増える
皆の心に響きながら



「ええ曲やなぁ」
「ひがほまんないよー!(血が止まんないよー!)」
「俺は今、もーれつに感動してるぜ!」
「ワン!」

「…………」
「何を考えてるんですか?コウさん」
「…ポン太…さっきはにゃまろのヤツが言ってたよな…『SSは人を傷つける道具じゃない』って」
「ええ、僕もそう思いますよ」
「あの選考委員長だって、昔は優秀で誇り高いSS作家だったんだそうだ。…だが卓手楠賞を受賞してから人が変わっちまって…やたらプライドだけが高くなっちまって感想を唯の批判としか受け取れなくなっちまった…」
「…………」
「読者に噛み付いたり、『作家性の追究』とか言い出して支離破滅なSSを投稿するようになって…半ば追放のようにSSコーナーから追われちまった…その末路があれだ。」
「…………」
「SSが人を傷つけることだって確かにあるんだよ」
「…そうかもしれません。でも…」

ハートに火がつくぜ 萌え上がるぜ
TACTICSの世界を キャッチしたぜ
創作せずにはいられないのさ
気合の ショートストーリー 愛が力
夢が浮かぶ この掲示板
俺達の メッセージ
OH! YES! 情熱の執筆
合い言葉は一つ
OH BRIGHT! SEA! - SON!
OH! YES! この腕で伝説を
俺は 俺達は 二次創作 作家


「みんな楽しそうです」
「…ああ」
「僕は好きですよ…SSが…タクSSコーナーが」
「雪ちゃんとどっちが好き?」
「そりゃあ雪…って!そんなの選べるワケないじゃないですか!」
「あははははは!」

パチパチパチ…

「良い歌だぁ…舞にも聴かせてやりたかったよ」
「くひかぎはい!(口がイタイ)!…へもいいひょくだ!(でも良い曲だ!)」
「ログとっとこ。良い作品はフロッピーに保管、と」
「WTTSさん!お、俺あなたのファンなんです!握手して…」
「おめーは誰でもそう言うんだな」

「…では好評につき今度は『あかねうた』を…」

「わ!わ!…アレはしんみりするからやめろ!」

「よーし、じゃあみんなでカラオケ行こうぜ!ONE歌大会だ!」

オーーッ!

「…あれ?そういや雀バルさんは」
「あんなバカほっとけよ!ただでさえ人数が多いんだから」
「素直に『二人っきりにさせてやれ』ってどうして言えないのかな?P・E・L・S・O・N・Aちゃん」
「…PELSONASS幻魔拳!!」

ピキーン

「はあ はあ ゆ、雪ちゃんがバニーにー!!うをおおおおお!!!」
「覚めない夢でも見てろ!」

  <続く…次回完結!>

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/8321