決意 投稿者: 雀バル雀
こんこん

(「みさき〜お客さん」)

「…………」

こんこん

(「みさき〜、寝てるの?…ごめんなさいね深山さん…みさきったら、ずっとこんな調子で…」)

「…………」

こんこん

がちゃ

「どうしたの雪ちゃん?」
          
   

「あははは!雪ちゃん、それはいくらなんでも大げさだよ」

「だって…あんた、あんなにわんわん泣いてたから」

「う〜〜…わんわんなんて泣いてないよ〜〜。ちょっとだけだよ〜」

「そう?まあ、いい年した女が迷子になったぐらいで泣きべそかいてたなんてねぇ」

「雪ちゃん…いじわるだよ…」

「ごめんごめん。…じゃあお詫びになんか食べに行こっか?」

「え?」

「大丈夫!今日は私のおごりだから、好きなだけ食べなさい」

「…う、うん。じゃあハンバーガーが食べたいな」

「わかったわ。お姉さんにまかせなさい!」

「うん!雪ちゃん大好き」

「ふふふ…現金ねぇ」



がらがらがら

「それじゃあ行ってきます〜」

「みさき、ホラ、杖忘れてるわよ」

「…え?…いいよ、雪ちゃんと一緒だから」

「…そう…」

          *


「…みさき?」

「…………」

「みさき?」

「…………」

「…ねぇ、みさき…そんなに手、強く握ると痛いんだけど…」

「え!?…あ、あは…ごめんね雪ちゃん」

ワンッ!

「きゃあああ!」

「ちょっ…みさき。落ち着いて、ただの子犬よ」

「…え!?…なんだぁ、いきなりでビックリしたよ〜」

「…………」
       
       *

「ボスでいいのよね?」

「うん!ここのハンバーガー美味しいんだよね」

「あれ?…あんた来た事あるの?」

「…この前…食べたんだ…」

「一人で?」

「……うん。…あ、ここだね」

とたとた

「み、みさき!ここのドアは…」

「え?…きゃあ!」

ごん

「…………」

「馬鹿ね。ここの自動ドアはボタンを押さないと開かないヤツなのよ」

「…………」

「大丈夫?まあ、みさきは頑丈だから平気だろうけど。それよりもドアのほうが壊れてたりして?ハハハ」

「…………」

「…みさき?」

「…………」

「ホラ、しっかりして、ね?」

「…うん…」

      *

ざわざわざわ…

「いらっしゃいませ!ご注文は何になさりますか?」

「雪ちゃんお願い、ね?」

「自分の分くらい自分で注文しなさいよ」

「…うん…」

「ご注文は?」


「…………」


「……あの?…」


「…………」


「…………」


「…………」


「……お客様?」


「…………」

「ごめんなさい、セット二つ!飲み物はコーラでお願いします。…みさき、なにやってるのよ?」


「かしこまりましたー。…オーダー入りまーす!」


「…………」

「…みさき…」

「…メニュー…読めないんだ…」

「…そう」


<川名家の門前で…>

「雪ちゃん、今日はごめんね…」

「…………」

「ここでいいよ。…ここからは…自分の家だから。もう…」

「…………」

「……そ、それじゃあね。おやすみなさい」

「…みさき、待って!」

がし

「ゆ、雪ちゃん?」

「…なんで言わなかったの?」

「………?」

「メニューが見えないのなら、どうして店員にそう言わなかったの?」

「…………」

「そんなことでどうするの?」

「…………」

「いつまでも、私が付いていってあげられるワケじゃないのよ?」

「…………」

「…みさき…」

「…今度は、…今度はちゃんとするから、ね?」」

「…………」

「…ね?雪ちゃん」

「…いつよ?…」


「え?」


「『今度』っていつよ!?あんた何度誘ってもこう言ってたわよね、『また、今度』ってね!…あんたが外に出かけたって聞いた時、やっと…やっと『自分から1歩を踏み出してくれた』って…なのに…」

「…………」

「お母さんから聞いたわよ…あの日から1歩も外に出てないそうね…」

「…………」

「どうして白杖を持たないの?」

「…………」

「あの杖がなんの為にあるのか、知っているわよね?」

「…………」

「注文の時だってそう。…恥ずかしいワケじゃない…」

「…………」

「何黙ってるのよ?」

「…………」

「なら、私が代わりに答えてあげる。『目が見えない』ことを皆に知られたくないから…でしょ?」

「…………」

「学校じゃないのよ。…みさきが光を取り戻せたあの学校じゃあ…」

「…私は……私は誰かに迷惑をかけたくないんだよ…目が見えない事で特別扱いされたくないよ…」

「『迷惑かけたくない』?…そんなの誰だって一緒よ」

「…………」

「…そんなことでどうするのよ…また逃げる気?」

「…雪ちゃんには分からないよ…私がどんな思いをしてるのか、なんて…」

「…それで?」

「…………」

「…みさきの気持ち?…分かるわけないでしょ…私は目が見えるんだから」

「…………」

「…家なら確かに快適でしょうねぇ…誰もみさきのことを、『障害者』扱いしないもの」


「…帰って…」


「…みさき…」

「帰って…帰って……お願いだから早く帰って!!」

「……」

「帰って!…帰って!帰ってったら!!」

「…そう…分かった…帰るわ…」

「……」

「でも、これだけは言わせて…あんたの目はもう、治らないのよ…」

「……」

「…じゃあね。おやすみ」

「……」

        *

ばたん!

どさ

「う…うぐ…えぐ…ううう…」

「…もう嫌だよ…浩平君…どうしてみんな…」

「浩平君…浩平君なら分かってくれるよね?」

「…何処行っちゃったの?…」

「どうして私を一人にするの?…ずっと側に居てくれるって…」

「…もう嫌だよ…こんなの…」

「…………」

「…目さえ…見えた…な…ら…」

「…捜しに…行ける…のに…」

「…………」

      ・
      ・

(「こら〜、みさき!私の給食食べたのあんたでしょ!?」
(「ひがふひょ〜!ははひ、ひらなひよ〜」)
(「その口に入っているのは何だ〜!」)
(「ごくん!…口の中、 なんのこと?」)


---小学校の時だね…平凡な毎日、でも楽しかった。


(「く〜〜、こうなったら私だって!」)
(「あああ!!それ、私のプリン!!う〜〜ひどいよ、雪ちゃん!」)
(「ふん!おかえしよ」)


---ふふふ…雪ちゃん大人気無いなぁ…。

---あれ?でも…


(「ううう…楽しみに最後まで取っておいたのにぃ〜…食い物の怨み!みさきアタッ〜ク!!!」)
(「ぐはあ!…ず、頭突きぃ!…お、おのれ、みさき〜〜!!」)
(「ひゅ、ひゅきひゃん…はおひっぱりゃにゃいで〜〜!!」)
(「これでも足りないくらいだ〜〜!!」)


---音…だけ…どうして?

---そんな…どうして?…どうして?


---どうして!?


がばあ!

はあはあ…

「…夢…?」

「…………」

「…思い…出せないの?…あの頃のこと…」

「…………」

「…忘れちゃう…あの学校のことも…」

「…もう…戻れない…」

「…………」


<翌日…>

「…たしか…ここを真っ直ぐ行くと…交差点で…」

チリン チリン

「え?…ど…どこ?」


「うわ!…ぼっさっとしてんじゃないわよ!」


「…ごめんなさい…」



「…もうすこし行くとタバコ屋があって…そこから右に…」

プップー!

キイイイ!!

「きゃあ!すいません!」


「バカヤロウ!死にたいのか!」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

ぶろおおお

「…………」



はあはあはあ…

「あの〜、どうかしたんですか?」

「大丈夫です」

「そう」



ざわざわざわ…

「な…か…ざ…き…え…き…。…はあ〜、やっと着いたみたい」

ざわざわざわ…

「え〜と、切符売り場は?…………ここの右だね。」


ピーー!

『画面を、押してください』

「え?」

「え〜と…」

「…………」

「…………」

「遅えぞ!」

「…ごめんなさい」

「まったく…そこを押すんだよ?」

「……?」

「だから、そこを押せってば!」

「……?」

---どこ?

「日本語がわかんねぇのか!…ここを押すんだよ!」

ピッ  がちゃん

『切符をおとりください』

「あ、ありがとう」

「いいから早くしてくれ!後ろが詰まってるんだ!」

「…ごめんなさい」



はあはあ…

「このタイルに沿って行けば…」


どたどたどた…

どしん!

「きゃあ!」


「おっと!ごめんよ…急いでるんでね」


どたどたどた…


「…………」

「…………」


---目が見えたなら…


「…………」


---目が見えたなら…


「…………」


---目が見えたなら…


「……う…」


---目が見えたなら…


「……うぐ…」


---目が見えたなら…


「……うぐ…うう…うううう…グス…ううう…」


---目が見えたなら…


「…イヤだよ…もういやだよ、こんなの…うう…」


---目が…見えたなら!


(「みさき…あんたの目はもう、直らないのよ…)


「!?」


---雪ちゃん…?

---そうか…そうだったんだ…


(「どうして白杖を持たないの?」)


---認めたくなかったから…


(「『迷惑かけたくない』?…そんなの誰だって一緒よ」)


---そうだよね


(「…みさきの気持ち?…分かるわけないでしょ…私は目が見えるんだから」)


---雪ちゃん…あの時…泣いてたんだ…


(「『今度』っていつよ!?)


---今だよ…雪ちゃん…浩平君…


「…すいません…」


---行くしかないんだね…


「誰かお願いします!…手伝って…助けてください…おねがいします!」


---逃げちゃダメなんだね…


「お願いします…私は視覚障害者です!どなたか駅員さんを…お願いします」


---決して優しくない…この世界から…


       <おわり>

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こんばんは!『長森EDで窓から外を眺めている青髪のポニーテール少女』で〜す!!
ONE発売1周年!おめでとうございま〜す♪

…え?雀バルですか?

ここに彼のコメントが用意してあります。

『今回のSS…最低の出来です。1周年記念としてシリアス書いたものの…(泣)
いくら時間不足とはいえ…HP収録時には大幅に書きなおす予定です。
感想も次回に…それでは。     雀バル雀         』

…なんだそうです。
いつもクズみたいなSSばかりのクセに、いまさらねぇ…全くもう!

それでは今回はこのへんで…さよなら☆

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/8321