笑わないお姫様 投稿者: 雀バル雀
それは、遥か昔のお話です。
あるところに、それはそれは美しいお姫様がおりました。
王様は、そのお姫様が可愛くてしかたがありません。でも…

「んあ〜、里村?笑って見せてくれ、な?」
「…嫌です」

お姫様はいつも不機嫌そうな表情をしています。
それが王様の最大の悩み。

「んあ〜なんとか里村の笑顔を拝めないものだろうか?…そうだ!」

王様は国中に御触れをだしました。

『炎のチャレンジャー大募集!姫様を笑わせることが出来たら100万円!』

そして、国内外から我こそはと思う者芸人達が続々とお城に集いました。

「100万円ゲットだぜ!」
「なに言ってんだ!折原!100万円は俺がもらう!」

「みさきさん、頑張りましょうね」
「そうだね」

皆、名うての芸人ぞろい。
自信満々です。

その中の一人に、口の利けない女の子がいました。

『頑張るの』

彼女は、病気のお母さんの薬代を得るために参加したのです。

あはははは!

「喋れないお前がどうやって笑わせるんだよ?」
「お嬢ちゃん、無理しないでお家にお帰り」

他の芸人達は彼女をあざ笑いました。

『嫌なの!お母さんのお薬を買うお金が必要なの』
「かわいそうだけど、無理だよ。ここに集まっているのはみんな腕自慢の芸人さんなんだから」
「素人さんには荷が重いですよ」

そうしている内に、いよいよお姫様が現われ、芸を披露する時がやってきました。

  *
  *
  
「一番、折原浩平!……一発ギャグをやります!……『ヘコ〜〜〜!』」

(ふふふ…俺様のギャグでみんな爆笑だぜ…なんせ、本家『諏訪ミツオ』もかくやというほど完璧な『ヘコ〜』だからな)

しーーーん!

「…死刑です」
「…だそうだ。んあ〜引っ立てい!」

ずりずり

「うわああ!!あ、茜ぇ〜死刑はないだろう〜」


「2番!住井護!…一発ギャグです……『だっふんだ』」

(ふふふ…ギャグの王道といえばやはり志村けんだろ。……100万円いただきだ!)

シーーーーン!

「…車裂きの刑です」
「…だそうだ。んあ〜引っ立てい!」

ずりずり

「いやだああ!!…さ、さっきの『ヘコ〜』の何倍もマシだと思うぞ〜…って、ちょっと〜!!!」


「三番、名倉由衣&川名みさきで〜す。二人で漫才やりま〜す」

ちゃんかちゃんかちゃん

「いやいやいや…ども〜!由衣ちゃんで〜す」
「みさきちゃんで〜す。…いや〜もうすっかり春だよね。春といえば、やっぱり」
「せっくす」
「そうそう、新歓コンパで呑み慣れてない新入生を酔わせてそのまま…って、違うでしょ!」

ばきいい!!

「うがああ!!ず、頭突きぃぃぃ〜」
「春といえば桜よだよ!暖かくなってきたしお花見なんていいよね。…そうそうお花見といえば、やっぱり」
「せっくす」
「そうそう、夜桜の舞う公園ので、花見酒ですっかりデキあがっちゃった二人はあたりの目もはばからず…って、違うでしょ!」

どがしい!!

「ぐはああ!…い、今の突っ込みはマジで効きました〜!」
「お花見といえばお弁当だよね。」
「『花よりだんご』というやつですね?」
「そうそう、外で食べるお弁当って何故か美味しいんだよね。つい、いっぱい食べちゃうんだよ」
「みさきさんはいつも異常なくらい食べてますけどね」

がきい!

「ぐうあああ!!目、目が〜!!」
「余計なこと言わないの!…外で食べるお弁当は何故美味しいのか?という話だよ」
「それはですねぇ…気分の問題ですよ。『昨夜作ったカレーを翌朝食べるとなお美味い』というアレですね」
「え?…カレーって一晩おくと美味しくなるの?」
「知らないんですか?」
「うん。だって…」
「だって?」
「…いつもその日で全部食べちゃうから」

ちゃん ちゃん。


「……下品です。」
「んあ〜、オチも悪いしなぁ。…どうする、里村?」
「…強制収容所送りです。二人ともDクラスでおねがいします」
「だそうだ。んあ〜引っ立てい!」

ずりずり

「じょ、冗談だよね?…きゃああ!!いやああ!!」
「Dは嫌です〜〜!!」

芸人達はことごとく失敗。
かえって姫様のご機嫌は悪くなってしまいました。

「これで全部か?んあ〜!……やはり里村を笑わせることは…」
「それが王様…あと一人残っているのですが…」
「んあ〜…早く呼べ!」

最後に現れたのが、あの口の利けない女の子です。

とことこ

「んあ…子供ではないか!」
『四番、上月澪なの』
「んあ〜しかも喋れんではないか!?」

驚く王様を尻目に、その子は臆面もなくお姫様の前に進んで行きます。

とことこ

『こんにちは』

にこっ

「………」

にこにこ

「………」

にこにこにこ

「…こんにちは」

おおおおおお!!!

「ひ、姫様が」
「お笑いになられたぞ!」

女の子の笑顔につられて、お姫様は自分でも気付かないうちに笑みを浮かべていました。

「…そうか…この子の無垢な笑顔が…んあ〜!ワシはなんとお愚かじやったんじゃあ。そんな簡単なことさえ気付かんかったとは…」

こうして笑わないお姫様は笑顔を取り戻すことができました。

王様はいたく感激し、女の子に何度も礼を言いました。
もちろん100万円もその子の手に渡りました

そして、女の子はそのお金で薬を買い、残りのお金で大好きなお寿司をおなか一杯食べましたとさ。
めでたし、めでたし…

<おわり>

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(前回までのあらすじ!…パウエル死す!あまりの事態に傷心の雀バル雀は…)

「雀バル〜〜!!何処いったのよー!…あれ、こんなところに手紙が…」
『捜さないで下さいです・・・By 雀バル雀』

「………雀バルの…………ばかあああああ!!」

<その頃、彼は…>

びゅううううう!!<嵐に中…空き地で>

「ここで…私はあいつと出会ったんだ…パウエルと…」

(ハーイ…パウエルデース!ヨロシクデ^ス!)

巨人ファンだった私の目を覚ましてくれたんだよな…お前は
なのに…私はお前を…お前を

<「・………ー雀!!!何処に居るのー?」>

…ん?…誰だ?
私を……呼んでいる?
そうか…帰って来てくれたんだな…パウエル…

「ちょ、何やってんのよ!?あんた?」
「…で……」
「え?」
「もう……どこにもいかないでくれよ……」
「え?…ちょ、ちょっと〜…目を覚ましてよ!死なないでー!!雀バルーー!!」


あれ?…・・ここは……私の部屋…どうして?
「目、覚めたみたいね?」
「ポニ子?…私はいったい…」
「『ポニ子』じゃないもん!…疲れてたみたいね…でもいいよ、しばらく休んだら?」
「……」
「…それからね…パウエルさんはアメリカに帰ったのよ…野球やめて農業やるんだって」
…違うだろ…パウエルは…私の…私のせいで…
「じゃあね…おやすみ」

がちゃり

「そうそう言い忘れてたわ…次回からは私があんたのアシスタントだからね」
「え!?」
「今まではパウエルさんの代理…これからは正式にあんたのアシスタントだからね」
「ポニ子…」

がちゃん

「う…うぐ…うぐうううううう…うわあああああああ!!」

<翌朝>
「おい、ポニ子!起きろ!もう朝だぞ!」
「ぅぅぅぅん……あれ?雀バル…?」
「寝ぼけてないで仕事だ!…溜まってたSS持って来い!」
「え?」
「読むんだよ。私のパワーの源だからな。」
「雀バル…あんた…」
「なに泣いてるんだよ…アシスタントならさっさと仕事しろ!ポニ子」
「ぽ、『ポニ子』じゃ…ないもん!」
「さあて、読みまくるぞぉ!まずは……」

そうだな…私には最高のアシスタントがいるんだよな。…こいつの為にも、私は…

……

さようなら、パウエル。

<おわり>(こんな馬鹿話にスペースとってごめんなさいです。感想は次回にでも…じゃ!)




















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