茜草記 投稿者: 雀バル雀
十一.

「若いの・・・生きとるかぁ・・・・?」
「まだなんとか・・・・・」
「なんで上方についたんじゃ?太閤殿下に恩義でも?それとも右府様に?・・あるいは大御所に怨みが・・・」
「別に、猿でも狸でも関係ない。どっちについてもよかったんだ・・・どうせ勝敗に興味などない」
「死を恐れずか・・・真の武士じゃわい」

昔は俺もそう思っていたよ。でも違う・・・ホントは違うんだ・・・
あの頃は生きている意味なんて知らなかったから、大切なものなんてなかったから
だから、怖くなかった・・・
侍であるよりも、まず人間なんだ。あれ、誰かがそんなこと言ってたなァ・・・・

「・・・関東がいよいよ攻めてきよったか・・・・若いの、さらばじゃ」

じじい、今日でそれ三回目だぞ。
まあ、覚えてなくとも無理はないか・・・年だし。

それも今回で最後になりそうだ・・・
敵さんが先か、消えるのが先か、・・・・どっちでもいいや

ワアアアアアア!!
キン! グシャ! キン!

「おらおら!常陸守折原家が遺児、浩平たぁ俺のことだ!腕に覚えがあるヤツはかかってきやがれ!」

茜・・・もう一度くらい・・・抱いときゃよかった・・・

ワアアアアアアア!!
キン!キン!  ぎゃああ!

ちくしょう・・・やっぱり・・・死にたくねぇ

死にたくねぇ!!

  十二.

どこだ・・ここ?

俺は死んだのか?

じゃあ極楽か?

俺は善人だから地獄に行くわけないし

でも、旨い酒も、きれいなねーちゃんもなさそうだし

ちくしょー!アレはでまかせだったのか。

つまんねぇ所だなぁ 極楽って

あとで茜に教えてやろう


ん?茜って誰だ?

どこかで聞いたような名前だなぁ・・・

いいか・・・・思い出せないのならそんな重要な人間でもないってことだ

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・自分に嘘はつけないものだなぁ・・・分かってるよ、忘れるわけないだろう

極楽でもないとすると・・・これが『永遠』という場所か・・・

なんだよ・・・でまかせ言いやがってあのクソ坊主

なにが喜怒哀楽のない世界じゃあ!


だったらなんで、俺は泣いてるんだ?


くそ!だまされた!・・・俺は帰る、帰るぞ〜〜!!

来る事が出来たんなら、帰ることだって出来るはずだ!

俺は帰る!必ず帰る!なにがなんでも帰る!

待ってろよ!茜ー!

  十三.

はあはあ・・・

「どこまで続くんだ・・・・さすがは永遠の世界」

いったいどれくらい・・・。いや、時間の概念など、ここでは意味が無いのか。

しゃらん!

「・・・・・・・・・」
「・・・よお!久しぶりじゃねぇか。・・・・えっと・・・瞬慶だったか?」
「・・・・・・・・・・」
「ここで逢ったのも何かの縁だ、・・・元の世界に戻る方法を教えてくれないか?」
「・・・・戻る気なのですか?」
「こんなつまらん場所に長居などしたくはない。俺には可愛い女が待ってるんだ」
「・・・・・・戻ってどうする気です?あの世界にまだ、あなたの居場所があるとでも思って?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・あなたは知っているはずだ。あそこではどんなものでも簡単に壊れてしまう。・・・・そして二度と元には戻らないという事を・・・」
「・・・確かに俺は・・決して失うモノの無い世界を望んだ。・・・だから世界に歯向かい続けたんだ。世界から疎まれるように・・・」
「誰も愛さず・・・自分すら愛さずに。・・・・それでも、ただ1つだけの執着、『里村への復讐』・・・それだけがあなたを世界へとかろうじて繋ぎ止めていた。ですが・・・、」
「茜と出会って・・・あいつを愛して俺は変わった。大切なものを見つけたんだ。・・・・たとえそれが次の悲しみの始まりだとしても・・・」
「そう・・・だからあなたはこの世界に落ちた。もっともきっかけを作ったのは私ですが・・・」
「『あの日』か・・・俺に永遠を語ったあの日。」
「はい。・・・そしてあなたも心の何処かで永遠を求めていた・・・」
「・・・そうか・・・」

結局、俺は逃げていたんだな。
結論を出せなかった・・・・怖かったんだ。

あたりまえだ、誰だって怖い。
だけど俺は選ばなきゃならない。
本当なら、人間には永遠なんてないのだから・・・・

「わざわざここまで連れてきてくれた事には感謝する。・・・だけど俺はもう行く!・・・あの世界に帰る!」
「・・・現実はいつも過酷ですよ・・・それでも後悔しませんね?」
「たぶんすると思う。それでも、な・・・・」
「そうですか。・・・・帰り方はもう知ってますよね?」
「ああ。・・・悪いな、これはお前なりの優しさだったんだろ?」
「何故に?」
「分かるさ。・・・・・お前も俺と同じ目をしていたからな・・・」

・・・じゃあな!・・・・もう一人の俺。
  
 終章.

 あかねさす 日は照らせども ぬばたまの
     夜はすがらに 音のみし泣かゆ
                   
                       
「生きていますよね・・・・それとも」

「私のことなど・・・・もう・・・」

「あの人との縁はその程度だったのかしら・・・」

「違いますよね・・・・だって・・・」
   
「私はまだ・・・あの人のことを・・・」



 かくばかり 逢ふ日の遠なる人を
    いかがつらしと 思わざるべき

「・・・・もう何年過ぎたのかしら・・・」

「・・・早く戻ってきて下さい・・・・」

「お願いだから・・・・」


 飯食めど うまくもあらず
   行き行けど 安くもあらず
  あかねさす 君が心し 忘れかねつも

「私は・・・・・」

「私は・・・寂しいです」

   
ご〜〜ん(鐘の音)

ざっざっざっ・・・

「尼僧、道を尋ねたい。・・『茜草院』とは何処だ?」
「・・・ここです」
「そうか。・・・・おぬしはここで?・・・」
「はい。・・・・縁故の者達の菩提を弔っております」
「そうか・・」
「・・・・お侍様は、この院にどのような用件で?」
「うむ。・・・ここに折原家の墓があると聞いてな,線香の1つでも、と」
「縁者の方ですか?」
「・・・・そのようなものだ」
「そうですか。・・では、案内いたしましょう・・」

「・・・・・ありがとうございます。この者達も喜んでいることでしょう」
「何故折原家の墓まで・・・・縁者なのか?」
「はい。・・・・主人の墓です。」
「・・・・・・・・」
「お侍様・・・・少しお話よろしいでしょうか?」
「話?・・・ああ」
「ありがとうございます。・・・・・主人の話です・・・もっとも祝言さえあげてなかったのですけど」
「・・・・・死んだのか?・・・・」
「さあ・・・生きているか死んでいるのか・・・どちらにしても三十年も昔のコトですので・・・・」
「・・・・・・・・」
「けれども・・・私はまだあの人のことを想っております」
「・・・・・・・・」
「・・・私はさる大名の姫として生を受けました。しかし乱世の激流にのまれ、全てを失いました・・・一族も・・・故郷も・・すべて・・・」
「・・・・・・・・」
「・・『置いて行かれた』・・・そう思いました。・・・だから・・・みんなの所に行きたかった。そうすればあの穏やかな日々が取り戻せると思ったから。・・・・愚かですよね・・・・永遠に続く幸せなんて無いのに・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・それを気付かせてくれたのがあの人でした。・・・・失ってしまうからこそ得られる幸せもあるということを、あの人は教えてくれた・・」
「・・・・・・・・・」
「幸せでした。・・・あの人の優しさ、あの人のぬくもり・・・・その全てが愛しかった」
「・・・・でも・・その男は主のもとを去った・・・・」
「・・・はい。・・・・それでも」
「それでも?」
「・・・それでも、私は幸せでした。たとえどんなに辛い日々が続いたとしても、あの人との思い出さえあればそれだけで・・・・」
「・・・そうか・・」

「・・・・でも・・・」
「『でも』?」

「・・・・・できれば側にいて欲しいです、浩平」

「・・・・ごめんな・・・遅くなって・・・・ちょっと手間取っちまった」
「遅すぎます・・・待つ人の身にもなってください。・・・・待ちくたびれて・・・こんなお婆さんになってしまいました」
「・・・そうか・・・ごめんな・・」

「・・・・・・・・」
「・・・・・茜?」

「・・・・おかえりなさい、浩平」
「・・ああ、ただいま!」

 
大船の 思いたのみて さなかつら
   いや遠長く 我が思へる 君によりては・・・・

    <おわり> 

*****************************************************************
前回のあらすじ・・・・雀バル雀が死んじゃった!どうする、ポニ子!?
「『ポニ子』じゃないもん!・・・はあ・・・まあ、いいか・・」」

そのころ・・・雀バル雀は・・
「ここはどこ?」
「目が覚めたようだな・・」
「だ、だれだ?」
「ここはSS地獄・・・チンケなSS書きどもの罪を償う場所だ!」
「わ、私の罪〜!?」
「アホくさいSSで提示板を汚した罪、万死に値する・・・それぃ!」
「あがやあああ!!・・それでは感想で〜すぅ・・・ぐああ!」
>神凪さん「アルテミス 8.」
たしかにFARGOという組織は「MOON.」本編でもその実態はあまり触れられていませんからねぇ・・・なるほど、良祐と晴香の関係など興味深かったです。
      「アルテミス9.」
いよいよ真相に近づいてきましたねぇ・・うう・・時間が無いので詳しい感想はまた次回に・・・ぎゃああ!!

そのころ・・
「あああ、あいつがいなけりゃSSが進まない〜!!どうしよ〜ポニ子、ピンチ!!」

    <つづく>