一窮さん その一 投稿者: 雀バル雀
時は戦国・・・
童ありき 名は折原浩平 
その童 やんごとなき出自なれど 家を失い氏も絶えん
故に 仏門に帰依す
童 後の世に聞こえし 一窮禅師 浩平なり。

  『一窮さん、大地に立つ!の巻』

「ほらあ、一窮!起きなさいよ」
ゆさゆさゆさ
「う〜ん・・あと3刻だけ寝させて・・・」
ゆさゆさゆさ
「それじゃあお昼になっちゃうよ!・・・もう、起きないんだったら」
がばあ
「どうだ!布団をはがせば・・・・・」
「ぐう〜〜」
「もう〜・・早く行かないと、朝ご飯みさき先輩に全部食べられうちゃうよ!」
「ぐ〜〜」
ご〜〜ん
「わあ、鐘の音!?・・起きてよ一窮」
「ぐ〜〜・・・慌てない、慌てない・・・ひとやすみ・・・」
「もう十分休んでるわよ。ああん、どうしようー」

「どうして起こさなかったんだよ?」
「起こしたもん、一窮が起きなかっただけだもん」
「俺が起きなきゃ起こした事にはならないだろう!・・・ったく!屁理屈ばかり言いやがって」
「それは一窮、お前じゃあ!!」
ばこん!
「ぐ、うううう〜・・・な、七瀬和尚・・・なにするんですか〜」
「うるさい。毎朝寝坊ばかりしおって!はああ〜・・なんでお前みたいなクソ坊主の面倒を、この寺でみなきゃならないのよ・・・・」
「それも修行のうちです、和尚」
「お前が言うなーー!・・・・それよりも、実はお前に大切な用件があるのよ」
「なに?・・俺忙しいから手短にね」
ぱこん!
「ぐ、うううう〜・・・」
「うるさい。いいから話を聞け!・・・なんと里村将軍様が、お前に会いたいと申しているのよ・・・」
「えええ!将軍様が一窮と!・・・・一窮、何かしたの?」
「長森・・・俺が何かするような男に見えるのか?」
ぱこん!
「ぐ、うううう〜・・・和尚、痛いっスよ・・・」
「現にやっとるだろうがー!・・・お前がこの前壊したあの人形のことで、呼ばれてるのよ!」
「ああ、あの変な人形だろ・・・ちょっとサンドバッグ代わりに殴ってみたらぶっ壊れやがって。不良品じゃねえの?」
「ばかもん!あれは『主のぬいぐるみ』と言って五十万両もする高価なものなのよ!それに将軍様のお気に入りでもあるの!あ〜あ、たいそうお怒りだそうよ」
「なら、こんなボロ寺じゃなくてもっとしっかりした場所で保管してりゃいいのに」
「・・・・いろいろと事情があったの・・・・一窮、覚悟しときなさい。最悪の場合は死罪だからね」
「そんな・・・・和尚、どうにかならないんですか?」
「無理じゃないかしら・・・・まあ、あたしとしては死罪になってくれたほうが助かるんだけどね。・・・・一窮、死にたくないならいつもの屁理屈で言い逃れてみなさいよ」

こうして、一窮さんは自身を救うため、命がけで将軍に弁解することになった・・・・

<里村将軍の御所にて>

「・・・嫌です」
「あの〜・・・まだ何も言ってないんですけど・・・」
「・・・絶対に嫌です」
「だから・・・まだ何も言ってないんだけど・・・」
「許しません・・・・」
「・・・・・・・将軍様に質問、『生あるものは?』(ここは手堅く禅問答で!)」
「・・・・必ず死にます・・・・」
「『形有るものは?』」
「・・・・必ず壊れます・・・・」
「だから、ぬいぐるみが壊れたのも運命ということで?」
「・・・嫌です」
「そ、そんな〜〜!!」
「・・・あなたのことは忘れます・・・・さようなら・・・・」

哀れ一窮さん・・・・しかし、御仏はまだ彼を見捨ててはいなかった。

「屏風の虎を縄で縛ってください・・・・」
「はい?」
「それで許してあげます・・・」

里村将軍は一命を助ける代わりに、一窮さんにある命題を課した。
それは『屏風に描かれている虎を、縄で縛れ』という難題である。
まず、実行不可能な命題。一窮さんピンチ!
・・・しかし、僕らの一窮さんにはとっておきがある。
そう!『屁理屈』だ!

ぽくぽくぽくぽく・・・・・・・ち〜ん!<ひらめいた!>

「じゃあ将軍様、縛りますから屏風から虎を追い出してください」
(「ふふふ・・・無理難題には無理難題でおかえしだ!とうだ!俺って天才だぁ」)
「・・・・はい・・・出ておいで」

どがああ!・・・・フガアアア!!!

「どわああああ!!!ほんとに虎が出てきたああ!!!!!!」
「・・・はやく縛ってください・・・」

フガアアア!!

「ひ、ひいいい!!・・・わ、わかったあ!!今回は俺の負けでいいから、虎を〜〜!!」
「困ります・・・はやく縛ってください」
「そんなああ!!うがやああああ!!!」

ごり・・ばき

フガアアア!!

ごり・・・ばき・・ごき・・・・


<一時間後・・・>

「・・美味しいですか?」
「ううう・・・・あんな目にあった後に、飯の味なんて分かるかよ〜〜」

あやうく虎のエサとなりかけた一窮。
しかし、御仏はまだ彼を見捨ててはいなかった。
一窮のあまりの不味さに、虎は彼をほっぽり出して屏風の中へと帰っていった・・・
その後、傷の治療がてら、食事をご馳走になったのだ。

「こんな時、普通は感想を言うものです」
「十点!・・・文句なしに旨かった、それでいいか?」

じろり<一窮の皿を見て・・・>

「・・・・・全部食べたんですか・・・・・」
「へ?・・・いや〜残しちゃマズイかなぁと思って。お米には神様が宿ってるから、粗末には出来ないよ」
「・・・ステーキですよ?・・・御仏に仕える者が、なまぐさなどを・・・」
「げっ!そういえばそうだ・・・(あちゃ〜・・・寺じゃ肉なんて食えないからつい・・・)」
「・・・・和尚に伝えねばなりませんね・・・」

またもや一窮さんピンチ!
肉を食べたコトがばれたなら、七瀬和尚に殺される!
・・・しかし、僕らの一窮さんにはとっておきがある。
そう!『屁理屈』だ!

「人間たまにはタンパク質を摂取せねば、栄養が偏ります!」
「・・・大丈夫です」
「寺では毎日カロリーメイトばっかりなんですよ!」
「・・・大丈夫です、バランス栄養食です・・・死にません」
「時間の問題です!・・・俺なんかこんなに憔悴して・・・」
「そのわりには顔色がいいですね。・・・だいたい食事も修行の1つのはず・・・苦しくてあたりまえです」
「ぐっ!(・・・畜生・・・くやしいが正論だ・・・・こうなったら!)」

ぽくぽくぽくぽく・・・・・・・ち〜ん!<ひらめいた!>

「将軍様!私の口はなんでも通ります。それは御仏が私を世に遣わされた時に、なんでも食べてよいと仰られた証です。食事を選り好みするのは、御仏の御意志に叛く事にはなりませんか?」
「・・・・・・・・」
「どうです?(・・・よっしゃあ!今度こそ!)」
「・・・・なるほど。それはそうですね・・・・。一窮殿・・・デザートはいかがですか?山葉堂名物・南蛮渡来の焼きたてワッフルですけど?」
「あ、あの幕府ご用達の!?・・・・食べます!食べます!」

「ではどうぞ・・・・熱いうちに・・」
「おおおお!!こんなにたくさん!(ラッキー!後で長森達に自慢してやろうっと)・・・・それじゃいただきます!」
「はい・・・・残さず!!食べてくださいね」
「へへへ、もちろん全部独り占め・・・・・・へ!?・・・・・・な、なんじゃああ!!!あ、あま〜〜い!!甘すぎるぅ!」
「砂糖と蜂蜜と練乳とカスタードとチョコレートとバニラとジャムと餡子にバターをたっぷりと練りこんだオリジナルワッフルです。遠慮せずに全部!食べてください」
「全部〜〜・・・・いや、いいですぅ!・・そ、そうだ、寺のみんなにお土産として・・・」
「後で別のを持たせます・・・・安心して食べてください」
「そ、そんな〜〜・・・・」

「まだ半分も食べてないですよ・・」
「も、もうかんべんしてくれ〜。く、口の中が〜〜!!」
「嫌です・・・残したら神様に怒られますよ」
「俺は仏教徒です〜〜〜」
「・・・・・・・・・」
どさどさどさ・・・・・
「へ!?」
「追加です。まだまだいっぱいあります」
「も、もう食えねぇ〜〜。だいたいコレ甘すぎるよ、こんなの普通食えねぇぞ!」
「・・・・さっきなんでも食べれると仰いましたね?御仏の御意志です・・」
「ひ、ひいい〜〜〜!!」

<数十分後・・・>

「ごめんなさい・・・・もう許して・・・」
「・・・・屁理屈など言わずに・・・最初から素直に謝ればよかったのに」
「ううう・・・・」

里村将軍の前に、一窮さんあえなく撃沈。
所詮、屁理屈の力などこの程度なのか?いや!僕らは信じてる。
立て!ガンバレ、一窮さん!
御仏のご加護がある限り、君は何度でも復活するのだから・・・

<数日後・・・>

「このたびはお世話になりました、里村将軍様」
「いいえ、七瀬和尚・・・・一窮もこれに懲りて、ニ度と屁理屈は言わないでしょう・・・」
「はあ・・・それが・・・・」


「ああ〜一窮!それ私のワッフルだもん!」
「うるさい!口つけたからコレは俺のモンだ」
「う〜〜、違うもん!違うもん!・・・・なんで一窮はこんな屁理屈ばっかり言うのよ!」
「ははは・・・それは御仏の御意志なのだよ!」

  <つづく・・か?>

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「おはようです、雀バル雀です。そして・・・」
「はい、『長森EDのラストで外を眺めているポニーテール美少女』です」
「・・・・どうした?いつものつっこみはなしか?」
「・・・・だって・・・昨夜は優しくしてくれたから・・・」
「ぎ、ぎくうう!!・・・な、勘違いされるようなコト言うなよ!」
「やあん!どうせみんなアンタの事、変態野郎だって見抜いているわよ」
「ううう・・・天国のお父さん・・・これは全部冗談です〜」
「それじゃ、感想いきま〜す。」
>変身動物ポン太さん「・・男子人気投票」
「感想ありがとうございます。そして、ご卒業おめでとう!」
「おめでとうございまーす」
「・・・なんか広瀬・・カワイイ・・」
「七瀬さんなんか相撲取り呼ばわりされてるのにねぇ」
>@もうちゃんさん「他が為に金はなる」
「だめですよー!人の恋路をじゃましちゃあ」
「気持ちはすごく判りますけどね・・」
>雫さん「ほわいとでー」
「感想どうもありがとう。てれてれ瑞佳がかわいいです。」
「でも、詩子さんてどんどん壊れていくねぇ」
「うむ。茜も出番少ないし」
>神凪さん「アルテミス」
「とほほ・・・・・だっ!」
「あっ!今度は裸足でトホホだよ〜・・・よっぽどショック受けたみたい。でもホント、コレ面白いですよ。謎も深まってきたし、次回が楽しみ。・・・確か、アルテミスって『月と狩の女神』でしたよね・・・深いなぁ・・・。あと、感想ありがとうございます」

「・・・だ〜り〜ん。戻っておいで〜〜!」
「誰がダーリンじゃ、ポニ子!・・・次回こそ「翔べ!必殺うらごろし」を書くぞ!私設「うらごろし」ファンクラブ会長としての使命だ」
「何が使命よ!会員だって二人しかいないくせに・・・興味がある方は新宿TUTAYAの邦画コーナーで借りてください。何故コイツがここまでこだわるのかが分かります。コイツのSSの5000倍は笑えます」
「それでは今回はここまでです、さよなら!」
「さようなら!」