茜草記 投稿者: 雀バル雀
序.

八州に栄うる里村の氏 その勢 天下に並ぶものなし

音に聞こゆは里村三代 古今無双の弓取りぞろい

戦とならば 天を抜き

政とらせば 地を潤す

民詠う 「八州に拓けし安寧楽土 ここは京か極楽か 
          戦世忘れし安民楽土 そとは地獄か戦場か」

なれど・・・

奢れるものは久しからず これ 平家一門の習なり
 
八州に絶えたる里村の氏 その窮 天下に並ぶるものなし

音に聞こゆは里村の郷 兵どもが夢のあと

戦に敗れ 民は飢え

政に破れ 地は枯れる

屍詠う  「八州に拓けし安寧楽土 ここは地獄か六道か
          戦場なりし安民楽土 この世は苦界か煉獄か」

形あるものやがては滅す これ 世の宿命なり

なればこそ 人は願う 永遠を

      壱.

万代に 栄え行かむと 思えりし   
  瑞穂の邦を 戦世の 事にしあれば
    馬も行かず 人も行かねば 荒れにけるかも


<戦火で焼かれ廃墟となった街で・・>

(何処へ行く?)

ざっざっざっ・・・
「ここが、かつての八州一の繁栄を誇った街だとはな・・・」

(これからどうする?)

ざっざっざっ・・・
「所詮、浮世の業は夢幻のごとく・・・・く〜言うねぇ、俺」

(全くだ。・・・こうもたやすく・・俺はそれを望んでいたのではなかったのか?)

ざっざっざっ・・・
「しかし、浮浪者ばかりだなぁ・・・まぁ、俺も似たようなものか。国を失った侍など、田畑を失った百姓みたいなものだしな。」

(生きる目的を無くした人間など、屍と変わらん)

ざっざっざっ・・・ばっ!ばっ!
「お侍さまぁ!」
「お恵みをー!」
どか!ばき!どか!
「ぐぎゃああ・・・」
「うるせえ!野郎だったら自分の食い扶持ぐらい自分で稼ぎやがれ!」
「ううう・・・拙者らは里村家の御家人、住井と南と申す者・・・こたびの戦で傷を負い、片端の身に・・・・武士の情けでござる」
どか!ばき!
「ぐあああ!!・・・」
「ふん、刀を持てない侍など、屍も同然だ!・・・武士の情けと言うならば、その首斬りおとし、主君の元へ送ってやってもよいぞ!」
かちゃ(刀を抜く音)

(そうだ・・・何故にまだ俺は生きているのだ?)

「ひいいい!」
「に、逃げろおおー!」
どたどたどた・・・・
「ふん、里村の弓取りともあろうものが!堕ちたものだ。」

(死ぬべき時に死ねない侍ほど、哀れなモノはない・・・)

シャラン!(杖の音)

「・・・いいえ、侍である前に人間です。生に執着するのは間違ってませんよ」
「ん?・・・・なんだ坊主かよ?」
「はい、瞬慶と申します。・・・・あなたは『永遠』を信じますか?」
「『えいえん』・・なんだそりゃ?」
「読んで字の如く。・・・・悠久の時間、不変の空間、永続の停滞、不浄にして不滅、喜怒哀楽の存在しない世界です」
「こんな場所で説法か?・・・・答えてやる!、そんなものがあるはずないだろう!」

(そう、あるはずがない・・)

「何故に?」
「この街を見ろ!『瑞穂の邦』とまで呼ばれたこの国を見ろ!・・・・壊れてしまうのなど、ほんの一瞬だ。」

(そうだ。そんなことさえ・・俺は知らなかった・・)

「なるほど・・・時の流れの中では、確かに形あるものに滅びは宿命。なれど、もしそれが存在するとしたら・・・」
「耶蘇にでも被れたのか、坊主?伴天連どもの唱える千年王国など、俺は信じないぞ。」
「いえ、そんなものとは違います。もっと漠然としたものですよ。・・・まあ、この世界を統べる『律』の応用とでも申しましょうか・・」
「?俺にはさっぱり分からん?」
「それではこう考えてみてください。もし、この世界に流れる『時』とは別の流れに巻きこまれてしまえばどうなるか?と」
「別の流れというものがあるのならな。この世界からは消えてしまうだろうよ」

(それも良いかもな・・・)

「そういうことですよ。もし、どの流れにも乗らずにいることができたなら、それこそ『永遠』」
「なるほど・・・・・坊主、自分の悟りでもひけらかしたいのか?」
「いえいえ。それにこの考えは仏法に叛くものです。あなただから教えたのです。他言は無用に願いますよ、破戒は御免ですから・・・」

シャラン!

「じゃあ何故俺に?・・・・・・お、おい。何処にいったんだ?」

(そうだ!・・・俺は知りたい・・・)

・・・・・あなたは・・・私と同じ瞳をしていたからですよ・・・・

「おい、坊主?・・・・俺はまだ聞きたいことが!」

(どうすれば・・・そこへ・・・)
 
    弐.

夏の夜の 繁みに咲ける 茜草
  大咎人の 踏み散し 通いし跡は
      形もあらず 無残なれにし 

<夕方・・・・町外れ・・・>
「きゃあああ!!」
「あ、茜さま・・・・おのれ、下郎が!」
「うるせぇ!」
ばきいい!
「詩子ー!・・・・や、やめてください!」
「んあー、そう言われて止めるヤツなんざぁいねぇよ。その格好からして・・・館さまの側女かなにかか?まあ、こんな機会でもなければ
、まず犯れねぇタマだ!んあー、殺しゃしねぇよ。京に連れてけば、女郎として高く売れるからな」
「へへへ、髭の親分!それじゃあまず『道具』の具合を確かめねぇと・・・うひゃひゃ」
びりい!
「いやああ!やめてええ!」
「詩子!・・・・お、お願いです。私が代わりになりますから、どうか詩子を!」
「あ、茜様・・・・・く、えいっ」
ぶちぃい
「ぎゃあああああ!お、俺の***をー!」
「今です、この隙に!逃げてください!」
「し、詩子・・・・嫌です・・・あなたを捨ててなど・・・」
「んあー、このアマ!・・・・その女も逃がすなよ!」
どさどさどさ・・・
「はやく逃げて!・・・あなたが死ねば里村家は絶えるのですよ!・・・私のコトを思うならぁ・・うぐっ!」
ばきいい!
「煩い!黙れ!」
どさどさどさどさ・・・・
「・・・・・・・・・」
「あ・・・・あかね・・・・さ・・・ま・・・・」
どさどさどさどさ・・・
「・・・・・くっ、あなたの事は忘れません。さようなら詩子!」
たたたたた・・・
「逃げたぞー、追えーー!」
「そっちだぞー!!」

たたたた・・・・
「はあはあ・・」
(「いたぞー!こっちだー!」)
(「ちくしょう!高槻の仇だー!捕まえてひん剥いてやる!」)
たたたた・・・・どん!
「きゃああ」
「わ、わあ!・・・・なんだお前!?」
「・・・・・・・・」

(この娘・・・まさか?)

ばっ・・・・がしぃ
「は、放してください!」

(里村の生き残り・・・間違いあるまい)

「人にぶつかっておいて、謝りもなしかよ」
どたどたどた・・・
「へ、ようやく追いついたぜぇ」
「お侍。その女、こっちに渡してくだせぇ・・・・・さもなくば」
かちゃ かちゃ かちゃ(刀を抜く盗族達)

(どうする・・・?・・・・そうだな、ここは・・・)

「さもなくば・・・斬る、か。あいにくだが俺もこの女に用があるのでな・・・しかたがない。この技だけは使いたくなかったのだが・・・」
・・・・・・
・・・・・・
「あ!?あんなところに武田信玄が!」
「な、なに!どこだー?」
・・・・・・
「来い!、逃げるぞーー!」
「はい」
どたどたどたどた・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「・・・・・し、しまったー・・・だまされた!てめぇらー、追うぞ!」

  参.

(人の縁とは不思議なものだ・・)

「いやーー危なかったなぁ。しかし、うまく隙をついて逃げられたから良かったものの・・・・お前、名前は?」
「・・・・・・」

(ふん・・・意地が悪いな、俺も)

「だんまりか・・・・命の恩人に対して、それは無いんじゃないか?」
「・・・・・・」

(その物腰からして・・・かなりの出自であろう。ならおそらく・・・)

「礼ぐらい言ってくれてもいいんじゃないか?」
「・・・・・・」

(どうした?・・・目の前に里村の娘が、仇がいるのだぞ・・・軽口など・・)

「なら、体で払ってもらうぞ?」
「嫌です・・・」

(・・・・どうでもよいか・・・・里村は滅んだ・・・娘一人生かしたところで・・)

「言葉を忘れたわけじゃあないようだな」
「・・・・名前は?」

(情け?・・・いや、たぶん俺は・・・)

「ん?・・・・」
「人に名前を尋ねる時は、まず自分から名乗るものです。」

(この娘の境遇に、自分を重ねているのだ。そうに違いない・・・)

「正論だな・・・・俺の名は折原浩平。見てのとおり、旅の浪人だ。」
「・・・折原?・・・では常陸守様の・・・」

(生かしてやれ・・・この時勢・・・生きていくほうが、遥かに辛い・・ふん、折原と聞いて顔色が変わりやがった・・・)

「それは昔の話。今じゃ唯の浪人だ。・・・・そっちの名は?」
「・・・・・・・」

(そう、昔の話・・・おまえもこれからは唯の娘。力を持たない者の悲哀を味わってもらおう。)

「おいおいおいおい。・・・・じゃあ名無しのゴンベって呼ぶぞ」
「・・・・・・茜・・・」

(・・・・茜・・これは復讐なんだ・・・・だから助けてやる・・・それだけだ)

「『あかね』かぁ、良い名前じゃないか」
「・・・・そうでもないです」

こうして二人は出会った・・・・
滅亡した管領里村家の姫君『茜』
里村家によって滅んだ常陸守折原家の忘れ形見『浩平』
茜は自分の正体を明かさなかった、浩平もあえて尋ねなかった。もっとも彼はその正体を察していたのだが・・・・
行くあてのない茜は、結局浩平について行くことになる。
風来の旅へと・・・・

    <つづく>
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「こんにちはです、雀バル雀です。そして・・」
「アシスタントの『長森EDのラストシーンで外を眺めている青髪のポニーテールの美少女』でーす・・・・はあ・・・」
「どうした、ポニ子?パッパラ隊のアニメが終るのがそんなに悲しいのか?」
「『ポニ子』じゃないもん。あのさあ・・・カッコつけたいのは分かるんだけどさあ・・・間違いだらけだよ・・コレ」
「ぎくう!!」
「『永遠の概念』といい、大和歌もどきといい・・・いいかげんすぎるわ!・・・恥を掻くのはあんたなんだから」
「ううう・・雰囲気だしたかったんですぅ・・。批判は甘んじて受けます、だから堪忍して」
「全く・・・今後の展開だっていいかげんなくせに・・・だいたいこのタイトル
・・なんて読むの?」
「ぎ、ぎくうううう!!・・・そ、それはぁぁ!!・・・『あかねぐさのき』・・」
「・・・・どうしようもないバカね・・・それでは感想にいきます」
>PELSONAさん『何故に乙女を目指すのか?』
「こんなの七瀬じゃなーい(笑)」
「あんたもさんざん七瀬さん暴走させといて、よく言うわね。あたしも早いうちに
乙女の資格取っとこう」
>はにゃまろさん『おかし戦記2』
「をを!続編だぁ。しかも面白い。だれだ?続編に傑作なしとか言ったヤツは」
「乙女の直感によると・・・・あんたじゃあ!」
「ぎ、ぎくう!・・・は、はて・・・そんな事言ったような・・・スマンです。」
>ニュー偽善者Rさん『里見八猫伝』
「この章から読み始めました・・カッコええなぁ」
「ホント、アンタのSSとは大違いだわ」
「ううう・・・ポニ子がいぢめる・・・」
『乙女鑑定人4.』
「おお、緒トメさん四たび見参ですね」
「おもしろかったです。・・でもトメさん出番少ないのが残念かな」
>ひささん『ホワイト・レイン』
「いいなあ・・素敵なホワイトデーだ」
「そうねえぇ・・・ねぇ、あたしにもなんかちょうだい」
「けなげでカワイイなァ・・長森・・・そうだよ、気持ちが大切なんだよ」
「・・・そうやってごまかす気?」
「ぎくううう!!・・・さあ、次は・・」
>いけだものさん『やんちゃな猫』
「感想ありがとうです。・・・それから、『由起子』でしたね、1つお利口になりました」
「いまさら一個ぐらい利口になったからと言って、あんたのバカは直らないけど」
「・・・しかし、この猫『やんちゃ』どころじゃなさそうだけど・・そうだポニ子、ホワイトデーのプレゼントはなぁ」
「いらない!」
「ちぇ・・」
     
「次回こそ、ちゃんとした作品解説ができるようなSS書いてね」
「おう。次回は『飛べ!必殺うらごろしONE篇』だぞ!」
「・・・それは誰も知らんからやめろって!・・『勇者指令ダヨモン』もダメよ、つまんないから」
「ぶう。・・それじゃあ皆さんさようなら」
「ばいばい」