ごめんね・・・<後編> 投稿者: 雀バル雀
*前編のあらすじ(今日も公園で浩平を待ちつづける七瀬。しかし広瀬子分ズが失意の彼女を襲う!七瀬は三人の恐怖の合体殺法を破り、見事三人を倒した。そこに現れたのが、親玉・広瀬真希。いや!グラップラー真希であった!)

「まさか地下闘技場のチャンプが転校先にいたなんてね・・・・名前で気付くべきだった・・・・広瀬真希・・・・いいえ、『ライオネル魔希』!」

『ライオネル魔希』!東京ドーム地下ニ十階に存在する異種格闘技戦の聖地。彼女はそこで不敗の王者として君臨しているのだ!

「こちらもよ・・・まさか姉さんの仇が転校してくるなんてね・・・。可愛い娘ぶってるから同姓同名か、とも疑ったわよ。髪形まで変わってるしね。なんとか化けの皮を剥いでやろうと、いろいろと小細工をしかけてみたんだけど、なかなか尻尾を掴ませてくれなかった・・・。でも、やっと確信が持てたわ!七瀬留美・・・いや、『爆殺シューター』のほうがふさわしいかしら?」
口元に笑みをうかべる広瀬。だが、その目は怒りに染まっている。

『爆殺シューター』!かつて、伝説の女ストリートファイターがいた。その無慈悲なまでの破壊力で、多くの猛者を血の海に沈めてきた。彼女の必殺技、『垂直落下
式フランケンシュタイナーを食らって無事だった者は一人もいないと言われている。

「やめて!その名はもう捨てたのよ!」
「うるさい!『乙女になる』などとほざいてたが、格闘家は、所詮一生格闘家。・・・ましてやお前のような人殺し、姉さんを殺した罪からは永遠に逃れられないのよ!」
広瀬が凄まじい闘気を放つ。常人ならばそれにあてられただけでも、気絶してしまうだろう。
「違うの!広瀬主将は・・・」
「警察は自殺だと言ってたが・・・あの姉さんに限って、自殺などするものか!あの日、学校にはお前と姉さんしか居なかったそうじゃないか。それに、お前の『垂直落下式フランケンシュタイナー』以外にあんなむごい殺し方が出来るものか!」
広瀬の闘気は極限にまで高まり、そして爆発した。
「死ねぃ、超電磁ストーーム!!」
七瀬に鋼糸で編まれたネットを投げつける。不意をつかれた彼女はそれから逃れることが出来ない。
「う、動けっ・・・!?」
「フン、どうだ動けまい?・・・・とどめだ、あの世で姉さんに詫びろ!超電磁スピーーーン!!!」
広瀬は近くの樹に瞬時によじ登ると、七瀬目掛けて回転しながらライダーキックを放つ。マンガかアニメか特撮か文章でしか出来ない技だ!だが・・・

「ひ、広瀬の・・・ば・・ばかあああああ!!」

それは信じられない光景だった。猛獣捕獲用の鋼糸ネットを、なんと素手で引き千切ったのだ。
(何ぃ!?バカな・・・)
その驚愕の事実に一瞬目を奪われる広瀬・・・それが隙を生んだ。
自由になった両手で広瀬の足を掴むと、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばす。
「ほいやあ!」

どごおおん!

「ぐはあああ!!」
それで勝負はついた・・・意識こそあったが、もはや広瀬は闘える状態ではない。
それでもなんとか体を動かそうとする。だが、激痛がそれを許さなかった。
「くっ・・・姉さん・・・姉さん・・」
広瀬の目から涙がこぼれる・・・それは痛みのためなのか、くやしさのためなのか、あるいは両方のためなのか・・・
その涙を拭う指があった。七瀬だ。
「大丈夫?」
大丈夫もなにも、ここまで重症を負わしたのは七瀬本人なのだが・・・
「ちくしょう・・姉さん譲りのこの技でお前を・・・」
「・・・あなたの姉さんはね、この技の所為で命を落としたのよ」
「な!・・・どういうことだ!?」
「あの日のことを・・・話すよ。ホントは誰にも話さずにいようと思ってたんだけどね・・・」
そして、ゆっくりと真実を語り始める・・・

「あたしは・・・腰を痛めて剣道に挫折してからというもの・・・荒んでしまって・・・あの頃は毎晩のように・・・正月もクリスマスイブもね・・・ストリートファイトに明け暮れていた・・・まるで狂犬のように・・・。そんなある日、広瀬主将・・・あなたの姉さん・・・剣道部主将にして地下格闘技状の王者に出会ったのよ。・・・強かった・・・『垂直落下式フランケンシュタイナー』も破られて・・完敗だった。」
二人はそれぞれの広瀬主将を思い出す。それは、広瀬にとっては優しく微笑む姉の姿で、七瀬には厳しくも暖かいその勇姿であった。
「それから、広瀬主将に無理やり部のキャプテンに任命されて・・・でも、おかげでアタシは生まれ変わることが出来たの。・・・だけど・・・あの日、アイツがやって来て・・・」
『アイツ』の部分に怒気が篭る。その余りの鋭さに広瀬は震えた。

いつのまにか日も傾き、公園の風景も赤く染まっていく。

七瀬は目を閉じる
「あの日は休日で、あたしと主将のみで部の今後の運営方針について話てたの。もっとも、あたしも後輩にキャプテンの職を譲ったあとだったから、たいした話でもなくて・・・お喋りしてたの。・・・でも、アイツはその隙を狙っていたのよ」

握りこぶしが震える・・怒りのためだ。

「『あいつ』・・・ロシアから来た刺客。カレリンとリサ・ライオンの遺伝子から生まれた世界最強の女、『アンナ・ジゼルスキー』!・・・主将を倒し、世界最強の座を独占するため、わざわざ来日して来たのよ。でも主将は『自分はもう格闘技からは足を洗った』って言って、挑戦を受け付けなかったの。・・・だから主将が一人になる隙を狙ってたのよ・・・」

七瀬の話のあまりに意外な展開を、広瀬は呆けたように聞いていた。

「強かった・・・あたしと主将の二人がかりでもまるで歯が立たなかった。・・・追い詰められたあたし達は屋上に隠れたの。でも、それも時間の問題だった・・・
主将はね、あたしを助けるために封印していた『禁断の必殺技』を使ったのよ・・・主将は最後にあたしにこう言った、『七瀬、今までよく頑張ったな・・・そして、もう面なんて被るな!これからは髪でも伸ばして女の子らしく生きろ!・・・私みたいに恋も知らずに死ぬなんて馬鹿馬鹿しいからな・・・』」

目から涙が零れる・・・そして、まるで自分自身に言い聞かせるように主将の最後を語る。

「そして・・主将は・・主将は・・校庭のジゼルスキー目掛けて屋上から『超電磁スピーン』を・・・うぐっ」
「・・・う・・うわああ!・・姉さん!姉さん!」
夕日が、号泣する二人の少女を照らす。

「どうして?・・・どうして教えてくれなかったの!?」
「・・・こんな話、誰が信じると言うの・・・警察も自殺と発表したしね・・・」
五階建ての校舎の屋上から繰り出された『超電磁スピーン』の威力は凄まじく、広瀬主将もジゼルスキーも肉片を残すのみで、死因追究はおろか遺体の判別さえ不可能な状態であったのだ。
「じゃあ!・・・じゃあ、あたし・・・今まであなたになんて酷い事を!ごめんね、ごめんね・・」
泣きながら謝罪する広瀬の肩に、そっと手を置く七瀬。
「ううん・・あたしだって・・・お姉さん助けてあげられなくてごめんね・・・・広瀬さん・・・もう、いいから、ね?」
「いいの?・・・あたしを許してくれるの?」
「許すも何も・・広瀬主将の大切な妹さんなんだから。・・・そうだ!、友達になろうよ、ね?」
「・・・七瀬〜〜!!」
「・・・広瀬〜〜!!」

夕日が差す公園に・・・二人の慟哭は続いた・・・いつまでも・・・。
    <おわり>
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「こんにちはです、雀バル雀です。そして・・・」
「『長森のラストシーンで窓から外を眺めている青髪のポニーテルの美少女で〜す・・・はあ・・・・」
「どうした、ポニ子?ジャンボ鶴田の引退がそんなにショックだったのか?」
「『ポニ子』じゃないもん!・・・なんであんたはこんなバカ話しか出来ないのよ?」
「そんなに誉めるなって。・・・このSSも「補完委員会」で書いたヤツの改訂版・・というよりほとんど新作ですね。あ〜、つかれた」
「・・・『Q.七瀬と広瀬は何故仲良くなれたか』の回答として、わざわざこんな長ったらしい話を書いたその無駄な努力だけは誉めてあげる。・・・はあああ・・今度からはちゃんとしたSS書こうね?」
「うん。今度は広瀬子分ズのSSでも・・」
「やめんかぃ!」
「ちっ・・・それでは感想、まず・・・」
>GOMIMUSIさん『D.S』
「感想ありがとうです。(・ちなみにアレはマンガ『グラップラー刃牙!』からきてます。なんか、安直だなぁ)・・・をを、いよいよ話が動き出してきましたねぇ」
「『鏡渡り』とか、なんか『影技』を彷彿とさせますね」
>神凪さん『アルテミス』
「・・・・・」
だっ!
「こらぁ、ホントに裸足で逃げるなァ。」
「ううう・・だってすんげえカッコよくて面白いもん」
「まあ、気持ちは判るけど・・・北欧神話からのネーミングもセンスいいし」
>WILYOUさん『さわやかな朝だね』
「長森さん世話焼きすぎぃ」
「ははは・・でも、皿回しまでできる繭って、いったい・・・」

「そろそろ時間ですね。・・・そういえばアンタ、あの時代劇みたいなヤツ、なんで書かないの?一応できたんでしょ」
「ああ、『翔べ!必殺うらごろし』のパロディか?・・だってみんな元ネタ知らないもん。マイナーすぎるしなぁ」
「確かにねぇ・・なら、あれは?珍しくシリアス系のヤツがあったじゃん」
「恥ずかしいからやだ。・・・それじゃあ皆さん、さようなら」
「いまさらなにを言うかねぇ、こいつは・・。では、失礼しましたー」