長森「じゃ」
長森が廊下側の席で鞄を置く。
オレも窓側一番後ろの、自分の席に座る。
入れ替わり担任の髭が教室に現れ、場が整然とする。
しかし、すぐに男連中のざわめきが静けさをかき消した。
・・・なんだ?
ざわめきの原因を確かめるため、教卓に目を移す。
すると、髭の隣に見覚えがある女の子が慎ましげに立っていた。
髭「んあー、静かにっ」
「こらっ男連中、うるさいぞ。そこそこっ! ウェーブをするなっ」
騒然とした教室を必死で静める髭。
髭「んあー、先週の終わりに話した通り、転校生くんだ」
う〜ん、しかしどこかで見た顔だな。
髭「じゃ、自己紹介をどうぞ」
女の子は髭のいた教卓の中央に移動して、口を開く。
女の子「七瀬 留美です」
・・・ん!?
今朝ぶつかった女じゃないかっ!
長森の方を見ると、うんうん、と頷いていた。
七瀬「え〜と、親の急な転勤でこちらに移って来ました。とっても楽しそうなクラスで安心しましたぁ」
なんてことを可愛げに言うもんだから、教室はまたがやがや言い出す。
髭「静かにしろっ! おい中崎と南森っ、そろってチャーム(魅惑)の呪文を唱えるんじゃないっ」
七瀬「それではよろしくお願いします」
にこっ、と笑って会釈する。
それに対して歓喜の声をあげるものもいれば、魔法の詠唱をしているものもいる。
髭「んあー、席の方だが・・・折原の後ろが空いてるな。すまんが折原、廊下から机と椅子を持って来てくれ」
そう言って髭はHRの締めにかかる。
髭「では授業の準備をするように。以上」
そして教室を出て行く。
オレは、はぁ、と溜め息をつきながら廊下に机を取りに行く。
そして自分の机を最後尾にして、その前に彼女の机を並べる。
七瀬「あの」
「ありがとう。机持って来てくれて」
浩平「いやぁ、今朝は凄い剣幕だったな」
七瀬「・・・え!?」
「・・・・・ぐぇっ」
途端に訝しげな表情に変わる。
七瀬「・・・えっと、折原君って言ったっけ? よろしくね」
こほん、と咳払いをして、そう言う。
浩平「おまえの席、こっちだから」
七瀬「あっ、入れ替えたんだ・・・」
浩平「そーいうこと」
その刹那。
魔法学総論の巳間が姿を現した。
巳間「席に座れ。始めるぞ」
それが授業開始の合図だった。
黒板の文字を写していると、目の前にある後頭部が目に入る。
それをぼーと見ていると、不意にその頭が視界から消える。
巳間「え〜と、七瀬さん。いきなりで悪いけど、次のページの3行目から読んでくれるか?」
七瀬「はい」
真新しい教科書のページをめくる七瀬。
ちっ、オレの教科書より綺麗だ・・・・・負けたぁ。
自慢じゃないが、オレの教科書の綺麗さには定評があった。
・・・・・まあ、ただ単にあまり開いていないだけだが。
七瀬「えと、禁呪の規定について。国際魔法条約(International Conventions on the Magic)、通称ICM第9条第1項に、発動の如何にかかわらず、その使用を禁止する魔法(禁呪)の規定が為されている。禁呪項目は主として、人の精神・人権・環境を著しく阻害する魔法が対象となる。1998年4月現在、その数は69に及ぶ」
巳間「うん、そこまででいいぞ。簡単に黒板にまとめるぞ」
おお〜、と静かな歓声が教室を包む。
確かにアナウンサーのようだったな。
良く言えば、すらすらと間違いなく読んだと言えるが、逆を言えば、感情がこもっていない読み方だった。
ガタッ、と七瀬が席に着き、後頭部が戻って来た。
はぁ、しかし暇だ。
魔法の練習でもしてるかな・・・
浩平「我ここに契約を望む。・・・・・聖なる御神の使い、中級三隊力天使ヴァーチューズよ、我が声に応え、その力を我が前に示せ。・・・リフォーム(物質変換)っ」
小さな声で呪文を唱えた。
・・・・・。
ぐきぃっ!!
もの凄い音がした。
七瀬「ぐ・・あ・・・」
七瀬の首が直角に折れ曲がっていた。
謎の女生徒「七瀬さんっ、どうしたの?」
七瀬「うぐっ、ううん、なんにも・・・」
謎の女生徒「先生ーっ、七瀬さん、泣いてますぅーっ」
巳間「おい、何事だ?」
七瀬「な・・・なんでもありませんっ・・・」
うーん、冗談で唱えた魔法が成功するとは。
しかし一瞬とはいえ、七瀬のおさげが石化するとは思わなかった。
やっぱりオレ、魔法の才能があるなぁ。
・・・・・・。
しばらくして、授業終了のチャイムが鳴る。
巳間「今日はここまで」
委員長「起立!・・・礼!」
ふぅ、やっと終わった。
七瀬「ちょっと、来てくれる?」
後ろを振り向き、そう言ってくる七瀬。
浩平「ああ」
オレは覚悟していたので、黙って七瀬の後に続き廊下へ出た。
... To Continue
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はぁ、疲れたよ〜っ
澪『なのなの』
もう寝よ。
澪『おねむなの』
感想はこの次書きます。では。
ぐー・・・・・。
(−_−)゜ZZZ・・・