無意識という心 投稿者: スライム
はじめに

 このSSは、Moonな日々の番外編です。
 また、長く雰囲気はダーク系です。ご了承の上、読んで頂ければ光栄です。


通廊を歩く茜。
その表情に感情は見出せない。
「ここだ。入れ」
黒ずくめの服装をした男が茜に促す。
目の前にある黒く無機質な扉。
その扉が自動的に開いていく。
「さあ、ここが適性検査を行うところだ」
男が茜の背中を圧(お)す。
「・・・・・」
言葉を返すことなく、一人中に入る茜。
茜はFARGOに来てから一言も話していない。
・・・決して心を許さぬように。
そして、任務を遂行するために・・・

真っ暗で狭い部屋。
室内に入ると、扉は閉じ込めるように閉まり出す。
何も見えない中で、低く静かな声が響き渡る。
・・・眼を閉じて。
「・・・・・」
・・・眼を閉じて。
声が繰り返す。
「・・・嫌です」
・・・閉じなければ、適性検査は出来ない。
「・・・あなたは何者ですか?」
・・・無意味な質問だ・・・
「答えなければ、眼は閉じません」
・・・もしその答えを必要とするならば、探し求めればよい・・・
「嫌です」
・・・ふふふ、不思議な娘だ。
・・・素晴らしい素質も秘めている・・・
「・・・・・」
・・・約束するよ。
・・・キミが眼を閉じても私はキミに触れることはない。ただ心に語りかけるだけだ。
「洗脳するつもりですか?」
・・・キミは賢く、現実的だ。
・・・キミの意志に反して洗脳することは無理なことだ・・・
「・・・わかりました」
ゆっくりと眼を閉じる。
・・・・・。
・・・。

私はいつもの空き地に来ていた。
あの人が消えた場所に。
今日も待っていた。
・・・誰を?
私の幼なじみ・・・。
・・・何のために?
帰りを待つために・・・。
・・・約束は?
・・・・・。
してない。
私が勝手に待ってるだけ・・・。
・・・キミがいるから、待っているから・・・
どういう意味なの?
・・・彼が永遠になり、そして戻ることが出来ないのだよ。
どうして?
・・・キミの心の中にある、もう一つの意識。
・・・そう、今は無意識と化している心。
無意識!?
・・・意識しない、意識するに値しないとキミ自身が判断したもの。
・・・それが原因なんだよ・・・
どうすれば・・・
どうすれば、あの人は戻れるの?
・・・意識と無意識の反転。
意識と無意識の反転・・・。
・・・そう、原因となった記憶を有する意識。
・・・キミ自身がその意識から答えを探せば良い。
答えを探す・・・。
・・・あとはキミ次第。
・・・もう一人のキミがどうするか、ということだよ・・・
・・・・・。
・・・。

眼を見開く。
手の甲に文字が焼き付けられていた。
『A−9』・・・そう書かれていた。
・・・おめでとう。
・・・キミはClassAに相応しい人材だ。
「ありがとうございます」
・・・訊ねたいことがあるのだが・・・
「はい。どうぞ」
・・・キミの名は?
「鹿沼葉子(かぬまようこ)。でも今よりこの名は必要ありません」
・・・ほう、なぜ?
「識別番号がありますから」
・・・その通りだ。
・・・キミには期待しているよ・・・
「はい」
背後の扉が開く。
そして、係員に連れられA棟へと行くのだった。

・・・キミの意志に反して洗脳することは不可能だが・・・
・・・キミの意志を伴なえば可能なのだよ。


  end.


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スライムです。
私自身、茜SSは二度目。
前書いたのが『気になるお年頃っ!』でした。
う〜ん、茜のSSはシリアスになっちゃいますね、自然と。
本当は澪のSS書きたいんですが・・・。
では、みなさん失礼します。