・・・意識は覚醒していた。
自分でも驚くくらいの深い眠りだった。
ぐっしょりと濡れた剥き出しの地面の上に座り、淡く茂った木々の枝葉で雨をしのぐ。
ここ数日降り続いている雨は、今日もまだ止むことがなかった。
濡れて顔に張りついた前髪を掻き揚げ、目の前に広がる風景を眺める。
・・・・・・。
かすかに誰かがやってくる足音がした。
だれかがぬかるんだ道無き道を歩いてくる。
「・・・!」
見つかってはならない。
こんな姿で見つかったら大変なことになる。
そう思ってオレは立ち上がり、奥へと走りだす。
「待って!」
聞き覚えのある声。そう・・・詩子だ。
でも待つわけにはいかない。
オレは彼女にとって知らない人だから・・・。
だから・・・。
「あんたねぇ!さっさと傘返しなさいよ!」
え?・・・オレは耳がおかしくなったのだろうか。
いや、おれに対して放った言葉だろう。
「・・・もう何日経つと思ってるのよ、・・・浩平」
びっくりした、涙が出そうになる。まだオレを覚えてくれた。
心の底からうれしさが込み上げてくる。
そんな顔を見せないように後ろを向いたまま答える。
「・・・覚えていたのか」
「あたりまえでしょ、折原浩平」
「・・・おまえ、オレのことを忘れてたんじゃないのか」
「そうね、一瞬忘れかけたわ、あの雨の日。・・・大好きだった人のこと」
『この人・・・・・・茜の、知り合い?』
「・・・・・・」
「でもね、今は茜と一緒で私もあなたのこと覚えている。・・・ほんとはね、前消えた幼なじみのことも覚えてる。・・・でも忘れたふりしてた。あなたのことも幼なじみも・・・好きだから、大好きだったから・・・」
「どうして、そん・・・」
だが、オレは言葉に詰まった。その表情を見て。
「・・・好きだったから、大好きだったから!忘れようとしていた。思い出すと胸が締め付けられるから。どんなに願ったってあの人は帰ってこないから!!」
「・・・」
「茜には悪いと思った。でも忘れたことにしていた・・・自分が辛くなるから」
「・・・そうか」
「・・・でもさ、あなたは帰ってくると信じてる。そんな感じがする。あんたなら地獄の底からでも戻ってきそうだもんね。だから、だからさ忘れないよ・・・」
もう判っていたんだ・・・、俺が消えることを。
「そうだ、誕生日おめでとう。浩平」
ふと、そんな事を言う。
「・・・茜から聞いたのか・・・」
「ええ、きっとあの空き地にいるわよ・・・、茜のことだからプレゼント持って」
「・・・そうか」
「どうしたの?行かないの?」
動けなかった。
「早く行きなさいよ!」
なぜかとても大事なことを見逃していたような気がして。
「・・・なにやってんのよ。早く行きなさいよ。茜がプレゼント持って待ってるのよ!茜はあなたのことを待ってるのよ!!だから・・・だから・・・、もういやぁ!!!」
もう詩子の顔を見ていられなかった。
「詩子・・・」
「何言ってるのよ!あんたなんか知らないわよ!!もう、あの雨の日に忘れたわよ!!何もかもぉ!!!!」
もうだめだった。オレはもう耐えられなかった。
「・・・私は茜にはかなわないのよ。あの雨の日、一瞬だけ・・・あなたのことを・・・なのに茜は、ずっと、ずっと、ずっと・・・」
「・・・早く・・・行ってよ・・・あなたが好きなのは茜でしょ・・・」
オレは降りしきる雨の中。
「・・・・・・ごめん、必ず帰ってくるから、そしたらさ・・・」
振り返って言う。
「3人でワッフル食べような」
茜をつらくさせるかもしれない。でも・・・。オレは・・・。
茜に会いたかった。だから、雨の中、空き地に向かった。
「ごめんな・・・、詩子」
・・・さようなら、私の・・・大好きだったひと。
でもさ・・・伝わったよね?
・・・私の想い。
・
・
・
季節は再び春。
「でもさぁ、クラス替えがないってことは・・・またあいつと同じクラスだったの?」
わたしは茜の後ろにいる浩平に気づき、そう言う。
「・・・・・・え」
「・・・そういえばさ、ずいぶん長いことあいつの顔見ないよね」
つらく長い1年だった。
「・・・あいつ・・・」
でも、茜にとってはもっとつらかったのだろう。
「そう。賑やかで、自分勝手で・・・」
そう、わたしはもうふられたもん。だから、大丈夫・・・。
「・・・・・・」
浩平が人差し指を立て、口に当てる。
「いつも顔合わせてたら私に文句ばっかり言ってたけど・・・」
「・・・いないと・・・寂しい・・・?」
「ううん、あたしは全然寂しくない」
あなたは約束きちんと守ってくれたから。もう寂しくない。
「私は・・・寂しいです」
「・・・茜、泣いてるの?」
「はい」
あちゃぁ、気づかれたかしら?くそぉ・・・、もうごまかすしかない!
「あぁぁぁぁぁ!」
後ろにいる浩平をわざとらしく指差す。
・・・そして茜が振り向く。
「ただいま」
浩平はバツが悪そうに笑った。
おかえり、・・・私の好きだったひと。
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シリアスモード全快のしーどりーふです。
皆さん、あんなわけわからん文章に感想ありがとうございました。
どーも駄目ですね、オレの書いたやつは。
では感想です。
@だよだよ星人様 奥様は魔女(前編)(中編)
金たらい?これが不可視の力・・・(ほんとか?)
でもなんか先が読めないんですけどこの話。あまりギャグも入ってないしなぁ。
とおもったら、中編からなんかテンション上がってきたし。
どうなるんだこれ、早く続き読みたいです。
@白久鮎様 茜が「あれ?」
1UPキノコですか。やられました、それにしてもなぁ、茜が2人か・・・。
ほんと1人ほしいですね。
あと最初に書いた後書きにだまされました。(ばか)
ほんとに続くかと思いましたよ。(笑)
うーん。でもあのネタをほんとに書いてくれるとは・・・感激です。
@GOMIMUSI様 あなたのいない世界で 第一部
浩平が言っていた「ずっとわらっていろよ」ってのは
瑞佳が考えていたものとは違うんじゃないかな、なんて。
オレがいなくなっても気にするなよってことなんでしょうね
@さすらいの虚無僧E様 新作ホラー(?)階段
みさおの兄を思う気持ちがでてますよね。
あとそれから、内容が前出した人と同じになるってゆうのはめずらしく
ないんじゃないかなぁ。
だからぼくが前の人と同じようなの出しても責めないで下さい。