夜想曲 2 投稿者: 静村 幸
 住井がノブを捻ってドアを開けると、そこには3人の子供が耳を戸にあてて中をうかがっていた。そして急に出てきた住井に驚いて声を上げた。
「す、住井兄ちゃん・・・」
「お前ら・・・」
 住井はその3人をみて苦笑した。それは彼がよく遊んであげる近所の兄妹たちだった。
 小学校三年の長男とその一つ下の弟。そして今年小学校に上がったばかりの一番下の妹。
 長男は苦笑した住井につられるようにえへへと笑った。
「住井兄ちゃんがそのお姉ちゃんに変なことしないかって心配だったんだよ」
 と、長男は笑いながら言った。
「何言ってるんだ、まったく・・・」
 少し動揺しつつも、住井は兄弟の頭を両脇にぐりぐりと抱える。兄弟達はきゃははと笑いながら楽しそうだ。
 茜はそれを不思議な気分で見ていた。
 すると、住井の手を逃れた一番下の妹がとことこと近寄ってくる。
「どうしたんですか?」
 茜が聞くと、少女ははにかみながら茜の顔を見上げ、
「お姉ちゃんきれいっ! お人形さんみたい・・・」
 と、顔をきらきらと輝かせる。
 茜は一瞬どうすればいいかと動きを止めたが、ゆっくりと腕を上げるとその少女の頭をそっと撫でる。
 少女は嬉しそうに茜を見続けていた。

「じゃ、俺は一緒に乗っていかないけど・・・一人で大丈夫だよね?」
「はい・・・色々とありがとうございました」
「なに、たいしたことじゃないさ」
 住井は軽い調子で言った。
 子供達が来てすぐに、茜の制服が乾いたといって彼らの母親がやってきた。
 茜は丁寧にお礼を言い着替えると、洗濯して返すと住井のパジャマをあずかった。
 そして、せっかくだからと住井が作った雑炊を食べ、一息ついた頃住井がタクシーを呼んだのだった。
 茜がタクシーに乗り込むと、住井は運転手にむかって声をかけた。
「これでこの子の家まで乗せていって上げてください」
 そういって住井はタクシーチケットを取り出して運転手に渡した。運転手はうなずく。
「・・・住井君」
「あ、これお歳暮でもらったんだけど俺、タクシー乗らないからさ」
 何か言おうとした茜の言葉を遮るように、住井は早口に言い、にっこりと微笑んだ。
 その様子に茜は出しかけていた言葉を飲み込む。そして別の、先ほどから何回も言った言葉をもう一度言った。
「・・・ありがとうございます」
 うなずく住井の前で、タクシーの扉が閉まる。
 茜は車内でもう一度軽くお辞儀をした。
 タクシーは低いエンジン音を立てて、走り出した。


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 ・・・何をやっているんでしょうか?>自分

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