俺は近頃バイトを始めた。理由は・・・いつも繭や茜にワッフルをたかられて、流石に財政がきびしくなってきたからだ。
バイト先は近所のコンビニにした。務めはじめて数週間、なんとか仕事にもなれてきた、その頃の事だ。
その日、店で仕事をしていると茜がやってきた。
この店は茜の家とはちょっと離れているので、何か俺に用があるのかと思い、話しかけてみることにした。
「お、どうした茜?」
「・・・もちろんお買い物です」
「なんだ、俺に会いに来てくれたのかと思ったんだけどな」
「・・・ただの偶然です」
茜はそれだけ言うとかごをもって店の中を物色しはじめた。俺はしばらくそれを目でおっていたが、すぐに客がレジにやってきたので仕事にもどることにした。
そして数分が過ぎた頃、茜がレジにやってきた。そしてかごを台の上に置く。
「・・・おねがいします」
丁寧にそう言う茜の声を聞きながら、俺はかごのなかを見てしばらく体が硬直した。
かごの中には商品が2つ、入っていた。
「・・・茜?」
「なんですか?」
「・・・・いや・・・なんでもない」
俺は言おうとした言葉を飲み込んで、素早くバーコードを読み込ませて代金を告げる。茜は可愛いサイフから貨幣を取り出してそれを払った。
「・・・ありがとうございました・・・」
俺がそう言うと、茜はぺこりとお辞儀をして店から出ていった。
しかし俺は茜が買っていった商品の組み合わせを考えて少し背筋が寒くなった。
単独で買えば、別に変でも何でもないのだが・・・。
「・・・食パンと練乳を一緒に買っていくなんて・・・」
その用途を考えていくと、どうしても一つの方向に向かっていってしまう。
俺は今のことはなかったことにしようと心に決め、仕事に戻るのだった。
END
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コンビニは奥が深い(笑)
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