白雪姫だった・・・はず 投稿者: 静村 幸

 昔々あるところに、一人のお姫様がいました。
長森「え、私がお姫様なの? 私だよ? いいの?」
 お姫様の名前は長森瑞佳。しかしお姫様はいつも真っ白い雪のような牛乳ばかり飲んでいたので、みんなから「白雪姫」と呼ばれていました。
長森「牛乳は体にいいんだもんっ」
 白雪姫の母親は、早くに亡くなってしまいましたが、彼女はみんなにかわいがられ、すくすくと成長しました。
 しかし、白雪姫が年頃の娘に育った頃、彼女の父親である王様が再婚しました。その再婚相手はなんと、魔女だったのです!
七瀬「何で私がこんな役を・・・」
 継母の魔女はある晩、大きな魔法の姿見の前で呪文を唱えました。
七瀬「鏡よ鏡、世界で一番の乙女はだれなの?」
鏡の裏にいる南「それはもちろん里村さ・・・んじゃなくて、白雪姫です」
七瀬「な、なんですってー!」
 ガシャーン。
 怒った継母は魔法の鏡を蹴り割ってしまいます。
鏡の裏にいた南「うわっー!」
 継母の怒りはそれだけではおさまりません。継母は手っ取り早く世界一の乙女になるために白雪姫の殺害を猟師に命じました。
七瀬「いい、ちゃんと白雪姫を森に誘い込んで殺しなさいよ」
猟師澪(かきかき)『はいなの』
 白雪姫を可愛いと思いつつも、継母の恐怖に勝てなかった猟師は彼女を森に誘い込みます。しかし、どうしても猟師には白雪姫を殺すことができません。
猟師澪(かきかきかき)『白雪姫、逃げてなの』
長森「うん、わかった。でも澪ちゃん、ちゃんとお城まで戻れる?」
猟師澪『・・・あ、なの』
 深い森の中まで来ていた猟師は怖くて一人ではお城まで帰れません。一人で帰ることを考えてすでに半分泣き顔です。
長森「・・・じゃ、お城まで着いていってあげるね」
猟師澪『わーいなの!』
 白雪姫は猟師をお城まで送り届け、彼女を殺した証拠としていつも髪をとめている黄色いリボンを手渡し、森の奥深くへと逃げていきました。
長森「・・・ここ、どこだろう・・・」
 白雪姫が森の奥へ奥へやってくると、そこには小さな家がありました。
 疲れきっていた白雪姫はその家の中におそるおそる入っていきます。
長森「すいませーん、誰かいらっしゃいませんかー?」
 すると、何か小さいものが白雪姫の足下にやってきます。
長森「き、きゃー!」
 白雪姫は慌ててしゃがみ込みました。
長森「か、かわいー!」
 そう、なんとそこには八人の小人ならぬ八匹の猫が。
八匹の猫「「ニャーン」」
 白雪姫は八匹の猫と共同生活を送ることにしました。
 しばらくの間、平和な時が流れました。
 しかし、ある晩白雪姫の継母である魔女はまた大きな姿見の前に立って呪文を唱えました。
七瀬「鏡よ鏡、世界でいーっちばん乙女なのはだれなの?」
つぎはぎだらけの鏡の後ろにいる住井「それは、もちろん白雪姫です!」
 きっぱりと言い切りました。
七瀬「な、なんですって! 白雪姫は死んだんじゃなかったの!」
 白雪姫が生きていることを知った継母は、鏡を後ろにいた人間ごと粉々に粉砕したあと、毒ワッフルを用意して老婆に変装し、白雪姫暗殺を自ら実行しました。
七瀬「おいしいワッフルはいらんかねー?」
とおりすがりの茜「・・・ください」
七瀬「・・・・・」
 妙な邪魔が入ったものの、継母はうまく白雪姫に毒ワッフルを食べさせることに成功しました。
長森「うっ・・・・」
 がくりと崩れ落ちた白雪姫は深い眠りに入ってしまったのです。
七瀬「ほっほっほ、これで私が世界一の乙女よー!」
 それはない、と誰もが思いました。
 眠ってしまった白雪姫をベットに寝かせ、その周りで八匹の猫達は泣いています。
猫1「ニャーン!」
猫2「ナオー!」
猫3「ミャー!」
猫4「ウニャ!」
猫5「ナー!」
猫6「ニャオ!」
猫7「ミャオ!」
猫8「ミャーン!」
 とても五月蠅くて、森に住む動物たちはものすごく迷惑しました。
 そこになぜか隣国の王子が通りかかります。
浩平「どうしたんだ。猫?」
八匹の猫「「ニャー!」」
浩平「? 何言ってるかわからん・・・」
八匹の猫「「ミャー!」」
浩平「?」
 両者は思うように意思の疎通ができません。しかし数時間もすると王子は眠りについている白雪姫に気がつきました。
浩平「・・・うわ、死体?」
長森(ちがうもん!)
 白雪姫に心奪われた王子は、彼女が目覚めないことを知ると落胆しながらお別れに口づけをしようと顔を近づけていきます。
浩平「・・・・・ん?」
 ふと眼を開けると白雪姫の顔が間近にあり、なぜか白いはずのその顔は真っ赤になっています。
浩平「・・・・・おい」
 王子は白雪姫から体を離し、じっとその顔を見つめました。
浩平「・・・実は起きてるだろ?」
 しかし白雪姫は「起きてないもん!」という顔で眠り続けています。
 王子はそんな白雪姫をしばらく見ていましたが、その目をふっと猫に向けた後、何か思い至ったように顔を白雪姫の耳元に近づけ、なにやらボソリと呟きました。
 するとなんということでしょう、眠りについていた白雪姫が目を覚ましました。しかしその顔は先ほどとは違い少し青ざめ、慌てている用に見えます。
浩平「よし、起きたみたいだな」
 満足そうな王子に対して、白雪姫は非難の目を向けていました。そしてなにやら呟いています。
長森「駄目だもん・・・三味線なんて・・・」
 一体王子は何を白雪姫に言ったのでしょうか。
 しばらくして落ち着いてきた白雪姫に、王子は事情を聞きました。そして魔女の王妃の話を聞くと、憤然と立ち上がりました。
浩平「よし、俺がその魔女を退治してやる」
 王子は白雪姫を連れて、魔女のいる城へとやってきました。猫はお留守番です。
 城の門番は王子を見て胡散臭そうな顔をしましたが、白雪姫がいることを確認すると喜び、その後、城の様子を話し始めました。
 その話によると、魔女は王をだまして城を乗っ取り、国を支配しているというのです。
 王子と白雪姫は門番の案内で王妃のところまでやってきました。
七瀬「なにしにきたのよ!」
浩平「ちょっと話があってな」
 にらみつける王妃に対して王子は余裕の表情です。
七瀬「一体何の話よ」
浩平「七瀬、お前世界一の乙女になりたいんだよな・・・?」
七瀬「そうよ?」
浩平「・・・毒ワッフルで永遠の眠りにつくっていうのは乙女にしかできない技だと思わないか?」
 王妃はその言葉をしばらく考えた後、頷きました。
七瀬「そういえばそうよね」
 王子は王妃にわからないように、にやりと笑いました。
七瀬「じゃ、私は眠りにつくから、王子様つれてきてね」
 王妃は夢見る乙女の瞳でそう言うと、毒ワッフルを取り出して食べ、そのまま崩れ落ちました。
長森「やったね、浩平!」
浩平「ああ、これで・・・この国は俺のものだな」
長森「え?」
 なんということでしょう。王子は最初からこの国を乗っ取るつもりだったのです!
 王子は魔女が眠りについたのをいいことに、この国を自分の国と強制合併し、巨大な軍事力を手に入れました。そして、世界に向けて宣戦布告し、侵略を始めたのです。
長森「だめだよ、浩平やめようよ!」
 白雪姫の言葉にも王子は耳を貸しません。
 そしてついに王子はついに世界を征服し、毎日遊び暮らす永遠の日々を手に入れたのでした。
浩平「わははははははは!」

                                    〜おわり〜


   **********


静村 「・・・・・・・・・・・・」
郁未 「・・・・・・・・・・・・」
静村 「あれ、郁未さんじゃないですか」
郁未 「だぁー! なに前回と同じ書き出ししてるのよ!」
静村 「大丈夫大丈夫、誰も前回のことなんて覚えてないですよ」
郁未 「それじゃいけないでしょ! もっと早く書きなさいよ」
静村 「え〜?」
郁未 「『え〜?』じゃないわよ、ほんとに。それにしてもなんなの、この話は?」
静村 「え? うーんとね・・・・あれ? 書き始めの頃はどうして書こうか覚えてたんだけど、ゆっくり書いてたからわすれちゃった(笑)」
郁未 「・・・・・・・・・お馬鹿」
静村 「てへへ。まあ、いいじゃないですか」
郁未 「それにしても・・・ずいぶんな終わり方ね」
静村 「ああ、郁美さん。あんまり細かいこと気にすると小じわが増えますよ?」
郁未 「(ぷちっ)」

   グシャ

静村 「・・・・・・・・・」
郁未 「あら、どうしたの?」
静村 「・・・・・・・・・」(声が出ない)
郁未 「あらあら、眠っちゃったみたいね。もう、しょうがないわねぇ」(よく見ると手が血に染まっている)
静村 「・・・・・・・ボソボソ」
郁未 「あれ? なに?(ち、生きてたか・・・)」
静村 「・・・・・・・ヒス」

   ドグッ

静村 「・・・・・・・・・」(郁未のつま先が腹にめり込んで息が出来ない)
郁未 「あら? 今度こそ寝ちゃったみたい。そういうわけで、みなさんごめんなさいね、また今度ということで」
静村 「・・・・・・・・・」(口をぱくぱくさせている)
郁未 「またね〜」

  郁未退場。
  しばらくすると、ゴミのようにうち捨てられていた静村が動き出した。

静村 「み、みなさん・・・・どうも。「夏の日」の続きはちゃんと出しますんで、ちょっと待ってくださ・・・・ハッ!」

  気がつくと後ろにゆらりと郁未が立っている。

郁未 「何? どうしたのつづけなさい?」
静村 「い、いえ、もういいです・・」
郁未 「・・・・感想は?」
静村 「・・・・・・・・」
郁未 「やっぱり一度死なないと駄目みたいね?」
静村 「や、やめ、やめて〜・・・」

  ぷつっ(画面、急に途切れる。その後「しばらくお待ちください」という文字と音楽が流れていたが、それが終わることはなかった・・)