髭の困惑(中編) 投稿者:
「んあ〜、今日はここまで。」

ガタッ。ダダダダダダッ!!

午前中の授業の終わりのかけ声とともに、数人の生徒が教室を飛び出す。
茜、七瀬、長森の三人である。
「では、皆さん。配置について下さい。」
走りながら話しかける茜。
「わかったわっ!!」
「了解だもんっ!!」
七瀬と長森は茜と別れ、校庭へと向かった。
そして、茜は軽音楽部の部室へと入る。
ドアには『茜ちゃん軍団作戦本部』と書かれた張り紙がなされている。
茜は椅子に腰掛け、確認をとる。
「・・・準備はよろしいですか。皆さん。」
「こちら、詩子。写真部の現像室は押さえたわ。」
「こっちは食堂の録音班だよね。準備おっけーだよ。あ、カツカレーおかわりお願いね、繭ちゃん。」
「みゅ〜♪ハンバーガー♪」
『澪なの。作戦行動位置についたの』
「撮影班も配置についたわ。瑞佳、カメラは大丈夫?」
「う〜ん・・・ISAは400のフィルム使って・・・絞りは4.5f・・・シャッタースピードは1/1000っと・・・うん!!大丈夫だよっ!!」
「・・・では、作戦開始です。」
遂に茜ちゃん軍団の陰謀が動き出した。



「んあ〜・・・今日は学食だな。」
髭は本来弁当なのであるが、最近は妻のご機嫌を損ねてて、弁当を作ってもらってないのだった。
髭が階段を降りると、背後からいきなり襲いかかる者があった。

グイッ!!

「ぐあっ!!・・・・・なんだ、上月君じゃないか。」
『お昼、一緒に食べるの』
満面の笑みを浮かべ、髭にぶら下がる澪。
「んあ〜、しょうがないな〜。」
しょうがないとかいいながら、結構嬉しそうである。
澪のあまり無い胸が髭の腕に当たっていると無関係ではあるまい。
髭って・・・・・ロリ?


ガラッ。

澪が腕にぶら下がったまま、学食のドアを開ける髭。
「・・・・・。」
目の前で、おしゃべりをしている女生徒達が目に入る。
「そうなんですぅ〜、それでですね・・・・・?あれぇ?どうかしたんですかぁ?」
「・・・・・。」
肘をついて、おしゃべりをしていた女性徒の方は、髭を見ると急に黙り込んだ。
その女生徒と目が合うと、髭も突然慌てだした。
「こっこっこっ、上月君っ!!先生は急用を思い出したので、これで、失礼するよっ!!」
声が裏返りながら、ぶら下がっていた澪をふりほどくと、一目散に走りだす、髭。
「・・・・・由依。」
「はっ、はひいいいぃぃぃっ!!」
肘をついていた女性徒の、なぜか異様な迫力に押されて、慌てて返事をするもう一方の女生徒。
「・・・・・用事が出来たから失礼するわ。」
そう言うと、その女生徒は、髭の後を追うかのように、学食を後にした。



一方、茜ちゃん軍団は。
『逃げられたの』
「・・・流石ですね。作戦名『あ〜んしてなの・ザ・決定的瞬間』を見破るとは。」
「違うよ〜、繭ちゃん。ハンバーガーじゃなくて、カツカレーね。」
「ふえ?」
「さ、寒いわね。瑞佳。」
「そ、そうだね。七瀬さん。」
「・・・・・ここ、暗いんだけど。」
「・・・全員、作戦本部に撤収して下さい。」
惜しくも作戦に失敗した為、早急に次の手を講じる必要があった。
「・・・ところで、ねえ?七瀬さん?」
「なに?瑞佳。」
「私たちって、トランシーバーもないのに、どうやって離れた所と会話してるの?」
「・・・・・。」
・・・・・・・・・・恐るべし、茜ちゃん軍団っ!!



「はあ、はあ、はあ・・・・。」
髭は走っていた。
まるで、ハンターに追われる獣である。
「っ!!!」
そして、目の前に立ちはだかった女生徒の姿を見て、息を飲んだ。
「・・・そんなに急いで何処に行くのかしら?・・・・・あ、な、た?」
「あなた」と言う言葉を、一区切りづづ言う辺りが怖い。
「うわあっ!!校内でなんて事を言うんだっ!晴香っ!!」
髭は、晴香の口を押さえると、近くにあった演劇部の部室に転がり込んだ。


もうおわかりかと思うが、髭の妻・晴香とは、いつも、食堂にいる彼女。
現役の女子高校生(現在3年)であった。
つまり、校長から依頼のあった教師とは、ずばり、髭その人であった。


「手を離してよっ!!」
「落ち着け!!」
「なによ!最近、全然夜に構ってくれないと思ったら・・・やっぱり、浮気してたのねっ!!」
「ちがーーーうっ!!」
「あんな貧乳がいいんだったら、由依でも相手にしてればいいだわっ!!
「だああああっ!!何を言ってるんだっ!!」
もはや全然、手が着けられない。
こうなった晴香を止める方法は、髭は一つしか知らなかった。

グイッ!!

「っ!!」
突然、晴香を引き寄せたかと思うと、口づけする髭。
「・・・・・んっ・・・いや・・・・離してよ・・・・・。」
そうは言うものの、晴香の声はおとなしくなっている。
髭の手は、晴香の胸に。
「・・・はあ・・・。」
そのまま、胸を愛撫しつつ、口を離すと、晴香の耳たぶを軽く噛む。
「・・・・・ひゃっ!」
崩れそうになる晴香の体を、膝を足の間に挟んで支える髭。
「ん・・・はぁっ・・・。」
髭の手は胸を愛撫しつつ、制服のボタンを確実にひとつづつ外していく。
「・・・・・・・・・・はぁ・・・。」



突然、茜ちゃん軍団作戦本部こと、軽音楽部室。
「うわっ!なにっ!!」
「きゅ、急にカメラがこっちに来たんだもんっ!!」
大口を開けて、ワッフルにかぶりついていた、七瀬と長森は慌てた。
「・・・諸般の事情というやつでしょう。」
流石は、茜。よく分かってらっしゃる。
「自主規制というやつだよね。なんとなくだけど。」
「はえ〜。」
『残念なの』
作者もちょっと残念だ。
さて、話しを戻すと、ここ茜ちゃん軍団作戦本部では、山端堂のワッフルを食べながら、髭に対する作戦の第二弾を検討している所であった。
「・・・やはり、茜ちゃん軍団01号では、ちょっとお色気が足りませんでしたね。」
『不本意なの』
うなだれる澪。
「う〜ん、なら、もって過激にいく?」
みさきは10個めのワッフルに手を伸ばしながら、危険な発言をする。
だが、決して茜の目の前にあるワッフルには手を出そうとしない。
「みゅ〜っ♪ラブホテルから出てくるのを写真に撮るってテレビでやってたもん。」
きっと、お母さんが好きな番組なのだろう。
「・・・完璧ですね。茜ちゃん軍団04号」
「でも、これだけ大人数だとそんな所、うろうろできないんだもん。」
「第一、誰がその役やるのよ。私は絶対嫌よ。」
それでも、作戦そのものを否定しない長森に七瀬。
「・・・大丈夫です。囮は既に確保してあります。後は、撮影班に動いてもらいましょう。」
にこやかな笑みを浮かべながら、自分専用のワッフルに手を伸ばす茜。

こうして、茜ちゃん軍団の次なる陰謀は動き出したのであった。



所で誰か忘れていないだろうか?
では、写真部現像室を見てみよう。
「あ〜ん、なんで鍵がかかってるのよ〜〜〜っ!暗いよ〜〜〜っ!!お腹空いたよ〜〜〜っ!!」
詩子は、まだ自分の役目に気がついていなかった。



−−−−− あとがき −−−−−

 雫 「今日は風邪をひいてるので、これで・・・・。」
大福男「でも、これからチャットに行くんだろう?」
 雫 「(ぎくうっっっ!!)で、では、また〜♪」