くりすます 投稿者:
クリスマス。
若者達がそれぞれの想いに夢を託す聖なる日。


「クリスマス・・・か。」
・・・浩平は予定ないのかな?
でも、私から誘っちゃ変だよね。
だって・・・私・・・私だもんね・・・・・。

ポロンッ・・・・・。

「・・・・・わかります。」
「っ!?」
瑞佳が振り返ると、白いギターを弾いて、茜が立っていた。
「さ、里村さん?」
ポロンッ・・・・・。
「長年の幼なじみとしてのつき合い・・・その関係を壊したくない・・・その想いが心を縛る・・・。」
ポロンッ・・・・・。
まるで、人生に疲れた人々が集まる酒場に来る流しのギター弾きのように、淡々と語る茜。
「って、なんでわかっちゃうんだよっ!?」
動揺する瑞佳。
「では、私は用事がありますので、これで・・・。」
ポロンッ・・・・・。
茜はギターをひと弾きすると去っていた。
「・・・・・さ、里村さん?」
後に残されたのは瑞佳だけだった。



「クリスマス・・・よね。」
転校したてで、そんな親しい友達もいないし・・・今年は何にもないかな。
こんな時こそ、王子様が現れて、ダンスにでも誘ってくれればいいだけど・・・。
・・・折原は、王子様って柄じゃないしね。

ポロンッ・・・・・。

「・・・・・わかります。」
「誰!?」
七瀬が振り返ると、白いギターを弾いて、茜が立っていた。
「・・・里村・・・さん?」
ポロンッ・・・・・。
「乙女は夢見る生き物・・・特別なその日を大事にしたい・・・その想いこそが乙女の証・・・。」
ポロンッ・・・・・。
まるで、ファンタジーゲームに出てくる吟遊詩人のように、朗々と語る茜。
「・・・・・なに言ってるの?」
あっけにとられる七瀬。
「では、私は用事がありますので、これで・・・。」
ポロンッ・・・・・。
茜はギターをひと弾きすると去っていた。
「・・・・・何しに来たの?」
後に残されたのは七瀬だけだった。



「クリスマス・・・なんだよね。なんとなくだけど。」
みんなは商店街に繰り出して・・・おいしい物いっぱい食べるんだろうな。
楽しいよね。きっと。
でも、私は・・・・・多分、楽しめない。

ポロンッ・・・・・。

「・・・・・わかります。」
「・・・誰?」
みさきが振り返ると、白いギターを弾いて、茜が立っていた。
「・・・・・その声は・・・茜ちゃんかな?」
「はい・・・。」
ポロンッ・・・・・。
「飛び出したくても飛び出せない世界・・・無限の可能性は恐怖と隣り合わせ・・・自分を連れだしてくれる真実の人を待ち続ける・・・。」
ポロンッ・・・・・。
まるで、古代ギリシャの哲学者のように、黙々と語る茜。
「・・・・・不思議だよね。茜ちゃんって。」
みさきは落ち着いていた。
「では、私は用事がありますので、これで・・・。」
ポロンッ・・・・・。
茜はギターをひと弾きすると去っていた。
「・・・・・何か用じゃなっかたのかな?」
後に残されたのはみさきだけだった。



『クリスマス・・・なの。』
でも、パパが居ないから、今年はパーティーしないの。
プレゼントは期待していいって言ってたけど・・・やっぱり、つまらないの。
誰かパーティーに誘って欲しいの。

ポロンッ・・・・・。

「・・・・・わかります。」
(びくっ!!)
澪が振り返ると、白いギターを弾いて、茜が立っていた。
『里村さんなの。』
(わーい、わーいっ)
喜ぶ澪。
ポロンッ・・・・・。
「年に一度のお祭り騒ぎ・・・飲めや歌えやの無礼講・・・こんな時は楽しく過ごしたい・・・。」
ポロンッ・・・・・。
まるで、宴会前の幹事の挨拶のように、揚々と語る茜。
(えぐっ・・・)
『そうなの』
同意する澪。
「では、私は用事がありますので、これで・・・。」
ポロンッ・・・・・。
茜はギターをひと弾きすると去っていた。
(えぐ、えぐ)
『いっちゃたの』
後に残されたのは澪だけだった。



「クリスマス・・・みゅ〜っ♪」
みゅ〜っ♪クリスマス♪みゅ〜っ♪クリスマス♪みゅ〜っ♪クリスマス♪
みゅ〜っ♪クリスマス♪みゅ〜っ♪クリスマス♪みゅ〜っ♪クリスマス♪
みゅ〜っ♪クリスマス♪みゅ〜っ♪クリスマス♪みゅ〜っ♪クリスマス♪


ポロンッ・・・・・。

「・・・・・わかります。」
「みゅ・・・?」
椎名が振り返ると、白いギターを弾いて、茜が立っていた。
「・・・・・ほえ?」
ポロンッ・・・・・。
「わかります・・・とにかくわかります・・・なにがなんでもわかります・・・。」
ポロンッ・・・・・。
まるで、本当は分からないのに無理して分かってるように、延々と語る茜。
「はえ〜・・・・・。」
感心する椎名。
「では、私は用事がありますので、これで・・・。」
ポロンッ・・・・・。
茜はギターをひと弾きすると去っていた。
「ほえ?」
後に残されたのは椎名だけだった。



そして、クリスマス当日。
「さて、帰るか。」
授業が終わり、帰り支度を始める浩平。
だが、浩平の前に、瑞佳が現れる。
「あ・・・う・・・こ、浩平?」
瑞佳は、どもりながら、浩平に話しかける。
「どうした?長森。」
「そ、その・・・今日は、二人っきりでクリスマス・・・だよね?」
真っ赤なって、茹で蛸といい勝負の瑞佳。
「・・・・・へ?」
浩平はキョトンとしてる。
「ちょ、ちょと、折原っ!今日は、私とダンスに行くはずじゃなかったのっ!!」
瑞佳と浩平の会話が耳に入り、浩平に食ってかかる七瀬。
「・・・・・はあ?」
ガラッ。
「浩平君、来たよ〜っ!今日は、おいしい物食べに連れてってくれるんだよね?」
みさきが浩平教室に入ってくる。
「・・・・・え?」
くいっ、くいっ。
浩平の袖を引っ張る、澪の姿があった。
(にこっ)
『はやくパーティーするの』
「・・・・・はい?」
「みゅ〜っ♪クリスマス♪」
とまどっている浩平に、椎名が飛びつく。
「ぐはっ・・・お、おい?」
浩平は5人の女生徒に囲まれ、ひじょーーーに羨ましい状態だ。
・・・・・端から見れば。
「・・・浩平・・・これは一体どういう事なんだもんっ!!」
「あんたって奴は・・・二股でも許せないのに、五股かああああぁぁぁっ!!」
「ひどいよ、浩平君!嘘だったんだねっ!!」
『パーティーするの!!』
「みゅ〜っ♪」
浩平には、何が何だか分からない。
だた、分かることは・・・頭の中を、過去の思い出が走馬燈のように駆け抜けて行っているという事だけであった。
「ま、ままままっまてっっ、みんなっっ!!これは、何かの間違いだっ!陰謀だっ!!俺は知らーーーーーんっ!!」
浩平は真実を語った。
「浩平がそんな人だった知らなかったんだもんっ!!」
ぽかっ!!
「ばれた奴は、みんなそう言うのよっ!!」
ばきっ!!
「浩平君の馬鹿ーーーっ!!」
げしっ!!
『ひどいの!!』
ぺしっ!ぺしっ!
「みゅ〜っ♪」
ぐきっ!!
「ぐはああああぁぁぁーーーーーー!!」
ぽかっ!!ばきっ!!げしっ!!ぺしっ!ぺしっ!ぐきっ!!・・・・・・・。


クリスマス。
若者達がそれぞれの想いに夢を託す聖なる日。
だからと言って、全員が幸せになれるとは限らない。


ポロンッ・・・・・。
「・・・・・いい事をした後は、気持ちがいいです。」
白いギターを弾きながら、夕日に向かって消えていく茜の姿があった。



−−−−− あとがき −−−−−

ポロンッ・・・・・。
 雫 「はっ!君は『渡り鳥茜ちゃん』っ!!(爆)」
 茜 「・・・変な名前付けないでください。」
ポロンッ・・・・・。
 茜 「・・・今回は、感想ないんですか?」
 雫 「ご、ごめんなさ〜いっ!!モデムが不調で・・・。」m(_ _)m
ポロンッ・・・・・。
 茜 「・・・言い訳ですね・・・では、次回は、私のとっておきのナンバーを聴かせてあげます。」
 雫 「ないない。」(^^;;;
ポロンッ・・・・・。
 茜 「・・・残念です。」
 雫 「では、またっ!!」