「高槻。」 投稿者:
「・・・ぅ・・・くぅ・・・はぁ・・・・・。」
暗がりに流れる女の声。
苦しみとも喜びとも区別がつかない。
「くくくっ・・・どうした・・・もっと声をあげろぉっ!喚けっ!足掻けぇぇっ!」
そして、暗がりに響く男の声。
どちらも裸である。
女は暗がりの中、男を見つめる。
「・・・・・。」
儚いまでに澄んだ目。
その目には、強い意志が込められている。
怒り。蔑み。恨み。
そのどれでもない。
あるのは・・・・・哀れみ。
「・・・なんだその目は・・・それが、犯されて奴のする目かあぁっっ!!」
ゴスッ!!
「っ!!」
男の拳が女の頬を捕らえる。
しかし、女は声すらあげる事なく、男を見つめ続ける。
「くっ・・・・・なんとか言ったらどうなんだあぁっっ!!」
動揺しているのは男の方だった。
ゴスッ!!
「っ!!」
今度は、反対側の頬だ。
しかし、女は口を開かない。
静寂。
男と女は、ひとつになったまま、ただ見つめ合っていた。
まるで、それが当然の事であるかのように。
女が先に口を開いた。
「・・・・・私は・・・・・。」
か細い声で。
「・・・私は幸せです。」
そして、力強い声で。
「っ!!」
慌てて、男が女の体から離れる。
「・・・・・っ・・・・貴様がそんな好き者だったとは知らなかったぞっ!・・・これでは、精錬にならんなっ!!この屑があぁっっ!!」
男はそう言い放つと、手早く服を身につけ、暗がりから立ち去って行った。
「・・・・・。」
後に残されたのは、女だけ。
しばらくすると、女も服を手に取り、身につけ始めた。
B−58。
女の手に、そんな文字が見える。
そして、女も暗がりから姿を消した。

精錬室。

そこはそう呼ばれていた。



「高槻。」
白い白衣を着た男が、男を呼び止める。
「・・・俺になにか用か。巳間。」
白衣を着た男は、手にしたクリップボードを見ながら、近づいてくる。
「お前が管理している、B−58だが・・・。」
男の頬が、一瞬だけ動く。
誰にも気がつかれない程、短い間だが。
「B−58がどうした。」
「ああ・・・今度、貸してくれないか。」
「・・・珍しいな。お前がそんな事を言うとは。」
男は崩れた笑みを浮かべる。下卑た、と言ってもいい。
「いいか?」
白衣を着た男の表情は変わらない。
「ふん。精々楽しんでくれ。」
男はそれだけ言うと、背を向けて立ち去って行った。

「・・・・・悪いな、高槻。『材料』が足りないんでな。」

白衣を着た男は、そう呟いていた。



「巳間。」
機械の並んだ一室で男がそう言うと、白衣を着た男が振り返る。
「どうだ、存分に楽しんだか?」
男はうすら笑いを浮かべながら、白衣を着た男にそう言った。
「・・・・・別に。だが、面白い結果にはなった。」
男の顔色が変わる。
「・・・おい・・・まさか・・・?」
「そうだが・・・・どうかしたのか?」
白衣を着た男は、表情を変えずに、逆に聞き返す。
「い、いや・・・。」
口ごもる男。
「失敗だよ。」
「っ!!」
「ロスト体だ。」
白衣を着た男は、側にあったクリップボードを手に取り、話を続ける。
「感情がない。しかし、命令には従順に従う。珍しいサンプルなんで、もう少しデータを取ってから『廃棄』する予定だ。」
「・・・・・。」
男に言葉はない。
「どうした、高槻?」
「・・・・・別に。」
男は、それだけ言うと部屋を出て行った。

「・・・・・オレも、存外、人が悪いな。」

すでに男がいない部屋で、白衣を着た男は頬を緩めながら、呟いた。



男は走っていた。
途中、警備員を捕まえて、乱暴に何かを訪ねると、再び走りだした。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。」
息が荒い。
そして、目的の場所に着くと、ドアを開け中に入る。
部屋の中はには、女が一人だけおり、ベットに座っていた。
女の視線は何もない空間を、ただ見つめている。
虚ろな目だ。
「はぁ・・・はぁっ・・・・・・・おいっ!!」
「・・・・・。」
男の呼びかけにも答えず、そのまま何もない空間を見つめている。
「・・・・くっ・・・。」
男は女に近づいてた。
「こらっ!俺様がわからんのかっ!?この屑があぁっっ!!」
女の前に立ち、叫ぶ。
「・・・・・・。」
しかし、女に変わりわない。
何もない空間を見つめているだけだ。
「・・・・・い・・・いいか・・げん・に・し・・ろ・・・。」
男はそれだけ言うと、女の前で膝を折った。
男には分かっていた。
すでに手遅れだという事が。
同じように、何人もの女を死に追いやっていたのだから。
「くっ・・・・・くくっ・・・・。」
男はそのまま、女の膝に顔を埋めた。
普段の男からは想像も出来ない姿。
母親に甘える子供のような。
「・・・お前は・・・馬鹿だ・・・。」
そのままの姿勢で話し始める。
「親の決めた許嫁なんか追って・・・こんな所に・・・。」
「・・・挙げ句に・・・この様だ・・・。」
「・・・・・。」
女は答えない。
「大馬鹿だよっ!!」
その言葉は女に向けられていた。
その言葉は男に向けられていた。
「うっ・・・ううっ・・・・・。」
男の口から嗚咽が漏れる。
そして、もう枯れたはずの涙が、男の頬を濡らしていた。
男はそのまま泣き続けた。
「・・・・・・。」
その時、男の頭に触れる物があった。
「っ!!」
手だ。
女の手が男の頭を撫でていた。
慈しむように。
男が顔を上げる。
その顔に、光の雫があたる。
「・・・・・。」
女は相変わらず、何もない空間を見続けている。
しかし、女の右目から流れ出る光の雫が、男の頬にあたる。
女は泣いていた。
右目だけで。
「・・・・・お前・・・。」
男はそれだけ言うと、何かを決心したよう、泣くのを止めた。
「・・・安心しろ・・・俺も行く・・・。」
そう言いながら、まだ泣き続ける女の頬に左手をあてる。
「もうお前を一人にはさせない・・・。」
そして、親指で涙を拭う。
「すぐに・・・・・巳間と・・・あの化物を殺したら・・・・・俺もすぐに行く。」
男はそう言うと、そっと、女に口づけをした。

ただ触れるだけの口づけ。

やさしくて、せつない・・・・・最初で最後の。



−−−−− あとがき −−−−−

雫 「・・・という訳で、我が心の師、高槻猊下のSSでしたっ!!」
雫 「そして、今回は「MOON.」ONLYですので、大福男はお休み!貧乳娘こと由依さんに来て頂きましたっ!!」
由依「貧乳じゃないですぅ〜っ!」
雫 「はい、はい。その胸の大福は取って下さいね。」
由依「うわぁ〜!この大福おいしいですぅ〜!!」
雫 「・・・・・・・いいけどね。別に。」
由依「でも、ギャグSS書きのくせに、ギャグが入ってないですぅ〜!」
雫 「(グサッ!)うっ・・・。」
由依「前作も時間かかった割には、面白くなかったですよぉ〜!」
雫 「(グサッ、グサッ!!)いや、あれは俺もちょっと・・・。」
由依「しかも、「感想ONLY書く」なんて言っておきながら、ネタがなくて考えてるうちに、書ききれなくなってますしぃ〜!」
雫 「(グサッ、グサッ、グサッ!!!)す、すみませんっ!!」
由依「さあ、はやく感想行って下さいですぅ〜!」
雫 「で、では・・・(気を取り直して)・・・感想GOっ!!」
由依「久々ですねぇ〜!!」
雫 (グサッ、グサッ、グサッ、グサッ!!!!)


−−−−− 感想 −−−−−

>Percomboyさん
「エターナル6・第3話」う〜ん、あらためて言われると、すごい被害でしたね。(笑)それにしても瑞佳にあんな秘密がっ!!

>WILYOUさん
「チェンジ!4.5.6【序章〜5章後編終章】」
やったぜ、ボスっ!(爆)チェンジワールド全開だっ!!(笑)薬物万歳っ!!(笑)感想書こう書こうと思ってたら終わっちまったぜ!(爆)オレンジつぶつぶっ!!(笑)しかし・・・髭哀れ。(笑)

>将木我流さん
「感想SS『HIGH PRESSURE GIRL!』編」相変わらず、困った日常ですね。(^^;)感想ありがとうございます!新メニューを考えたのは・・・・・だ、誰!?(爆)

>偽善者Zさん
「浩平犯科帳 第三部 第七話」くう〜っ!南、いい味だしてるぜ!!(笑)いよいよ、大詰めですね!!

>川上"雷庵"直樹さん
「初めまして。」いえいえ、こちらこそ。m(_ _)m 公式設定無用の大馬鹿野郎ですが、見捨てないでね♪

>もももさん
「大海原で遠泳を〜2〜」「・・・罠のひとつです」(爆)いきなり大笑いっ!!テンポある笑いが高波のように襲いかかってきました。(笑)

>吉田樹さん
「予定変更! ある日の私(感想)」そうか・・・これがみさおの死の真相だったのかっ!?(爆)雨の中で「じゃぶ!じゃぶ!」子供はこうじゃなくちゃ♪(爆)

>YOSHIさん
「はぐれ三匹【恋愛編】」いつ仕掛けたんすかーーーっ!(笑)住井には幸せに名って欲しいですね♪


由依「少ないですぅ〜!」
雫 「(グサッ!)こ、これ以上長くすると・・・しかし、なんかツッコミ厳しいですけど・・・。」
由依「そんなの気のせいでよぉ〜!あっ、茜さんの道場に行く時間ですぅ。では、さようならですぅ〜!」
雫 「・・・・・・・ど、道場!?」