白い記憶 〜第一章〜 投稿者:
両親は共働きでほとんど家にはいなかった。
でも、寂しくなんかなかった。
姉さんがいたから。
優しかった姉さん。
微笑んでくれた姉さん。
頭をなでてくれた姉さん。
他にはなにもいらなかった。
それが、全てだった。



「おいしかったね。」
「俺は気分が悪くなったぞ・・・・・。」
こいつ・・・ほんとに元気がないのか?
「・・・・・で、全然話し聞いてないんだけど?」
食べるだけは食べてたが。
「う〜ん・・・食後のコーヒーが飲みたいよね。」
「・・・もう、金がない。」
俺が甘かった。
「俺のアパートにくれば、コーヒーぐらいならあるけど?」
「うん。いいよ。」
川名・・・少しは警戒してくれ・・・なんか、俺が情けないぞ。

俺は川名の手を引き、アパートまで歩いた。
その間、会話は一言もなかった。
時々、川名に目をやったが・・・やっぱり、元気ないかな。
「おっ。ここだ。階段があるから気をつけてくれよ。」
「うん。」
俺のアパートに入り、湯を沸かす。
コーヒーカップにコーヒーの粉を入れ、お湯を注ぐ。
「砂糖はどうする。」
「ひとつお願いするね。」
「わかった。」
コーヒーに角砂糖をひとつ入れ、かき混ぜてから川名に渡した。
「熱いから気をつけろよ。」
「うん。」
川名はコーヒーカップの大きさを手探りで確かめ、口元に運ぶ。
「おいしいね。」
「インスタントだけどな。」
俺は川名に微笑んだ。
「う〜ん・・・なんの話だったっけ?」
「だああああぁぁぁっ!!お前が元気ないって話だっ!!」
こいつ・・・なかなか手強いっ!!
「深山が、お前が元気ないって言ってたからな。誰かにふらでもしたのかと思ってな。」
「・・・ふられてなんかいないよ。待ってるだけだよ。」
待ってる?
「ただ・・・いつ帰ってくるかわからないんだ。」
寂しそうにうつむく川名。
「いつ帰ってくるかわからないって、どういう意味だ?」
「・・・・・話してわからないよ。きっと。」
「・・・わからなくてもいいから、話してくれないか。」
「変な話だよ・・・。」
「変?」
「・・・・・消えちゃったんだよ。」
「!!」
消えたぁっ!?
コーヒーをこぼしそうになる。
・・・・・消えた・・・か。


「そんな・・・そんなはず・・・・・。」
資料室に1人の女の子が立っている。
よく知っている女の子。
でも・・・その女の子がそこにいるはずがないのだ。
あり得るはずがない。
目の前に立っているのは・・・・・幼い頃の自分だった。
「やっときたね。」
「・・・・・だ・・・れ?」
それだけ口にするのが精一杯だった。
これは夢?
「みてのとおりだよ。わたしはあなた。」
私?なぜ私が二人いるの!?
「ずっとまってたんだよ。」
待ってた?なんのこと?
「なに言っているのか全然・・・分から・・・ないんだけど・・・?」
私がそう言うと、幼い頃の私はため息をつく。
「しょうがないよ。わすれちゃってるんだもん。だから、わたしがいるわけだし。」
「・・・・・忘れてる?」
恐怖。
さっきまでの恐怖が再び戻ってくる。
非現実的なこの状況で麻痺していた恐怖が。
「・・・・・。」
幼い頃の私は無言で周囲を見回した。
私もつられて周囲を見回す。
乱雑に本が積まれている。
「みおぼえない?」
見覚え?ずっと鍵がかかっていて、初めて入るのに?
「・・・・・。」
・・・・・お・・・ぼ・・・えてる。
・・・初めて入る場所じゃない!?
「おもいだした?」
資料室・・・資料室は・・・確か・・・・みさきが・・・・・。
「っ!!」
み・さ・・・・・き?
頭が痛い。
割れるように痛い。
「もうすこしだね。」
幼い頃の私はそう言うと、低い本棚の上に、乱雑に積み上げあれた本に向かって手をのばしていった。
ゆっくりと。
「いや・・・やめて・・・やめて・・・・・やめてぇっ!!」
そして、幼い頃の私の手が本に触れ、積み上げられた本が、音を立てて本棚の裏側に崩れていく。
「いっ・・・・いやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
走り出していた。
いや、逃げ出していた。


私がみさきを失明させた場所から。



−−−−− あとがき −−−−−

大福男「は、はやいっ!!もう、次かっ!?」
 雫 「くっくっくっ・・・(いけだものさん笑い(爆))完成したんだ・・・ついさっき最終話がなあぁっ!!(高槻調)」
大福男「な、なにいいいいぃぃぃーーーっ!!」
 雫 「ふっ『愛』のなせる技だ。全部で5話。一日、一話づつ書き込み予定です。(明日は出張なのでパス。)」
大福男「すごいじゃないか・・・。」
 雫 「いや、ほんと〜今日の勤務時間ははかどったわ。」
大福音「仕事せんかああああぁぁぁーーーーっ!!」
 雫 「では感想GO!!」


−−−−− 感想 −−−−−

>吉田 樹さん
「ある少年は、優しい風に」
そうか。あの家は沢口の。いい作品でした。なぜか、最後の詩子が心に残っています。
「七瀬さんを救え!(沢口番外編・感想)」
スリッパですか。(爆)感想ありがとうございます!

>もももさん
「変わりゆく存在」
ははあーーっ。なるほどーーー。っと、思ってたら、最後の「南って誰だよ」で、ぎゃふんっ!!(爆)感想ありがとうございます!俺も「だいふくおとこ」で変換してます。(笑)

>いちごうさん
「みあちゃんだいすき」
うおっ!?シリアスっすかっ!?じーーーっ(読んでる)うっ、繭、約束破ったらいかんよ・・・。じーーーっ(読んでる)ああっ、みあちゃん、そんなに意地にならなくても・・・。じーーーっ(読んでる)そうだ!七瀬で鍛えた腕は伊達じゃないぜっ!!(爆)じーーーっ(読んでる)ええ話や・・・。(涙)究極SSも期待してます。(爆)

>偽善者Zさん
「浩平犯科帳 番外編 第一話」
う〜ん。みさきさんらしい。(笑)悩んでる間は、お腹空かなかったんでしょうか。(笑)
「遠い蛍火−2−」
わ〜い!由依だぁ〜っ!!(好き)すっごく、いい感じです!!

>将木我流さん
「七瀬さんのススメ!乙女大作戦!!(第2話)」
「某◯ーフのVN第二弾の四姉妹の長女の『あなたを殺します…』と言った時のような」(爆)最高です。(笑)ここ、壁紙にしてあります。(ヲイ)しかし、特殊能力・・・恐ろしい。(笑)(あんなリアルな夢を見る浩平もだけど。(笑))
「七瀬さんのススメ!乙女大作戦!!(第3話)」
あえて注意書きするところがいいですね。(笑)よく耐えた、七瀬!!3日耐えれば、十分、乙女だ!!・・・評判は下がったけど。(笑)
感想ありがとうございます!がーくん!!(笑)

>いけだもさん
「学園祭」に出てたのは、もしかして、つっこみ茜ちゃん?(爆)
感想ありがとうございます! 「こんなの、里村さんっぢゃないやいっ!」(爆)

>スライムベスさん
「隠れた想い 2」
はぁ〜いい感じですね〜。七瀬救済SSここにありっ!!って感じです。(笑)

>秀さん
「いつか見た夕日 (中編)」
うごっ!!またしてもいいところで終わってる。(笑)気になりますよ〜。
二人の気持ちがすごくいいですね!!

>アルルさん
はい。気をつけます!ただ・・・繭属性なんで音符だけは、ご勘弁を〜〜〜っ!!(涙)


 雫 「しかし・・・前の書き込みから24時間たってないと思うが・・・すごいな。」
大福男「しかも、平日。・・・これが本当の『愛』というものだな。」
 雫 「では、また〜っ!!」