白い記憶 〜序 章〜     投稿者:
雪の降る街。
ただ、冷たさだけが現実。
夕闇の中、それぞれの家に向かい行き交う人々。
シャッターの降りた店の軒先で、その足をただ見つるめる。
できることはただそれだけだった。
「・・・どうしたの?」
「・・・・・。」
赤い小さな傘を差した少女が話しかけてくる。
「寒いよ?お家かえらないの?」
「・・・・・。」
帰る家は・・・ない。
「あげる。」
その少女は、自分の首に巻いていた白いマフラーを外し、かけてくれた。



う〜ん・・・みさき、どうしたんだろう。
大学に進学したとたん、また元に戻ちゃって。
いや、元とは違うか。
今までは、誘ってもどこかに遊びに行く事はなかったけど、今は行くものね。
時々、見せる悲しい笑顔。
まるで失恋したみたい。
相手は・・・・・あれっ?
・・・・・・・・・・誰だっけ?
その人がみさきの笑顔を取り戻したはずなのに。
・・・私じゃだめだったみさきの笑顔を。
「暗いな。大福。」
「その呼び方やめてって言ってるでしょうがあぁぁぁっ!!」
・・・ったく。なんでこんな奴と大学も一緒なんだか。
「そういえば、川名も元気ないよな。最近。」
「・・・そうね。」
どうすればいいんだろう。
「ふられたのかな?」
なっ!?なんでこの男はいらんことに鋭いのっ?
普段はボケボケのくせして。
まさか・・・みさきにホの字?
まさか・・・ね・・・。
「どうしたんだ。深山?更に暗くなったりして。」
「えっ!?そ・・・そんなに暗い?」
「ああ。トイレの電球も真っ青だぞ。」
つ、つまらんっ!!
「あんたのつまらいない冗談はおいといて・・・やっぱり、みさき元気ない?」
「つ、つまらないっ!?俺の渾身のギャグが・・・・・。」
頭を抱えてうずくまってる。
しょうがないから、脇腹に軽く蹴りを叩き込んでやった。
「ぐっ!・・・ま、まあ、そうだな。なんか、大学に入ったとたん・・・な。」
やっぱり。
誰?・・・思い出せない・・・なんで・・・?
「おい、顔色が悪いぞ。病院、行った方がいいんじゃないか?」
「うん・・・今日はもう帰るわ。」
「ちゃんと、病院に行くんだぞ。」
「うん・・・。」
大学に入る前・・・だったら高校に行けば・・・。


「ぉお〜いっ!川名〜〜〜っ!」
大学の構内で、川名を見つけた。
「聞こえてるよ〜っ!」
どうやら、俺に気がついたようだな。
「もう〜・・・耳元で段々と声を上げていくのは止めてよ〜。」
「そうか?俺の渾身のギャグだったんだが・・・。」
「くすっ。」
よしっ!!こっちの反応はオッケーだっ!!
「それで、どうしたの?」
「・・・いや、最近の川名は元気がないようだから、ぜひ相談にのってもらおうかなと思ってな。」
「その話だと、相談にのってもらうのは私のほうじゃないかな。なんとなくだけど。」
「それでもオッケーだっ!!」
「くすっくすっ・・・いいよ、晩ご飯ごちそうしてくれるんならね。」
「げっ!ちょ、ちょっと待てっ!!」
財布の中身を確認する。
ひい、ふう、みい・・・・・な、なんとか大丈夫だろう。
・・・・・自信はないが。
「じゃあ、とびっきりうまい・・・・・牛丼屋があるんだが。」
「ムードないよね。」
笑いながら川名が手を差し出して言う。
俺も笑いながら川名の手をとった。


高校。
卒業したばかりなのに、なんだか敷居が高い。
そんなものなのかな。
まあ、とりあえず、演劇部でも覗いて行こうかしら。
演劇部の部室に向かって歩いていた。
ぞくりっ。
突然、鳥肌がたった。
恐い。
な・・・なんで?
立ち止まって、身をすくめた。
・・・・・どこからか視線を感じる。
辺りを見回すと、廊下の先に小さな女の子が立っていた。
その女の子は、私の視線に気が付くと、くるりと背を向けて立ち去った。
あの子は・・・。
気が付くと、その子の後を追っていた。
なぜだか分からない。
ただ、全身を包む恐怖が私をかりたてた。
私が廊下を曲がると、その女の子は廊下の真ん中辺に立っていた。
そして、私をじっと見て・・・・・消えた。
「そ・・・ん・な・・・。」
女の子が消えた所までゆっくりと歩いていく。
そこは、資料室の前だった。
ここは・・・確か、鍵がかかっているはず・・・。
分かっていつつも、取っ手に手をかける。
「っ!!」
扉は何の引っかかりもなく・・・開いた。

そして・・・中にはさっきの女の子が立っていた。



−−−−− あとがき −−−−−

 雫 「喜べ、大福音。出番だ。」
大福男「おうっ!待ってやしたぜっ、雫の旦那っ!!」
 雫 「・・・・・キャラ変わってないか?」
大福男「不肖、この『今上大福男(こんじょうたふお)』、精一杯やらせていただきます!!」
 雫 「でも、名前でない。」
大福男「え゛。・・・なんだか・・・嬉しいような、悲しいような・・・。」
 雫 「今回はシリアスだからな。一応、ギャグバージョンで『大福男、雪山へ行く』というネタもあったんだが・・・ボツになった。」
大福音「なんなんだそのタイトルはああああぁぁぁっ!!」
 雫 「では、感想GO!!」
大福男「無視するなああああぁぁぁっ!!」


−−−−− 感想 −−−−−

>火消しの風さん
「思い出や、情は何も知らない。」このセリフ・・・きます!心にきます!!
「涙の色」の時も思ったんですが、うまいですよね〜♪

>まてつやさん
ナイス救済っ!!(笑)さすが、七瀬シナリオをやり直しただけはあります。
七瀬良さが出てますね♪七瀬も木の上で(ヲイ)喜んでいることでしょう。

>吉田 樹さん
詩子がいいですね♪物語もいよいよ終盤!どうなる沢口っ!?(&みさお)

>スライムベスさん
はっ!ここでも七瀬救済SSがっ!?そうか、今月は「七瀬保護月間」だもんな。(爆)
でも、出だしが救済になってないような気が・・・。(笑)

>GOMIMUSIさん
うおっ!謎が深まってしまった・・・。相変わらずうまいですね。
公園のシーンは夢?それに、瑞佳「さん」?う〜ん・・・謎だ。気になるぅっ!!


大福音「感想・・・少なくないか?」
 雫 「うっ!!え〜と・・・で、では、また〜♪」
大福音「・・・・・逃げたな。」