剣豪!宮本七瀬(巻之参) 投稿者:
剣の道を極め、日本一を目指す一人の乙女がいた。
その名も『宮本七瀬』(後の七瀬留美)。今日もまた強敵を求めて、さすらいの旅を続けるのであった。

ずばっ、ずばっ!
「ぐふっ!・・・いい二刀さばきしてるぜ・・・。」
ばたん。
「・・・・・。」
七瀬は浪人風の男を二刀のもとに斬り捨てた。
「・・・・・ねえ?」
「いやあ、こいつは住井ってちんけな野郎なんだが・・・・・。」
「・・・いや、それはもういいんだけど・・・なんで毎回、追ってくる訳?」
「ああ、家財道具の他に、こいつの家と土地も博打ですったんで、帰るところがないんだろう。」
「・・・・・そりゃあ、追っかけて来るでしょうね。」
七瀬はそう言いながら刀を鞘にしまった。
「で、なんであんたは私について来る訳?」
「何を言うんだ!オレと七瀬の仲じゃないか!」
「赤の他人よっっっ!!」
思いっきり否定する七瀬。
「しょうがないなぁ・・・。」
浩平はそう言うと、服を脱ぎだした。
「ちょ、ちょっと!何するつもりなのよっ!」
狼狽する七瀬。
「他人じゃなくなればいいんだろう?」
「ま、待ちなさいっ!へ、変なまねしたら、殺すわよっ!」
あわてて刀を抜く七瀬。
きんっ!
「えっ?」
いつのまにか、刀を手にして七瀬の持っていた刀を弾き落とす浩平。
なぜか異様に強い。
「ふっふっふっ。かわいいやつ。」
「いやあああぁぁっっっっっ!ま、待って!ついて来ていいからっ!お願いっ!ついて来てえぇぇぇ!」
「いや、しかし他人だしな。」
七瀬に迫る浩平。
「いやあああぁぁっっっっっ!おかあさあぁぁんっっっ!」
泣き叫ぶ七瀬。
しかしその時。
「宮本七瀬ね。蕎麦屋のおやじの依頼により、『心眼』のみさきが成敗するよ。」
遂に最強の刺客が現れた。
「ええいっ!おとなしくせんかっ!」
「いやあああぁぁっっっっっ!」
みさきに構わずさらに七瀬に迫る浩平。
「なんか・・・おとりこみ中みたいだね。なんとなくだけど。」
みさきは引き返そうとした。
「ま、待って!刺客ね!蕎麦屋の刺客ね!今すぐ相手するから行かないでぇぇぇっ!!」
必死にみさきを呼び止める七瀬。
七瀬はなんとか浩平から逃れ、刀を拾い上げた。
「ぜー、ぜー、ぜー・・・・・恐ろしい奴。」
七瀬は荒い息をついていた。
「ふっ。七瀬との愛のため、死んで貰おう。」
七瀬をのがした浩平はみさきに刀を向けた。
「おりゃあああぁぁぁっ!」
きんっ!
「あれ?」
軽く浩平の刀を弾き落とすみさき。
「・・・・・お代官さま、山吹色の菓子でございます。」
浩平は菓子箱を差し出した。
「えーと・・・そちも悪よのう、だよ。」
その菓子箱に目線をあわせないようにして、懐にしまうみさき。
「いやいや、お代官さまほどではありませんぜ。」
そう言って浩平は、揉み手をしながらみさきの後ろにまわった。
「あ・・・あんたって奴はぁぁぁーーーーっ!」
七瀬は拳を震わせて怒っている。
しかし、なくてはならない会話であろう。
七瀬は刀を抜くとみさきと向かい合った。
「確か『心眼』のみさきって言ったわよね・・・最強だって聞いたことがあるわ・・・相手にとって不足無しよっ!」
ちゃきっ!
刀を構える七瀬。
「『乙女流』宮本七瀬・・・変な名前だけど、私も聞いたことがあるよ。楽しみだよ。」
「変な名前は余計よっ!・・・ぐすっ。」
七瀬は涙ぐんでいる。
「行くわよっ!」
ざっ!
一気に間合いを詰める七瀬。
「はあぁっ!」
しゅしゅしゅっ!
七瀬は気合いとともに三段突きを放つ。
しかし、みさきは軽く後ろに下がると、全て目前でかわし、逆に袈裟がけに七瀬に斬りかかる。
がきんっ!
「くっ!」
なんとか受け止める七瀬。
「その程度なんだ。がっかりだよ。」
余裕の笑みを浮かべるみさき。
「はっ!」
七瀬はみさきの刀を押し返し、後ずさって間合いをとる。
「なら・・・乙女流奥義!『乙女のはかない嵐』!!」
一瞬、七瀬の体が陽炎のようにゆらめいたかと思うと、七瀬の体がいくつにもわかれ、その全てがみさきへと向かって次々と嵐のような斬撃を繰り出した。
「無駄だよ。」
しかし、その嵐のような斬撃を、みさきはことごとく紙一重でかわして見せた。
「私は目が見えない・・・けど、かわりにあなたの動きは手に取るようにわかるんだよ。」
奥義をかわされた七瀬は、かろうじて構えはとっているものの、大きく肩で息をしていた。
「・・・ここまでだね。最後のは結構、楽しめたよ。」
みさきが上段に構え、七瀬の間合いへと踏み込む。
ちゅどーーーーーん。
七瀬が死を覚悟したその時・・・みさきが爆発した。
「・・・えっ?」
ぽん。
「おおっ!さっきの菓子箱には爆弾も入っていたのをうっかり忘れてたな。」
手をうって説明する浩平。
「この爆発だと・・・そうだな、65点ってとこかな。」
「うぐっ・・・結構・・・辛口な・・・点数だね。」
ばたっ。
みさきはその場に倒れた。
「オレは爆弾にはうるさいんだ。」
「・・・・・外道。」

「終わったな・・・手強い相手だった。」
腕組みをして、夕焼けを見つめる浩平。
だがその時、浩平の背後で一筋の光がきらめいた。
「乙女流・・・究極奥義!『乙女の涙で一刀両断』!!」
自分の身を案じた七瀬の、上段からの究極の一撃が浩平を背後から襲う。
電話帳をも引き裂く握力を持ってして初めて可能になる防御不能の技である。
きんっ!
「えっ?」
振り向きざまに、七瀬の持っていた刀を弾き落とす浩平。
・・・・・防御不能なのだが。
「ふっふっふっ。かわいいやつ。」
「いやあああぁぁっっっっっ!おかあさあぁぁんっっっ!!」

合掌。

『浩平の外道日記』完!!


−−−−− 本編では語られなかった人物設定 −−−−−

『仕込傘』の茜
ピンクの唐傘を持ち歩く殺し屋。感情をおもてにださず、不意打ちを主とする暗殺剣の使い手。ぬいぐるみを買ったため文無しとなり、蕎麦屋で食い逃げを考えるが失敗。刺客として働く。得意技は『唐傘居合い切り』
「・・・許しません」

『鎖り鎌』の澪
賞金稼ぎの旅の途中、すれ違った茜のおさげに惹かれ行動をともにする。あふれんばかりのやさしさが仇となり浩平に倒される。得意技は『どんぶり返し』
『お仕事なの』

『猫使い』の瑞佳
結婚の約束をしていた浩平を探すため旅に出ていたが、蕎麦屋にて路銀がつき、食い逃げを計るが失敗。刺客として働かされる。猫達の名前は「郁美」「晴香」「由依」「葉子」「未悠」「良祐」「高槻」「少年」。得意技は『にゃんにゃんぱにっく』
「聞く耳持たないんだもん!」

『神速』の繭
子供の頃にさらわれ、忍びの里「椎の木」で忍者として育てられる。実の母を捜すため、抜け忍となり旅をしていたが、空腹のため倒れたところを瑞佳に拾われ行動をともにする。得意技は『てりやき手裏剣』
「うぐぅ〜・・・ほんとだもぅん・・・。」

『心眼』のみさき
幼少の頃事故に遭い失明。苦しい修行により会得した『心眼』と、人気投票bPの地位をもって、最強と称される。蕎麦屋で腹八分でやめたのだが、なぜか金が足りず、食い逃げを画策するが失敗。刺客として使われる。得意技は『心眼頭突き』
「うぐっ・・・結構・・・辛口な・・・点数だね。」

蕎麦屋のおやじ
髭を生やしたおおらかそうな人物。食い逃げに次々と刺客を送り込む辺りが、おおらか「そう」と言われる由縁であろう。この屋台「学食」はやけに食い逃げが多い。得意技は『仁王立ち』
「あー、食い逃げはいかんな。」

『不死身』の住井
脇役でありながら、浩平、七瀬を除き、唯一、3作全てに登場。実は魔王「FARGO」をシャーペンに封印し、3つの国を救った勇者。不死身なのは、封印の間際「刀では死ねない」という呪いがかけられたためである。得意技は『住井・シャイニング・ナックル・フォーエバー』
「ぐふっ!・・・いい太刀さばきしてるぜ・・・。」

『乙女流』宮本七瀬
ご存じ本編の主人公。変な名前と言われ続け、後に七瀬留美と名前を変える。本来、真面目な時代劇を演じるはずだったが、まともに闘ったのは最初の茜とだけで、浩平の外道ぶりに振り回され、最後にはタイトルまで変わってしまった悲劇のヒロイン。得意技は『乙女の怒濤の突き押し』
「いやあああぁぁっっっっっ!おかあさあぁぁぁんっ!!」

『うっかり』浩平。
外道。


−−−−− 感想 −−−−−

>よもすえさん
なんというか・・・すごいパワーですね。主役が誰か分かりませんでした。(^^;)

>だよだよ星人さん
あれを茜と見抜くとは・・・さすが、繭!
「奥様は魔女」はいいですね。これが幸せってやつでしょうか。「TWO」も出るし。(笑)

>静村幸さん
・・・ピンクのワンピース・・・はっ!いかん、またいつもの癖が・・・。新キャラは誰でしょう?

>天ノ月絃姫さん
『心眼』のみさきも超音波で動きます。(笑)

>しーどりーふさん
決めゼリフが最高!!(爆)続編ありますよね?

>GOMIMUSIさん
この話、すごく好きです。茜もいいし。オレは文章の勉強しなきゃなあ・・・。(泣)

>いちごうさん
みゅ〜♪「日常新シリーズ」ですね!伝統の選択できない選択肢が効いてますね。(笑)