剣豪!宮本七瀬(巻之壱)   投稿者:
剣の道を極め、日本一を目指す一人の少女がいた。
その名も宮本七瀬(後の七瀬留美)。彼女は今日も強敵を求めて、さすらいの旅を続けるのであった。

ずばっ!
「ぐふっ!・・・いい太刀さばきしてるぜ・・・。」
ばたん。
「ふっ。口ほどにもないわね。」
七瀬は浪人風の男を一刀のもとに斬り捨て、そう呟きながら刀を鞘にしまった。
「おおっ!助かった。」
これもまた浪人風の男が揉み手をしながら近寄ってくる。
「いやあ、こいつは住井ってちんけな野郎なんだが、人が親切に金を増やしてやろうと思って、こいつの家財道具をうっぱらった金を、ちょっと賭場ですられたぐらいで逆恨みしやがって困ってたんだ。」
「・・・あんた・・・外道ね。」
「そうそう、オレは『うっかり』浩平だ。あんたは?」
「私は『乙女流』宮本七瀬よ。」
「変な名前だな。」
「うぐっ・・・ほっといて頂戴っ!」
七瀬は少し涙ぐんでいた。
「まあまあ、泣かなくても・・・。お礼に蕎麦でもおごるから。」
「ぐすっ・・・。」

ずずずずずーーーー。
二人は屋台の蕎麦屋でキムチラーメンを食べていた。
「ふー。食った、食った。」
「あー、おいしかった。」
「じゃ、オレはこれで。」
キムチラーメンを食べ終わると、浩平は席を立って立ち去ろうとした。
「って、待ちなさいよ!」
はしっと浩平の袖を掴む七瀬。
「あんた、確かおごるって言わなかったっけ?」
「へっ!オレを甘く見て貰っては困る。オレは『うっかり』浩平だぜ?」
「・・・つまり『うっかり』財布を忘れたと?」
「おうっ!」
胸を張って答える浩平。
「・・・・・。」
無言で刀に手が伸びる七瀬。
「ちょ、ちょっと待て!ラーメンひとつで人を斬るのかっ!」
「私も文無しなのよっ!」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
無言で見つめ合う二人。
だっ!
次の瞬間、浩平と七瀬は走り出していた。
世間一般で言う食い逃げである。
だが、逃げ出した二人の前に、髭を生やしたおおらかそうな店の主人が立ちはだかった。
「あー、食い逃げはいかんな。」
「い、いつの間にっ!」
驚く七瀬。
しかし、大声で文無しだと叫べば当然である。
「おやじっ!死にたくなければそこをどけ!『乙女流』宮本七瀬を知らんのか?」
浩平は刀を抜いて言い放った。
「自分の名前を名のりなさいよっっっ!」
七瀬が浩平にツッコミを入れる。
しかし、髭を生やしたおおらかそうな店の主人は余裕の面もちである。
「あー、こんなこともあろうかと・・・先生方!お願いします。」
ゆらり。
屋台の奥から二人の人影が現れた。
屋台の奥・・・ってどいうのかはよく分からないうえに、奥は川になっているが大した問題ではない。
用心棒と思われる人影の一人は、ピンクの唐傘を持った少女で面倒くさそうに一言だけ言った。
「嫌です。」
「・・・・・い、嫌ですって、先生、仕事でしょうが!」
もう一人の人影は、頭にリボンを着け、首から鎖釜をぶら下げた、愛くるしい少女だったが、口がきけないのか、巻紙と筆を執りだし、さらさらっと書いてピンクの唐傘を持った少女に見せる。
『お仕事なの』
ピンクの唐傘を持った少女はそれを見てため息をひとつついた。
「しょうがないですね。」
『がんばるの』
二人は浩平と七瀬の側まで来て立ち止まる。
「店の主人の依頼により成敗します。私は『仕込傘』の茜です。」
『おなじく『鎖り鎌』の澪なの』
「くっ!しょうがないわね・・・浩平!一人は任せるわよ!」
「おうっ!任せとけっ!」
七瀬は茜と、浩平は澪と向かい合った。

「・・・しかし、変わった色ね。その傘。」
「お気に入りです。」
「そ、そう?」
「では・・・行きます!」
茜は傘の柄から仕込刀を抜き、七瀬に斬りかかった。
きんっ!
七瀬は茜の刀を受け流し、上段から斬り返す。
「はっ!」
すかさず茜が後ろへ飛んでかわす。
はらり。
茜の着物が斬られていた。
「なかなかやりますね。」
「ふっ!その程度の腕では私は倒せないわよ!」
「そうですか・・・なら!」
茜は手にしていた傘を広げ、七瀬の前に突き出す。
「っ!」
一瞬、視界を奪われる七瀬。
ざすっ!
さらに、その傘を突き抜けて刃が飛び出す。
「くっ!」
何とかかわす七瀬。
「よくかわしましたね。」
傘から顔を出して七瀬に言う。
「あんた・・・その傘、お気に入りじゃなかったの?」
傘に空いた穴をじっと見つめる茜。
「・・・許しません。」
「自分でやったんでしょうがっっっ!」
ツッコミを入れる七瀬を無視して、再び茜の傘が突き出され、刃が飛び出す。
ざすっ!ざすっ!
「くっ!」
その刃を何とか紙一重でかわす七瀬。
「こうなったら・・・乙女流奥義!『乙女の豪快な舞』!!」
七瀬のかけ声とともに、鋭い斬撃が茜を傘ごと襲った。
ずばっ!
「くっ・・・見事です。」
ばたっ!
茜はその場に倒れた。
「ふうっ。手強い相手だったわ・・・あっちは大丈夫かしら?」
七瀬はため息をひとつついて、浩平達の方へ目を移した。

「うわっ!待て待て!」
次々と繰り出される澪の鎖り鎌の分銅をかわして逃げる浩平。
しかし、遂に壁へと追いつめられてしまった。
『観念するの』
「くっ・・・分かった。だが、最後にひとつ頼みがある。」
『きいてあげるの』
「アメリカ合衆国の州名を全部教えてくれ!」
澪はさらさらっと巻紙に州名を書き始めた。
ざすっ!
だが、澪が一生懸命州名を書き出している中、浩平の刀が澪を貫いた。
「ふっ。オレを甘く見たのが命取りだったな。」
澪は最後の力を振り絞って巻紙に書き込む。
『卑怯なの』
がくっ。

「・・・・・外道ね。」
浩平の戦いぶりを見て呟く七瀬。
「何言ってるんだ。戦いとは厳しいものなのだ。そんな事より・・・逃げるぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
浩平と七瀬は逃げ出した。
「ああっ!お勘定っっっ!」
髭を生やしたおおらかそうな店の主人の叫び声を背に、浩平と七瀬は全力で走って去って行った。


次回予告!

強敵『仕込傘』の茜と『鎖り鎌』の澪を倒した七瀬だが、その前に、新たなる蕎麦屋の刺客『猫使い』の瑞佳と『神速』の繭が立ちはだかる。
そして、明らかになる浩平の過去。
果たして、七瀬の運命いかにっ!
次回に続く!


−−−−− 感想 −−−−−
>アルルさん
二作続けて読むと・・・シリアスな話とギャグな話。凄いですね。尊敬です。

>WILL YOUさん
「演劇部のエースストライカーよ♪」爆笑!!入れ替わってる間の記憶が残ってるとは・・・やられました!

>火消しの風さん
な、泣けるぅ!!ONEのPS版(笑)にはぜひこのシナリオが欲しいものです。

>MASTER-Tさん
「まるで、みゅーみたいに。」・・・・・ぐはっ!胸がっ!胸が苦しい!!すまん、繭!みゅ〜♪連組合員でありながら、俺はこんなSS書いてて。許してくれーーー!!

もっと感想書きたいんですが、それでなくても長くなってしましましたのでこれで。
以前のSSで感想下さった方々。ありがとうございます。嬉しかったです。