折原少年の事件簿2(その2) 投稿者:
髭から制服密売オークション事件解明の依頼を受けたオレは、何の手がかりも得られないまま放課後を迎えた。
しかし、オレと助手の椎名ははあきらめることなく次の調査を開始した。
浩 平「・・・しかし、どうしたもんかなぁ?なあ、椎名?」
浩平たちは校内をくまなくぶらぶらしていた。
そうしていると、前から見覚えのある生徒がまっすぐ浩平たちのもとへと向かってきた。
しかし、他の生徒にぶつかってはぺこぺこ誤り、なかなかやってこない。
挙げ句の果てに、何もないところでつまづいて転んだりしていた。
浩 平「あれは・・・あの見事なまでの不器用ぶり。・・・間違いない。澪じゃないか。」
澪はようやく浩平たちのもとにたどり着いた。
はあ、はあ、息をついていたが、少し落ち着くとサインペンを取り出し、スケッチブックに書き始めた。
 澪 『あのね』
 澪 『こんにちはなの』
浩 平「こんにちは、澪。今日は部活か?」
 澪 (ふるふるっ)
 澪 『お休みなの』
浩 平「そうか。じゃあ、寿司でも・・・。」
 澪 (わーい、わーい)
浩 平「見に行くか?」
 澪 (がくっ)
浩 平「冗談だ、澪。オレと椎名はちょっと用事があるんだ。悪いな。」
 澪 (?)
 澪 『ひとりなの』
浩 平「えっ?あれっ・・・いない?」
浩平は辺りを見回したが例のごとく椎名はいなかった。
浩 平「・・・っは!さすが、椎名!なにか重要な手掛かりを見つけたにちがいない!」
それはないと思う。
 澪 (?)
浩平は腕組みをして少し考えた後、澪をじっと見つめた。
 澪 (?、?)
浩 平「・・・澪。いま暇か?」
澪はちょっと考えて、スケッチブックに書き込んだ。
 澪 『ひまなの』
浩 平「そうか。なら・・・上月澪!たった今から、おまえを助手に任命する!」
浩平はビシッと指を澪に向けそう言い放った。
 澪 (?、?、?)
当然のごとく澪には何が何だか分からない。

浩平は今回の事件について、身振り手振りを交え、更には澪のスケッチブックを使い絵入りで説明をした。

浩 平「・・・という訳なんだ。」
 澪 『それで、最後はどうなるの?』
浩 平「・・・それは秘密だ。おまえの協力次第だな。」
 澪 (うんっ)
 澪 『わかったの』
上月澪は新たに助手となった。
そうこうしていると、図書室の前をスキップしながら歩くあやしい女生徒がいた。
浩 平「うむーーー。思いっきりあやしい・・・。よし。澪、探りを入れてくるんだ!」
 澪 (にこにこっ)
 澪 『がんばるの』
たったったったったった・・・・・。
澪はその女生徒の前で一生懸命聞き込みを行った。
しかし、いつまでたっても澪は戻ってこない。
しびれを切らして浩平もその女生徒の所に向かった。
浩 平「いったいどうしたんだ。澪?・・・って、みさき先輩!」
その女生徒は川名みさきだった。
みさき「浩平君!ということはやっぱり澪ちゃん?」
 澪 (はうっーーー)
澪はようやくほっとしたように胸をなでおろした。
浩 平「みさき先輩。やっぱりってことは、澪だって分かったの?」
みさき「うん。なんとなくだけどね。でも、さすがに何を言ってるのかは分からなかったよ。」
浩 平「そりゃそうだ。」
 澪 (ぐっすん)
浩 平「ところでみさき先輩。最近、校内で制服を持ち歩く不審な人物の話を聞いたことはない?」
みさき「うーん。・・・あるよ。」
浩 平「なにっ!本当か先輩!教えてくれ!」
みさき「澪ちゃん。」
浩 平「・・・えっ?」
みさき「だから澪ちゃん。」
澪見つめる浩平。
 澪 (・・・ふるふるっ)
 澪 『違うの』
浩 平「澪・・・おまえまさか・・・。」
 澪 (・・・えぐっ)
 澪 『澪じゃないの』
浩 平「なんてこった・・・。」
 澪 (・・・えぐっえぐっ・・・)
みさき「いつだったたか浩平君の上着持ってうろうろしてたよ。」
浩 平「決定的だな・・・。」
 澪 (・・・うっ・・・えぐえぐっ・・・)
みさき「あーあっ、泣かせたー。」
浩 平「じょ、冗談だって、澪。泣くなよ。」
みさき「時間の問題だね。」
浩 平「先輩だって悪いんだろう。・・・澪!悪かった!すまん!」
みさき「澪ちゃん、ごめんね。ちょっとふざけただけだよ。」
 澪 (・・・・・)
 澪 『ひどいの!』
浩 平「悪かったって・・・。ところでみさき先輩。澪以外であやしい人物を知らないか?」
 澪 『澪はあやしくないの!』
みさき「うーん。澪ちゃん以外だとやっぱり知らないよ。」
 澪 『だから澪はあやしくないの!』
浩 平「そうか・・・澪以外だと分からないか。」
 澪 『だ・か・ら・澪はあやしくないのー!』
みさき「ごめんね。じゃ、またね!」
浩 平「いや、ありがとう、先輩。またね!」
 澪 (・・・えぐえぐっ)
みさき先輩は再びスキップをしながら歩いて行った。
浩 平「しかし、みさき先輩。・・・スキップなんかして何かいいことでもあったのかな?」
 澪 (・・・ぐすっ)
 澪 『一票差だとか言ってたの』
浩 平「うーん。意味不明だな。」

事件の核心に迫る重要な証言かと思えたが、澪以外であやしい人物は見つからなかったのであった。

 澪 『澪はあやしくないのーーーー!』