折原少年の事件簿(その3) 投稿者:
お知らせ:本作品はそのままでもお楽しみ頂けますが、(その1)からお読み頂きますとよりいっそうお楽しみ頂けます。

七瀬留美から殺人未遂事件解明の依頼を受けたオレは、何の手がかりも得られないまま二日目の朝を迎えた。
しかし、オレと助手の椎名は確実に真実に向かっていることを確信しつつ、次の聞き込みを開始した。
浩平「いいか椎名。今回の事件は朝のうちに巧妙な罠が仕掛けられている。したがって、こうして朝の早い生徒に聞き込みをすれば、自然に犯人が浮かび上がってくるという寸法だ!」
椎名「みゅーっ!(そうね。実に論理的な行動だわ。でも、ひとつだけ忠告。それならその中に犯人がいる可能性も十分高いわ。注意する事ね。)」
浩平「うむ。協力(しかも忠告付き)感謝する。」
椎名「ふえっ?」
浩平「よし、行くぞ椎名。」
勢いよく教室のドアが開けられる。
そして、そこで二人が目にしたものは・・・。
浩平「!!」
椎名「ほえ?」
そこには七瀬の席の前で鉄パイプを手にした一人の女性との姿があった。
浩平「だ、だよもん星人!」
ごすっ!
長森「ちがうもん!!」
鉄パイプが勢いよく浩平の頭に直撃する。
浩平「す、すまん!もう一回!」
そこには七瀬の席の前で鉄パイプを手にした一人の女生徒の姿があった。
浩平「な、長森!」
そう、鉄パイプを手にし、七瀬の席にたたずむ姿は紛れもなく長森瑞佳だった。
二人は地道な調査の末、ついに事件の核心へと迫るのであった。
浩平「長森・・・。その手に持った鉄パイプをいったいどうするつもりだ!!」
長森「こ、これは・・・。そんなんじゃないもん。これを七瀬さんの椅子に仕掛けて串刺しにしようなんて、これっぽちもかんがえてないもん!」
浩平「長森・・・オレは「七瀬」なんて一言もいってないぞ!」
長森「っ!」
動揺して鉄パイプを床に落とす長森。
長森「・・・浩平・・・そうだよ。私が犯人だよ。」
浩平「謎は少しだけ解けた。犯人は・・・おまえかもしれないぃぃぃーーー!」
ビシッと長森を指さす浩平。
椎名「みゅーーーっ!(もう名のってるでしょうがーーーっ!)」
浩平「長森・・・なぜ、こんな事を?」
椎名「みゅー、みゅーっ!」(そうね、こんな時は聞きもしないことまでべらべらと人生のすべてを語るのが犯人の義務ね。)」
長森「・・・わたしが・・・わたしが悪いんじゃないもん!七瀬さんが悪いんだもん。七瀬さんが・・・悪いんだ・・・もん・・・。」
浩平「長森・・・そこまで思い詰めるなんて・・・いったい二人の間に何があったんだ?」
長森「七瀬さんが!・・・七瀬さんが・・・私の「うさピョン」にちょび髭を描いたんだよ!!」
浩平「ちょび髭で殺意をいだくなーーー!!」
ガラッ!
その時、教室のドアが開き一人の女生徒が入ってきた。
七瀬「瑞佳・・・。話しは全部聞かせてもらったわ。」
当然の展開である。
長森「七瀬さん・・・。ごめんなさい!わたしが、わたしが悪いのよーーー!」
七瀬「瑞佳。いいのよ。誰だってちょび髭を描かれたら殺意を抱くわ。」
浩平「・・・・・そうかぁ?」
椎名「ほえ?」
泣き崩れる長森をなだめるように抱きかかえる七瀬。
そんな二人を夕日が照らす美しい光景だった・・・。(朝だって。)

 BGM「遠いまなざし」

 Fin

七瀬「・・・でも瑞佳、あのちょび髭は私が描いたんじゃないわ。」
長森「えっ!じゃ、じゃあいったい誰が!」
七瀬は無言で浩平を見つめる。
長森を追うようにして浩平を見つめる。
浩平「・・・えっ?・・・そういえば七瀬が持っていた「ラビット鈴木」にはちょび髭を描いたような覚えはあるが・・・。」
七瀬「・・・・・。」
長森「・・・・・。」
じじりと浩平に無言で詰め寄る七瀬と長森。
浩平「お、オレか?オレが悪いのかっ?」
教室が張りつめた空気に満たされる。
浩平(まずい!逃げなくては!!)
浩平は二人に背を向けドアへと走り出した。
浩平「っ!!」
しかし、ドアには別の人影が立ちはだかっていた。
茜だった。
茜 「・・・たい焼き・・・ワッフル・・・。」
七瀬「どうりゃぁぁぁーーー!」
長森「許さないんだもん!」
椎名「みゅーっ!」

 BGM「輝く季節へ」


−−− あとがき −−−

という訳で事件はめでたく解決!
いやぁ、段々話しが長くなるんで(のってきた?)一気に解決編になってしまいました。
(その3)で終わるんだったら、タイトルには(ファイル3)と付けるべきでしたね。
他の皆様方の心温まるお話のなか、唯一、心温まらない「折原少年の事件簿」でした。