Another ONE from Akane 投稿者: せらふぃむ
『…もう…ダメなんだよ…。あの頃のままの…ふたりじゃいられな―』

 ほんのわずかな乱れすら許さない均整の取れた街並みを、昨晩から降りつづける雨
は申し訳なさそうに洗い流していた。その空に渦巻く欲望や憎悪、現代社会の産み落
とした膿はどんな事があっても取り払われる事はなく、一度はかき消されてもまた元
の荒廃した姿を取り戻してゆく。いつまでも終わらないゲームはわたし以外の誰の目
にも留まる事はなく、また誰も気に留めようとはしない。
 その廃都から一歩はみ出した場所、ここは忘れられた最後の残り火。彼女が“永遠”
という幻にしがみつくこの荒れ果てた空地は、いつまでも彼女とわたしの行末を案じ
てくれる。存在し得ない安らぎを求める彼女が居なくなるまでは…。
「…えいえんは…あった?」
 傘の柄を握る彼女の右手がわずかに震えた。無理もない。ここは彼女にとって“え
いえん”なのだ、“あの人”の見えない背中をを追い求めわたしを切り離した…

『このそらのむこうにはね、

 元々、彼女から見た、こちら側の住人として存在しなかった“あの人”はこの世の
すべてに絶望し、この雨雲の向こうに広がる世界へ旅立っていった。いつまでも終わ
らない、夢のような場所。

             えいえんがあるんだよ。』

 存在の否定された“あの人”の影にすがりつくように、彼女はその場に臥せって泣
いていた。禁じられた名を声が枯れるまで叫び、温もりが頬に触れるのを待ちつづけ
た。それでも…“あの人”が帰って来ることは…なかった…

「ねぇ…えいえんは…あったの?」
 俯いて涙を隠そうとする彼女と目が合った。…しかし…悲しいことに…彼女が気付
くことはない。終わらないゲームが続いている証拠だ。どちらか一方が解っていても、
相互理解がなければ、文字通り終わりはやって来ない。それこそ“永遠”に…

 …えいえん
 いつまでもその歩みを止めない刻。何度月明かりが闇夜が照らして不安をかき消し
ても、歯車は再び活力を得るのを拒み続けるだろう。だから彼女は…
 …わたしも…もとめよう―
 涙の枯れたその瞳からわたしを吐き出し、彼女もまた“えいえん”の中に身を置く
ことを選んだ。本当の“えいえん”がそこにあったことすら知らずに…

「わたしはね…見つけたよ…。ずっとあなたといられる場所を…」
 握られていた力がふわっと抜け、大きな傘が舞い上がる。何処までも広がる空に吸
い込まれる彼女と、薄れ行く存在を実感するわたしに…誰かがそっと…ささやいた…
 …えいえんはね…もう…何処にもないんだよ…。

▼後書き
うみゅ〜〜、とりあえず二作目ですぅ。
ぱっと見では誰が主体なのかはわかりませんが、一応あかねです。
しかもその裏には幼馴染が主体として隠れてます(<ややこしいな)
まず読んでみて大半の方が気付くのは「バッドエンドじゃん」
だと想いますが、時系列の上では主人公に出会う前の話なんです。
まぁバッドエンドとしても使えるんだけどね(笑)
さて、いいかげんみさき先輩のSSを書かなきゃね。
でもネタが…
▼感想ですっ!
>ごしょ さん
わたしの友達の娘も耳が不自由(やだな、こう言ういい方)なんだけど、
こちらが励まされるくらいの、何かしらの元気を持ってました。
私たちの知らない何かを、彼女たちは持っているのかもしれませんね。

>折笠 美冬さん
あぅ、やられました〜〜
いつかやってやろうと思ってたのに…
けどその何気ない一言に、繭のすべてがこめられてるような気がします。

>ぱむ! さん
ひらがなはいいです(<論点が違うって)
な〜んとなく温もりが感じるし、それに
ひらがなでないとシックリ来ない時もありますから。

>睦月周 さん
ハムレットの引用とは、恐れ入りました。
いつか読もうと思ってたんだけどなぁ
あ、初めて気付いたんですけど、
主人公の名前って“浩平”だってんだ…<すっかり忘れてたよ

>時の影 さん
チャットではお世話になりました。
なんかみさき先輩SSが多いですね。多分ダントツなんじゃないかな?<感想か?これが

あうっこれ以上はちっと無理かも…
ただでさえSSでかさばってるのに…
というわけで、残りの方々の感想は別の機会に(ペコリ)

http://www.alphatec.or.jp/~snowbell/