お姫様の恋詩  投稿者:神楽 有閑


 「七瀬、今日、暇か?」
12月24日、私が思いを寄せている人、折原君からの誘いがあった。
 「えっ、あっ、そうね・・・」
 「忙しいか」
 「あ、ううん、大丈夫」
今、私は恋をしている・・・私を守ってくれた、折原君に・・・
 「そうか、ならいいところに連れてってやるから、終わったらまってろよ」
 「うんっ」
”どこに連れてってくれるのかな?あ、今日はクリスマスイブ!ダンスホールかな?
夜景のきれいな所かな♪”はやる気持ちで、心が踊る。
 「おい、折原。すぐに体育館へ移動だぞ。いこうぜ」
住井の言葉が、私を現実に戻す。”ちっ、いきなり話に割り込むな”
 「おっと、そうなのか」
 「詳しい説明は後だ」
 「うんっ」
”・・・・早く終わらないかな?終業式”
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”思えば運命的な出会いだったよね”初めてであった日を思い出す。
 運命に導かれるように出会い、多少の誤解はあったけど、私をいつも見守ってくれた。
優しい彼・・・・わたし、ホントに出会えてよかった。
夜の街はクリスマスのイルミネーションに彩られ、輝いて見えた。
「お、すげーっ。見ろ、七瀬」
「あ、うんっ・・・綺麗だね・・・」
「それにすごい人だなっ・・・」
「そりゃあね・・・特別な日だしっ・・・」
「急がないと、座れないぞ」
「ね、映画?それともプラネタリウムとか、何かのお芝居?」
「おまえが泣いて感動しそうなものだ」
「ほんとっ?」ひょっとしたら、夜景の綺麗な所かな?
「きっとな」
自信満々に、答える折原君。
「すごい楽しみっ」
なんて、頼もしい答え方・・・・うっとりとした瞳で、彼を見つめる。
街の喧噪の中を、二人で歩き続けた、ホント幸せ・・・
どれくらい、時間が経ったかしら、急に彼が立ち止まる。
「おっ、やっぱ流行ってるなぁ」
どうやら目的地に着いたらしい。
「え・・・どれどれ?」
なにかな?映画館じゃない様だし、プララネタリスムも違うみたいだし・・・
それに、何かクリスマスのイメージと違う・・・
 あたりの様子は、確かに賑やかな所だけど、聖夜のフインキというより、
下町の商店街通りの方が、近いような気が・・・
「これ」彼が、目的の場所を指し示した。
「・・・・・・・・・え?」
あたしは、目を疑った・・・まじ?
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「大盛りふたつっ!」
威勢の良い店主の声が、湯気に曇る店の中に響き渡る。
 ”甘かった・・・・こいつは、こんな奴だったんだ・・・”
「どうだ、うまいだろう」
 ”よく思い出せば、どこが運命の出会いだ?ものすごく最悪な出会いじゃないの”
「もっとキムチを入れた方がうまいぞ」
 人の返事を聞く前に、キムチをどぼどぼ入れる。
「やっぱ冬はラーメン。それも体の芯から温まるキムチラーメンだ」
 呆れるくらい、嬉しそうにキムチラーメンの講釈をたれる。
「なっ、七瀬」
 腹が立つくらい、晴れやかな笑顔を浮かべながら、あたしに同意を求めてきた。
 恋は盲目ってよく言うけど、この朴念仁を・・・ここまで美化して見ていたとは・・・
「七瀬、ラーメン好きだろう」
 ”彼にとって、あたしって何なんだろう・・・ただの友達なの・・・”
「ほら、もっとキムチを入れてやるぞ」
「ひんっ・・・」
 泣けてきた・・・”あたしが、舞い上がっていただけなの?”
「ん・・・?」
「うくっ・・・ぐっ・・・」
「おまえ、泣いていない・・・?」
 さすがに、あたしの様子がおかしいのに、気が付いたらしい。
「泣いてないわよっ・・・」
 怒鳴りつけたいのを、精一杯、我慢しながら答えた。
「そうか。あまりのうまさに感動したのかと思った」
 見当違いの事を、ほざくコイツ・・・・”あんたって人は・・・”
「しないわよっ・・・感動なんかぁっ・・・ぐすっ・・・」
”天然記念物級の、朴念仁だわ・・・・”
「あれ・・・・やっぱ泣いているだろ」
「泣いてないっ・・・!」
「調子でも悪いのか・・・?」
「いいわよっ・・・すごぐっ・・・」
「よし、今日は付き合ってくれたお礼におごってやるからな。おかわりしたって
いいんだぞ?」
「嬉しくないっ・・・」
”もうヤダ、これ以上我慢できない・・・・”
「はあ・・・? どうしたんだ?」
あたしの様子を、怪訝そうに見つめる。
「嬉しくないって言ってんのよっ!こんなものおごってもらったって!!」
ありったけの大声で、怒鳴りつけると、あたしは店を飛び出した。
”バカバカバカッ!!折原のバカ!!!あたしの気も知らないで・・・”
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 勢いよく飛び出したがいいけど、彼をどうしても見捨てることができず。
少し走っては立ち止まり、彼が近づいたらまた走り出す・・・奇妙な鬼ごっこが続いた。
 そして、誰もいない公園であたしは立ち止まる。
「おい、七瀬っ」
「どうしたんだ、一体・・・」
なにも言わず、あたしは俯いていた。
「そんなにラーメン不味かったか・・・?」
「うぐっ・・・」
”こ、ここまで来てまだ言うか・・・・”怒鳴りつけたくなるのを、ぐっとこらえた。
「うぅんっ・・・美味しかったっ・・・」
「じゃあ、どうしてそんなに泣きそうな顔してるんだよ」
「今日は・・・・・・クリスマスなのよっ・・・」
「え?あ、そうだったな」
それで?とでも言いたげに、答える彼。
「そうだった・・・?」
ありったけの想いを、乗せて彼に言い寄る。
「あなたにとっては、それだけのことかもしれないけどっ・・・あ、あたしのとっては
すごく大切な夜だったんだからっ・・・!」
「クリスマスよ、クリスマスっ!期待していたのにっ」
「ものすごく期待してたのにっ・・・」
「それがぁっ・・・はぐぅっ・・・」
怒りとも悲しみとも付かない、想いで胸がいっぱいになる。
「いや、美味しいから・・・」バツが悪そうに答える彼。
「そんな、美味しくったてねぇっ、ラ、ラーメン屋はないと思うのっ!」
「そうか・・・?」
「そうよっ・・・」
「誘われたとき、嬉しかったのにっ・・・」
「なんだかんだ言っても、あたしのこと気に掛けてくれるって・・・」
「他の誘い断ってまでしたのにっ・・・」
だんだん情けなくなってきた・・・これじゃあたしがバカみたいじゃない。
「あたし、キムチラーメン食べるために、みんなの誘い断ったんぁっ・・・
ば、ばかだぁっ・・・」
「そこまで言うなよ・・・」やや、呆れ気味に答える彼。
「だ、だって・・・・・・やっと、男の子と過ごせると思ったのにっ・・・」
”初めてなのよ・・・・あたし”
「だ・・・大好きな男の子とっ・・・ふたりきりで過ごせるってっ・・・」
”ホントに、ホントに好きになった男の子は・・・・あなたが初めてなのよ・・・”
これ以上、言葉にできない。
「七瀬・・・」
 優しい声で、あたしに話しかけてきた。
「うぐっ・・・」
「どっか行こうか」
「遅いわよっ、こんな時間じゃぁ・・・!」
「どんなところに行きたかったんだ?」
「ダ・・・ダンスパーティーとか・・・」
「ダンスパーティー・・・?」
なぜ?と言いたげに尋ねてきた。
「あ、憧れっ・・・」
大好きな人と一緒に踊る・・・あたしは、そんな光景に憧れていた。
「ふぅん・・・・・・」
  少し考えた後、突然あたしの手を握ってきた。
「よし、踊ろう、七瀬」
「え?」あたしは、自分の耳を疑った。
「ほら、手出して」
”ここで・・・おどるの?”
「ほらっ」しっかりとあたしの手を握りながら・・・・
「で・・・どうすんだ?」
困った様子で尋ねてきた。
 なにを言ったらいいか、判らずあたしは、呆然としていた。
「どうすんだ、七瀬っ」
”とりあえず・・・踊ろうかな?”
「・・・こ、こうかなっ」
うろ覚えの記憶を頼りに、ダンスのステップを始めた。
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 しかし、ダンスなんか踊ったことがない同士、初めからまともに踊れるはずもなく、
頭突きをするし足も踏む・・・ちぐはぐな踊りの様なものを繰り返す・・・でも
 ずれていた心の歯車がかみ合い、不協和音を発していた想いが、綺麗な和音を響かせる。
いつしか、流れるように二人は踊り始めた。
 月明かりのスポットライトの中、夜風と木々のざわめきの楽団がワルツを奏で、
天に浮かぶ星達の見つめる中、あたし達は踊り続けた。
真夜中の、二人だけの舞踏会・・・・
 そして、どちらからでもなく、自然に口づけを交わす。
”・・・・・・キムチ臭い”
 今までの幻想的なフインキを、根本から叩き壊すような、キムチの臭い・・・
”ここで、落とすか・・・・普通”思わず思ったが・・・
”でも、いいかもしれないね”と思い直した。
鈍感な彼、本当はがさつなのに、無理に女の子らしくしようとしている、あたし
 とんでも無くでこぼこな組み合わせだけと、以外とお似合いかもね♪
多分、何度もあるんだろうね、今日みたいな出来事。
彼の鈍感さに呆れ、時には怒り・・・さりげなく見せる優しさに、嬉しくなり、ますます
彼を好きなる。
 端から見ると、まるでラブコメみたいな関係を、彼としていくのかな?
結構、いいかもしれないね。浩平  
 あたしは彼の温もりを確かめながら、心の中でそっと呟いた。
”ずっと、一緒だよ・・・あたしの王子サマ”
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 舞「ちょっと、これ随分前に公開した作品だだよ」
神楽「確かに、私のサイトでかなり昔に公開した作品だけど、
   ここでは初めてだよ♪」
 舞「でも・・・」
神楽「↓の新作とリンクしているんで、改めてのしたんだ」
 舞「そうなの」
神楽「そう(^.^)」

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