お姫様の哀歌  投稿者:神楽 有閑


「あたし、一体なにをしているんだろうね・・・」

 12月24日、街はクリスマス・イブで賑わっていた。
 一年前なら、あたしもその賑やかさに目を奪われ、彼と一緒に聖夜を楽しむことを
夢見ただろう・・・・だけど・・・
「こんな場所で、こんな格好で・・・・何をしているんだろうね・・・」
公園・・・あいつと踊った思い出の公園・・・だけど今は・・・
「あはは・・夢見る乙女ってのも、考えモノね・・・」
 彼から送られたドレスを着て、ただ一人公園でたたずむ。
 彼・・・折原浩平という存在が消えて、ずいぶん時間がたった。
いくら考えても不思議な出来事だった。
 ある日突然、彼の存在がこの世界から消えた・・・予兆はあったのかもしれない、
だけど、あたしは気が付かなかった。
 彼が好きになって舞い上がっていた、あの時のあたしは・・・彼の苦しみを理解する
事はできなかった・・・自分自身の幸せに浸っていた為に。
 ・・・あの時、彼が抱える問題に気が付いていれば・・・ひょっとしたら、彼は消えずに
済んだのかもしれない。
 もし、自分だけの事を考えるのではなく、彼のことも考えていれば・・・
だから、あたしは待ち続ける、他人から白い目で見られようが、罵られようが・・・
彼が最後に送ったドレスに身を包み、待ち続ける。
 贖罪、ただの自己満足かもしれないけど・・・
 彼の苦しみに気が付かなかった、馬鹿な自分自身に対する罰・・・・
彼が帰ってくるまで・・・あたしは待ち続ける。

春、出会いと始まりの季節・・・・あたしはただ待ち続ける。
夏、運命と変化を表す季節・・・・何一つ変える事なく・・・
秋、想いを成熟させる季節・・・・あの時の想いは、あの時のままで・・・
冬、静かに想いを語る季節・・・・されど、語る相手は居ない・・・

「そうだ!あたしね・・・ダンスを習い始めたんだ。」
”わかっているの?虚しいだけよ”頭の中で別の誰かの声がする。
 わっている、わっているわよ!・・・だけど、だけどね・・・
「ほら、あの時一緒に踊ったけど・・・滅茶苦茶だったでしょ?」
”判ってない、語る相手はもう居ないのよ?”無意味だと告げる声。
 一度、吹き出た想いは、出し切るまで止める事はできないのよ・・・
「やっぱり、乙女たる者・・・ダンス位できないとね♪」
 誰に言うわけでもなく、ただ一人で喋り始めるあたし。
「ダンスの講師から、『君、筋がいいね』って誉められたのよ♪」
 ただ、虚空に向かって一人でしゃべり続ける・・・
「あっ、信じてないでしょ?あんたの事だから、『盆踊りの教室か?』って言うんでしょ?」

「見てなさいよ、あたしの華麗なダンスを見せてあげるわ!」
 あたしは、一人ダンスを踊り始める。
   月明かりのスポットライトの中、夜風と木々のざわめきの楽団がワルツを奏で、
天に浮かぶ星達の見つめる中、あたしは踊り続けた。
真夜中の舞踏会・・・・たった一人の・・・たった・・・一人・・・
「きゃっ」
 途中、バランスを崩し、あたしはその場に座り込む。
「あはっ、やっぱ二人で踊るダンスを・・・一人で踊るのは・・・無理が・・・」
贖罪・・だけど・・・・もう・・・いやだ・・・
「早く・・・帰って・・・来てよ・・・ばかぁ」
ぽろぽろと涙が出てきた・・・一度吹き出た想いは、もう止めることはできない。
「あたしが・・・悪いのなら・・・何度でも・・謝るから・・・」
 雪が降り始めた・・・聖夜に相応しい、真っ白な雪が・・・
「お姫様を・・・待たせる・・王子様なんて・・・物語だけで・・・十分よ・・・」
 辺りを、白く染めていく・・・
「あなたが・・・思っている程・・・あたし・・・強く・・・ないのよ・・・」
 全てを、白く塗り替えてゆく・・・
「はやく・・・帰ってきてよ・・・」
   
    ・・・・いっそのこと、この想いも雪が白く染めてくれたら・・・・

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神楽「はろはろ〜♪時季はずれのSSをのせる、神楽だよ」
 舞「時期はずれすぎ」
神楽「・・・・・・」
 舞「ところで、前に刑事版で宣言していたSSは?」
神楽「・・・・制作中です(..;)」
 舞「来年の抱負は、遅筆を直すことだね♪」
神楽「ど、努力します・・・と、とりあえず♪みなさん良いお年を!!」
 舞「皆さん全てが、明るい新年が迎えられる事を!」

神楽&舞「こころから、お祈りいたします!!」   
 
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