流れる雲の下で・・・後編:悠久の誓い  投稿者:神楽有閑


前編:『久遠の約束』のあらすじ
 幼い日の盟約通りに『永遠』へと旅だったオレ、そこに待っていたのは、
幼い時に盟約を結んだ少女・・・・・
 そしてオレは、過去を断ち切るために永遠の少女に別れを告げる。
存在理由を失い、壊れゆく永遠の世界で最後に見たのは、悲しい笑顔でオレに
別れの挨拶をする永遠の少女・・・みさおの姿だった・・・
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 ずっとまっているよ・・・・わたし、まっているよ・・・
おにいちゃんがなかなくなるまで・・・おにいちゃんがげんきになるまで
わたしはずっとまっているよ・・・ずっと、ずっと・・・・

「『永遠の世界』は、逢いたいと言う二人の願いの結晶なのかもな・・・」
川沿いの土手の空き地でゴロンと横になり、誰に話す訳でもなくオレは一人呟く。
 あの世界はオレが求めた世界であると同時に、幼くして死んでしまったみさおも
求めた世界なのかもしれない・・・・
 ずっと続くと思って疑わなかった楽しい日々・・・だけど、オレ達は失った。
オレは居なくなったみさおを求め、みさおはオレと会いたいと願った・・・
 そんな二人の想いが、あの『永遠の世界』を作り出したのかもしれない・・・
「って、考えれば考えるほど・・・情けないよなぁ・・・オレ」
右手で目元を覆い隠しながら、オレは自問自答を続ける。
 みさおが生きている時は、さんざん兄貴面をしておきながら、結局のオレ自身が
みさおの存在に助けられていたのだから・・・
 みさおの死後、その存在を忘れ・・・思い出すのが辛いという、ただそれだけの
理由で・・・その事実から目を背けていた。
「ははは・・・ほんと・・・情けない・・・兄ちゃんだよなぁ・・・」
 永遠の少女が、みさおだと気が付いていれば・・・
              ガキの時のオレがもう少し強かったら・・・
  みさおにも・・あいつにも・・・こんな心配や迷惑はかけずに済んだはずだ。
「ごめんな・・・みさお・・・頼りない兄ちゃんで・・・」
 みさおはどんな想いで、オレを待っていたのだろうか?
そして、あっさりと『永遠の世界』を否定した、オレをどう思うのだろか・・・・
「みさおの想いに答えられなかった・・・それでいいのか?」
 やり場のない哀しみと後悔で、心がズキズキと痛む。
「どうしたら・・・よかったんだ・・・」
 もし3年前に戻れるなら・・・もどって・・・もどって?・・・どうするんだ?
永遠の世界に留まるのか?それとも・・・・
「どうしたら・・・」

 ”風が吹いた・・・どことなく寂しげな風が、大地を駆け抜ける。
       それは語りかけるかの様に、静かにオレの側を吹き抜けた・・・”

「やっと見つけたよ、浩平」
 そんな時、オレを呼ぶ声がした・・・この声は・・・・あいつだ。
2度もオレを助けてくれた、世界で一番感謝したい人であり・・・
「瑞佳、どうしたんだ?」
 ずっと一緒にいることを望んだ、オレの大切な人・・・長森瑞佳。
「用事がある訳じゃないけど、伯母さんからココに浩平が居るって聞いたから。」
などと言いつつ、オレの側に座り込む。
「そうか?」
「最近よくココに来るね・・・って、浩平どうしたの?」
 突然、心配そうにオレを見つめる瑞佳。
「え?」
「泣いてたの?」
「あ・・・・」
 どうやらオレは、知らないうちの泣いていたらしい。
「・・・みさおの事を思い出して・・・な」
「みさお?・・あっ、妹さんの事」
「ああ」
「・・・そう」
 瑞佳には、オレが『永遠の世界』で体験した事を全て話している。
そして、【時の流れる世界】に帰る代償として、みさおとの別れの事も・・・
「ねぇ、浩平」
「ん?」
「今度、お墓参りに行こうよ。」
「誰の?」
「みさおちゃんの・・・浩平、最近お参りしている?」
「いや、ずっとしていないな・・・・・」
 まともにお参りした記憶はなかった・・・『永遠の世界』に行く前は、
みさおの事を思い出すのが辛い為に・・・
 『永遠の世界』から帰った後は、今まで逃げていた自分が許せない上、
みさおに会わす顔がない気がして・・・
「だったらお参りに行こうよ、私も一緒に行ってあげるから、ね」
「・・・・いいの・・・かな」
 不安げにオレは呟く・・・オレには資格が無い気がして・・・・
「うん、問題ないよ」
「みさおは・・・オレを・・・許してくれるかな・・・」
「大丈夫だよ、きっとみさおちゃんも喜んでくれるよ」
 いつものように、笑顔で答えてくれる瑞佳。
 何度この笑顔に救われたのだろうか?瑞佳の優しさに何度、オレは・・・
助けられたのだろうか・・・オレは・・・
「瑞佳っ!」
 オレは、瑞佳の体を抱きしめた。
「きゃっ!浩平っ!?」
 瑞佳は小さな悲鳴を上げたが、オレはかまわず抱きしめた。
「み・・・瑞佳・・・オレは・・・・」
 どうしようもない位、涙が出てきた。
「浩平・・・・」
 瑞佳は幼子をあやす様に、オレの背中を優しく撫でる。
 温もりを感じながら、オレは泣き続けた、今まで、ため込んでいた”何か”を、
全てはきだした・・・そんな気がした。
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「浩平、落ち着いた?」
「ああ・・・悪かったな」
「ううん、いいよ」
 瑞佳はニコニコ笑いながら、オレの顔を見つめる。
「・・・じろじろ見るなよ」
 照れ臭くなってきた・・・大泣きした後なので、あんまり強くでられない。
「ふふっ、照れた浩平も可愛い」
「・・・この年で可愛いって言われても、嬉しくないぞ」
「いいもん♪」
「あのなぁ」
 苦笑しながら、大好きな幼なじみの顔を見つめる。

出会えた事に感謝して・・・
好きになった事に感謝して・・・
そして、好きでいてくれた事に感謝して・・・

「瑞佳・・・」
「こ、浩平・・・・」
 オレはそっと瑞佳を抱き寄せる、大切な人の温もりを確かめるかの様に・・・
瑞佳もまた、オレに体を預ける。
どちらともなく、口づけを・・・・

 突然風が吹いた、オレの顔を叩く様に吹き抜ける・・・一瞬、意識が途切れる。
風が止んだとき、目の前にあったのは、瞳を閉じてキスを待っている瑞佳・・・

 えーと、なんだ・・・その・・・こーいったのは勢いで・・・つまり・・・
・・・・・だぁっ!おのれ風め!!いきなり吹きつけやがって!!
素面に戻ったら、思いっきり恥ずかしいじゃないか!この場面は!!
 だが、現実問題としてこれから・・・どーしよ?
不意にオレの心の中に、最近なりをひそめていた”かつてのオレ”が湧き起こる。
何となくそれに身をゆだねる。
 瑞佳の両頬を、両手で優しく挟む・・・潤んた瞳でオレを見つめている・・・
「瑞佳・・・・」
「こーへい・・・」
「せーの、それっ!”たってたってよっこよっこ、まーる描いていてチョン!”」
おもむろに瑞佳の頬を摘んで、ムニムニと動かし思いっきり引っ張る。
「ぇ?・・・」
 何が起こったのかまだ理解できていないのか、ボーゼンとしている瑞佳・・・
うむ、なかなか間抜けな顔だ。
「くっ・・・くははははははははははっ、いい顔だぞ、みーずかっ♪」
「・・・・・こ・・・浩平!!き、期待してたのに!意地悪だよ!!!」
顔を真っ赤にして、カンカンに怒る瑞佳。
「なにを?」
ニヤニヤしながら瑞佳に質問をする・・・オレって意地悪いなぁ♪
「え?・・・えっと・・・・その」
「ひょっとして、これかな?」
オレは電光石火の勢いで、瑞佳にキスをする。
「ふぇ?こ、浩平っ!・・・え、えと・・・」
 瑞佳は顔を真っ赤にして、あたふたと慌てふためいている。
怒っている様で恥ずかしがっている、複雑な表情を浮かべながら・・・
 そんな瑞佳を見ながら、オレは何となく安心した。
最近、幼さが消えた瑞佳を見ていると、何となく別人に見えてしまって
ちょっと不安だった。
 永遠の世界に行っていた時、その時の瑞佳の記憶はオレにはない。
それは原因なのだろうか?実際の所、理由は良くわからない・・・でも

 〜オレの知っている瑞佳だ・・・ちっとも変わっていない〜

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「浩平の事なんか知らないもん!」
「わりぃ、お茶目なイタズラだ」
 オレはまだ笑いながら、瑞佳の肩を寄せようと・・・避けられた。
・・・・ちょっと、悪ノリしすぎたか?
「みーずかっ♪」
再度挑戦だが・・・・
「ふんだっ!浩平なんか知らないもん!」
また、避けられた・・・まずい!本気で怒っている!!
「わ、悪かった。オレが悪ノリしすぎた。」
そっぽを向いて、何も答えてくれない瑞佳・・・・やるんじゃなかった・・・
「ホントに悪かった!機嫌、直してくれよ・・・なっ」
何度も謝るオレ・・・後悔、役立たず(だったけ?)を身にしみて感じている。
「そ、そうだ!パポタ屋のクレープ奢るよ!えっと、それから映画を見に行こう
もちろんオレの奢りで・・・」
 ・・・・振り向いてもくれない、こうなったら最後の手だ!!!
「そ、そういえば商店街のファンシーショップに売ってあった猫のヌイグルミ、
 お前欲しがっていたよな?今日買いに行こう!プレゼントするよ!」
「ありがと♪」
満面の笑みを浮かべながら、オレの方に振り向く瑞佳・・・
「・・・・ひょっとして、これを狙っていたのか?」
「知らないもん♪ただ横を向いていたら、浩平が色々と買ってくれるって言った
 だけだもん」
 
・・・・前言撤回、コイツは恐ろしく変わってしまった。
 誰だ、素直でお人好しが売りのコイツに、知略と策略というアコギなモノ
教えたのは・・・

「ったく、やられたよ」
「えへっ♪」

 オレは苦笑いを浮かべながら、『永遠の世界』から戻ったことを実感していた。
 
 この世界を選んだ事に後悔はない、大切な人達がいるから。
 この幸福が続くとは限らない、だけと今度は「偽りの永遠」を選ばない。
 まだ未来は見えないけど、これだけはハッキリと言える。

”みさお、どんなに辛いことがあっても、兄ちゃん逃げ出さないからな。”

    風が吹いた・・・懐かしい微風が吹いた。
              まるで語り掛ける様に、優しく吹き抜ける・・・・

 ふと気がつくと、瑞佳がオレの顔を見つめていた。

「どうした?」
「今、とってもいい顔していたよ・・・思わず見とれちゃった」
「そ、そうか?」
「うん、とってもいい顔、続くといいね今日みたいに笑える日が」
「続くさ、きっと」

 そう言いながら、何故オレがこの場所に惹き付けられたのか理解した。
 似ているのだ、永遠の少女・・・みさおと風を感じた場所に・・・

       〜おうえんしてるよ、おにいちゃん〜

 空の方から、突然みさおの声が聞こえた。
咄嗟に見上げると、風にながれる雲の合間にその姿が見えた。
 3年前と同じように”バイバイ”と手を振るみさおの姿が、ほんの一瞬見えた。
でも、あの時の様に悲しい笑顔でなく・・・今度は笑顔で見送ってくれた。

         〜ありがとう、みさお〜

                                おわり
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神楽「はろはろ〜♪謎の電脳士の神楽だよ♪みなさん、お久しぶりです。
 舞「・・・・・で」
神楽「・・・・私の初の前後作、流れる雲の下で・・・後編、悠久の誓いを
   アップしました。」
 舞「で、皆様に言うことは?」(冷ややかな目)
神楽「・・・・ごめんなさい、投稿が滅茶苦茶遅れました。」
 舞「・・・確か、前編が出来たときには、7割方書けていたはずよねぇ」
神楽「うぐぅ、確かに書けていたんだけど・・・途中で気に入らなくなって」
 舞「気に入らない?」
神楽「うん、最初のプロットでは、永遠からかえってきた浩平が教師を
   めざす・・・って感じで書いていたんだけど」
 舞「けど?」
神楽「なんか、途中から違和感を感じて・・・その部分を削ったら、全体から
   構成をやり直す羽目になったんだ。」
 舞「ふーん、にしては時間がかかったね・・・マスター」
神楽「・・・あと、リル○ミンサーガがやたら面白かったり・・・
   いろんな事情で書けなかったんだ」
 舞「な、なんかどーしようもない理由も混じっているような・・」
神楽「と、とにかく前編の内容が気になる方は、私のサイトに載せていますので、
   そちらを観て下さいませ♪」
 舞「・・・」
神楽「今度は、クッキーが消える前には投稿したいと思います。」
 舞「前向きなんだが、後ろ向きなんだか良く分からないコメントね・・・」
神楽「では、みなさんご機嫌よ〜♪」

   
http://www2u.biglobe.ne.jp/~youkan/