流れる雲の下で・・・前編:久遠の約束 投稿者: 神楽 有閑
「どおしてないてるの」
しらないおんなのこが、ふしぎそうにたずねてきた。
 おとうさんがしんで、みさおがしんで、おかあさんがいなくなって・・・・
ぼくは、まいにちないていた。
「かなしいことが、あったんだね」
 たのしいひびが、ずっとつづくとおもっていたのに・・・・
えいえんなんてなかったんだ・・・こんなせかいなんかいらない・・・・
「えいえんはあるよ」
おんなのこのちいさなてが、ぼくのほほをはさむ。
「ここにあるよ」
ほんのすこしふれあう、ふたりのくちびる・・・ふしぎとこころにあたたかくなる。

”永遠の盟約”そう、これが始まりだった。
 ・・・流れる時の意味を知らぬ子供・・・だから結べた盟約・・・



「って・・・夢か」
 土手沿いの空き地でうたた寝していたオレは、子供の頃の夢を見ていたらしい。
オレの名は折原浩平。3年前、ここから一年ばかり居なくなっていた。
「今頃になって、あのときの夢を見るとはなぁ」
 オレという存在そのものが消える・・・嘘のようだが本当の話
「しかし、あの出来事から、もう3年も経つのか・・・」
 あのときの出来事は、今でもはっきりと覚えている。
あいつの泣き顔と、あいつの悲しい笑顔は、今でもはっきりと覚えている。
「3年か・・・考えるには、ちょうどいい時期か・・・あいつは怒るかな?」
”今頃になって考えるのは・・・あいつはどう思うのだろう?”
 雲の流れる青空を眺めながら、オレは3年前のあの日を思い出す。
『永遠』という閉ざされて世界に、旅立ってしまったあの日のことを・・・
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 親父を、お袋を、そして妹を失ったオレは、この世界にとどまる理由を失っていた。
そして結ばれた盟約・・・長い年月の末、今その盟約が実行されようとしていた。
 親友が、先生が、伯母さんが・・・そして、あいつ以外のすべての人がオレという
存在を忘れ、この世界から”折原浩平”と言う、存在が消滅した。。
眼下に広がる青い空、白い雲・・・永遠の世界と心が繋がった時、垣間見たあの光景。
「ついに、来たのか・・・・」
ひどく落ち着いていた、ひょっとしたら俺自身半ば覚悟を決めていたのかもしれない。
「オレは、これからどうなるんだ?」
 幼いオレは、こんな世界を望んでいたのだろうか?何の変化もない世界を・・・
これからの行く末を考えていた時、遠くから俺を呼ぶ声がした
「こうへいっ!やっときてくれたんだね!!」
 俺を呼んだのは、幼いときの瑞佳によく似た、あの時の少女・・・オレが永遠の盟約
を結んだ少女だった。
「ずっとまっていたんだよ、ほんとにずっとまっていたんだよ!!」
喜びを全身で表しながら、オレに抱きつく。
「あ、あぁ」
 そのときオレは、奇妙な違和感を覚えた。
「やっと、やっときれくれたんだ・・・こうへい、きてくれてありがとう」
”今までのイメージと違う”そう、明らかに違っていた。
 時々オレの夢に出てきた時は、少し大人びた感じの少女だった。
だけど今は違う、年相応の子供らしさ・・・・姿こそ今までの永遠の少女だが、
全くの別人に感じられた。
「もう、かなしいことも、いやなこともないんだよ」
嬉しそうにオレを見つめる、不思議と心に響く声・・・・・
「いっぱいあそべるんだよ、ずっとずっとずっと・・・・」
意識が朦朧と・・・目の前が霞んできた。 頭の中で少女の声が鳴り響く。
 オレは・・・・・ぼくは・・・・
「きもちをらくにして、うけいれればいいんだよ」
 目の前にオレの知っている・・・ぼくがしらないひとがみえる・・・
「うん、たのしかったあのひにもどるんだよ」
めのまえにあらわれて、まるでしゃぼんだまのように”パチン”とわれてきえる。
たくさんのおじさんやおばさん、おにいちゃんやおねえちゃん、しゃぼんだまのように
”パチン”とわれてきえていくよ・・・・
「さあ、いっしょにいこうよ・・・ずっとずっとあそぼうよ」
 しらないおねえちゃんがめのまえにみえる・・・ないている・・・
 なにかかなしいことがあっ・・・泣いている、あいつが泣いている。
    どうしてないて・・・・ただ、オレの名前を呼びながら・・・・
 ぼくは・・・・オレは・・・・
「オレは折原浩平、嫌なこともあったが、16年、生きた折原浩平だ!!」
消えかかった意識に活を入れ、今のオレを強くイメージする。
「きゃぁ!」
オレを中心に吹き荒れた、突風に永遠の少女が吹き飛ばされる。
「はぁ、はぁ・・・忘れるものか・・・・絶対に・・・!」
ひどく疲れたが、ここで倒れる訳にはいかない、オレを信じているあいつの為にも。
「どうして?こうへいがのぞんだんだよ!なんでこばむの?」
「永遠なんて無かったんだ。」
「あるよ、ここにはあるんだよ!!えいえんはあるんだよ!」
 永遠の少女は、必死になってオレを説得にかかった。
大きな瞳に、いっぱいの涙を溜めて・・・・
「キャラメルのおまけは要らなかったんだ、偽りの平穏は要らなかったんだ。」
オレは永遠の少女の頭を撫で、優しく・・・そしてハッキリと答える。
「どぉして・・・・そんなかなしいこというの」
 罪悪感・・・・こんな幼子に泣きながら詰め寄られたら、誰でも罪悪感を覚えるだろう。
だけど、ここで逃げ出す訳にはいかない、なぜならこの子はオレの弱さが生んだ・・・
オレの弱さを表す存在・・・・ここで決着をつけなければいけないのだから・・・
「オレは元の世界に帰らないといけない、ここに留まるわけにはいけないんだ。」
「いっぱい、いやなことがあるのに・・・・どうしても・・・・なの?」
「ああ」
「なぜ、つらいせかいのもどるの・・・・」
 オレは、今までの出会いを思い出す・・・いろんな人との出会いを・・・

『見守ってあげたい子がいる』
 ガキの頃のオレのように、自分の世界に閉じこもっていた子がいる。
親しい友人がくれたきっかけのお陰で、再び外の世界に向かっていこうとしている・・・
オレは、その子の成長を見守っていきたい・・

『応援したい子がいる』
 明るい子、いつも元気いっぱいで見ているこちらまで元気づけられる。
時々、その元気が空回るする事もあるけど、その子は一生懸命頑張っている。
オレは、心から「がんばれ」と言いたい・・・・

『助けたい人がいる』
 出口の無い、心の迷宮に捕らわれた人がいる。
一人で背負った悲しみに心を痛め、心にはいつも雨が降っている、哀しみの雨が・・・
その人を救いたい、心に青空が広がる事を願って・・・

『尊敬できる人がいる』
 死ぬほど辛い経験をしながら、誰よりも前を向いて生きている人がいる。
この人に会えたことを感謝し、そしてこれからも教えてほしいと思っている。
何気ない日々の生活から、生きる強さを見つけたその人に・・・・・

『同じ時を過ごしたい人がいる』
 仲が良いのか悪いのか・・・端から見ると漫才でもやっている様な関係の二人。
きっとこれからも、そんな関係が続くのだろうな。
将来、笑いながら話ができる程、沢山の思い出と共に・・・・

『感謝したい人がいる』 
 幼い頃、自分の世界に閉じこもったオレを、助けてくれた人・・・・
今のオレが居るのは、間違いなくこの人のお陰だ。
今まで素直になれなくて言えなかったが、今なら言える「ありがとう」の一言・・・・

 様々な人との出会いが、無数とも言える思い出が、今のオレを支えてくれる。
今まで当たり前すぎて見えなかった【時の流れる世界】が、どれだけ大切な世界だった
のかはっきりと判る。
”それに、『ずっと一緒にいたい人』・・・あいつが、オレを待っているからな・・・”
 ガキの頃に一度見放した世界だが、今ならはっきりと言える。
「オレは、時の流れる世界が好きだ・・・ここには留まらない」
オレはきっぱりと、永遠の少女に告げる。
「・・・・・」
永遠の少女は俯いたまま沈黙していた・・・重苦しい空気が辺りに立ちこめる。

       ・・・二人の間を、風が吹き抜けた・・・
「わかってはいたんだ、こうへいがもうこのせかいをひつようとしないことは・・・」
長い沈黙の後、永遠の少女がポツリと呟く。
「わかってだんだ、ずっとずっと・・・・まえから」
オレに背を向け、永遠の少女は寂しそうに呟く。
「ごめんね、あたしのわがままでこのせかいによんじゃって、ごめんね♪」
くるりと振り向くと、今までのフインキは何処へやら、やたらと明るいノリで俺に謝る。
「い、いや気にしなくていい」
突然フインキが変わったのでオレは戸惑いながら答えたが・・・何か引っかかる。
「ちゃんともとのせかいにおくるから、ゆるしてね♪」
わらって・・・違う、無理矢理笑おうとしている・・・オレはこの表情を知っている!
心の片隅に、痛みが走る。
「うーん、すこしじかんがずれるけど、がまんしてね」
 ズキズキと心が痛む・・・まるであの時のように、胸が締め付けられる気がする。
突然、辺りが薄暗くなり、オレと永遠の少女は落下を始める。
少しづつ、少女とオレの距離が開いていく・・・
「でもね、ときどきでいいの・・・わたしのことおもいだしてね・・・」
 永遠の少女の姿が一瞬、霞んだかと想うと、全くの別人に変わる。
「・・・おにいちゃん」
「なっ!」
 姿が変わった永遠の少女を見た時、オレは自分の間違いに気が付いた。
この子は・・・オレの弱さの象徴ではなく、オレの弱さが引き留めていたんだ!
かって、一番大切な存在であり、ずっと一緒にいたいと願った・・・オレの大切な妹
「み、みさおぉ!」
 オレの声がみさおに届いたかは判らない・・・ただ、最後に見たのは、オレに向かって
”バイバイ”と手を振る、みさおの姿だった。
 あの時・・・オレが家に帰る時に病室で見せたあの表情、泣きたいのをグッと堪えて、
笑ってオレを見送った時の・・・悲しい笑顔で、今度もオレを見送ってくれた。

                                つづく

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神楽「はろはろ〜♪久しぶりに投稿する、謎の電脳士の神楽だよ♪」
 舞「やっほー、アシスタントでネコミミメイドの舞ちゃんだよ」
神楽「いやーなんだかんだあって、一月以上投稿できなかったなぁ」
 舞「ほんとですねー、WIN○8を、この一月で4回も、再インストール
   する羽目になったり、描きかけの原稿のバックアップファイルごと
   データが消失したり・・・」
神楽「呪われているかと思ったたぞ、マジで」
 舞「それはそうと、今回は続き物なんですね」
神楽「おう!一話完結しか書かなかった私だが、今回は2話構成!!」
 舞「・・・このお話、2話に分ける必要あったのですか?」
神楽「無い」
 舞「は?無かったの」
神楽「とりあえず、連載モノの練習のつもりで・・・・」
 舞「・・・・そんないい加減な事やる位なら、もう少し、早く書きましょうよ」
神楽「・・・・みゅぅ」
 舞「マスター・・・敵を作る発言はやめましょうね」
神楽「と、言うわけで、感想お待ちしておりマース」
 舞「・・・」


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