げんきだよ 投稿者: 神楽有閑
「みゅ、やだな・・・」
 お昼休みが終わる少し前、曇りだった今日の天気は、雨に変わったの。
雨、雨、繭は嫌いだ、だって、あの日のことを思い出すもん・・・・
「みゅぅ、あの日と同じだよ・・・・」なんか嫌な気分、雨は嫌いだ。
窓際の席で、外を眺めていたら、誰かが後ろから、急に抱きかかった。
「み、みゅ!」
「まゆ〜なーに黄昏てんの」
「み、みあ?、びっくりしたよ」抱きついたのは親友の、みあだった。
「なに、”窓辺で、黄昏る少女”してんの?繭には似合わないよ」
「みぃあ〜一回聞こうと思っていたけど、繭の事どう思っているの」
「そうねー”天真爛漫で天然ボケの似合う女の子”かな?」
”天然ボケの似合う女の子って・・・”
「みぃあーひどい」
「誉めているのよ」そういって繭の頭を、ぽんぽんたたく。
「みゅ?」ホントに誉めているのかな?
「それはおいといて、どうしたの?」
「うん、ちょっと嫌な事を思い出してたの」
「嫌なこと」心配そうに見つめる、みあ
「うん、居なくなっちゃった浩平お兄ちゃんのこと」
今でも、忘れられないよ・・・浩平お兄ちゃん。
「浩平お兄ちゃん?繭の彼氏?」
「うん、繭の彼氏」
「ね!ね!聞かしてよ繭の彼氏の話」興味津々に訪ねるみあ
「みゅ、みゅ!?」
”し、しまった・・・みあ、この手の話が好きだった。”
「まぁゆぅ、教えてよ〜」
”話すしかないかな、浩平お兄ちゃんのこと”
降り出した雨は、少し強くなってきた。
”そういえば、最後に、浩平お兄ちゃんと会った日は、こんな天気だったな・・・”
繭が最後に泣いた日、そして少し強くなった日・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みゅう、繭は元気に学校に行っているよ」
今日は、亡くなった私の友達、フレットのみゅうのお墓参り。
ガザッ
「みゅ!?」誰?後ろに知らない人・・・
「・・・よお、椎名」
”誰?お兄ちゃん、でも?知っている・・・”怖かったけど近づいた
「椎名、どうした」
”みゅ!浩平お兄ちゃんだ”
「みゅ−っ」浩平お兄ちゃんに、抱きついた。
「お、わかるのか、オレが?」
「みゅ−っ」甘えるように、体をすり寄せる。
「あはは、犬か、おまえは」私を撫でてくれる。
”みゅ、みゅ、うれしいな”
「どうした?学校にはまだ行っているのか?」
「うんっ」
「そうか、頑張っているな」
「うんっ」”頑張っているよ”
「長森は元気か?七瀬とはうまくやってるか?」
「うんっ」
「よし、そうか」
「久しぶりにあったんだからな。なんかうまいもんでも食いにいくか?
 また、ハンバーガーでも食うか」
「♪」”うれしいな、うっれっしぃな♪”
「よし、いこう」そういって浩平お兄ちゃんは、繭の手を引いてくれた。
”みゅ、うれしいな♪でも・・・なんで、初めにあった時、判らなかったんだろ?”
商店街まで行った時、晴れていたお空は、急に雨雲に変わり、雨が降ってきた。
「くそっ、降ってきたか」
「あっ」
「今度は、どうした」
「犬・・・」ちっちゃな子犬、雨に濡れててかわいそう。
「・・・はぐれたんだな、てっおい!」
抱きかかえた、子犬は雨に濡れて、ぶるぶる震えていた。
「飼い主の元に届けてやるか・・・?」
「うんっ」
「そうか。でも大変だぞ。この雨の中だからな」
「探すの・・・」子犬、かわいそうだよ。
「椎名がそうしたいんだったら、そうすればいいさ」
「うんっ」”頑張って探そうよ”
「よし、飼い主を捜そう。一緒にな」
「うんっ」
「とりあえずは・・・・・・人通りの多いところまでいってみるか」
「うん」”一緒に探そうね”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「こりゃ、風邪引くなぁ。椎名、急ぐぞ」
「うん」雨がだんだんひどくなっていったの。
浩平お兄ちゃんが、どんどん先に行っていく。
「みゅ−っ・・・」”まってよぉ、浩平お兄ちゃん”
どんどん浩平お兄ちゃんと離れていく・・・・
「みゅ−っ・・・・・・みゅ−っ・・・」”繭をおいていかないで”
そして、浩平お兄ちゃんを見失った。・・・・
「みゅ−どこ?浩平お兄ちゃん・・・どこに行ったの?」
だんだん不安になってきた・・・いつも見守ってくれるお兄ちゃんがいない・・・
「うぅ、浩平おにいちゃぁん・・」泣き出しそうになったその時・・・
「クゥン」腕の中の子犬が、不安そうに鳴いた・・・小さい子犬、小さな命・・・
 そうだ、この子の飼い主探していたんだ、この子このままだと、可愛そうだよ。
繭が頑張って、探さないといけないんだ。
「だいじょぶ、きっと飼い主が見つかるから」子犬に話しかける。
 泣くのは後だ、この子の飼い主を捜が探さないと・・・・
               ・
               ・

 雨の降る中、繭は子犬の飼い主を捜し続けた。でも・・・・・
「・・・」声が出ない、知らない人と話せない。
ただ子犬を、通りがかった人に、子犬を見せるだけ。
 誰もみてくれない、ただ繭をよけるだけ。
泣きたくなるのをぐっとこらえた。繭が頑張らないといけないんだ。
 不安そうに見つめる、腕の中の子犬。
この子のぬくもりが、繭を元気付けてくれる。
「だいじょうぶ、もう少し・・・」繭は一生懸命、子犬の飼い主を捜した。
そのとき、繭に向かって、走ってくる男の子がいた。
 繭のそばまでくると、男の子は泣きそうな顔で、子犬を見つめた。
「きみ、この子の飼い主?」
「うん」
「はい」繭は子犬を、男の子に渡した。
男の子は、しっかりと子犬を抱きしめると、わんわん鳴き出した。
”泣いている・・・”瑞佳お姉ちゃんが、泣いている繭にしてくれたように、
「よかったね、子犬みっかったよ」男の子の頭を優しく撫でた。
”こうしてもらうと、繭、落ち着いた・・・だから繭も”
「えぐっ、えぐっ・・・ぽちぃ」
「ほら、もう泣かないの、この子に笑われるよ」
「えぐっ、うん・・・ありがとうおねえちゃん」
男の子は、何度も繭にお礼を言いながら、子犬と一緒に人混みの中にいった。
 子犬を抱いた男の子を、ずっと見つめていた。
うまく言えないけど、何となく嬉しかった?みゅ−何か違う。よく判らない。
 誰かが、繭を優しく抱きしめてきた。
「・・・・・・っ?」 ”浩平お兄ちゃんだ!”
安心した繭は、浩平お兄ちゃんにもたれかかった。
「みゅ−っ・・・」
「よく頑張ったな」
「みゅ−・・・」”うんっ繭、頑張ったよ”
「もう大丈夫だよ、おまえは」
「・・・・・・」”なんか、変だよ浩平お兄ちゃん”
「もう一人でも大丈夫だ」
”泣いてるの?”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「椎名・・・オレはてりやきのセット。後はおまえの好きなものを頼め」
雨に濡れた服を着替えて、ハンバーガーを食べに行った。
「金があるだけ、どれだけ頼んでもいいから」
「うんっ」
 沢山のてりやきハンバーガーを、抱えて浩平お兄ちゃんの所に戻ろうと・・・・
「・・・・・・?」”お兄ちゃん・・・消えた”
 繭の目の前で、お兄ちゃん消えた・・・・
「・・・?」
「・・・・・・?」
「みゅ−っ・・・」”オニイチャン、キエチャッタ”
             ・
             ・
             ・
「どうしたの、繭・・・?」家に帰ったとき、お母さんが心配そうに尋ねてきた。
「う−・・・」”浩平・・・・”
「何か悲しいことあった・・・?」
「・・・・・・」”居なくなった”
「そう可愛想にね」
「・・・・・・」
「繭、ほら、おいで」優しい声で、繭を呼ぶ。
「う−っ・・・」”泣かない・・・もん”
「ほら、繭」
「う〜っ・・・」”繭が泣いたら、浩平お兄ちゃん困った顔する。”
「本当に悲しいときは泣いたって構わないのよ。おかあさん、怒らないよ」
「・・・・・・」”繭、見たくない・・・浩平お兄ちゃんの困った顔・・・だから”
「ほら、繭、おいで」
”浩平お兄ちゃん消えちゃった・・・繭の前からキエチャッタ・・・”
「うぐっ・・・」”嫌だ”
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁん−−−−−−!」繭は、お母さんの膝の上でわんわん泣いた。
 ヤダヤダヤダヤダ!!浩平いなくなったら嫌だよ!
繭、強くないんだよ、弱いんだよ、泣き虫なんだよっ!
 戻ってくれないと、泣いちゃうよ、わんわん泣いちゃうよ・・・お兄ちゃん困らせるよ?
支えてくれない嫌だよ、一緒にいてくれないと嫌だよっ!・・・だから、だからっ!
 おかあさんは、繭が泣き疲れて、寝てしまうまで、繭の知らない子守歌を歌ってくれた。
このとき歌ってくれた歌、わたし絶対に忘れないよ・・・おかあさん。
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 浩平お兄ちゃんが消えてから、いっぱいの時間が流れた。
嫌なこともたくさんあった、でもそれ以上に嬉しいことがあった。
学校に行くのも嫌いじゃなくなった。友達もできた。
”繭、おおきくなったよ、今の繭をどう思う?浩平お兄ちゃん・・・・”
「ね−ね−自分の世界に入ってないで教えてよぉ」
きらきら目を輝かせながら、みあが教えてくれとせがむ。
「う−っ、やっぱしヤダ」
「え−っ!おしえてよ−まゆ〜」
「はずかしいよぉ」
「照り焼きセットで、どぉ?」
”・・・・いくら繭がハンバーガーが好きでも・・・・”
「プラス、ナゲットとシェイクと、アップルパイで手を打たない?」
「うんっ」
 ”ニヤリ”と笑っていたみあが、気になるけど・・・・ま、いいかっ
 みゅ、みゅ、みゅ♪嬉しいな、うっれっしっいな〜いっぱい食べられる♪
 今の繭は、いろんな人の優しさに助けられたと思う。
 瑞佳お姉ちゃんの、浩平お兄ちゃんの、おかあさんの・・・そしてみあの優しさ。
うまく言えないけど、違う優しさ・・・
 もし、繭が優しさの違いが判ったら・・・浩平、帰ってきてくれるかな?
「あ、雨あがったみたいだね」
「ほんとだ」
雨が上がって、雲の隙間からお日様の光が、きらきら降ってくる。
「帰る頃には、青空見えるかな?わたし好きなんだ、雨上がりの青空って♪」
嬉しそうに、みあがしゃべる。
「きっと見えるよ、みあ」みあを見ていると、繭も嬉しくなる。みあはホントおもしろい。
お空を見上げて、繭はそっとつぶやいた。
「浩平、繭は・・・繭は元気だよ」
届くといいな、繭の想い・・・・

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神楽:「はろはろ〜♪謎の電脳士の神楽だよ」
 舞:「アシスタントの、ネコミミメイドの舞ちゃんだよ」
神楽:「今回は、繭ちゃんのお話です。」
 舞:「コレも前に書いた作品だね」
神楽:「たのむ・・・そうせめんでくれ」
 舞:「はやく新作書こうね♪」
神楽:「ど、努力します」
 舞:「頑張ってね♪」
神楽:「うーっ」
 舞:「・・・・繭ちゃんのまねしても、可愛くないよマスター」
神楽:「みゅー」
 舞:「可愛くないと、言ってるでしょうが!!」
(この後、舞に”じぇのさいと”される神楽であった。)
   

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