笹の葉に願いを 投稿者: 狂税炉
「という訳だ。」
「は?」
 俺は間抜けな声をあげてしまった。
 だってそうだろ?いきなりこんな事言われても困る。

 そんな俺を無視して,住井は続けた。
「それじゃ今晩,お前の家を空けといてくれよ。」
「おいっ」
「じゃ,よろしく頼むぜ。」
「待てや!!住井てめえ!!」
 俺は,颯爽と振り向き去ろうとする住井の肩を『ガッシ!!』と効果音が出るような
勢いで掴み、振り向かせた。
「お前なあ,いきなり『という訳だ』じゃ,何言ってんのか分んねえよ。」
 しかし,住井はやれやれといった顔をすると言ってのけた。
「まったく,何年俺の相棒やってんだか……そんなんじゃ,俺の愛人はつとまんないぞ。」
 そして,さらりと言った。
「お前ん家でやるって言ったら,宴会に決ってんだろ。」
「愛人なんて気持ち悪い事言うな。それになんでまたこの時期に…正月じゃないんだぞ。」
「お前こそ何言ってんだ。今日は七夕だぞ。七夕って言ったら月見だんごに酒と相場が……」
「それは月見だ!!」
「ナイスツッコミ!!それでこそ我が相棒だ。」
 はぁ…。思わずため息をついてしまうが,住井が何を言いたかったかは分かった。
「それで,なんで俺の家なんだ?」
「高校生が平気で酒を飲めるといったら,お前ん家しかないだろ。」
 まぁそうだが…そんなんで選ばれるのもどうかと思う。

「という訳だから。酒は俺が何とかするから,女の子はお前に任せるっ!!」
 そう言い残すと,俺に何も言わせまいとするように逃げて言ってしまった。

「……女の子…?しゃあない,長森達を誘うか…」
 俺は半分諦めて,来てくれそうな女子達に声をかけてみた。
(なんか,どっかで見た展開だなぁ……反省@作者)


「おい長森。今晩,俺の家に来ないか?」
「え……………(今晩?ってことは……だよね…え,そんな…私たちまだ……)」
 長森は真っ赤になって,うつむいてしまった。まったく,何を考えてるのか分らん。
「OKだな。それじゃあ7時に家まで来てくれ。」
「(……浩平がそう言うなら,私はいいよ……ポッ)」
 これで一人ゲットっと♪


「よぉ,戦乙女。」
 ずがしっ!!
 何か鼻の骨が折れたような気がしたが,きっと気のせいだろう。
「フッ……相変わらずいい蹴りしてやがるぜ。今日は白だな……」
「死にたいの?アンタ。」
 いかん,このままでは命に関わる。俺はとっとと用件を伝えた。
「実はな……今晩俺の家で,『乙女達を集めて星を見るパーティー』を開くんだが……。」
「それで乙女たる私に来て欲しい,というワケね。仕方ないわね。
  乙女の誇りにかけて参加するわっ!!」
「じゃあ,今晩七時な。」
 よし。これで二人目っと♪


「柚木,今晩俺ん家で七夕パーティーやるんだ。だから茜をつれて参加するように。」
「わかったよ♪ゼッタイ連れてくね♪」
 フッ,作戦成功。茜を落とすにはまず柚木だからな。
 う〜ん。柚木のゼッタイ,っていうのはこういう時,頼もしいな。
 これで三人目っと♪(柚木は当然,数に入れない)


「なぁ,先輩。今晩俺ん家に来れないか?」
「ごめんね,私,学校以外の場所はちょっと……」
「俺が連れていってやるから。帰りも必ず送る。」
「私,馬鹿だから言葉通りに受け取るよ」
「う……ん……別に構わないが………」
 四人目ゲット,かな?


「澪,今晩俺の家に来てくれないか?」
『なにするの?』
「みんなと七夕パーティーだ。茜やみさき先輩も来るぞ。」
『たのしそうなの』『いくの』
「よしよし。いい子だ。」
 みんな,澪くらい素直なら楽でいいんだがなぁ。
 とりあえず五人目っと♪


「華穂さん,今晩繭を貸して下さい!!」
「え…いえ…それはちょっと困ります…」
「今晩の七夕パーティーに,ぜひ繭を連れていってやりたいんです!!(真剣な瞳)」
 華穂さんが迷った顔をしている。俺の演技が効いている様だ。
 ならば,とどめの一言を……
「繭に,友達と一緒に過ごす楽しい時間を教えてあげたいんです!!(真剣な瞳パート2)」
「…………そうですね………分かりました。繭をお願いします。」
「はい。任せて下さい!!」
 うまくいくもんだ。これで六人そろったっと♪



 〜そして,その夜。我が家前〜

 わいわいがやがや
 結構人が集まっている。瑞佳,七瀬,茜,詩子,澪,繭,それから野郎ども。
 ただ,肝心の俺がいないので,家に入れないでいる。

瑞佳「あれ,なんでみんないるの?」
七瀬「ちょっとぉ,今日は乙女ばかりが集うパーティーじゃなかったの!!」
茜 「…詩子,騙しましたね。」
詩子「何か言ったっけ,私?」
茜 「……はぁ。仕方ありませんね。」
住井「長森さ〜〜〜ん」
沢口「里村さ〜〜〜ん」
中崎「七瀬さ〜〜〜ん」
 馬鹿どもは放っておこう………

 そんな中、みさき先輩の手を引きながら俺が颯爽と登場した。
瑞佳「あっ!!浩平,手,つないでる!!(ショック)」
川名「ここが浩平君の家なんだね。学校から結構遠いね。」
浩平「先輩の家が近過ぎるんだ!!さぁ,みんな入ってくれ。」

一同「お邪魔しま〜〜〜〜す。」

 さて,しばらくは野郎どもの仕事が続く。
住井「ほれ,南,この笹どっか適当なところに立てとけ。」
浩平「んなもん,家の中に持ち込むなぁ!!」
中崎「住井,酒はこれだけか?」
住井「あと外に樽が3つ残ってる。ビールは10ケースもあれば足りるだろ。」
沢口「笹立ててきたぞ〜♪いやぁ,床って結構刺さるもんだな。(←嘘です)」
浩平「刺すな!!」
氷上「僕は何をしようか?」
浩平「なにぃ!!住井,お前氷上の事、知ってたのか!?」
住井「いや,誘った覚えはないが………まぁいいじゃないか。細かい事は気にするな。」
中崎「それじゃあ氷上君とやら。酒を搬入するのを手伝ってくれたまえ。」
氷上「了解したよ。」
浩平「あぁぁぁぁ,家の中が………壊れていく………ぐはっ」
  その刹那、俺は、突然腹に鈍い衝撃を受けた。
 そして俺は、深い闇の中に落ちていった………



  浩平が意識を失ったため、これ以後三人称視点です。


 そんなもんで,10分もしないで「乙女達と一緒に星を見るパーティー」こと
「七夕集会〜最初につぶれるのは貴様だ〜」の準備は整った。

住井「レディース・アンド・ジェントルメン。それでは,これより
     『七夕集会〜乙女達と一緒にシューティングスター〜』を開始します!!」

 パチパチパチ

瑞佳「あれ??浩平がいないよ?」
七瀬「見つけたら,私が殺すわ………」
瑞佳「七瀬……さん……?」

住井「それではさっそく、本日のスペシャルゲスト『織姫』の登場で〜〜〜す!!」
詩子「織姫?茜の事?」
七瀬「姫といったら,乙女たるこの私以外にいないはずなのに,変ね?」
繭 「おりひめってなぁに?」
澪 『七夕のお姫様なの』
川名「ごめん,字が読めない。」

 そんな一同の前に,中崎と沢口に両脇を固められた『折姫』が登場した。。
  ジタバタしてみっともない『折姫』が……
  
瑞佳「こ………浩平?」
七瀬「何やってんのよ!!アンタ!!」

浩平「………笑うんじゃない!!俺だって無理やり……うぅっ………」

 そう,そこに登場したのは十二単衣に身を固めた浩平であった。

住井「あっはっはっはっはっはっは!!まさかここまでハマるとは……ひひひひひ………
   似合ってるぞ,『折姫様』アッハッハッハッハッハ!!」
浩平「くそっ,全て貴様の仕業だな!!これでもくらえ!!」
 そう言うや否や,浩平は手近にあった一升瓶を手に取ると,住井の口の中に流し込んだ。
 (注 20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。)

 住井は笑いと酒とで息が出来ないらしく,数秒後には動きが止まった。
 合掌

浩平「ハアハア…次に死にたいのはどいつだ……」

氷上「あれ?まだそんな事やってたのかい、折原君。」
詩子「もう、はじめちゃってるよ〜〜〜」
澪  『短冊かくの』
繭  「みゅ〜。てりやきば〜が〜がいい。」
川名「私はカレーかな〜〜♪」

  そう、浩平たちを無視して、七夕集会は既に始まっていたのである。
  完全に無視されたな、浩平。かわいそうに。

浩平「……………」
  とぼとぼと退場していく浩平の後ろ姿が、とても哀しい……


  さて、七夕集会はいつの間にか、宴会へと移行していた……
  そしてそこに訪れるのは………


  惨劇である。


  まぁ、このメンバーに酒が入るとどうなるのか、って言うのは皆さんきっとご存知でしょう。

住井「ほれほれ〜みんなもっと飲め〜〜〜俺が用意した酒が飲めねぇかぁ〜」
中崎「飲んでやるとも、七瀬さんのためならぁぁ」
七瀬「ぐすん……どうせ私は……乙女じゃないわよ……ぐすん」
繭 「みゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
澪 「………………………」(←口をパクパクさせながら大暴れしている。)
沢口「里村さん……ぼかぁ……君をいっしょ―――………」
川名「あははははははは、アハハハハハハハハハ、AHAHAHAHAHAHAHA」
茜  「………………………」(←黙ってひたすら飲む女)
詩子「みおちゃ〜〜〜〜ん。顔にお絵描きしようね〜〜〜〜♪」
氷上「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」(←意味不明)


  まぁ、こんな具合です。
  そんな中、ずっとどこかに行っていた浩平が戻ってきました。

浩平「ったく………あんなもん着せやがって……脱ぐのに一時間もかかっちまった。」
  十二単衣をようやく脱ぎ捨てた『折姫様』が、やっと戻ってきました。
浩平「はぁぁ……派手にやってくれちゃって……まぁ、片付けは長森がやるからいいが……」
  どうやら、後片付けは瑞佳に押し付けるつもりです。悪いやつだなぁ。
浩平「………………そういえば、長森がいないな?逃げたのかな?」


  その時、浩平は二階から微かに聞こえてくる歌声を耳にしました。

♪ご〜し〜き〜の〜  た〜んざく〜〜〜(←よりによって二番)

  その歌声につられるかのように、浩平は二階へとあがっていきました。

  どうやら、浩平の部屋から聞こえてくるようです。

  開け放たれたままのドアから、歌が流れてきます。


♪お〜ほしさ〜ま〜  き〜らきら〜〜♪
♪そ〜ら〜か〜ら〜  み〜て〜る〜〜♪

  部屋の中には南が刺した笹(デラックスサイズ)が突っ立ってました。
  そして窓から空を眺めながら歌っていたのは………


  瑞佳でした。まぁ、童謡と言えば瑞佳なんですが……


「何だ長森?下で飲まないのか?」
「うわぁぁぁぁ!!浩平、驚かさないでよぉ!!」
「気づかない方が鈍感なんだ。足音を消した覚えはないぞ。」
「鈍感じゃないもん!!」
「どうだか。………ふうん。珍しく天気がいいな。七夕のくせに。」
「うん、星がとっても奇麗……」
「この辺でこれだけ星が見えるのも、珍しいな。」
「……今夜はきっと会えるよね。折姫様と彦星様……」
「????まさかお前!!本気で言ってるのか!!??」
「え…………?何?嘘なの?(ガ〜〜〜〜ン)」
「ったく。たいした奴だよ。お前は。」
「信じてたのに…………」
「はぁ……(溜め息)ほら長森、こんなとこいないで、さっさと降りようぜ。」
「う………うん………」
  ちょっと、ためらいがちに言う瑞佳。きっと、ラブラブな展開を期待していたのでしょう。


  誰が書いてやるか……………ケッ……………


「ほら、行くぞ長森。」
「あ〜ん。待ってよぉ〜〜〜」

  タンタンタン
  トントントン




  やがて二人の足音が、遠ざかっていきました。



  誰もいない部屋。
  空きっぱなしの窓からは、満天の星空が覗いていました。
  そう。今日は、一年ぶりの再開の日。
  愛し合う二人の待ち焦がれた日。

  やがて、二人にもこんな日が訪れるのでしょうか。
  それは、まだ、誰にもわかりません。

  ただ、部屋の中の笹の葉には、願いを込めた短冊が一枚、下がっていました。

  それは、少女のささやかな願い。
  やがて少女が、心から願う想い。



「いつまでも、一緒にいられますように」






######################################
/*

  行くぜ季節もの!!と思ったら、先越されてました↓(笑)
  しかも、突貫工事なので中身ボロボロ………
  そういえば、今日、晴れてるのかなぁ?

*/