瑞佳とみずかと episode3 投稿者: 狂税炉
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これまでのあらすじ
 浩平が帰ってきた。が,一緒に『ちびみずか』まで付いて来てしまった。
 浩平の妹としてこの世界で実体化したみずか。
浩平は幸せな日常と思っているらしいが……
 果たして,どうなる事やら。
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私がしたことは、とても許されることじゃないと思う。
ちょっとした意地悪のつもりだったんだよ。
でもね、信じてほしいの。
あんなことになるなんて、思ってもみなかったんだよ。
それだけは、信じて。


「第3話 1人じゃない理由」


 浩平が帰ってきてから,1週間が過ぎました。
 浩平に再会した時の事は,一生忘れる事はないと思うな。とっても大切な想い出。
 私が待った分だけ,ううん、それ以上に、浩平が私を大切にしてくれてるのが分かるんだよ。
 毎日が,とっても幸せなんだよ。

 ただ…

 あの子は邪魔だと思う。


 あの子が浩平にとって特別な存在なのは分かってるつもりだよ。
 だから,私もあの子を『浩平の妹』と思って,精一杯仲良くしてきたつもり。
 それに,浩平の心の中にずっと私の姿があったっていうのは,とっても嬉しいと思うんだ。

 でも,なんて言うのかな。
今まで私がいた場所をとられた,って言えばいいのかな。

毎朝、浩平を起こしに行くのは、ただ習慣でやってたんじゃないんだよ。
 楽しかったんだ。嬉しかったんだ。
 浩平が,一日で一番最初に会うのが私。
 一番最初に目にするのが,私。
 一番最初に触れるのが,私。
 一番最初に話すのが,私。
 一番最初が,私。

 私,だった。

 それだけじゃないよ。
 放課後。
 浩平との,二人だけの時間。
 待ち続けていた間,ずっと夢見ていた瞬間。

 浩平が帰ってきた日の夜,ベッドの中で想像したんだよ。
 これからは,ずっと浩平と一緒にいるんだって。
 他の人に迷惑がかかるくらいに,ベタベタしてくっついてるんだって。
 いっぱい手を繋いで,いっぱい腕を組んで,いっぱいキスをして…

 でも,盗られちゃった。
 あの子は,私よりもずっと浩平の側にいる。

 あの子は邪魔だと思う。



 授業終了の鐘がなりました。
 4時間目が終わり。今日からは,私たち3年生は午前中で授業が終わります。

 もしかしたら,って思って外を見てみました。
 思った通り。
 あの子はまだ来てなかった。

「浩平っ,帰ろ。」
「あ,ああ。そうか,今日から午前か。」
「そうだよ。今日からは,いっぱい遊べるね。」
「そんなら,みずかに連絡入れとかないと。アイツ,時間違う事知らないから。」

 嫌な気分だった。
 浩平が,あの子の事を気にかけている事が無性に嫌だった。
 だから言ったの。

「みーちゃん,お利口だから大丈夫だよ。きっと,浩平がいなかったら自分で帰ってくるよ。だから大丈夫だよ。」
「そんなこと言っても。無駄足運ばせるのも可哀想だろ。」
「早くいこっ。絶対大丈夫だって。」

 これ以上,あの子の事を考えるのも嫌だった。
 それに,これくらい当然の報いだと思った。

 『私から浩平を盗った罪』。

 だから無理やり浩平を連れ出したんだ。
 私って,嫌な女かな?

 でも,自分の事になれば,きっと分かると思うよ。
 この気持ち。


 あの子のいない,浩平と二人だけの時間。
 何よりも待ち望んでいた,幸せな時間。

 一緒に校舎から出ました。
「今日は,何処いこうか?」
「やっぱ,商店街じゃないか?」

 一緒に商店街へ出ました。
「何か食べようよ。」
「今日は奢らねぇぞ。」

 一緒に山葉堂に並んで,一緒にワッフルを食べました。
「…練乳蜂蜜って,凄いね…」
「最後まで食えよ。『もったいないオバケ』が出るからな。」

 一緒にファンシーショップに入りました。
「浩平がくれた,ウサギさんだよ。」
「バニ山バニ夫かぁ。懐かしいな。『うっす,オレ,バニ山バニ夫』ってか。」
「あのウサギさん,今でも大事にしてるんだよ。浩平との…絆の証しだから。」
 浩平の顔が,ちょっと赤くなった。
「あっ,浩平,赤くなった。」

 消えた浩平を待ち続けていた間,ずっと夢見ていた瞬間。
 とっても,とっても,とっても,とっても,とっても幸せな時間だった。
 こんな時間が,永遠に続かないかなって思った。
 永遠に…

 気がついたら,もう夕方になってました。

 いつの間にか,公園の芝生の上に座ってました。
 あの日,浩平が消えたのと同じところ。
 二人の,一番悲しい思い出の場所。
 でも,二人の,一番大事な場所。
 浩平と寄り添いながら,真っ赤な夕日を眺めながら,私は浩平に聞きました。

「ねぇ,浩平。」
「どうした,瑞佳。」
「私とみーちゃん。どっちが大事?」

 しばらく浩平は黙っていました。
 私がもう一度言おうとした時,やっと浩平が喋り始めました。

「そんなの決められないよ。今俺の隣いる瑞佳も,ちびのみずかも,どっちも大切な人だから。」
「…そんなの…ずるいよ。」
「ずるいかな?」

 浩平は続けました。
「俺は,ずっとお前に支えられて生きてきたんだ。いつも一番近くにいてくれたしな。」
「……うん……」
「でも,それはアイツも同じだ。ずっと俺の心の中にいて,俺の事を支え続けてくれた。どっちも俺の大事な恩人なんだ。」
「……」
「瑞佳もみずかも,どっちが欠けても今の俺はなかったと思う。だから決められないよ。どっちが大事かなんて。」

 私は聞きました。
「じゃあ,私とふたりっきりの時と,3人でいる時じゃどっちが幸せ?」
「……瑞佳はどの猫といる時が一番幸せだ?」
「そんなの決められないよ。みんな大事な家族だもん。」
「それなら俺の答えも同じだよ。二人とも大切な『瑞佳』だ。」

 言い返そうと思った。「私だけじゃいけないの?」って。
 でも,それより先に浩平が言いました。

「瑞佳は知らないだろうけど,アイツも結構頑張ってきたんだぜ。みさおを亡くして絶望していた俺を慰めてくれてから,ずっと俺の事を守ってくれてたんだ。瑞佳とは別のフィールドで。アイツなりのやり方で。」
「……」
「ずっとずっと,みさおの抜けた穴を埋めようとして,頑張ってきたんだ。だから,今度は,俺がアイツを幸せにする番だと思ってる。瑞佳なら,分かってくれるよな。」

 私は,何も言えなかった。
 浩平の事,何でも知ってると思っていた。
 でも,違った。
 私の勝手な思いこみだった。
 私の知らない浩平がたくさんいる事に,やっと気がついた。

「もう,帰ろう。みずかも待ってる。」
「……うん……」


 私は浩平にとっての「特別な一人」では無い。
 やり切れない思いを抱えたまま,私は家に帰りました。
 でも,一人になって泣く暇もありませんでした。
 すぐに浩平が飛び込んできたんです。

「みずかが帰ってない!!こっち,来てないか!?」

                             つづく

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狂税炉   「どうも。あとがきです。」
ちびみずか「あとがきのけいしき,みなさんからパクるんだね。」
狂税炉   「ウッ。いや,この対話形式が一番気にいってるから…」
ちびみずか「ふ〜ん。それよりもこんかい,わたしでてないよ。ぜんこく6せんまんにんの『ちびみずかファン』にどういいわけするの?」
狂税炉   「……」
ちびみずか「ちびみずかネタづかいのあなたがわたしのことつかわなかったら,あなたのSSだれもよまないよ。」
狂税炉   「そうなのか…。でも次回は,ちびみずか一人称だから。」
ちびみずか「そうなの?だってこんかいのはなし,つづくんでしょ?」
狂税炉   「うむ。だが,話の展開に関わらず,この物語はナレーション交替制なんだ。3人称,浩平,瑞佳と来たら,次はちびみずかの番だ。」
ちびみずか「ふ〜ん。でも,ひらがなばっかりでかくの?よみにくいよ」
狂税炉   「うん。それは正直迷ってる。ひらがな,カタカナ,数字あたりはそのまま使うとしても,漢字が使えないとなぁ。」
ちびみずか「じかいまでのしゅくだいね。」
狂税炉   「…はい…」


狂税炉 「以下、前回投稿以降の方への感想です。」
ちびみずか「いつから、ひとさまのかんそうかけるほどえらくなったの?」
狂税炉 「ほっとけ!!」

> 神凪 了 様「おしらせだよ」
どんなになってるんでしょうか。
きっと、誰か死ぬってレベルじゃないですよね。

> WTTS 様 「実は初めての……」
ごめんなさい。私も元歌、一つも知りません。

> うとんた 様 「またまた替え歌♪」
誰のネタですか。詩子?(←「茜」より考察)みさき?(←「カレー」より考察)

> 由代月 様 「佐織 vol.1」
浩平と七瀬って、男同士の友情なんですか……?
佐織のドライな態度、今後どうなるのか、期待してます。

> から丸 様 「楽園」
永遠まで飛んでいく瑞佳。
……やっぱり、瑞佳って、つよいですね。

なんか最近、佐織がいろんなところで目立ち始めてるような……

> WILYOU 様 「夢幻遊歩」
くっくっくっ……「童謡、どうよう」って、……くっくっくっくっくっ…(無気味な笑い)
ところで、住井君レジャーランドって、どんなとこになるんでしょうか。
馬券付きメリーゴーランドって……?

> 変身動物ポン太 様 「う・わ・ぎ」
そうか、広瀬って、そーゆーヒトだったんですね。
「悲しい事があったんだ」には笑いました。

「一週間前の感想なんて誰が読むんだ!?」
あれだけの数の感想、頭が下がる思いです。私なんて2,3行しか書いてないのに…

> 加龍魔 様 「Pileworld 〜時の狭間で〜 第十章」
近親……。やっぱまずいっスよ。(←でも少し喜んでる私って一体……)
健気なみさおGOODです。

> 高砂蓬介 様 「茜色の姉妹 序章  胎動 ―fetal movement―」
この後いったいどうなるんでしょうか。
茜、死んじゃうのかなぁ。

> 雀バル雀 様 「彼女の事情」
だから来なかったんですね、瑞佳。
瑞佳の愛は人を不幸にするんですなぁ(しみじみ)

「あるてみす終章 『終幕』」
終わっちゃったんですか…結構好きだったのに…
ところで、今更聞くのもなんですが、FARGOってなんですか?

「女子高生 上月澪 『汚されたスケッチブック』」
このタイトル、迷わず期待してたのに…(無念)
2度として下さい。是非!

> PELSONA 様 「innocent world  【episode Z】」
改訂版という事で。
前回のと比べると、ナビゲーターのおかげで確かに判りやすいと思います。
>「結局、授業参観に出てくれなかったくせに」辺りからのくだり、突き刺さります。

> ももも 様 「浩平無用! in 絆 <22>」
ごめんなさい。前回までの展開、忘れちゃいました。
ところで、ちびみさっていいですね。

> みずか 様「茜が超能力を持ったなら・・・」
永遠ってデジョンなんですか?
そんなに司を怨まなくても…(汗)

> 浩平 様 「長森のその後」
猫なのにねずみ算とはこれいかに…なんてね。

> 天王寺澪 様 「寿司の上にも三年なの」
よくこれだけ書けると感心してしまいます。
でも、寿司は木に登らないと…ああっ殴らないでっ

狂税炉 「……」
ちびみずか「きがすんだ?」
狂税炉 「感想書くのが大変だって事、身にしみてわかった…」
ちびみずか「かんそうのわりには、いいかげんだよ。」
狂税炉 「ごめんなさい。」
ちびみずか「でも、いっかいやりはじめたら、さいごまでやりとおしなよ。」
狂税炉 「うん……ぐすっ(泣)」
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