【122】 DEMOLISHON MAN
 投稿者: から丸&からす <eaad4864@mb.infoweb.ne.jp> ( 謎 ) 2000/4/11(火)12:28
 初めて爆破したのは17の時だった。近所で騒いでいた暴走族のグループ。毎夜毎夜、人の迷惑も顧みずにうるさかったので、彼らなら殺しても罪にならないだろうと思った。部屋で作った特製黒色火薬、それをワインのボトルに詰めて合計三つ作った。深夜、かねてから探り出しておいた連中の集会場にバイクとヘルメット姿で行った。仲間が来たと思いこんでいた奴らは、俺が奇妙な間隔を空けてバイクを止めたのを不審に思ったことだろう。俺はごく自然な動作で背負っていたリュックからボトルを三つ取り出し、集合していた奴らに向かって次々と投げつけた。ボトルが投げられてから爆発するまでの瞬間、いや爆発してからも、奴らは事の重大さに気づかなかったろう。数秒後にはボトルが着弾し、衝撃から火薬は恐るべき勢いで燃焼する。重苦しい音をたてながら、ボトルは爆発した。衝撃で奴らはなぎ倒され、周囲にまき散らされた破片で大怪我を負った。三発も投げれば十分だった。着弾した跡には大きなクレーターと煙が残り、動けなくなった連中のうめき声が微かに聞こえた。俺はそれを聞いても、別に罪悪感というものを感じなかった。ただうるさい虫を叩きつぶしただけ、それだけだった。奴らが追ってきた時のために用意しておいた鉄パイプは、結局使わなかった。俺は肩の荷を降ろしたような充実感と共に、一つ息を吐くと足早にそこを後にした。
 翌日、事は大きくメディアに取り上げられた。だが警察の目は主に連中の抗争相手である別の暴走族に向けられ、俺は全く疑われることがなかった。一週間かそこら、ワイドショーなどでも大きく取り上げられていたが、時が経つにつれ大衆は無関心になった。別に関心を向けて欲しかったわけではなかったが、なんとなく気が抜けてしまった。そしてまた爆破したくなった。今度はもっと大きくやろうと、その時は思った。

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第一話「依頼された男」

 この世には光の世界と闇の世界がある。俺は陽のあたる場所で過ごしてきた、大きな仮面をつけて。俺は生まれながらにして闇の世界の住人だった。そう、生まれ落ちた瞬間から、そう決まっていたのだ。人間に対する根元的な憎しみ、それはごく自然に沸いてきたものだった。自分以外の人間がどれだけ傷つこうが死のうがどうでもよかった。それは神から与えられた免罪符だったのだ。17の時、初めて人を殺した。後の報道で知ったことだが、その時は五人死んだらしい。別段、心地よかったわけではなかった。ただ底知れぬ充実感があった。破壊すること、殺すこと、それが俺の転職だったのだ。
 両親に捨てられてからの25年間。俺は人を憎み続けた。それでも人の中で生きてきた。どんなに人が嫌いでも、人は人の中でしか生きることはできない。それは俺がこの世にしいた妥協案だった。
 今日の仕事も、そんな人に依頼されたものだった。なんのことはない、暴力団同士の抗争。ターゲットは依頼してきた組と敵対している組の幹部だった。依頼主とこちらの関係を抹消するために、詳しい事実は聞かされない。俺には攻撃目標だけが知らされるだけだ。俺自身も暴力団の事情などに興味はなかった。仕事料は三百万。俺が指定した口座に振り込まれる。俺にはそれだけでよかった。
 人気のなくなった深夜、俺はターゲットがねぐらにしている事務所の車庫に来ていた。警戒にあたっている者もいない。俺はやすやすと車庫まで近づくと、工事現場で使われるような手動の万力を使って数十センチにも満たないちょっとした隙間を作った。そこにスプレーを発射して、なにも探知機らしきものがないことを確認してから、ようやく頭だけを中に入れる。中には高級車が入っていて、それ以外は特別視するようなものは何もない、いたって普通の車庫だった。俺はさっきのようにスプレーを使い、今度は辺りにまき散らした。すると侵入者を拒むように、×印に赤外線探知レーザーが引かれている。俺はそれをくぐり抜けると、高級車に近寄った。
 仕掛けはすでに用意してあった。自作したH型の試験管。中央の最も大きい部分には燃焼性の高性能爆薬、早い話が焼夷弾が詰め込まれていた。そして栓をされて中央から遮断されて入れてある両側の試験管には、混ぜ合わせると激しく燃焼して爆発する液体が流し込まれていた。これを振り子式にして取り付けると、車がある一定の速度で走行して停車すれば、慣性の法則で試験管が左右に振られ、両側の液体が中央に流れ込む。それを信管として中央の焼夷弾が爆発。強力な熱線が車を焼き焦がし、オーバーヒートしたエンジンが爆発炎上。完璧な筋書きだった。
 俺は細心の注意を払って試験管から栓を抜き取ると、車の下に潜り込んでちょうどエンジンの真下にくるように仕掛けを取り付けた。ほんの少しの速度では起爆しないようになっているので、しっかりとターゲットを燃やしてくれるはずだ。
 万事はうまくいった。俺はきびすを返し、再び赤外線探知レーザーをかいくぐって外に出た。それまで活躍してくれていた万力を取り外してシャッターを閉めると、俺は急いで夜の闇の中に消えた。

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 翌日、部屋にいた俺は夕方のニュースで万事がうまく運んだことを知った。
 組員の幹部を乗せた車が交差点で爆発炎上。運転手は即死、後部座席に座っていた者は重傷を負って病院に運ばれたが、全身火傷で間もなく死亡。警察は暴力団同士の抗争と見て捜査を始める方針・・・。
何もかもうまくいった。これで俺の口座には成功後の報酬として残りの150万が支払われる。ターゲットは死に、俺は儲かった。底知れぬ充実感に思わず叫びそうになったが、それはなんとか押さえて、その日のニュースを余すところなく楽しんだ。その後は配られてきたその日の夕刊を、スクラップするのに忙しかった。

<第一話 終わり>
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 どんどんぱんぱ〜ん!新連載です!
 はい!今回の主人公は犯罪者です!第一話、いかがでしたでしょうか。今回は主人公の紹介みたいなものです。後からもっと詳しい話になってきますので、アクションばっかりではありませんよ。それでは、から丸&からす!気張って執筆したいと思います!では!