出来損ない 第三話  投稿者:から丸&からす


 闇の晴れる瞬間を、どれほど待ち望んだことでしょうか。
長い長い年月をこの日のために耐えてきたというのに、この者は選択を迫るのです。
 ドアは大きく開かれ光が射しているのでしょうが、解放者に遮られてこちらにはまったく届きません。 
 悠然と佇む解放者は微動だにせず、ただこちらの回答を待っています。
 しかし、まだよくわかりませんでした。光は、光で。救いは、救いなのではないのでしょうか? 
 光の下に出て神に感謝を捧げれば、救われない者などないのではないのでしょうか?
 耐え続ける日々の中で、これほど考えたことはありませんでした。
 しかし部屋の中の闇が!大いなる闇までもが! まるで決断を急がすかのように試験管にまとわりつくではないか?
 守ろうとしているのか、遮ろうとしているのか。知る術もない。
 まさに今できることは、早急に、発狂せんばかりの咆吼をもって意を示すしかない!
「外へ!!」
「おお!」
「光を!!」
「うむ!」
「私を、連れ出せ!!」
「ならば!」
 解放者は迫りました。そしてその大きな手を試験管の中に突っ込むと、ずるずると無造作に私を這い出させた。
「おお!生まれながらの出来損ないよ!その足は歩くこともままならず、その手は掴むこともできぬ!
 眼孔は醜く歪み、もはや見ることもかなわん!それにもましてその恐ろしい姿! お前はそれでもこの闇から這いだして、神の光を欲すのか?」
「欲す!!」
「よくぞ!」
 解放者は私を支え、出口まで連れていきました。
 闇に射し込む光が眩しく、外を見ることはかなわなかった。
しかしそれも束の間、今すぐに光溢れる神の大地へと誘われることだろう。
「行くがよい!まさしくここは神の領海にして約束の地!お前はその体を引きづって、神の祝福を受けるがいい!!」
 出来損ないは闇の外へと放り出され、熱く射す光に照らされました。
 解放者は姿を消し、自分には手も足もなく、闇に還ることも許されない。