第１編「魔法使い」

　まだ部屋の明かりにランプを使っていた頃の時代、
ある人里離れた山の中に一人の魔法使いが住んでいました。
　その魔法使いは若いときから魔法の道を志して
ずいぶん前からその山を住処にして魔法の修行をしていました。
そして魔法使いが魔法の道を極めるころには、
すっかりおじいさんになってしまっていたのです。
　魔法使いはおじいさんになってしまってからも鍛錬を怠ることはなくて、
いつまでも山をおりずに魔法の修行をしていました。
　しかしおじいさんの体の自由がだんだんと失われていったときに、
おじいさんはやっと一人でいることに寂しさを感じはじめてきたのでした。
でもおじいさんは山をおりることができません。下界の生活を捨てて
もうどれほどの時間が経っているのでしょう、
世界がどれだけ変わってしまったのか
おじいさんにはわかりません。自分がどれだけ変わってしまったのかも
おじいさんにはわかりません。おじいさんは怖かったのです。
　でもある時、おじいさんにそれまでの生活を一変させる事件がおこりました。
ある時、おじいさんがいつものように自分の住んでいる小屋を出て
野いちごを採りに山の一角である林を通りかかったときに、おじいさんは
誰のものかわからない人間の白骨を見つけたのです。
「おう可哀想に、きっと転んで頭を打ったか木から落ちでもしたのだろう」
　おじいさんは魔除けの印をきってその場を立ち去ろうとしましたが、
ふとそこで足を止めてしまいました。そのまましばらく考えてから、
おじいさんはその白骨を残らず抱えて自分の小屋へ持って帰りました。
　そしてその夜、おじいさんは小屋の地下室の中央に描いた
魔法陣の中央にその白骨をゆっくりと並べました。
　地下室には装飾が施された燭台が並べられ、
グラスの中にはワインが満たされています。
　おじいさんは黒いガウンを身にまとい、
左手に魔術書を持って腰にこれも柄に装飾が施された
大剣を携えて魔法陣のたもとに立ちました。
「・・・・・！！！」
　おじいさんはその小さな体からは想像もできないほどの大きく、
張りのある声で呪文を唱えました。
　地下室に荒れ狂うような風が吹き、
それは魔法陣の中央に収束されていきました。
魔法陣の中央には煙が現れ、それはしばらくして何か意志のあるようなものと
してうごめき始めました。
　やがて煙は何かの形に収束していきます。風も止みます。
そして中央に横たわる者の姿が明らかになりました。
「おお・・・！」
　おじいさんもこの魔法に挑戦するのは初めてでした。
しかし魔法への興味もこのときばかりは消え失せ、その焦点は魔法陣の
中央に現れた者へ注がれていました。
魔法陣の上からは白骨がなくなり、
代わりに小さな女の子が横たわっていました。
おじいさんは悪魔に退去の呪文を与えると、すぐさま女の子に近寄って
抱き上げました。
「成功だ」
　年の頃１２、１３ぐらいの女の子が一糸まとわぬ姿でおりました。
しわだらけになってしまったおじいさんとはまったく違い、
その肌はきめ細かくすべすべとしていて、
まるで生まれたての赤ん坊のようでした。
「ん、目を開けないな、しっかりしろ・・・」
　おじいさんが女の子を揺さぶってみると、女の子はすうっと大きく息を
すってぱちぱちとその大きな目を開きました。
「大丈夫か？」
「みゅー・・・」
「ん、大丈夫だぞ、よしよし・・・」
　おじいさんが頭を撫でてやると、女の子は嬉しそうにして目をつぶりました。
「みゅー♪」
　今度はおじいさんの髭が気にいったらしくさわさわと触れた後に
顔を擦り寄せてきます。
「おー、よしよし・・・」
　おじいさんは髭で遊ばせるままにしながら、
その子を抱きかかえて地下室を後にしました。

＜第一編終わり＞
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から丸「新連載〜♪」
からす「盛り上がるな」
から丸「今度は童話なのだ！」
からす「いつもと同じじゃねーの？」
から丸「繭ちゃんは初めて書くのだー！」
からす「ふーん」
から丸「これもそこそこにまとめるつもりなので皆さんどうかよろしく・・・」
からす「誰か読んでるのかね」
から丸「読んでくれる人のために書くのだ！」
からす「文才がありゃあね・・・」
から丸「ふんだ、駄作だって書かないよりはましだい」
からす「書かない方がましってこともあるけど」

大喧嘩

から丸（流血）「それではお後がよろしいようで・・・」
からす（吐血）「ごほっ」