未来  投稿者:から丸&からす


からす「おい、わかりにくいという感想が殺到してるぞ!?」
から丸「腹を切ります」
からす「全部書き終わってから死のうね?」
から丸「・・・」
からす「つまり・・・当初の予定では南が過去に
行くというものだったんですが・・・」
から丸「序盤にダークな雰囲気を出しすぎたので、
それを壊せなくなってしまい・・・」
からす「結局、南が断片的に過去の記憶と
対面していくという形をとったわけです」
から丸「第四話に出てきた人物は紛れもなく茜です・・・」
からす「悲しい、わざわざこんなもん書かなきゃいけないのが悲しすぎる」
から丸「では第六話をどうぞ・・・」


第六話「分岐路 <前編>」

 真っ暗だった教室の様子が一変していた。
真夜中のはずなのに外には太陽が真上から照らし、明るい光を
室内に送り込んでいる。人気のなかった教室の中には制服を着た男女の
生徒たちがあちこちでグループを作って弁当を広げたりしている。
 そして廊下側の席の一つに・・・周りと同じように制服を着た、
少年の俺がいた。
 少年の俺は学食であらかじめ仕入れてきていたらしいパンを机の上に出して
なにやらぶつぶつと言っている。そして中年の俺はというとさっきから
ずっと窓枠に腰掛けたままなのだが、周りの生徒達はどう考えても
場違いでしかない俺の存在に見向きもしなかった。
いや、おそらく見えていないのだろう。
黒板を見てみると今日の日付が書いてある。 

 9月20日
 人類は滅亡しませんでした 配当 0円

 ・・・あれを書いたのは他でもない俺である。
20年前に世界が滅亡するとか言っていた予言者の話題で、その期限が
過ぎた頃に落書きしたのだ。
「さ、里村さん・・・」
 俺が呆然としている間に、20年前の俺は席から立ち上がって
後ろの里村さんと向き合っていた。
「里村さん・・・あ、あのさあ」
 そうだ。俺は偶然手に入った里村さんの隣接席という特権を利用して
何度となく彼女と昼食をご一緒できないかと名乗り出たものだった。
大抵は・・・というか全部失敗した。討ち死にした後、一度やけになって
折原と大食い合戦を繰り広げたこともあった。しかもそれにも負けた。
「・・・嫌です」
「う・・・まだ何も言ってない・・・」
「嫌です」
 そこまで嫌がらなくても・・・と、はたから見ていても思う。
今考えてみれば彼女は馴れ馴れしい男が嫌いだったのかも知れない。
それにしても冷たすぎる、我ながら見ていて哀れだ。
 がたっと椅子が引きずられる音と共に里村さんが席から立ち上がった。
どうやら別の場所で食べるみたいだな。というよりは俺から逃げるみたいだな。
「ああ、里村さん・・・」
 哀れ、俺。
「南、お前もう諦めろよ」
 近くで見ていた悪友がなだめようと声をかけるが、それを聞いて俺はさらに
いきりたっているようだ。
 こんなことで負けるか!と心の中で決心したように机の上に置いてあった
学食印のパンを担いで廊下に走り出る。どうやら里村さんを探すようだった。
 そういえば、一度だけ逃げた里村さんの居場所を突き止めて
一緒に昼食を食べたことが・・・あったようななかったような。
 20年前の俺を追って、俺も教室から出た。廊下はやはり人通りが多かったが、
誰も俺に注意をとめない。
 20年前の俺は近くを通りかかった生徒に
里村さんを見たかどうか聞いているようだ。
「よし!」
 20年前の俺が歓声を上げて走り出す。俺もその後を追った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 中庭で弁当をつついている里村さんを発見するの
にさほど時間はかからなかった。
この季節であれば外で昼食をとる生徒も少なくないので辺りには
いくつかのグループが点在していた。
 中庭の中でも特に大きな木の下で小さなお弁当をつついていた里村さんの元に、
20年前の俺は走り寄って行った。
「や、やあ・・・」
「・・・・・」
 里村さん・・・もう逃げようともしない。
「と、となり、いいかな?」
「・・・嫌です」
「ぐ・・・じゃあ、隣の隣ぐらいで・・・」
「・・・嫌です」
「わかった。1メートルは離れよう」
「・・・・・」
 お、どうやら里村さんが根負けしたようだ。
 20年前の俺はぎりぎり1メートルの距離をおいて里村さんの隣に座った。
「・・・・・」
「・・・・・」
 気まずい沈黙が支配する・・・おそらく20年前の俺の頭の中には、
適当な会話のネタがぐるぐる回って浮かんでは消えているのだろう。
「い、いい天気だね・・・」
「・・・曇ってます」
「そ、その卵焼きおいしそうだね・・・」
「・・・塩を入れすぎました」
「・・・そうそう、このカツサンドは新製品で」
「添加物に有毒物質が混ざっていたと、昨日の夕刊に載ってました」
「うう・・・」
 泣くな!泣くな俺!!
 そう言えば、だんだんと思いだしてきた。
かつて一度だけ、里村さんと一緒に昼食を食べたことがあったのだ。
そしてその時は後にも先にもこれ以上はないってほどの強烈なあしらわれ方を
されたのだ。
「ね、ねえ里村さん、今日の放課後・・・ひま?」
「・・・嫌です」
「く・・・あのさ、俺はひまなんだけど、よかったら一緒に」
「ごちそうさまでした」
 聞く耳持たないというように、里村さんは弁当箱を片づけると
さっと立ち上がって校舎の方へと戻っていってしまった。
「ああ、里村さん・・・」
「・・・食べ終わらない内に立っては、行儀が悪いですよ?」
「う・・・」
 そして俺は食べ終わっていなかった。
「うう・・・」 
 泣くな!泣くな俺!!
 結局その後はぼそぼそと一人で昼食を食う羽目になった。
辺りには弁当を囲むグループの他にバレーボールなど持ち出して
遊び始める者が出てきた。どちらにしてもやや女子生徒が多めで、
20年前の俺は同情したくなるほど浮いていた。
「く、くそぉ・・・」
あ・・・泣いてる。

<前編 終わり>
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から丸「北へ南へ東へ西へ・・・」
からす「急に雰囲気が変わってきたな」
から丸「ペンチで親不知をひっこぬき・・・」
からす「どうも、ここまで読んでくださった方に感謝の言葉を述べさせて
いただきます」
から丸「ありがとうございましたー・・・」
からす「もうそろそろ終わりかな?これからどうなるんだ?」
から丸「まあ、それなりに・・・それでは・・・」
からす「・・・ずいぶん手短ですが、から丸は創作意欲が限界ですので
もう限界です。それでは」
から丸「とっぽじーじょ」