人魚姫 投稿者: から丸
第七話 「木の幹で蠢く糸・後編」

親衛隊の追撃を振り切ってから、護 留美 詩子の
三人はうち捨てられた小屋を捨てて城下裏路地に位置する
一軒の安宿に隠れ場所を移していた。
 その中で、護は城の構造を思い出すという作業に没頭していた。
 周辺の地形から堀、城壁と順に書き出し時々屋上に駆け上がっては遠くに高く
そびえ立つ城を見やってその外形から城の内部を推測しつつ
その明晰な頭脳に刷り込まれた記憶を手繰り寄せていった。
「はるか時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で」
 黙々と作業を繰り返しながら、護はなんとなく昔好きだった
詩人の歌を思い出していた。
「唄いつづけられる 同じ人類のうた・・・」
 なぜそれを今思い出したのかは、本人にもわからなかった。
「書けた?」
 男装した留美が入り口の戸を開けて入って来た。
そこいらに持って帰って来た荷物を無造作に置いて、護の作業を
覗き込んでくる。
「罪を信じる 人の心を・・・」
「・・・なに言ってるの?」
「いや、なんでもない」
 つい自分の世界に浸ってしまっていたことに軽く羞恥を感じながら、
護はそれまで取り付かれたように動かしていたペン先を操る腕を止めた。
「取りあえず手に入る物は買ってきたわよ」
 留美がそこらの市場で購入してきた物の中には衣類や食料といった日用品の他に
小刀、麻縄といったちょっとした作業をするのに必要な物が紛れていた。
しかしそれも留美のいでたちから見れば商人の使い走りが親方に
言われてお使いに来たとしか見えないだろう。
「でも、さすがに剣や鎧を手に入れるのは無理よ。
派手なことをするのに必要なものもないわよ?」
「武器やなんかは俺が盗賊ギルドに預けてあるもので
足りる。お祭り道具の方は俺が手を回しておいた。心配するな」
「ふぅん・・・」

 留美が帰って来るよりも少し前の夕刻の頃、隠れ家を詩子に任せて
護は中央の大通りから少し離れた下町と邸町との境目辺りに位置する
別名「魔道師通り」と呼ばれる街路に出ていた。
護は黒いマントを頭からすっぽりと被っていたが、その名の通り
魔術に通じた者達が多いこの通りではさほど目立つこともない。
 護はその通りの一角にひっそりと立つ一軒の、さほど大きくもないが
やや年季の入った館になんの前置きもなしに入っていった。
「蓬(ほう)!」
 それは人の名前であるらしかった。護がそう叫ぶと何者かが
奥からのろのろと姿を現した。
「護か・・・」
 その鈍い動きと背の低さからすれば、その男がかなりの年輩で
あると推測できたであろうが、声の太さがそれを否定しているようであった。
肌を一切覆い隠してしまうような服はその顔のほとんども覆って人相を
伺わせないが、かろうじて外気に触れるその瞳は薄闇のなかでも
ぎらぎらとした強い眼光を発していた。
「まあ、上がれ。茶でも飲むか?」
「・・・」
 護は蓬に従って館の奥へと踏み込んでいった。
調合中なのか、辺りには強い薬品の匂いがたちこめていた。
「・・・爆薬がいる。破壊用の」
「まあ、待て」 
 こぽこぽ・・・とすっかり錆び付いたやかんから緑色の茶が
注がれる。護は据えられた椅子に腰掛けもせずにそれを眺めていた。
「それでなにをする気か知らんが、のう護よ」
「なんだ」
「きっとそこには、お前の幸せはないよ」
「・・・」
「今のお前は、その役目も帰る家も失ってしまった亡者
でしかない。今のお前にできることはただ一つ、
役目を思い出して、主に詫びることだ」
「・・・貴様、占い師だったか?」
「わしは一介の錬金術師でしかないが、こんな生業を
やっていると色々覚えるものだ」
「占い師に用はない」
「・・・護よ、わしにお前を止めることはできないが、
ただ真実を見失うな、心の盲目は最も恐ろしい病・・・」
 しゅ!
 護は恐るべき速さで剣を腰から抜き放つと、
蓬の胸にその切っ先を押し当てた。
「私を貫いたとしても・・・おぬしの運命は変わらんよ」
「黙れ・・・」
「ほれ・・・おぬしの腰元を見てみぃ」
「!?」
 そう言われて始めて、護は腰に重みがかかっているのを自覚した。
蓬の側から飛び退くと、腰にまきついている袋を取り出す。
「導火線も入っている。六つの袋に別れているから、絶対に取り落としたり
分解したりするなよ」
 袋を開けて確かめることを、護はしなかった。
「・・・すまない」
 それだけ言うと、護はきびすを返して館の出口に向かった。
「さらばだ。護」
 蓬が低く呻くのが、護にも聞こえていた。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・

「城にはまず堀が一つ、その向こうに城壁が城全体を取り囲んでいて
それを越えられたとしても斜面の上にそびえる天守閣にはもう一つ
城壁を越えなければいけない」
「・・・城壁を越えるのかしら?」
「それは無理だ」
護達は再び前の小屋に戻ってきている。
その中には元からいた留美 詩子の他に酒場でたむろしていたならず者数人が
傭兵として加わっていた。その中にはかつて護と共に戦い、今は
除隊もしくは解雇になった切り込み隊員の姿も見られた。
「この人数で正攻法はないだろ?」
 傭兵の一人が当然の意見を口にする。
「当たり前だ、俺達が用いるのは奇策中の奇策さ」
 護がぎょろっと見開いたその相貌で全員を眺め回す。
「いいか、よく聞けよ・・・」
 護はその計画を計画に加わる者全員に明らかにした。
天へと差ささる城壁に守られ、何千人とも思しき戦士達が潜む
折原王子の居城を、この大胆不敵な男はほんの十数人という
少数で相手にしようというのだ。
 だがそこにいた傭兵達、ならず者達が青ざめていたにも
かかわらず、古くから彼を知る元切り込み隊員達は彼に
絶対の信頼をおき、計画を疑いもしなかった。
 その中にはこの作戦に参加、ついには生還してその後国外亡命、
その後生を作家として過ごした晋という男がいた。
彼は後々この物語を小説として残すが、その中でこう語る。
「護は悪魔のようだった。まさしく運命を司る邪神であった」と。 
 
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ヤーンの水晶球
 それには折原王朝の起源から現在に至るまでのありとあらゆる
秘密が隠されているという。
 その存在を知る者は少なく、王家の血を引く者と水晶の守人とされる
限られた魔術師達だけであった。
それを使えば王朝の威信を地に落とし、国家を揺るがすことすら
可能であったろう。
 そして護が持ち去ろうとしたのはまさにこれだった。
いや、彼は水晶のありかを突き止め、それに肉迫するに至ったのだが、
彼がそれを持ち出すことはなかった。
 彼は城の地下に位置する宝庫の中で水晶に触れて佇んでいるところを
追撃してきた衛兵達に発見されたのだ。それから脱出を試みるも
城壁の上で約214名の兵士達に囲まれ、外の世界まで後一歩というところで
捕縛された。
 彼が水晶球の内部を知っているのか、知っていないのか。
 どちらにしろ彼に生き残る道はなかった。浩平の父王は
城の内部に対しては、同盟国に対する外交上の秘密文書が盗まれかかった、
と発表し、城下にはさらに適当なふれを出して真実を闇へと葬り、
当の護には考えられる限りの拷問を加えた後あの地下牢獄で
水牢につかせた。
 そして護は生還してきたのだ。

「護・・・」
 浩平の腕の傷は深く完治するにはまだしばらくかかると、
医者には通告されていた。
「・・・」
 しかし傷のことなど思いにも留めず、浩平は感慨に埋もれていた。
あの変わり果てた姿が護であると確信してから、浩平の中には
多くの思いが浮かんでは消え、まとまらない思考が浩平を苛立たせた。
 護と浩平・・・彼らが出会ったのはまだ二人が
7,8歳ぐらいの幼児の時分であった。切り込み隊長の息子として
そのころから兵の訓練所に出入りしていた護は偶然浩平と出会い、年が近い
こともあってすぐに意気投合し、そのころから木剣を振り回して遊んでいた。
 やがて大きくなると、護はその剣の頭角を見せ始めて
訓練生の中でも有数の腕前となった。だが少年期の彼は何故か男であれ女であれ
ともかく人を寄せ付けず、剣の腕から護を尊敬していた浩平も
そのことで彼が心配でならなかった。
 そして護は戦場に出て行き、会うことも少なくなった。
そしてあの事件が起こった。
「何を考えて・・・?」
 浩平は生きていた親友に想いを巡らしていた。
 ・・・敵国のスパイだったか。それとも単なる力試しのつもりだったのか?
 理由はわからない。だが浩平には、護がもう一度自分の前に現れるのでは
ないかという予感がしていた。
「護よ・・・お前は・・・?」
 浩平の予感は当たっていた。彼と護はもう一度相まみえることになるのだ。
だがそうなってからでは全てが手遅れであることに、浩平は気づいていなかった。
彼こそが折原王朝と浩平自身に対して訪れる惨劇の源泉であるなどと
その時の浩平に知る術はなにもなかったのだ。

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 ば ば ば ば〜〜〜ん!!(ベートーベンから運命)
 ば ば ば ば〜〜〜ん!!

 人魚姫の影がうすーい!
 
 ば ば ば ば〜〜〜ん!!
 ば ば ば ば〜〜〜ん!!

護が目立ちすーぎ!

 ば ば ば ば〜〜〜ん!!
 ば ば ば ば〜〜〜ん!!

展開の無理がたたってもう腰痛!

 ああ、もう疲れた・・・
 宿題やんなきゃいけないのに何故小説ばっかり・・・
 ああ!でも手が、手が勝手に!学年主任、留年させるなら
 俺の手だけ留年させてくれ、一本なくてもなんとかなるから・・・
 って、え、なに?・・・わああああ!!く、く、来るなぁぁぁぁぁ!!

 >雀バル雀さん
 ・・・ベル*ルク?
 あっははは、実は塔のシーンはあれがモデルなんですねえ。
 
いや、ごほんごほん!!
 うあああああ、電波が、電波がちくしょう! 
 後書きくらいまともに書こう!
 
からす「えーと、から丸は電波に祟られて少し暴走気味ですが
     たったいま全裸で東京タワーまで走りましたので
     次の投稿にはまともな精神を用意出来ると思います・・・。  
     この話もやや長くなりましたがクライマックスまでもうちょっとです。
     読んでくださってる方・・・ありがとうございます。
     感謝の言葉もありません。では、なんとか最後まで書ききりますので
     終わりまでよろしく・・・それでは」
 
 から丸(置き手紙)「ウィルソンニンダー・・・」
 
 ピーポーピーポー・・・