人魚姫 投稿者: から丸
第六話「木の幹で蠢く糸・前編」

「塔のたもとが燃えている・・・」
 城下町の一角、巨大な聖堂が連なるこの辺りの中でも特に
高い時計塔の頂上から、茜は先ほどまで護や留美が浩平と
その親衛隊達とを相手に大立ち回りを演じていた塔のふもとを
見てそう呟いた。
「鎖を破りし獣は赤い炎と共に産声を上げる」
 誰に聞かせるでもなく、暗唱するように茜は呟き続ける。
それは茜が目下に見える城下に向かってなにかの啓示を
行っているように見えた。
「獣は使者と走り、城を目指しては主と斬り結ぶ」
 茜は目を細めてその饗宴の後を見ていた。その目に浩平の負傷や
魔剣の復活が見えるわけもないが、茜はそれらを見通すかのように
その光景を目に映していた。
「みゅー」
 時計の中に住み着いていた鼠とじゃれていた繭が茜に声をかける。
「・・・馬の世話をしないといけない?
 そうですね、戻らないといけませんね」
不意に、一陣の風が吹いた。風は真っ直ぐに下がっていた
茜の髪の毛をぶあっと横になびかせそれでもまだ足りないというように
ごうごうと茜の身と時計塔とに吹きつけた。
「・・・・・」
 それがどこから吹いているのかすら、茜は知らなかった。

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 護は考えていた。あの永遠とも思えるほどに長かった牢獄生活から
抜けだし、やっと外に出られたと思ったら今度は間髪入れずに
血の匂いを嗅ぐことになってしまった。その成り行きを深く考えると、
護は運命の巡りの強い表れを感じずには居られなかった。
 全てが自分の出現と共に、必ず誰かが血を流し誰かが倒れる。
死体の山が築かれ、その果てに動乱と変革がある。
 まさしく、自分が巨大な運命そのもののように、護には思えた。
 これは天が自分の躍動を加護しているものとしか、護には思えなかった。

 王子に斬られた首の傷がずきずきと痛む。
 もう少し深ければ確実に頸動脈を切断されていたろうその傷は、
魔剣がもたらす修復能力をもってしても早々には癒えなかった。
 それにどれだけ傷が早く治まろうと、減ってしまった血は早々に戻らない。
 護はふらふらと、全速力とはほど遠い速度でこの混乱の中を
走り、兵隊達に捨てられたであろう馬を目指した。
 先に離脱したはずの蒼髪の女と詩子は無事に逃げおおせているだろうか。
「はあ、はあ、はあ・・・」
 戦闘の輪から外れて放って置かれている馬を発見すると、
素早くその背にまたがった。
 鋭く馬がいななく。
 主が異なっているのに気づいたのだろうか?
それとも俺の邪悪な気を読みとったのか?
 護はそんな考えにふけることなく、手綱で無理矢理に方向を転換させると
腹を蹴って馬を走らせた。
 ぴゅんぴゅん、と目ざとい兵隊がそれを見つけてボウガンで狙ってくる。
「なんのなんの・・・」
 夜闇の中で飛び道具が無力だと言うことは三歳の子供でも知っている、
と護は頭の中でほくそえんだ。
そのまま護は行きずりの馬を駆って、闇の中へ消えていった。

 留美と詩子はそれぞれがうまいぐあいに馬を手に入れ、
早々に追っ手をまいてしまっていた。
 枯れかかった木々が両手に並ぶ、真っ暗な夜の闇をさらに濃くする
林道を留美と詩子は駆け抜けている。
「あいつは、無事に逃げおおせたかしらね」
「大丈夫、あいつは殺しても死なないし、死なないと殺されないから」
「・・・・・」
 親友のよくわからない思考形態は無視して、留美は
馬にむち打って速度を速めた。三人が落ち合い場所に定めたのは町外れの
小さな監視所、大田園に近いその小屋はかつて害虫や獣の
出現を監視するための、もしくはそれらを排除する者が詰める
場所だったのだが、今は使われていない。
「闇が・・・深いわね」
「そうだね、暗いね」
「もうそろそろ夜が明けるかしら」
「うん、もうそろそろじゃない?」
「そう・・・」
 留美は馬を駆った。両側の並木がこちらの動きと合わせて後ろに
飛び去っていく。しかし留美にはそれがこちらの意志とは関係なく
ただ自分の脇をすり抜けて行っているだけのような気がした。
「森を抜けるね」
「うん・・・」
 留美の感慨とは関係なくやがて並木は尽き、目前には見渡す限りの
田園が広がっていた。それはひらけた地形ではあったけれど
さっきの森の中とは違い、何もない感が強く強調されて
むしろもの悲しく感じられた。
 
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 小屋に駆け込み、詩子が留美の背中の傷を手当をしているところに
全身血塗れの護が倒れるように駆け込んできたとき、二人は思わず
護が死んでしまったのではないかと思った。
「死ぬかと思った・・・」
 床に転がり、ひひひっと喉を鳴らせて見せる護は
幾分だが感情が高ぶっている様に見えた。
「というかあんた、死んでるんじゃない」
「もしかしたらそうかもな」
「大丈夫。もしそうでも驚かないから」
 それもどうかと思うが、と詩子の意見を聞いた二人は思った。
「それより・・・これからどうするの?」
「城に潜入するんだな」
「なにか策はあるの?」
「俺を誰だと思ってる・・・」
 護は馬鹿にするような目つきで二人を見やった。
詩子はきょとんと、留美は疑うような目つきで護を見ている。
「もちろん時間の関係でたいした事はできないけどな。
 とりあえず王子とお目通りすることはできるだろう」
「・・・計画を聞かせてもらおうかしら」
「よし・・・」
 小屋の中で三人は誰にも知られることなく密談を
繰り広げた。決行に必要な物は人員、武器、耐寒用の服、爆薬・・・

<前編 終わり>
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 今回は短い!短い!短い!短い・・・(エコー)
 場面がくるくる変わって大変!大変!大変・・・(エコー)
 ってなわけで感想!感想!感想!感想・・・(エコー)

・Another story of ONE −澪編 はなじろさん
 そんなひたむきな澪が好きさー!
 でも罵詈雑言ってなにさー!?気になるさー!

・ピーターパン はにゃまろさん
 いつもながらはにゃまろさんの作品は独特さー!
 繭と浩平がさいこーさー!なんかおとぎ話さー!はまるさー!
 
・歌姫のティータイム 第二話 高砂さん
 はじめまして僕の名前はから丸!!
 さあ、僕の名前は聞いてから2秒で忘れないと不幸になるぜオッケイ!?
 ジョークさ!
 オリジナルさー!描写がとっても丁寧さー!
 主人公がさぞや美少年なんだろなー?じゅる
 どういうお話になるんだろなー?浩平はどんな存在なんだろなー?
 先が楽しみさー!

・・・高校生が18禁やっちゃだめじゃん!
 中学生が同人誌買っちゃだめじゃん!
 うう、ごめんよ高砂さん。
 おいらが初めて同人誌買ったのは中坊のときでさ・・・
 ふふ、昔の話さ・・・

・そうだ、ぜったい。 矢田さん
 
 僕の南森は計算高くて抜け目ないやつさー!
 暗い過去があるのは中崎さー!
 解釈は人によってほんとに違うものさー!

・折原VS七瀬 第一戦  楓鳥さん  
 たまには俺も女の子と弁当食べたいよう・・・しくしく。
 一人非常階段で食ってたら男と鉢合わせしたよう。
 嬉しかったけど悲しかったよう。飯食う時くらいけーたいは切れよう。
 あ・・・感想になってない。ごめんなさい。

・佐織 vol.5 由代月さん
 恋する女の子は無限の力を秘めているさー!
 いらないって言われても感想かくさー! 
 出だしの制服バレーは目に浮かぶようだったさー!
 キャラが生きてるさー!先が楽しみさー!

・ONE〜輝く季節へ〜始まり…その16 ここにあるよ?さん
 ・僕も修学旅行行くさ〜!
  北海道さ〜 !あゆに会ってくるさ〜!
  世間話しただけさ〜!長編には感想控えさせてもらうさ〜!
ごめんなさい、失礼します〜。

・茜 PELSONA
 大ファンさー!大好きさー!
 すごく見事な詩で言葉もないさ!
 まるで引き込まれるようさ!見事さ!
 
 から丸「はあ、はあ、はあ・・・こ、これは感想と言えるのか?」
 からす「知らん」
 から丸「おう、アシスタントのからす君、今までどこへ行ってた?」
 どろん
 から丸「おう!?消えたさー!なんだったんだ彼は!?」
から丸「人魚姫はなんか勢いで連載中さー。読んでくれてる人はいるのかなー?
     不安さー。後4,5話くらいさー。次の長編を書きたいさー。
     でも同時進行はできないさー。
     それじゃこの辺で・・・」