親しき仲にも……(完全版)
投稿者: 北一色  投稿日: 2月18日(金)19時57分
注1:これの最後の元ネタがわかる人は、多分私と同年齢です。
注2:私はそれの題名を全然覚えていません。
注3:本作では、長森瑞佳の性格が微妙に、広瀬真希の性格が思いっきり変わってま
        す。マキマキファンは、覚悟をキメてから読むか、いっそ読まないで下さい。
        こんなマキマキもいいんじゃないかなぁ、って私が勝手に思ってるだけですの
        で。
注4:本作は、私の過去のSS「失われた記憶」を引き継いでいるような、その前の
        話のようなカンジです。知らなくても、かなり独立した話なので、支障はない
        はずです。

  では、どうぞ。

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「もう!  浩平の事なんか知らないもん!!」
「くそっ!  長森がこんな奴だったとはな!  見損なったぞ!!」
  言い争う二人を、みんな亜然として見ていた。

  ここは教室。
  時間は昼休み。
  普段はヒマを持て余す生徒達の喧騒で賑わう教室も、今は静寂に包まれていた。

  折原浩平と長森瑞佳は幼なじみ。
  それも、普通はありえないほど、非常に仲のよい男女の幼なじみである。
  ……というのが、このクラス全員の一致した考えだった。
  一部、認めたがらない生徒や、実はすでに恋人同士に違いない、と勘ぐる生徒もい
るにはいたが。

  その二人がここまで血相を変えて言い争うなど、誰にも予想できなかったのだ。

  現在、二人は教室の端と端に陣どり、睨み合っている。
  バックには稲妻が走り、二人に挟まれた空間には暗黒が居座っている。

  はらはらしながら見守る者。
  必死で見ないフリをしようと、ムダな努力をする者。
  これは別れるに違いない、と櫛で髪型を整える者や手紙を書き始める者。

  声をかけるにかけられず、ただただおろおろするだけの七瀬(珍しい)。

  バックに走る稲妻に打たれ、黒焦げになる南(「何故にー!?」by沢…南)。
  暗黒空間に引きずり込まれる南森(「どうして俺がっ!?」by南森)。
  <それは作者が「北」一色だからさ☆  「南」君、「南」森君>

  まっっったく平然としている茜(←おい)。
  そしてこの状況でも気付かない髭(←おいおいおいおい……ってゆーかなんでいる
んだろう?)。

  ……と、周囲(茜、髭を除く)は混乱するばかり。
  どうして、この仲の良い二人がここまで険悪になったのかを知る者は、一人として
いなかった。

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「ね、ねぇ瑞佳……?」
  意を決したかのように、佐織が(おそるおそる)声をかける。
「あ、佐織。早く部活行こ。これ以上、浩平なんかに関ってはいられないもん」

  教室の逆の端から怒りのオーラが湧き起こる。
  もちろん、浩平である。
「ふん!  おい、住井!」
「……お、おう?」
「ゲーセン行こうぜ」
「で、でも長森さんは……?」
「ああ、あんな奴、ほっとけ」
  瑞佳の体を怒気が取り巻く。
  その威力たるや、決して気の弱い方ではない佐織をして、恐怖せしむるに十分だっ
た。

  二人はしばらく睨み合った後、同時に「ふん!」と見事に息の合ったタイミングで
仲良くソッポを向くと、大股で歩み去った。
  ……それぞれ、住井と佐織を引きずったまま。

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「……これは非常に由々しき事態だ」
「……まったくね」
  住井と佐織は同時にため息をついた。
  あの後、それぞれ浩平と瑞佳に付き合わされた後、連絡しておち合ったのだ。
  「あのやたらもどかしい二人をくっつけよう作戦委員会」会員たる二人には、これ
は相当の問題と言えた。(ネーミング:住井護)

「……それはいいんだけど」
  突如、降って湧いた三人目の声に、住井と佐織は振り向いた。

「なんだ?  広瀬」
「どうかしたの?  真希」

「……あんたら、どうして私の家で会議するわけ?」
  その言葉に、二人は顔を見合わせた。

「何をわけのわからんこと言ってるんだ?」
「そうよ。あの二人が険悪なままでいいと思ってるの?」
「いや、私が言いたいのは、何でうちでやるのか、って所なんだけど……」
「やはりこういう事は、会員全員が出席してないとな」
「そうそう。会員No.1なしじゃ、話が進まないし」
「何で私が会員!?  しかも1番なのよっ!?」
「名誉会長。」
  さらっと言う住井。

「何でっ!?  それじゃまるで、私がその会を作ったみたいじゃない!!」
「些細な事よ」
  これまた、さらっと言う佐織。

「あんたらはぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「まぁまぁ。俺の秘蔵の『さとう◯緒のヌードの載ってるプレイ◯ーイ』を、大特価
1万円で売ってやるから」
「いらんっっ!!」
  ちなみにこれは実は、マニアに売れば2〜6万で売れるらしいのだが。
  結構、正当な取引だったのだが、広瀬には意味がなかったようだ。
  余談だが、作者は彼女の出演している「お見◯い結婚」を、珍しく毎週かかさずに
見ている。……本気で余談だ。

「大体、自分達でやればいいでしょ!?」
「それもそうなんだが、俺も佐織も、折原と長森さんに捕まるから何も出来やせんの
だ」
「大体、他人の事をどうこう言うより、自分達の事を気にすればいいのに……(ぼそ
っ)」
「は?  なんか言ったか?」
「いーえ、別にっ」
  さっさとあんたらもくっつきなさいよ、と心の中でつぶやく。
  しかし、佐織には聞こえていたらしい。
「他人の事を言ってられる状態じゃないでしょうが……(ぼそっ)」
「な、何いってるのよっ!」

  ズガッ!!

「うくっ!?」
  佐織のテレ隠しの一撃(ヒジ撃ち)が見事に広瀬の脇腹にクリーンヒット。
  「恋する乙女の一念、要塞の装甲をも打ち抜く」とはよく言ったものだ。
  ちょっと違ったっけ?

  ……は、ともかく。
「ね、真希。一生のお願い!!
  瑞佳、無理してるのがわかるから、見てられないのよ……」
  辛そうな佐織の声。
  本当に心から、親友の事を案じているのがわかる。
  そして広瀬は、根本的に単純で善良だった。

  ふう、と一つため息。
「……わかったわよ」
  脇腹を押さえつつ、そう答える。
「おおっ!  引き受けてくれるか。助かる」
「……ありがと、真希」
  かくして、今回最大の貧乏クジをひく人物が決定したのだった。
 
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  作者の気力不足のため、省略(←おいおいおいおいおいおいおいおい!!!)。


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「……ま、こんなとこかな?」
  あれから1週間後。
  再び3人は、広瀬の家に集結していた(広瀬はもはや諦めたらしく、何も言わなか
った)。
  さすがに広瀬の人脈・情報網は並ではなかった。
  全員に聞き込みをするのに、1週間もかかったのである。
  まる1週間、少しでも情報を持ってそうな連中に接触し、ときにシェイクをおごり
、ときに脅は……もとい、誠意ある説得をし(「弱みは握るためにあるのよ」by広
瀬)、ときに怪しい科学者(?)やら、学食にいれば必ず現れるという人物を待ち受
けたりと、血の滲むような努力の結果、得られた情報を住井・佐織の情報と総合する
と。


1:先日行われたパーティーで、浩平と瑞佳は買い出し係になってたらしい。
2:買い出しから帰った時には険悪なムードになってたらしい。


  ……こんだけ。
「「「……なんで?」」」
  報われないねぇ。


  その夜、広瀬。
「……いったい原因は何なの?  教えて、お星様……お月様……」    
  ちょっと乙女チックに星に願いを、月に祈りを捧げてみたりする。
  七瀬が伝染ったのかもしれない。

  ……いきなり、夜空が曇った。
「何でよっ!?」
  たぶん、祈った星が土星(占星術では「不吉」「暗黒星」とされる)だったからだ
ろう。
  たぶん……。

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「……くそっ……!」
  浩平は、家に帰るなり、カバンを放り投げると、ベッドに転がって、そう毒づいた。    
「長森め……意地はりやがって……」
  お互いに下らない事で言い合ったりするのは、いつもの事のはずだった。
  どうせすぐに「わたしが間違ってたよ。ごめんね、浩平」と謝ってくるだろう、と
タカをくくっていた。
  よく、自分が悪くもないのに、謝ってくれた瑞佳。
  しかし、今回は自分が正しい。
  浩平は、そう信じている。
「すぐに謝れば許してやったのに……」
  それなのに、自分の間違いを認めない。
「今のうちなら許してやるぞ……だから……」
  早く、謝ってくれれば。
  そうしたら前のように、平凡だけど、ゆったりとした幸福な時間が戻って来る。
  早く、早く……。

  いっそ、俺の間違いだったという事にしてしまおうか?
  そうすれば……また……。
  今までだって、いろいろヒドい事をしてしまっても、最後に笑って許してくれたの
は、いつだって瑞佳の方だった。
  いつも、滅茶苦茶な事ばかりする自分に、文句を言いながら、それでも必ず許して
くれた。
  ……はたして今度も、そうなるのだろうか?

  もし、本気で怒っていたら?
  もし、今までの行動に愛想を尽かされていたら?
  
  それは、恐怖を伴う想像だった。
  たったそれだけの事を、ひどく恐れている自分がいる。

  長森を失うのが恐い。

  謝ってしまえば。
  今のうちなら、許してくれるかもしれない。
  そしていつか、証拠品を持って行くなりなんなりして、自分の正しさを証明すれば
いい。
  そう簡単には、「あれ」が見つかるとは思えないが、いつか見つける事もあるだろ
う。
  そう、今回だけは自分の間違いという事にしてしまえば……。

「……だめ、だ……」
  ぎり、と歯を食いしばる。

  認められない。
  譲れない。
  これを認めてしまえば……。
「……クジラ、か……」
  浩平のつぶやきは、夜空に吸い込まれて、消えた。
「…………意地なんて……はるもんじゃない、よな……」

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「……もう!」
  瑞佳はベッドの上でうなっていた。
  ごろごろと意味もなく転がる。  
  先ほどから、ため息ばかりがこぼれ落ちる。
  考えるのは、ただ一つの事。
  おかげで、今日の授業もさっぱり身につかなかった。
  学校で何があったか、誰とどんな事を話したのかも、よく覚えていない。
  今日の夕飯も、何を食べたのか、どんな味がしたのかも思い出せない。

  曖昧な記憶。
  心の中から大事な物が抜け落ちて、ポッカリと穴が空いてしまったかのような。

  ちなみに、実は2通ばっかりラブレターを貰ってたりするが、貰った事自体を忘れ
てしまい、封を切られる事もなかったラブレターの差し出し人は、ものの見事に待ち
ぼうけを食らってたりするのだが。
  
「……はぅ……」
  また、ため息。
「なんで浩平はあんなに意地っぱりなんだろ……」
  原因は、些細な事だった。
  どちらかが間違いを認めれば、それでおしまいなはずだった。
  最初は、自分が間違ってるという事にしてあげようかと思った。
  いつも通りの、浩平のわけのわからない冗談。
  いつだって、笑って許してきた。
  
  しかし、このままでいいのだろうか?
  それでは、いつまで経っても堂々巡り、決して前には進めない。
  今のままの関係は心地よい。
  しかし、いつ崩れてもおかしくない関係。
  浩平が誰か女の子を「俺の彼女だ」と一言いえば、それであっさり崩れ去ってしま
う関係。

  だったら、少しは環境を変えてみたら。
  「いつも」じゃない自分に気付いて貰えれば。
  そう、少しでも今の関係を変えられれば……。

「……なんで……こうなっちゃったのかな……」
  クッションを抱きかかえ、つぶやく。
  
  謝ってしまおうか。
  自分の間違い、という事にして、前と同じ関係を取り戻そうか。
  そうすれば……また「いつもと変わらない」毎日が待っている。
  
  ……取り戻せるのだろうか。
  もしかしたら、本気で怒っているかもしれない。
  意地っぱりな浩平の事だ。十分にあり得る。
  適当にごまかして謝っても、証拠品なしでは信じて貰えないかもしれない。
  「なんで間違いってわかったんだ?」
  そう聞かれただけで、もっと険悪になってしまうかもしれない。
  せめて、自分が間違っていたなら、どれだけ楽だろう。

  思い悩む瑞佳に、階下から母親の声がかかる。
「瑞佳、ちょっと掃除のお手伝いしてくれない?」
「……はぁい」
  じっとしていても悩むだけだ。
  いっそ、体を動かしていれば、何も考えなくていいかもしれない。


  掃除は結構本格的だった。
  瑞佳が任されたのは、戸棚の整理だった。
  ため息をつきながら、中の物を引っ張り出す。
  母親に、何かあったのか、と聞かれ、何でもない、と答える。
  その間にも、手だけは機械的ながらも動いていた。
  
  ふと、手に小さいものが触れた。引っ張りだしてみる。
「……あ……」

  それは、ケンカの元となった物だった。
  かなり古い。
  おそらく、入れていた所から落っこちたため、見づらい所にあったのだろう。
  涙がこぼれそうになる。
  こんな小さな物が原因なんて。
  涙で潤みそうな目で見てみる。

  そして。

「……………………あーーーーーーっっっっ!!?」

  ……その声は、近所中に響き渡った。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  翌日、教室。
「あ、あのな、長森」
「あ、あのね、浩平」
  二人同時に言い出しかけ、同時に口ごもる。

  周囲には、住井・佐織を中心として、クラスメート達がこっそりと見守っている。
  住井が何故か2つ穴の空いたスポーツ新聞を(教室で)逆さに「何気なさそうに」
読んでたり、佐織が意味もなくサングラスをかけて口笛を吹いてたり、連日の情報収
集で疲労しきった広瀬が机で爆睡してたりする以外は、こっそりと。

  しばらく、どちらが先に言うかで揉めたものの、結局、瑞佳が先に口を開いた。
「あっ、あのっ、ごめんねっ、浩平っ!
  わたしが間違ってたよっ!」
  しばらく呆然とした浩平だったが、やがて口を開いた。

「……長森」
「……な……何?」

「今日、帰りにクレープ食いに行かないか?」

  ぱっ、と瑞佳の表情が輝く。
  それは、浩平以外の誰にも引き出せない笑顔だと、誰もが認めざるを得なかった。

  教室が穏やかな空気に包まれる。
  佐織など、思わず涙ぐんでしまったほどに。

  ……雰囲気が変わったのに気付いて、たった今、目を覚ました広瀬だけが、状況を
理解できずに困っていた。 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「で、結局、何が原因だったのよ?」
  広瀬の問い。

「些細な事だ」
「それじゃわからん」
  これは住井。

「何なのよ、瑞佳」
  佐織の質問に、瑞佳が説明を開始した。

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  買い出しの時。

「浩平、何か欲しいお菓子ない?」
「そうだな、クールミントガムがいい」
「あの、ペンギンの絵が描いてあるガムだよね?」
「ふっ、甘いな長森。クジラの絵が描いてある奴だ」
「えー、うそだよ。ペンギンの絵のはずだもん」
「いや、昔のやつはペンギンとクジラが描かれていたんだ。
  今はペンギンだけの方が主体のようだが」
「うそだぁ」
「うそじゃないって」
「そんなはずないもん」
「なにぃ……俺の言う事が信じられないのかっ!?」
「当り前だよ」<日頃が日頃だしねぇ……>
「なんだと……」
  ・
  ・
  ・
(以下、険悪化)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「……と、いうわけだよ。あれ?」
「どうした、お前ら?  特に広瀬、まだ寝足りないのか?  しょうがない奴だなぁ」

「「「お前らに言われたくないわっっっっっ!!!」」」  

  綺麗にハモる三人の声。
  きっと芸人になっても生きて行けるだろう。

「私が一番バカをみてるじゃない……」
  広瀬のつぶやき。

  きっと明日はいい天気だろう。

      (おわり)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  余談。

  二日後。
  HR前。

「住井君がそんな人だとは思わなかったわ!!」
「佐織!!  お前がここまでものわかりが悪い奴だとは思わなかったぞ!!」

  呆然と、教室へ入る寸前で停止している広瀬。
「……何?  いきなり何なの?」
  珍しく、早く学校に来ていた浩平と瑞佳が説明してくれた。

「何か知らんが、住井と佐織が一悶着起こしててな」
「原因はよくわからないんだよ」
「何でも、原因は『些細な事』らしいんだが……」
「どうしようか、浩平と話してた所だよ」

「「そういうわけで……」」
  何故かハモる二人。
  広瀬の背中を氷塊が滑べり落ちるかのような感覚が走る。

「今日は、広瀬の家で会議だな」
「うん。早くあのもどかしい二人をくっつけなくちゃ」

  「何故か」前に聞いた事があるような気がする広瀬。
  おそらくデジャ・ヴ(既視感)ってやつだろう、うん。


「カンベンしてよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ!!!!!」

  広瀬の悲鳴が響き渡る。
  
  今日も地球は平和だった。

  ……かくて、歴史は繰り返す。

  (本当におわり) 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  余談その2「浩平の意地の理由」

「ねぇ、浩平……」
「……ん?」
「何であんなに怒ったの?」
「ああ……」
  ふと、浩平は空を見上げた。

「クジラ、な。見つけたの……死んだ妹のみさおだったんだ」
「……え?」
「だから、つい……みさおを否定されたような気がしちまって、な……」
「……あ……。
  ……ご、ごめ……む!?」

  浩平の手が瑞佳の口を塞いでいた。

「謝るのはナシだ。
  俺は納得した。
  長森も納得した。
  ……それでいいじゃないか?」

  いつもの浩平の笑顔。   

  瑞佳は思う。

  いつか。
  いつか全部語り合えるほどになったら。
  「これ」は大切な記念品になるのかもしれない。
  ちょっとだけ、浩平が自分に心を開いてくれた、記念として。
  いつなのか、本当に来るのかさえもわからないが、その時まで、これは大切にとっ
ておこう。
  
  ……同じようなシーンで、手ではなく唇で塞いでくれるくらいになったら。

(ほんとのほんとに終わり)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  うはは、電車のり遅れちまったい!
  書き忘れ思い出して戻って来た次第。
  ってゆーかコレなしじゃイミがない。
  でも前のが消せない。何故に。
  なんか2重投稿になりますが、こっちが完全版ですよ〜。
  下のは、「〜★★★★★〜」以降しか意味はないです。
  
  んでは、マヂで再見!