秋。 それは一年中で一番、哀愁の漂う季節。 秋。 それは乙女の心を切なくさせる季節……。 ・゜★・。・。☆・゜・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜★・。・。☆・゜・。 ……てなわけで。 ここにも、「秋」を追い求める乙女が一人……。 <教室にて> 七瀬留美は、読んでいた本を閉じた。 ふと、窓の外の大樹を見やる。 樹齢すらわからない程の年経た大樹も、今や紅葉の季節を迎えている。 木の寿命は長い。 これから何年経とうとも、今の生徒が大人になり、子供を作り、全て死に絶え たとて……この木は変わらず紅葉の季節を迎えるのだろう。それだけの生命力を 感じる。 それに比べたら、人の生涯など一瞬に等しいものだ……。 はぁ、とため息をつき、七瀬は一言呟いた。 「……秋ね……」 バキッ……メキメキメキメキ……!! ……ズ……ズン……!! ……訂正。大樹はたった今寿命を迎えたようだ……。あんなに盛大にへし折れ るとは……。 生命力に溢れてるように見えたのだが……。 七瀬は幾分こめかみをひきつらせたが、なんとか気を取り直し、再び別の木を 見やった。 その木は、先程の木とは違い、今にも寿命を迎えそうな木だった。 もはや葉をつける力もロクにないのか、ただ一枚の枯れ葉が、今にも風に吹き 飛ばされそうになりながらも、頼りなげに必死でしがみついている。 今にも尽きそうな貧弱な生命力が、微弱ながら感じられた。 七瀬は、うん、これなら、と一つ頷き、再び呟く。 「この葉が落ちる時が」 にょきにょきにょきにょき。 ざわざわざわざわ。 ……再び訂正。案外、他の木をぶっちぎりで追い抜く生命力があったよーであ る。この季節になってこれだけの葉を繁らせる木など、他にないだろう。 七瀬は、言葉が尻切れトンボになったまま、硬直していた。 七瀬の背後では、クラスメート達が一様に「ザ・●ールド」の支配下にあるよ うだ。 一番始めに「時が動き出した」折原浩平が、七瀬に尋ねた。 「……お前、NHKの『趣●の園芸』に出たら一儲けできるぞ」 「なんでよっ!!?」 ・゜★・。・。☆・゜・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜★・。・。☆・゜・。 ……事の起こりはこーゆー事らしい。 昨日、雨の放課後、七瀬はいつもは通らない道を通って帰った。 そして、雨の空き地で立たずむ、里村茜の姿を見たのだ。 寂しげな、今にも泣き出しそうな悲しい後ろ姿。 雨の中、枯れ草の生い茂る空き地で、雨に打たれるその姿。 その姿に、七瀬は「乙女」を感じとったらしい。 とゆーわけで、自らも「乙女の秋」を実践すべく、ムダな……もとい、似合わ な、コホン、一途な挑戦を開始した、とゆーわけだった。 ・゜★・。・。☆・゜・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜★・。・。☆・゜・。 「……まぁ、あんた達みたいに、季節感も何もあったもんじゃない人間に言って もわかんないでしょうけど」 「失礼な。俺と住井は常に『漢(おとこ)の秋』を堪能しているんだぞ」 「どーせ焼きイモでも食べてるんでしょ?」 「ちっちっ、甘い。練乳蜂蜜ワッフル並に甘いぞ、七瀬」 「何よ、それ。そんなモノあるわけないでしょ」 「いや、あるぞ。あれの破壊力はバツグ……いや、話がそれた。 住井!! お前の『漢の秋』を見せてやってくれ!!」 住井は突如、幅広の黒い帽子、もみあげまで繋がったあごひげの付け髭、ヨレ ヨレの黒いスーツに拳銃を身につけ、これまたヨレヨレのタバコをくわえた。 BGMに「ルパン●世のテーマ」がかかる。 『……背中で〜泣ぁいて〜る〜男の美〜学〜……♪』 夕日に孤独な笑顔でキメてみたりする。 「おお、住井、いつもながら見事な『秋』だな」 「ふっ、お褒めに預り光栄の極みだぜ」 「……どうした七瀬、こめかみなんか押さえて。テンプル(こめかみのコトね) にカウンターでも食らったのか?」 「あるイミ正しいかもしれないけど……」 七瀬は本を握り締めた。 「とにかく、あたしは『乙女の秋』を極めるのよっ!!」 強く決意する七瀬。ちなみに本のタイトルは「緒 トメ著:乙女の道は一日に してならずぢゃ」とあった……。 (緒・トメさんに関してはニュー偽善者RさんのSS「いい仕事しまっせ!乙女 鑑定人」を読もう!!あれは面白いぞ!!)。 「……とゆーわけで、行くわよ折原」 「おう、がんばれよ……って、なんで俺が行く必要があるんだ?」 「愚問ね。あたし一人では出来ないかもしれないじゃない。 瑞佳、折原借りるわよ」 「うん。いってらっしゃ〜い、浩平」 かくして、浩平は引きずって行かれた。 「乙女の秋」を極めるのに浩平なんかを連れて行って本当にいいのか!? 連れて行かれた浩平の運命は!? 「食欲の秋」はやっぱりあの人なのか!? 七瀬は本当に「乙女の秋」を極められるのか!? 作者は、とりあえず暖かい目で遠くから見守ってやりたいと思う。 <余談> 「う〜、雪ちゃ〜ん、痛かったよ〜」 「この木が倒れるなんて……異変の前兆かしら? ……それを頭突きで迎撃して折るみさきもみさきだけど……」 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ども、北一色です。カゼひいて死にそーです。 「ウィルスを殺す」と称してタバコ吸いまくったら悪化しました。ナゼに。 前回の「H.N.〜」が時期ハズレもいいとこだったんで、今度は季節を合わせ てみました。 昨日、熱に浮かされながら考えてたんで、終わり方とか決めてないです。ま、 毎度の事ですが。 う゛〜、頭痛い……今日はとりあえずこの辺で。 「『髭〜』のネタ思いついたからまたダラダラやるかもしんない」北一色