乙女の秋(前編)  投稿者:北一色


  秋。
  それは一年中で一番、哀愁の漂う季節。

  秋。
  それは乙女の心を切なくさせる季節……。

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  ……てなわけで。
  ここにも、「秋」を追い求める乙女が一人……。
  
<教室にて>

  七瀬留美は、読んでいた本を閉じた。
  ふと、窓の外の大樹を見やる。

  樹齢すらわからない程の年経た大樹も、今や紅葉の季節を迎えている。
  木の寿命は長い。
  これから何年経とうとも、今の生徒が大人になり、子供を作り、全て死に絶え
たとて……この木は変わらず紅葉の季節を迎えるのだろう。それだけの生命力を
感じる。
  それに比べたら、人の生涯など一瞬に等しいものだ……。 

  はぁ、とため息をつき、七瀬は一言呟いた。

「……秋ね……」

  バキッ……メキメキメキメキ……!!
  ……ズ……ズン……!!

  ……訂正。大樹はたった今寿命を迎えたようだ……。あんなに盛大にへし折れ
るとは……。
  生命力に溢れてるように見えたのだが……。

  七瀬は幾分こめかみをひきつらせたが、なんとか気を取り直し、再び別の木を
見やった。

  その木は、先程の木とは違い、今にも寿命を迎えそうな木だった。
  もはや葉をつける力もロクにないのか、ただ一枚の枯れ葉が、今にも風に吹き
飛ばされそうになりながらも、頼りなげに必死でしがみついている。
  今にも尽きそうな貧弱な生命力が、微弱ながら感じられた。

  七瀬は、うん、これなら、と一つ頷き、再び呟く。
「この葉が落ちる時が」

  にょきにょきにょきにょき。
  ざわざわざわざわ。

  ……再び訂正。案外、他の木をぶっちぎりで追い抜く生命力があったよーであ
る。この季節になってこれだけの葉を繁らせる木など、他にないだろう。

  七瀬は、言葉が尻切れトンボになったまま、硬直していた。
七瀬の背後では、クラスメート達が一様に「ザ・●ールド」の支配下にあるよ
うだ。
  一番始めに「時が動き出した」折原浩平が、七瀬に尋ねた。
「……お前、NHKの『趣●の園芸』に出たら一儲けできるぞ」
「なんでよっ!!?」

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  ……事の起こりはこーゆー事らしい。

  昨日、雨の放課後、七瀬はいつもは通らない道を通って帰った。
  そして、雨の空き地で立たずむ、里村茜の姿を見たのだ。
 
  寂しげな、今にも泣き出しそうな悲しい後ろ姿。
  雨の中、枯れ草の生い茂る空き地で、雨に打たれるその姿。

  その姿に、七瀬は「乙女」を感じとったらしい。
 
  とゆーわけで、自らも「乙女の秋」を実践すべく、ムダな……もとい、似合わ
な、コホン、一途な挑戦を開始した、とゆーわけだった。 

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「……まぁ、あんた達みたいに、季節感も何もあったもんじゃない人間に言って
もわかんないでしょうけど」
「失礼な。俺と住井は常に『漢(おとこ)の秋』を堪能しているんだぞ」
「どーせ焼きイモでも食べてるんでしょ?」
「ちっちっ、甘い。練乳蜂蜜ワッフル並に甘いぞ、七瀬」
「何よ、それ。そんなモノあるわけないでしょ」
「いや、あるぞ。あれの破壊力はバツグ……いや、話がそれた。
  住井!!  お前の『漢の秋』を見せてやってくれ!!」

  住井は突如、幅広の黒い帽子、もみあげまで繋がったあごひげの付け髭、ヨレ
ヨレの黒いスーツに拳銃を身につけ、これまたヨレヨレのタバコをくわえた。
  BGMに「ルパン●世のテーマ」がかかる。
『……背中で〜泣ぁいて〜る〜男の美〜学〜……♪』
  夕日に孤独な笑顔でキメてみたりする。

「おお、住井、いつもながら見事な『秋』だな」
「ふっ、お褒めに預り光栄の極みだぜ」
  
「……どうした七瀬、こめかみなんか押さえて。テンプル(こめかみのコトね)
にカウンターでも食らったのか?」
「あるイミ正しいかもしれないけど……」

  七瀬は本を握り締めた。

「とにかく、あたしは『乙女の秋』を極めるのよっ!!」

  強く決意する七瀬。ちなみに本のタイトルは「緒  トメ著:乙女の道は一日に
してならずぢゃ」とあった……。
(緒・トメさんに関してはニュー偽善者RさんのSS「いい仕事しまっせ!乙女
鑑定人」を読もう!!あれは面白いぞ!!)。

「……とゆーわけで、行くわよ折原」
「おう、がんばれよ……って、なんで俺が行く必要があるんだ?」
「愚問ね。あたし一人では出来ないかもしれないじゃない。
  瑞佳、折原借りるわよ」
「うん。いってらっしゃ〜い、浩平」

  かくして、浩平は引きずって行かれた。
  
  「乙女の秋」を極めるのに浩平なんかを連れて行って本当にいいのか!?
  連れて行かれた浩平の運命は!?
  「食欲の秋」はやっぱりあの人なのか!?
  七瀬は本当に「乙女の秋」を極められるのか!?

  作者は、とりあえず暖かい目で遠くから見守ってやりたいと思う。

<余談>
「う〜、雪ちゃ〜ん、痛かったよ〜」
「この木が倒れるなんて……異変の前兆かしら?
  ……それを頭突きで迎撃して折るみさきもみさきだけど……」

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  ども、北一色です。カゼひいて死にそーです。
  「ウィルスを殺す」と称してタバコ吸いまくったら悪化しました。ナゼに。
  前回の「H.N.〜」が時期ハズレもいいとこだったんで、今度は季節を合わせ
てみました。
  昨日、熱に浮かされながら考えてたんで、終わり方とか決めてないです。ま、
毎度の事ですが。
  う゛〜、頭痛い……今日はとりあえずこの辺で。
      「『髭〜』のネタ思いついたからまたダラダラやるかもしんない」北一色